怪人バッタ男 THE FIRST   作:トライアルドーパント

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大変お待たせしました。現実世界の事情と、読者サービスを意識して推敲を重ねた結果、予定よりも随分遅れてしまいましたが、今話と次話の投稿で『怪人バッタ男 THE FIRST』は完結となります。

今回のタイトルは『新 仮面ライダーSPIRITS』の「独善する者達」から。それぞれの正義を胸に、誰もがきっと戦い続けている。


第36.5話⑤ 独善する者達

新がコントロールルームで口にした予測は、警備システムの再変更を担当するメリッサの作業効率に大きな影響を与えたものの、ヴィランによって変更された警備システムはメリッサの手で正常に戻り、出久、麗日、メリッサの三人は、デヴィット・シールド博士と助手のサムが作業を続けている保管室に向かって走った。

 

「ああ、遂に取り戻した。この装置と研究データだけは、誰にも渡さない……渡すものか……ッ!」

 

「プラン通りですね。ヴィラン達もうまくやっているみたいです」

 

「有り難う。ヴィランを手配してくれた君のお陰だ。サム……」

 

しかし、ひたすらに父親と知人の無実を、二人の正義を信じていたメリッサを待ち受けていたのは、彼等の自白と言う決定的な証拠だった。

 

「……パパ……」

 

「メ、メリッサ!?」

 

「お嬢さん!? どうして此処に!?」

 

「……『手配した』って何?」

 

「………」

 

「本当に……二人がヴィランを侵入させた、内通者なの?」

 

「!? ど、どう言う事だ、メリッサ?」

 

「……デク君のお友達が言ってたの。ヴィランの行動は、I・アイランド側に内通者が居ないと成り立たないって……ヴィランがパパ達に見張りを付けないのはおかしいって……だから、二人が内通者の可能性が高いって……」

 

「……そうか。鋭い指摘だな……いや、悪い事は出来ないと言う事か……」

 

「なんで!? どうして!? まさか、お金が目的でこんな事を……!」

 

「違う! 私はただ、奪われた発明を取り戻したかっただけなんだ! この機械的に“個性”を増幅させる、この装置を!!」

 

娘に犯行動機を問い詰められ、父は声を荒げてこの事件を計画した目的を説明した。父と娘は必死だった。そして、出久と麗日は博士の言動に注視していた為、博士の後ろで助手が青ざめた顔で驚愕の表情を浮かべている事に気が付かなかった。

 

「“個性”の、増幅……?」

 

「ああ……まだ試作段階だが、所謂“個性”をブーストさせる薬等とは違い、人体に悪影響を与える事無く“個性”を増幅させる事が出来る。尤も、この発明と研究データはスポンサーによって没収され、研究そのものも凍結させられてしまったんだがね……」

 

「……そんな発明と研究が世間に公表されれば、“個性”で成り立つ超人社会の構造そのものが激変してしまうから……ですね?」

 

「そうだ。そして、それを懸念した各国政府は、私に圧力を掛けた。結果、何とか研究を続けようとする私に協力する団体も、新しいスポンサーも見つからず、研究員の仲間は私のラボから次々に去って行った。今や残っているのは、私とサムの二人だけだ」

 

博士の口から語られた、博士の輝かしい栄光と世間的評価の裏側は、それを黙って聞く娘と少年少女に小さくない衝撃を与えた。

何せ『I・エキスポ』で展示される最新のヒーローアイテムの殆どは、博士が発明した特許を元に作られている。そんな大人物のラボの実体が、既に未来を閉ざされた、朽ち果てるのを待つだけのモノに成り果てていた等、とてもでは無いが考えられない事だった。

 

「研究を取り戻す……その為に、パパはこんな事をしたの?」

 

「……いや、研究を取り戻すのは、あくまでも過程だ。私の目的はその先にある」

 

「それは……何?」

 

「……オールマイトの為だ。お前達は知らないだろうが、オールマイトの“個性”は消えかけている」

 

「!!」

 

博士の絞り出す様な声色で告げられた内容に、出久はこれ以上無い程に愕然とした。無線通信によって博士との会話をクラスメイトにも聞かれている状況の中、無線のスイッチを切る事が頭から消えてしまう程に仰天した。

