怪人バッタ男 THE FIRST   作:トライアルドーパント

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今回の番外編は、作者が一度やってみたかった「現実世界の時事ネタ」です。

ベースは『すまっしゅ!!』第一巻のバレンタイン回ですが、相違点としてシンさん達は寮生活をしていて、林間学校などが終わっている設定でいきます。本編がシリアス全開だった分、ギャグを楽しんでいただければ幸いです。

2018/10/13 誤字報告より誤字を修正しました。報告ありがとうございます。


外伝 怪人バッタ男 in すまっしゅ!! Land
第214話 非モテとチョコと暗黒結社


2月13日の放課後。全ての授業が終わり、俺が出久と切島の二人と一緒にトレーニングに励もう話し合っていた時、何故か諸葛亮孔明を髣髴とさせるチャイナな服に身を包み、白い付け髭を蓄えた峰田が話しかけてきた事が発端だった。

 

「諸君……私は昨日ある画期的なメソッドを開発したぞ。聞きたいかね?」

 

「画期的なメソッド?」

 

「碌でもない予感しかしないんだが……」

 

「まぁまぁ、ここは一つ男らしく聞いてみようぜ?」

 

「それが良い。今から話すのは明日、2月14日のバレンタインにおいて、女子からチョコを貰いまくる為の秘策なのだ」

 

「「「!?」」」

 

峰田は完全にキャラ崩壊していたが、実に興味をそそられる発言内容によって、俺達の動きを止めた。

しかし、女子からチョコを貰いまくるとは、一体どんな秘策なのだろうか? 盗難……もとい、東南の風でも起こすのか?

 

「……して、その秘策とは?」

 

「うむ。明日学校で自らチョコを持ち歩き、女子の前で“うっかり”落っことすのだ。すると、後ろを歩いている女子は『落しましたよ』とチョコを拾い、手渡してくれる」

 

「うん。それで?」

 

「分からぬか? こうすれば、結果的に女子からチョコを貰いまくれるではないか。そうだろう?」

 

「「「………」」」

 

それは「貰う」とは言わない。「拾って貰う」と言うのだ。確かに「貰う」という文字はあるが、その前に「拾って」と言う余計なモノが付いている。惑わされてはいけない。

……とは言うものの、そんな穴だらけの秘策を語りながら、どこか救いを求める様な表情で、両目に涙を蓄えている峰田を見れば、とてもそんなツッコミ入れる気にはなれなかった。

 

「……とりあえずアレだ。他の皆にも聞いてみるか?」

 

「……そうだね。何か良いアイディアがあるかも」

 

「ついでだ。何か旨いもんでも食いながら話そうぜ? な?」

 

「くぅ……」

 

――と、まあそんな訳で、バレンタインで同世代の女子からチョコレートを一度も貰った事の無い俺達は、リア充と非リアの差が物理的な形で明確に現れる明日を、どうにかして上手い具合に乗り切る方法を模索する事となった。

 

ついでとばかりに他の男子にも声を掛けてみたが、これがどうにも集まりが悪い。恐らく俺が声を掛けた相手の一人である飯田が「そもそも学校にお菓子を持ってくるなど、雄英生の自覚が足りん!」と声を荒げた事が原因だろう。あの“真面目の権化”に声を掛けたのは間違いだったと言わざるを得ない。

ちなみに轟は確実に女子から貰うだろうから論外。勝己も昔からアレで何故かソコソコの数を貰っている為、初めから声を掛けなかった。そもそもこの二人に関しては、声を掛けたとしても参加するとは到底思えない。

 

結果、作戦会議に集ったのは俺、出久、切島、峰田、上鳴、瀬呂の6人だけだ。この中で個人的に意外だったのは上鳴。上鳴は何だかんだで貰っていそうなイメージがあったのだが、上鳴もバレンタインで女子からチョコレートを貰った事は一度も無いらしい。

 

「えっと……それじゃあ、作戦会議を始めます。何か考えのある人は、挙手をお願いします」

 

「ハイ緑谷!」

 

「はい上鳴君」

 

「明日の放課後に女子を誘ってポッキーゲームとかどうよ? チョコを貰える上に、親交も深まって一石二鳥だぜ!」

 

「それって花見の時の二の舞になるんじゃないか?」

 

「「………」」

 

俺のツッコミによって、上鳴と峰田の二人は同時に沈黙した。恐らく花見の時に起こった「男二人でポッキーゲーム」と言う、腐女子以外誰も得をしない展開を思い出したのだろう。

 

「それじゃ、次は俺!」

 

「はい瀬呂君」

 

「八百万に『“個性”で食いモンも作れるのか?』って聞くのはどうだ? それでチョコレートを作って貰うんだ」

 

『おぉ……!』

 

瀬呂のアイディアに感嘆の声が上がった。なるほど。確かにこれは中々の名案だ。……しかし、この作戦には一つだけ致命的な欠点が存在する。他ならぬ瀬呂の所為で。

 

「……瀬呂。お前、本当にソレで八百万からチョコを貰えると思っているのか?」

 

「え? 何か問題あるのか?」

 

「忘れたのか? お前、林間合宿の時に八百万の“個性”の詳細を聞いて『ウンコみてぇ』って言っただろ?」

 

「あ……」

 

『………』

 