 

博士と対面する前、オールマイトは「博士には『ワン・フォー・オール』について教えていない」と言っていたが、博士は“個性”研究においては右に出る者は居ない権威である。

例え『ワン・フォー・オール』の詳細を一切知らなかったとしても、博士の頭脳ならば検査で得られた諸々のデータから、『ワン・フォー・オール』の秘密の一端に触れる可能性は充分に考えられた筈だった。

 

――そして、それを知った博士が、それを何とかしようと何らかの手段を考え、実行するだろうと言う事も……。

 

「(僕が『ワン・フォー・オール』を受け継いだから……オールマイトの力が失われている事を憂いて博士は……)」

 

「だが、私の装置があれば元に戻せる! いや、それ以上の能力を彼に与える事が出来る! №1ヒーローが、平和の象徴が、再び力を取り戻す事が出来る! また多くの人達を救ける事が出来るんだ!! 頼む! オールマイトにこの装置を渡させてくれ! もう作り直している時間は無いんだ! その後でなら、私はどんな罰でも……うん? 何だこの感触は?」

 

「それは……オイラのグレープボールだ」

 

「へ……?」

それは、何時の間に其処に居たのか? どうやってケースの中に入ったのか? どうして言われるまで気がつかなかったのか?

 

博士が視線を下げると、そこには博士の頭に浮かんだ数々の疑問を一気に吹っ飛ばすような、パンティを被った無駄にハイレベルな変態がケースの中に鎮座していた。ちなみにケースから装置を取り出そうとした博士の右手は、変態の股間を鷲掴みにしている。

 

「い、いやぁああああああああああああああああああああ!? な、何なんだ君はぁーーーーーーッ!?」

 

「話は全て聞かせて貰った。成る程、良い話だ。実に感動的だ。それで、その装置の次はどうするのだ?」

 

パーティー会場に出現したヴィランとは明らかにベクトルの違うヴィランな姿の正義の変態に絶叫し、右手をプラプラさせる博士に対し、変態ブドウと化した峰田は無駄に大物っぽい堂々とした態度で博士に話しかける。問われた博士は変態ブドウの質問の意図が分からず、怪訝な表情を浮かべた。

 

「次……? 次とは、なんの事だ?」

 

「衰えた“個性”を増幅させたら、次は何だと聞いているのだ。筋力が衰えたからと、人工的に培養された筋肉と交換するのか? 骨密度が低下したからと、次は鋼で出来た文字通りの鉄骨と入れ替えるのか? 脳が限界を迎えそうだからと、オールマイトの知識や記憶を入力した電子頭脳を移植するのか?」

 

「………」

 

変態ブドウの指摘に博士は絶句し、自身の視野狭窄を自覚した。オールマイトの“個性数値”の異様な減退にばかり目を向けていたが、“個性”を支える土台となるのは肉体であり頭脳である。幾ら“個性”を機械的に増幅させようと、その力を受け止めてコントロール出来るだけの器がなければ意味は無い。

 

――ならば、オール・フォー・ワンとの戦いにより憔悴しきった今のオールマイトの肉体は、増幅された“個性”に耐える事が出来る様なモノだろうか?

 

仮に、オールマイトの“個性”を自身の発明で増幅させたとして、それでもオールマイトが自分の思い通りに力を取り戻す事が叶わなかったなら、自分は次にソレを思いつくのではないだろうか?

 

そんな未来を考えた博士の胸に去来したのは、歓喜では無く恐怖だった。自分が世界の平和の為に、世界に必要なヒーローを無くさない為に、何より憧れたヒーローであり親友でもある人物の為にと思ってやった事は、オールマイトを別のナニカに変えてしまう事なのではないか……と。

 

「……私は……」

 

「気にする事は無い。これからアンタがやる事は何も変わらん」

 

絶望に苛まれ、混乱する博士の言葉を遮ったのは、赤と白を基調としたスポーツカーを彷彿とさせるデザインのコスチュームを身に纏った一人の男。その手にはバッタを模したヘルメットが握られている。

 

「あいつは――!」

 

「それ、シン君の……!」

 

男の言葉と所有物からヴィランであると判断し、出久が全身に『ワン・フォー・オール』の力を行き渡らせ、麗日が迎撃態勢を取るが、次の瞬間には男の姿がブレ、目にも止まらぬ高速から繰り出された衝撃が二人を襲った。

出久と麗日は壁に叩きつけられ、痛みを堪えながら態勢を立て直そうとするが、手すりが生き物の様に絡みつき、身動きを封じられた。唯一、変態ブドウと化した峰田だけが、アーマーを纏ったウォルフラムの動きに対応する事が出来ている。

 

「デク君! 麗日さん!」

 

「(う、動けへん……)」

 

「(『高速移動』に『金属の操作』……轟君みたいな複合“個性”? いや、金属を操作する前、奴は扉に直接触れていた。なら、『金属の操作』が“個性”で、『高速移動』はコスチュームの機能か?)」

 

「何だ……? 何故お前はこの動きについてこれる?」

 

「決まっている。正義は変態の味方ではないが、変態は正義の味方だからだ!」

 

明らかにコッチ寄りの人間の格好をした、謎の変態理論を振りかざす峰田にウォルフラムは訝しむが、峰田がウォルフラムの動きに対応出来るのは、ちゃんとした理由があった。

 

――ズバリ、峰田が装着しているパンティが、発目から提供された脱ぎたてホカホカのパンティだからである。

 

より詳しく説明するのであれば、峰田の心肺機能は異常な興奮状態によって著しく上昇し、パンティ越しに行う独特の呼吸が一度に大量の酸素を血中に取り込ませる効果を発揮した事で、峰田の身体能力が爆発的に上昇していた事が一つ。

そして、『正義の変態』として一つ上の領域に至った事で、峰田の頭の中から無駄な思考が削がれ、高速で動き回るウォルフラムの動きを瞬時に見切り、それに最も適した動きを最小限で繰り出す事が出来る様になっていたのである。

 

しかし、そんな事をウォルフラムは知る由も無いし、知りたくも無い。問題なのは、相手が想像以上に面倒なポテンシャルを秘めた変態だと言う事である。

この変態を無力化する一番手っ取り早い手段として人質を取ろうにも、この変態の身体能力ならば一瞬でも視線を外せばその隙を突かれ、敗北するかも知れないとウォルフラムは思った。

 

――故に、ウォルフラムは更なる力を以て、この変態を真っ向から叩き潰す事を選択した。

 

「フォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

「チィ……サム! 装置を!」

 

「こ、これを!」

 

変態ブドウが投げつける無数のグレープボールに対し、アーマーから射出されるミニカーで迎撃するウォルフラムの怒声を聞き、サムは博士から“個性”の増幅装置を奪うと、ウォルフラムに向かって増幅装置を放り投げた。

 

「サム!? まさか……装置を最初からヴィランに渡すつもりで……!?」

 

「だ、騙したのは貴方ですよ。長年、貴方に仕えてきたと言うのに、あっさりと研究は凍結。手に入れる筈だった名誉、名声、全て失ってしまった……せめて、お金位は貰わないと割に合いません……!」

 

長年の仲間が吐露した心の内と、突然の裏切りに呆然とする博士を余所に、ウォルフラムは脱ぎ捨てたアーマーを操り人形に変えて変態ブドウにぶつけ、額に“個性”の増幅装置を装着した。

 

「!! 流石、デヴィット・シールドの作品……! 分かるぞ、“個性”が活性化していくのが分かる! 良いぞコレは! 良い装置だ! ハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

『GAIM』

 

体から際限なく湧き上がる強大なエネルギーを感じ、新たな鎧を装着したウォルフラムが歓喜の声を上げると、ウォルフラムの足元から放たれた青い光が建物を走った。

すると床が、壁が、天井が見る見る内に崩れていき、鉄板、コード、パイプと言った金属を内包する様々な物体が、ウォルフラムの元へ引き寄せられていく。

 

「ぬおっ!?」

 

「パパ! きゃあっ!!」

 