俺の指摘によってこの作戦が使えない事実を突きつけられ、メンバー全員が絶望に打ちひしがれた。そしてリアクションを見る限り、瀬呂自身もその事を完全に忘れていたらしい。

時の流れと言うものは、過去の失態を忘却の彼方に追いやってくれる事が多々あるが、そんなのは“失態を行なった人間”に当て嵌まる事であり、“失態の被害を受けた人間”には当て嵌らない事の方が多い。それどころか未来永劫消える事の無い、魂に刻まれた決して癒えぬ傷となって残る場合もある。

 

しかし、かつて自転車をねだった瀬呂に対して、何だかんだで自転車をプレゼントした事や、スネークヒーロー『ウワバミ』の所で職場体験した際に何故か水着の仕事まで受けていた事を考えると、八百万はアレで結構チョロい所があるから、案外その作戦でいける可能性も無きにしも非ずだと言う事は黙っておこう。何となく言い辛いし。

 

「つーか、呉島よぉ! さっきから駄目出しばっかだけど、お前は何か良いアイディアねーのかよ!?」

 

「……無いな。『バレンタインにチョコレートを渡すのは日本のお菓子会社の陰謀で、ドイツもコイツもそんな事も知らずに踊らされて馬鹿じゃの~』って感じで、聞くのもカナシイ、返すのもムナシイ事を言って自我を保つか。

或いは、女子の会話を一切聞かない振りをして平常心を保ちながら、一日中ポーカーフェイスでいる事以外、俺に明日を上手く乗り切る方法は思いつかない」

 

「やめろよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!! そんな聞いてて、胸がキュッってなるよーな事はよぉおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

 

「つーか、俺等って、そうならない様にこーして集ってるんじゃねーの!?」

 

結局、新たな画期的なメソッドが発見される事は無く、「明日はあるがままに運命を受け入れるしかない」と言う結論に至った。

 

極めて理不尽な事ではあるが、男は受身にならざるを得ない以上、取れる手段は「神に祈る」以外何も無い。それがバレンタインの真実であり真理なのだ。

 

 

●●●

 

 

翌日。雄英高校は朝から異様な緊張感に包まれていた。その理由は言わずもがな、男子共の誰もがこれでもかと神経を張り巡らし、平静を装っている所為である。尤も“装っている”と看破できる位の下手な擬態なので全くの無意味だ。

 

しかし、コレはあくまで嵐の前の静けさ。つまりは、これから起こる惨劇の序章でしかない。仮に誰か一人でも裏切り者が出たのなら、そこは瞬時に持たざる者達の嫉妬と羨望と怨念のオーラに満ちた魔界と化し、その場に居合わせた持たざる者達は、一斉に冷酷で非情な魑魅魍魎へと成り果てる事だろう。

 

「……無いな」

 

「……うん。無いね」

 

出久と二人で下駄箱の中身を確認すると、そこには何時も通り自分の内履きだけが鎮座していた。予想はしていたし、毎年恒例の事ではあるのだが、やはり毎年地味にキツイ。

 

とりあえず、下駄箱の前でナニカを待ち焦がれるようにじっと佇む者や、扉を何度も開けたり閉めたりを繰り返す挙動不審極まる者を横目に、俺達は何時もの様に二人で教室へと向う。若干足取りが重いのは気の所為だと思いたい。

 

「おはよう……って、コレは……」

 

「うわぁ……」

 

教室の中には、机の上に築かれたチョコレートの山を前にする轟と、それをまるで殺人でも犯しそうな瞳で見つめる男達がいた。

ちゅーか、峰田と瀬呂だった。きっと二人は心の隙間に押し寄せる悲しみと妬みと空しさを、怒りと恨みと憎しみで何とか埋めているのだろう。

 

そんな持つ者と持たざる者の格差を視界に捉えながら自分の机に鞄を下ろすと、斜め右に座っている梅雨ちゃんが話しかけてきた。

 

「おはよう、シンちゃん。待っていたわ。ハイ、これ」

 

梅雨ちゃんは机の横から結構大き目の紙袋を取り出し、それを両手で抱えながら俺に渡してきた。

 

……キィイイタァアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!

 

遂に、遂にこの時がやってきたか! コレまで積み上げてきた全てが報われたかの如き、人生小春日和な予想外の展開に、俺は心の中で歓喜の雄叫びを上げた! 峰田と瀬呂が血涙を流しながら俺を見ているが、今の俺には些細な事だ!

 

「羽生子ちゃんからよ。イナゴ怪人ちゃん達の分もあるわ」

 

おお、そうかそうか! イナゴ怪人達の分も……え? 羽生子?

 

羽生子って確か、あの梅雨ちゃんの中学校時代の友達で、顔と言うか頭がまんまヘビの女の子で、何故か梅雨ちゃんの誕生日を6月だとバリバリに勘違いしていた、イナゴ怪人共が『怪人ヘビ女』呼ばわりしている……あの?

 

「……あ、ああ。ありがとう」

 

「どういたしまして。ちゃんとお返しを考えて上げてね?」

 

そう言うと梅雨ちゃんはさっさと席に戻っていった。早速紙袋の中身を確認すると、中には可愛いラッピングが施された袋が全部で13個入っている。俺とイナゴ怪人1号~RXの分を考えれば、丁度一人一個ずつ。つまり、必然的に梅雨ちゃんの分は入っていない。

 

……あるぇ~~~~~~~!?