「こんのぉおおおおおおおおおおおお!!」

 

「フォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

博士とメリッサの足元が崩れ、金属の流動に呑み込まれそうになる寸前、出久が渾身の力で無理矢理に拘束を解くとメリッサを、変態ブドウが身体能力と“個性”を駆使して博士を救出する。

 

「な、何を……」

 

「約束の謝礼だ……!」

 

『OOO』

 

一方、博士の装置によって増幅された“個性”は金属に生命の如き脈動を与え、ウォルフラムを巨大な華の中心に座する天魔へと至らせた。巨大な機械仕掛けの菩提樹とでも言うべき異形の植物と下半身が融合した血塗れの鎧武者は、自身が操るコードによって拘束したサムを引き寄せると、困惑するサムの胸に起動したサポートアイテムを押しつける。

 

「ぐ、ああああああああああ!? な、何故!? 約束が違う……!!」

 

「約束? 忘れたな。さあ、お前達もだ」

 

激痛と恐怖に悲鳴を上げたサムを嘲笑いながら、ウォルフラムは更に呪縛と祝福を与えるべく、無数のコードを操った。それに捕らわれたのは、コントロールルームで麗日が気絶させたヴィラン2人と、非常階段からコントロールルームに向かう途中で新が無力化した2人のヴィラン。そして、脱出を試みて足掻く麗日の計5人。

 

「「麗日さん!」」

 

「んんん~~~~~! 離せぇ~~~~~~!」

 

「さあ、ショータイムだ」

 

『BUILD』

 

『EX-AID』

 

『φ's』

 

『FOURZE』

 

『WIZARD』

 

次々に起動するサポートアイテムによって彼等の体は金属のアーマーに覆われ、ウォルフラムの増幅された“個性”の影響でその姿は生々しくも禍々しい異形の魔物へと変わっていく。

 

「これが、博士の……」

 

「パパが造った装置の力……」

 

「RUWHOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

 

ウォルフラムが操る力の余りの強大さに畏怖する出久とメリッサ。そんな中、人のモノとは思えぬ絶叫と共に現われたのは、全長3メートルはあろうかと言う一匹の巨大なバッタ。

その触角からは緑色の電気を絶えず放出し、前足は異様に発達した筋肉で肥大化し、5本の指を持つ手と足でコンクリートに爪を立ててその巨体を支え、血に濡れた口の奥に見えかくれする白い歯は人間のソレと同じ構造をしていた。

 

「あっちゃん……?」

 

「ほう、まだ生きてやがったのか……まあいい。装置の値をより吊り上げる為の、デモンストレーションといこうかッ!!」

 

「WWWWWWNNNNNNNOOOOOOOOOOOOOO!!」

 

「! 峰田君!」

 

「うむ!」

 

「おっと」

 

その正体を看破した出久を余所に、甚大なダメージを負い、人から大きく外れた姿になっても戦う事を止めない新は、ウォルフラム目がけて飛びかかる。

しかし、ウォルフラムは臆する所か薄ら笑いを浮かべながら2体の魔物を差し向け、自身も増幅された“個性”で作り出した鉄柱や鉄塊で新を攻撃する。

 

それを見て新のサポートに回ろうとする出久と峰田だが、ウォルフラムが博士を確保するべく向かわせた4体の魔物によって、新の手助けをする所か、博士とメリッサをこの場から逃がす事もままならなくなってしまう。

 

「ぐっ、クソッ!!」

 

「全く、ヒーローってのは不自由だよなぁ。守る奴が居るってだけで、身動きが取れなくなっちまう」

 

「RRRWWWWOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

 

一方、巨大なバッタと化した新は、薬物によって強制的に増幅された“個性”のパワーに任せ、悪の華を咲かせたウォルフラムに突撃し続けていた。

それはまるで本能に突き動かさせた様な行動に見えるが、魔物達を操るウォルフラムを倒せば全ては解決する為、本体狙いと言うのは戦法としては間違いではない。

 

しかし、ウォルフラムからすれば今の新の動きは非常に読みやすく、肉体が大きくなった事もあって「当てやすい動く的」と言って良い状態だった。

 