 

何だろうな~~~!? このどこか嬉しい様で悲しい様で、何となく期待と男心を裏切られた様な、このモヤモヤした感じは~~~~~~!?

 

「ほう、『怪人ヘビ女』からか。どぉれ!」

 

何時の間に出現したのか、イナゴ怪人達が俺の背後から袋を奪い取り、次々とお菓子の入った袋を手に取っていた。そんなイナゴ怪人達も予想外のプレゼントを貰い、心なしか嬉しそうな顔をしている……と思う。多分。

 

「どうだ! 羨ましいか? 『怪人セロファン・バイシコー』に『エロ怪人グレープ・チェリー』よ!」

 

「ねぇどんな気持ち? ねぇ今どんな気持ち? 得体の知れない怪人の方がモテるって知ってどんな気持ち?」

 

イナゴ怪人1号と2号はお菓子の包みを見せつけながら、二人の前で「ツッタカ♪ ツッタカ♪」と人の気持ちを逆上させる珍妙なダンスを、残りのV3~RXの10人は何故か『Ch○○ Ch○○ TRAIN』のダンスを踊っている。

お陰で峰田と瀬呂の怒りのボルテージがみるみる上がっていくのを感じるが、あの程度ならまだ可愛げがある方だ。何故なら昨日の作戦会議が終わった後、イナゴ怪人達が俺の部屋にやってきて、こんな事をのたまいやがったのだ。

 

『安心しろ王よ! 奴等の策が万が一にも成功し、王が一つも貰えないと言う展開になった暁には、我々は死力を尽くして奴等に、末代まで語り継がれる様な汚名を着せる事を約束する! 例えば、貰える確率の高そうな「怪人セロファン・バイシコー」なら「ス○○ロ・ハンター」と言った所だな!』

 

『おい馬鹿、止めろ』

 

『何故だ! 「範太」と「ハンター」が掛かっていて実に良い感じではないか! まあ、だからどうだって話ではあるのだが』

 

『だから止めろっつんてんだろうが!!』

 

それから俺はクラスの誰がチョコを貰ったとしても、イナゴ怪人達が悪行を起こさない様に、全力で行動制限を掛けた。しかし、流石にイナゴ怪人がチョコを貰うケースと言うのは想定していなかった為、奴等の煽り行為を許す結果となってしまった。

 

「ちくしょう……チクショウ……ッ! お前等みたいなのがいるから、俺達はッ……夢を見ちまう……ッッ!!!」

 

「お早う。皆席に――」

 

「相澤先生ッッ!!! 今すぐ持ち検をした方がいいと思いますッ!! そう、今すぐにッッッ!!!!」

 

瀬呂は怒りと嫉妬と絶望と希望が入り混じった涙を流しながらイナゴ怪人を見つめ、峰田は相澤先生が教室に入った瞬間、猛烈な勢いで抜き打ちの持ち物検査を要求した。ちなみにイナゴ怪人達は相澤先生が来た瞬間、教室を風の様に脱出している。

 

「……持ち物検査なら昨日したばかりだろ」

 

「油断している今日こそがチャンス!! 今日は厭らしい女子共が、あの手この手で健全なる男子を誑かす悪魔の日ッッ!!! 鞄の中から制服の下まで徹底的に調べ上げるべきです!! てってーーーてきにッ!! 何ならオイラが個人的に女子共の服を引っぺがして――」

 

鼻息荒く抜き打ちの持ち検を提案していた峰田だが、突然糸が切れたマリオネットの様に着席した。その眼は焦点が定まっておらず、虚空を見据えている。

 

「峰田君?」

 

「峰田さん?」

 

「………」

 

クラスの大半は峰田の身に何が起こったのか分からなかった様だが、俺にはしっかりと見えていた。ピンク色でムチ状の物体が眼にも止まらぬ超高速で、峰田の顎をピンポイントで打ち抜いたのを。

 

「……ナイス、梅雨ちゃん」

 

「ケロ」

 

 

●●●

 

 

それから滞りなく授業は進み、何事も無く昼休みが過ぎていった。

 

上鳴のアイディアは予想通りに玉砕し、瀬呂の作戦は八百万の「『食べられる物』は作れても、『美味しい物』を作るのは難しい」と言う、実に懇切丁寧な説明の前に敗れた。瀬呂の頭脳では八百万の話についていけなかったのだ。

 

そして峰田の秘策だが、コレがある意味で最も悲惨だった。

 

峰田は欲を出して市販のチョコレートではなく、手作りチョコレートを用意する事で作戦の質を高めようとしたのだが、自分では上手く作れないので砂藤にチョコレートを作って貰っていた。

しかし、ちょっと考えて欲しい。クラスメイトの男(それもかなり男らしい見た目)に作ってもらった手作りチョコレートを携帯し、それを女子に拾って貰う事で誤魔化そうとする自分の姿を……。

 

結果として、峰田は女子に拾って貰う度に、心と目がゆっくりと死んでいった。「策士、策に溺れる」とはよく言うが、ココまで悲惨な自爆はそうはあるまい。

 

こうして僅かな希望が次々と断たれていく中、午後の授業の開始を告げる鐘が鳴った。今日はミッドナイト先生の倫理だ。

 

「今日の授業は校・外・学・習!!」

 

「倫理なのに!?」

 

「倫理だからよ!! 法律では括れない、でも確かに存在する人間のとるべき姿!! そしてそれは座学だけで学ぶものではないの!!」

 

そんな訳で今日の倫理は校外学習と相成った訳だが、その実態はミッドナイト先生のバレンタインフェスの手伝いだった。常闇の言う通り倫理が問われる展開だが、生徒の如何は先生の自由である以上、生徒の俺達はどうする事も出来ない。

 

そして、イベントの衣装が男女で20着しかなく、出久、飯田、峰田、砂籐の四人がメイド服に身を包んでいる誰得な絵面が広がっているのだが……男女で20着しかなく、残り一人は何をするのかと言うと、これから始まるミッドナイト先生が主役のヒーローショーで、ヴィラン役を務める事になっている。

 

そして、そのヴィラン役に他ならぬ俺が選ばれてしまった。

 

正直イベントが絶対に阿鼻叫喚の地獄になると思うのだが、ミッドナイト先生は「吊り橋効果的な事が期待できる」と言い張り、俺にヴィラン役を半ば無理矢理に押し付けた。それも画風が違う、死神の様な顔の『マッスルフォーム』を指定して。

 

正直に言えば、俺もタキシードを着てイベントに参加したかった。こんなリア充を量産する様な事は絶対にしたくないのだが、これもヒーローに成る為に必要な事だと、何とか自分に言い聞かせて割り切った。

 

「GRRRRRRRRR……」

 

『………』

 

そんな訳で今の俺は“個性”を発動させ、更に戦闘員役として召喚した12人のイナゴ怪人達と共に、舞台裏で出番が来るまで腕を組んで全裸で待機している。『13人の怪人軍団』と言う、中々お目に掛かれないであろう光景を見て、ミッドナイト先生が雇ったのであろう、イベントスタッフ達がビビリまくっているが気にしない。

 

「何がバレンタインだぁーーー!! こんなの元々幸せなヤツが自分の幸せ度合い見せびらかす為のイベントだろーーー!! ぶち壊してやるぜーーーー!!」

 

「キャーー! 誰かーー!!」

 

あ~~、そうだな。確かにバレンタインのイベントにはそんな側面が……って、あれ?

 

舞台裏に聞こえてきた男の怒声に内心うんうんと頷いた俺は、絹を裂くような女の悲鳴によってふと我に返った。

 

そこで舞台裏から外の様子を覗いてみると、「脱バレンタイン」と書かれたランニングシャツを着て、背中に「滅せよ!!」と書かれた旗を装着したゲジゲジ眉毛の男が、これまたゲジゲジ眉毛の女性を人質にとって騒いでいた。

どうやら、ゲジゲジ眉毛の男はヴィランのようだが、きっとバレンタインに深い恨みがあるのだろう。目から滝の様な涙を垂れ流している。

 

そして、この危機的状況から人質の女性を助けるべく、メイド服姿の出久が勇敢にも飛び出していったのだが……。

 

「テメェ~~~!! そんな格好しくさって、さては同士だなァ!?」

 

「え!? あ、いや、コレは……」

 

「キャーーー!! ヘンタイィーーーーーッ!!」

 

「そんな!!」

 

何と言う事だ。出久がヴィランに仲間だと勘違いされている。ヴィランに仲間だと勘違いされるのは俺の専売特許だが、出久がヴィランに仲間だと勘違いされる日が来るなんて夢見も思わなんだ。そんな事を考えながら出久とゲジマユマンのやり取りを見ていると、出久に変化が現れ始めた。

 

「ん? 急に視界が……」

 

「それが俺の“個性”の『まゆげ』だ!! 近づく奴のまゆげが濃くなっちまうのさ!!」

 

なるほど。人質の女性の眉毛が妙に濃いのは、あのゲジマユマンの“個性”の仕業か。そうなるとゲジマユマンは“個性”が制御出来ない。或いは制御が効かないタイプの“個性”を持っていると考えて良い訳だ。

まあ、いずれにせよゲジマユマンの“個性”は、今の俺には無力に等しいだろう。何故なら“個性”を使った俺は眉毛が無い。

 

しかし、人質を取られているのが厄介だ。何とか救出したい所だが『アクセルフォーム』でも使うか? そう考えて実行しようとした時、俺の背後から堂々とした声が聞こえてきた。

 

「安心しろ王よ! 私に良い考えがある!!」

 

「GRRR?」

 

声高に考えがあると言うイナゴ怪人1号に、俺は何となく碌でもない予感を感じていた。そして実際にイナゴ怪人1号が語った作戦は、碌でもないと言うより、トンでもないと言った方が良い奇策だった。

 

「GAAA!? JOOVIBA!?」

 

「しかし、これ以外に何か作戦はあるのか? 実際、効果はあると思うぞ?」

 

「MUUU……」

 

「大体、眉毛が無いからと言って、ヤツの“個性”が無力と考えるのは早計ではないか?」

 

「GMUUUU……」

 

「それにヤツが『敵連合』の回し者だったらどうする? 消耗は極力抑えるべきだと思うがな?」

 

「………」

 

……確かに。悔しいがコイツ等の言う事には一理ある。

 

考えてみれば今の俺に眉毛が無いからと言って、あの“個性”が無力であると言う保障は無い。実際に夏の仮免試験の時、名も知らぬ受験生の“個性”の所為で、ヘルメットにM字の変な眉毛が出現した事を考えれば、安易に近づくのは危険かも知れない。