「どっちにしろ、利口な生き方じゃない。お前もな」

 

「GGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

ウォルフラムは飛びかかる新の動きを予測してワイヤーで容易く絡め取ると、四方八方から四角形の鉄塊を次々と新にぶつけ、新をあっと言う間に封じ込めてしまった。

 

「呉島ぁ!!」

 

「クソ……ッ! チクショウ……ッ!!」

 

「残るはお前等だ。博士を此方に寄こせ。ソイツには俺の為に、この装置を量産して貰わなきゃいけないんでなぁ」

 

「悪いがそう言う訳にはいかないな! 何故って!?」

 

しかし、タワーの中から弾丸の様に飛び出した何かが、鉄塊を粉砕して閉じ込められていた新を救出する。巨大なバッタを背負うのは、筋骨隆々とした肉体美を誇る一人の男。

 

「私が来たッ!!」

 

「オールマイト……!」

 

「こう言う時こそ笑え、緑谷少年! どんな時でも、笑っているヒーローが一番強いものさ!」

 

出久が世界で一番頼もしいと思う声で語られたオールマイトの信条は、凄まじいまでの説得力を備えていた。確かに笑っているオールマイトほど、心強いと思わせるヒーローはいない。

 

「さあ、観念して貰うぞ! ヴィランよ!」

 

「観念しろ? そりゃお前だ。オールマイト!」

 

 

●●●

 

 

高層ビルから叩き落され、抗いがたい熱さと痛みに耐えて傷が治癒した時、俺の肉体はコレまでとは全く異なるベクトルの変貌を遂げていた。

 

世間一般で『異形系』と呼ばれる“個性”を持つ者達は、文字通り通常の人間とは異なる姿形をしているのだが、それでも大半は人間をベースとした“人型”であり、狼男の様な「人間と動物のハーフ」とでも言うべき姿をしている。

かく言う俺もそんな人型の異形系“個性”を生まれ持ち、人間とバッタのキメラとでも言うべき姿をしている。そして、これまでの“個性”の成長と進化によって様々な姿と能力を獲得してきたが、それでも“人型”の域を出た事は無かった。

 

しかし、今回は違う。さっき撃ち込まれた“個性”を強制的に、そして極端に増幅させる薬によるものだろう、俺の肉体は人型から大きく離れていた。それはバッタ人間などではなく、殆どバッタそのものと言って良い、人間よりも“個性”の側に寄った姿になっていた。

 

「AAAAA……GGGG……」

 

血で赤く染まったコンクリートに這いつくばり、ふと空を見上げれば轟音と共にビルの上部が崩壊し、珍妙な鋼鉄の植物が莫大な悪意と言うエネルギーをこれでもかと垂れ流していた。

 

ふと、近くに小さな時計の様なモノが落ちている事に気付いたが、それがヴィランの親玉が使っていたサポートアイテムだと理解するのに、そう時間は掛からなかった。

きっとドサクサに紛れて一つ落としたのだろうと結論づけ、それを拾ってポケットにしまうと、細胞の一つ一つが小さな太陽になったかの様な体の熱さを無視し、激痛が走る慣れない体を動かして戦場へと向かう。

 

流石に一足飛びにとは行かず、壁に爪を立てて張り付き、何とか六本の手足を駆使して登り切った先で俺を待っていたのは、金属で出来た歪な大樹と、大輪の華に座した異形の鎧武者。それに付き従う6人の配下もまた異形であり、彼等と相対する出久と峰田の後ろには、メリッサさんとデヴィット・シールド博士がへたり込んでいた。

 

「ほう、まだ生きてやがったのか……まあいい。装置の値をより吊り上げる為の、デモンストレーションといこうかッ!!」

 

「WWWWWWNNNNNNNOOOOOOOOOOOOOO!!」

 

高熱で朦朧とする意識の中、今の自分に出来る最適解を思考する。最優先するべきは、非戦闘員であるメリッサさんとデヴィット・シールド博士をこの場から退避させる事。ヴィランの意識が俺に集中しているのなら、俺がしぶとく足掻けば足掻くほど、二人をこの場から逃がす事が出来る確率は高まる筈……つまりは、囮だ。