ただし、ゲジマユマンが『敵連合』の回し者だと言うのは違うと思う。アレは明らかに単独犯。そして俺と同じ非モテと称される側の人種だ。間違いない。

 

……とは言うものの、コイツ等の言う事はもっともな事ではあるので、正直かなり気が乗らないが、俺はイナゴ怪人1号の奇策に乗ることにした。

 

「では行こう! 愛と正義の名の元に!」

 

『WOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!』

 

かくして、か弱い女性をゲジマユマンの魔の手から救う為、13人の怪人が舞台裏から一斉に飛び出した。

ちなみにこの光景を見たイベントスタッフは後に、「どう見ても屈強で凶悪な怪人達が、悪事を働こうとしている様にしか見えなかった」と語ったとか。解せぬ。

 

「待てい、悪党ッ!!」

 

「今度は何だ……って、何だお前等ぁああああああああああああああああああッ!?」

 

「私は、イナゴ怪人1号ッ!!」

 

「イナゴ怪人2号ッ!!」

 

「イナゴ怪人ブイスリャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

「イナゴマン!!」

 

「イナゴ怪人エェーーーーーーーーーーックスッ!!」

 

「アァーーーーーマァーーーーーーーーゾォオオーーーーーーーーーーーーンッ!!」

 

「イナゴ怪人……ストロンガァアァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

「イナゴ怪人スカイッ!!」

 

「イナゴ怪人スーパー1ッ!!」

 

「イナゴ怪人ゼクロスッ!!」

 

「イナゴ怪人ッ! ブラァッ!!」

 

「俺はッ! 深淵なる闇の子ッ! イナゴ怪人ッ! アーーッ! エェーーーーッ!!」

 

「GAVIVIN!! VABBAODOBO!!」

 

「最後の奴は何て言った!?」

 

「黙れ悪党ッ! 我等『暗黒結社ゴルゴム』の頂点に立つ、この“王たる男”は、とうの昔に正義に魂を売り渡し、貴様等ヴィランと交わす言葉など、もはや一片たりとも持ち合わせておらんのだッ!!」

 

違う。生まれた時から“個性”を使うと喋れないだけだ。それと出来るなら「売り渡す」ではなく「捧げる」と言う表現を使って欲しい。

 

事のついでに説明すると『暗黒結社ゴルゴム』とは、イナゴ怪人達が考案した俺のヒーロー事務所の名前である。

 

どう考えてもヒーロー事務所には思えない名前だが、「どうせ嫌でも『ヴィランみたいな見た目のヒーローランキング』に載るだろうから、ヒーロー事務所もヴィラン染みた方がウケる」とか言って言いくるめられて以降、イナゴ怪人達は自らの所属を『暗黒結社ゴルゴム』と名乗る様になってしまった。

 

ちなみにその他の候補として上がったのは――

 

『秘密結社ショッカー』

 

『暗黒組織ゲルダム団』

 

『秘密組織ゲルショッカー』

 

『暗黒組織デストロン』

 

『GOD機関』

 

『秘密結社ゲドン』

 

『ガランダー帝国』

 

『暗黒組織ブラックサタン』

 

『デルザー軍団』

 

『秘密組織ネオショッカー』

 

『ドグマ王国』

 

『ジンドグマ』

 

『地下帝国バダン』

 

『クライシス帝国』

 

――である。せめて「秘密結社」や「暗黒組織」を外せば多少マシになると思うが、それを差し引いたとしても、インパクト抜群な名前ばかりである。正直名前だけなら、ありとあらゆる意味で『敵連合』よりも強そうだ。

 

「我等は破滅の使いたる『飛蝗』の怪人! そして我等は総勢13人ッ!」

 

「13とは“死”を暗示する不吉の数字! つまりはそれが……キサマの運命だッ!!」

 

「な、何ぃ!?」

 

「『暗黒結社ゴルゴム』の名にかけて!」

 

「貴様をッ!!」

 

「絶対にッ!!」

 

「「ゆ゛る゛ざ゛ん゛っ゛!!」」

 

総勢13人の怪人に囲まれた挙句、イナゴ怪人1号と2号、そしてBLACKとRXの死刑宣告を受けて、ゲジマユマンは恐怖に震えた。ヒーロー達と相対する事は想定していても、明らかに画風の異なる怪人達に取り囲まれるなど、想像する事さえ出来なかったのだろう。

 

「う、動くな! こっちには人質がいるんだぞ!」

 

「そうか。ならば……」

 

「GODAAAAA!!」

 

「へっ!?」

 

「来いッ!!」

 

「えッ!?」

 

「オラァッ!!」

 

「はいっ!?」

 

俺はゲジマユメイドの出久を、イナゴ怪人Xがネコ耳メイドの峰田を、そしてイナゴ怪人ストロンガーがメイドガイの砂藤を拘束した。それから俺は何処からとも無くやたらとゴツイ拳銃を、イナゴ怪人XはBBQの金串を、イナゴ怪人ストロンガーは魔改造が施されたスタンガンを取り出し、それぞれが取り出したものを三人に突きつけた。

 

「え!? ちょ、何をやって……」

 

「動くな!! 少しでも抵抗すれば、貴様の同士達の……命は無いッッ!!!」

 

「は、はぁああああああああああああああああああああああああああッッ!?!?」

 

そう! イナゴ怪人1号の提案した作戦とは、まさかの人質交換作戦ッ!! しかも中身は味方を用いたフェイクッ!! 一手で人質の解放とヴィランの確保を狙うと言う、恐るべき作戦だ。

傍から見れば完全にヒーローにあるまじき所業なのだが、この作戦の効果は予想を超えて絶大で、ゲジマユマンは明らかに混乱していた。

 

それにしても、BBQの金串を舌で舐めるイナゴ怪人Xと、スタンガンから電気をバチバチ放電しているイナゴ怪人ストロンガーの姿は、どこからどう見てもヴィランそのものだ。はっきり言って人質を取る姿が、ゲジマユマンの1000倍は似合っている。

……まあ、やたらとゴツイ拳銃の銃口を出久のこめかみに突きつけている俺も、人の事は言えないのだが。

 

「さあ、潔く降伏しろぉ!! さもなくば、一人ずつ仲間が死ぬぞぉおおおッ!!」

 

「た、助けてくれぇエエエエエエエエエエエエエエエエエ!! コイツ等は本気だァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「ま、まだ死にたくねぇよおーーーーーーッ!!」

 

「み、見捨てないでーーーーーーーーー(棒読み)」

 

何時の間にかライフルを持っているイナゴ怪人2号がゲジマユマンを脅し、人質に取られた三人はゲジマユマンに向かって命乞いを開始した。砂藤は普通だが、出久は相変わらず大根役者で、峰田は演技とは思えない位にガチで泣き叫んでいた。……いや、もしかして峰田は本当に命乞いをしているのか?

 

一方のゲジマユマンだが、もはや目も当てられない位に狼狽していた。無理も無い。こんな展開になれば誰だってそーなる。俺だってそーなる。そしてこれだけ隙だらけならば、ワザワザ人質を交換する必要は無い。つまり……。

 

「ふんっ! 掛かったな、ヴァカめッ!! ソイツ等はニセモノだぁーーーーーッッ!!」

 

「へッ!? ハッ!? ファアッッ!?」

 

「今だ! 掛かれぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

『WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!』

 

こっそりと背後から接近していたイナゴ怪人ゼクロスが、隙を突いてゲジマユマンを羽交い絞めにし、その直後に11人のイナゴ怪人が、ゲジマユマンへ雄叫びを上げて殺到する。瞬く間にゲジマユマンはイナゴ怪人達に取り囲まれ、成す術も無く袋叩きにされた。

 

しかし、イナゴ怪人達の中から、天に向かって助けを求めるように伸ばされたゲジマユマンの右手が、イナゴ怪人達の中に徐々に沈んでいくのを見ると、その光景は“怪人によるリンチ”と言うより、“新鮮な血肉を求める怪物の群れに襲われている”ように見える。

取り敢えず「許さんッ!」と言いながら蹴りを入れるBLACKとRXには、「もう許してやれよ……」と思わずにはいられない。

 

……まあ、人質は無傷で救出できた事だし、これで事件は終息するだろう。しかし、人質に取られた女性は腰が抜けているのか、その場に座り込んで震えていた。

 

それを見た時、俺はオールマイトが先代より受けたと言う教えを思い出した。

 

ヒーローとは危機に陥った人々の体と心を救い出す存在。だからこそ、ヒーローはどんなピンチでも笑顔を浮べ、「自分は大丈夫だ」とアピールして人々を安心させなければならない。

 

ならば、俺がそれをやらない道理は無い。俺は女性を元気付ける為、全力全開の笑顔を浮かべて女性に近づいた。

 

「GYUUVAIDOO! VAADYIGA……」

 

「ぎぃやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」

 

「WOVI……」

 

「た゛れ゛か゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!! た゛す゛け゛て゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ッ!!!」

 

「………」

 

俺の満面の笑顔を見た女性は、命を燃やすが如き絶叫で周囲に助けを求め、恐怖と絶望の涙に彩られた顔をグシャグシャに歪ませた。俺は笑顔のままで泣きそうだった。

 

 

●●●

 

 

その後、ゲジマユマンは警察に連行された。連行される前にミッドナイト先生に諭されたゲジマユマンは、ミッドナイト先生、出久、砂籐の姿を見てから涙目で笑顔を浮かべていた。その表情からは何かしらの決意の様なモノを感じるのだが、何となく失礼な事を考えている様な気がする。

一方の錯乱状態に陥っていた人質の女性だが、此方はずっと叫びまくっていた為、ミッドナイト先生が“個性”で強制的に眠らせて落ち着かせた。

 

冷静に考えれば13人の怪人に取り囲まれたのはゲジマユマンだけではなく、人質の女性にとってもそうだったのである。実際に女性は目を醒ましてからの取調べに対して「ヴィランに襲われたと思ったら、もっとヤバそうなヴィランの軍団が自分を取り囲んでいた」と語ったらしい。チクショウ。

また、俺が最後に見せた『ホッパー・スマイル』も不味かったらしい。あの時に俺が見せた全力の笑顔は、どう贔屓目に見ても「悪事を働きご満悦なヴィラン」にしか見えなかったと言う。ドチクショウ。

 

そんな訳で俺は若干不貞腐れた心境でHRを過ごし、今日はもう寮でゆっくり休んでしまおうと思っていた所、ふと相澤先生が思い出したかの様にこんな事を言った。

 

「そうそう。今日はバレンタインって事で、色んな所からプレゼントがお前等に送られてきてる。プレゼントは既に各人の寮の自室に運び込まれているから、ちゃんと確認しておけよ」

 

『!?』

 

何……だと……? つまり、どう言う事なんだってばよ!?

 

「色んな所って言うと、どんな所からですか?」

 

「お世話になったヒーロー事務所や、雄英体育祭なんかでファンになった一般人からだ。危険物かどうかは既に検査済みだから、そこの所は安心していいぞ」

 

明らかに教室の雰囲気が変わった。なるほど。言われて見れば『雄英体育祭』はオリンピックに代わるモノとして全国のお茶の間に流されているのだから、そうした事も有り得るのか。

 

いずれにせよ、この降って湧いたような予期せぬ展開に、持たざる男子達は最後の希望を見出し、相澤先生が教室を去った後、迅速に帰る準備を始めた。

 

「ふふふ……勝負はまだ分からなくなったなぁ、呉島ぁ……」

 

背後から掛けられた不気味な声に振り向いてみると、そこには峰田が不敵な笑みを浮かべて立っていた。その敵意丸出しの眼差しから察するに、俺はどうやらチョコを貰った事で敵だと認識されているらしい。

 

「ふぅ。哀れだな。『エロ怪人グレープ・チェリー』よ」

 

「あ゛あ゛ッ゛!?」

 

「下ではなく上を、そして周りをよく見て自分を知れ。……いや、お前は既に知っている筈だ。仮免を取得し、幾らクラスのヒエラルキーで上回ったとしても、お前が女子の好感度で『半分こ怪人W』に勝つ事は到底不可能だ」

 

「ぐわぁああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」

 

何故か教室に現れたイナゴ怪人2号の言葉に、峰田は胸を押さえて苦しみ出した。確かに「女にモテて女体に触りたい」と言う欲望のオーラを、常日頃から洪水の様に全身から垂れ流してセクハラを働いている峰田が、轟以上にモテモテになってチョコを貰う所なんて、想像する事さえ不可能だ。

 

「諦めろ。お前が栄光を手にする事は無い。決して! お前に未来は無いのだ!」

 

「う、うるせえぇぇええええええええええええええええええええええええええッ!!」

 

「「!?」」

 

「明日にはそんな事は二度と言わせねぇ! 誰にも舐めた口は聞かせねぇ!! 俺は、俺はッ! 非モテを超えるんだぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」

 

峰田はどう考えても死亡フラグにしか聞こえない台詞をのたまいながら、涙ながらに教室を走り去った。……心配だな。色んな意味で。

 

 

●●●

 

 

俺が寮の自室へと戻ると、部屋の中でイナゴ怪人達が勝手に俺宛の包みを開けており、プレゼントの中身を物色していた。殺意が若干芽生えたが、ここはぐっと堪えておくか。

 

「……お前等、何をやっている?」

 

「決まっているだろう。この中に『暗黒結社ゴルゴム』に相応しい、有能な怪人がいないか物色しているのだ」

 

「1号よ、この怪人蜂女などはどうだ?」

 

「いやいや、この怪人紅薔薇女も見所がありそうだぞ?」

 

「………」

 

この野朗と思いつつ、開封済みの箱から取り出されただろう手紙や写真に眼を通してみる。手紙を見ると雄英体育祭でファンになったタイプが多い様だが、写真を見るとファンになったのは異形系の“個性”持ちが多い……と言うより、むしろ異形系しか居ないような気がする。

まあ、さっと手紙をみると、俺の活躍を見て「生きる勇気が湧いた」とか、「以前よりも前向きになれた」とか書かれているので、体育祭で頑張った甲斐はあったのだろう。

 

「……あ、そう言えば、出久のおばさんと、勝己のおばさんのはあったか?」

 

「あったぞ。コレだ」

 

そう言って手紙と写真を物色していたイナゴ怪人1号が、俺に二つの包みを渡してきた。重い話になるので皆の前では言わないでいたが、母親のいない俺は毎年、出久ママと勝己ママの二人からチョコレートを貰っているのだ。

ちなみに俺が生まれて初めてチョコレートを貰った相手は、ぽっちゃり体型になる前のスリムな出久ママである。

 

「『Mt.レディ』と『ワイルド・ワイルド・プッシー・キャッツ』からも来ているぞ。喜べ」

 

「……何でコレ等は無傷なんだ?」

 

「『暗黒結社ゴルゴム』に入りそうに無いからだ」

 

「……そうか」

 

「む!? 見ろ1号!! 此方にも蜂女が居るぞ!!」

 

「おお! しかも、姿が此方の蜂女とは全く違う!!」

 

「………」

 

俺は人材発掘に余念が無いイナゴ怪人達を放置し、四つの包みの一つを丁寧に開いた。先ずは例年通りに出久ママから。今年は生チョコトリュフか。

 

「……うん。美味い」

 

疲れた体に甘さが染みる。俺はしみじみと「今年のホワイトデーのお返しは去年よりも頑張ろう」と決心した。

 

 

●●●

 

 

翌日。予想通りに峰田は真っ白な灰になっていた。分かりきっていた事だが、非モテを超える事は、そう簡単な事では無いのだ。




キャラクタァ~紹介&解説

呉島新
 今年は『雄英体育祭』での活躍によって、全国に点在する女性怪人的な異形系の“個性”持ちの方々からチョコレートを貰った。本人は雄英の女子生徒とはそれなりにフラグが立っていたと思っていたのが、結局其方からは誰からも貰えなかった。まあ、それはデク君達も同じだったが。

緑谷出久
 今回の話は『すまっしゅ!!』が元ネタである為、メイド服を着ていた事によってヴィランに仲間だと勘違いされた。イナゴ怪人1号の策略によってフェイクの人質に選ばれるが、彼等の意図にはいち早く気付いていた。

イナゴ怪人(1号~RX)
 やる事なす事がエゲツナイ怪人達。この時間軸では最大数の12人に増えており、本編に先駆けて一部のイナゴ怪人達を先行登場させてみた次第。そしてシンさんの将来の為に、様々な“個性”(特に異形系)を持った人材発掘に余念が無い。だからと言って、別に「『ゴルゴム』のメンバーは必ず異形系でなければならない」と言うルールは無いのだが。

万偶数羽生子
 中学時代からの梅雨ちゃんの友達。『デルザー軍団』のメンバーではない。雄英体育祭において、ありとあらゆる意味で大暴れした怪人バッタ男とイナゴ怪人達に興味津々……と言う設定。今後の展開によっては割と美味しいポジションに納まる可能性を秘めている。

羽生子「シャドウ様の御命令なら、なんなりと……」
シンさん「………」

ゲジマユマン
 今回の加害者にして被害者。『すまっしゅ!!』に登場するヴィランで、作者の気まぐれにより元ネタよりも酷い結末を迎えてしまった悲劇の男。しかし、『序章』のヘドロマン然り、『USJ編』の電気ヴィラン然り、この世界ではシンさんが関った結果、より酷い結末を迎えるヴィランはそう珍しくない。

Mt.レディ&ワイルド・ワイルド・プッシー・キャッツ
 どちらも本編における『職場体験編』と『林間合宿編』。そして『オールマイトVSオール・フォー・ワン』で、重要なポジションに位置する予定のヒーロー。あくまで予定だが、作者は原作以上の見せ場を用意するつもりでいる。



イナゴ怪人の呼び方
 基本的にイナゴ怪人は人間を「怪人○○」と呼んでおり、本名やヒーロー名で呼ばれる人間の方が少ない。『半分こ怪人W』は言わずもがなだが、『怪人セロファン・バイシコー』は第4話の「キャラクタァ~紹介&解説」を見てくれれば分かるだろう。
 ちなみに峰田は「グレープ」で「チェリー」と言う事で、『鎧武』の闇堕ち系腹黒お坊ちゃまと、チンピラヤクザな錠前ディーラーのコンビを髣髴とさせる名前になった為、この時点でオチが分かった読者もそれなりにいたと思う。

イナゴ怪人1号の作戦
 元ネタは『ストロンガー』の最終話の人質作戦と、『アギト』本編のアナザーアギトが行った人質作戦。アナザーシンさんが取り出した「やたらとゴツイ拳銃」は、仮面ライダーG3の「GM-01スコーピオン」を想像して貰えばOK。そして、アナザーシンさんは喋れないので、イナゴ怪人1号が代弁する形になった。

13人の怪人軍団
 元ネタは『13人の仮面ライダー』。実はこの時間軸では『仮面ライダー THE NEXT』の「ショッカーライダー」的な「イナゴ怪人用コスチューム」も存在しているのだが、今回の場合はその中身を剥き出しにして活動させてみた次第。結果はアレだが、書いてて面白かった事は否定出来ない。

ホッパー・スマイル
 シンさんの新たなる必殺技。“個性”を使った主人公が満面の笑みを浮かべるだけだが、元々「笑う」とは攻撃的なものであり、シンさんがこの技で人を笑わせる事は無いと思われる。笑わせたい人を未だに笑わせることが出来ない。ヘタクソな……道化さ……。

暗黒結社ゴルゴム
 シンさんを頂点とするヒーロー事務所(仮)。発案者はイナゴ怪人BLACK。どう考えてもヴィランの軍団にしか聞こえない名前だが、今後の『THE FIRST』における主人公の最終形態(予定)や、ゴルゴム怪人の命名法則を考えれば、事務所の名前はコレで全く問題無い。
 元ネタは勿論『仮面ライダーBLACK』の敵組織「暗黒結社ゴルゴム」。但しこの世界ではヒーロー事務所の名前なので、ヴィランが「ゴルゴムの仕業だ!」と言ったり、ヒーローや一般市民が「ゴルゴムのお蔭だ!」と言ったりする。自分で書いて何だけど、かなりカオスな世界だなぁ、オイ。

黒霧「脳無を生産する秘密の施設が壊滅しました!!」
荼毘「ゴルゴムの仕業か!?」
死柄木「おのれ、ゴルゴムゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!」
トゥワイス「許さんッ! いや、許せるッ!!」



あとがき

これにて、今回の時事ネタを使った番外編は終了です。

ちなみに、作者はコレを一通り書いてから『THE FIRST』は原作11巻の「オールマイトVSオール・フォー・ワン」の時間軸で終わらせようと考えていた事を思い出し、「正確には『THE FIRST』の番外編ではない」と言う事に気が付いてしまった……。まあ、だからどうだって話なのですが。

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