 

「RRRWWWWOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

 

かくして、出久と峰田がメリッサさんと博士を連れて脱出する隙を造る為、そしてあわよくばヴィランの親玉を戦闘不能に追い込もうと行動するが、この体では複雑な動きは難しく、直線的な動きをするのが精一杯で、ヴィランの攻撃を回避する事もままならない。

その上、出久と峰田はそんな覚束ない俺をサポートしようしているのかその場に留まり、ヴィランの親玉は博士とメリッサさんに対してマリオネットを宛がい、この場からの脱出を困難にしていた。

 

「どっちにしろ、利口な生き方じゃない。お前もな」

 

「GGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

結局、俺はより強大な力を得たヴィランの親玉に、手も足も出ないまま敗北した。オールマイトが来なければ、そのまま止めを刺されていただろう。

 

「ウォオオオオオオオオッ!! 此処は俺が引き受けるぅうううううううッ!!」

 

「気をつけろ、爆豪! あの中の一人は麗日だ!」

 

「うっせぇ!! 要はあのクソだせぇヴィランをぶっ飛ばしゃ良いんだろッ!!」

 

そして今、身動きの取れない俺は駆けつけたクラスメイトによって守られていた。

 

切島は俺に大ダメージを与えたロケットマンを相手に、全身を硬化させて踏ん張り、文字通りその身を粉にして押さえ込んでいる。

 

轟は氷壁を作り出す事でヴィランの攻撃を防ぐ盾とし、遠距離攻撃が届かない様にしているが、その体の右半分は満遍なく霜がおりていた。

 

勝己は善くも悪くも何時も通りで、ウォルフラムさえ倒せば事は終わると理解して動いているが、流石に連戦した状態での多対一戦闘はキツイのか、明らかに爆破の威力が落ちている。

 

「八百万君! 此処を頼むぞ!」

 

「はい! 耳朗さんと上鳴さんも手伝って下さい!」

 

飯田は高速移動によって勢いと破壊力が増した蹴りを繰り出し善戦しているが、如何せん足場が悪い所為か、何時もより移動も攻撃も大雑把になっている。

 

八百万と耳郎、それに上鳴はメリッサさんと博士を守る為のバリケードを作り、俺もまたその中に居た。

 

何となく、春に『敵連合』が起こしたUSJ襲撃事件を思い出す状況だ。いよいよ意識を保つのが至難になる中、「やれるだけやったんだからな」と言う誘惑と、「まだ諦める訳にはいかない」と言う信念が混濁していた。

普段の俺らしくなく、「もう楽になりたい」と思う程に、この肉体は苦痛に悲鳴を上げ続けている。生まれ持った“個性”が体を何とかしようとすればする程に、痛みは加速度的に増していった。

 

「ぬううう……ガハッ!!」

 

「オールマイト!!」

 

「ヌアアアア……パンティが破れて力が抜けるぅううう……!」

 

――だが、限界を超えているのは、何も俺だけじゃない。ひとまず、この発熱し続ける体を何とかして冷やしたい所だが……。

 

「キャアッ!!」

 

「え!? 何!? 轟が何かした!?」

 

「いや、俺は何もやってねぇぞ……」

 

そう思った瞬間、俺の体は瞬時に氷に覆われた。イカン、イカンぞ。“個性”を極端に増幅された所為か、加減が効かなくなっている。通常ならば『バーニングマッスルフォーム』の発動時、体の内側を冷やしている能力が表面化する程に、“個性”そのものが不安定になっている。

 

ハッキリ言って、今の俺の体は色々な意味で滅茶苦茶だ。だが、それでも、だからこそ、俺はこの暴走し続ける“個性”をコントロールしなければならん。俺は似たような事態を一度経験しているのだから。

 

――そうだ。今はあの時とは違う。あの時の様に、溢れる力の衝動に呑まれる事無く、冷静に、今度は機械以上に、正確に、万力の様な力強さで、この力をコントロールする――!

 

『TRINITY!』

 

瞬間、俺の頭の中で、ズレた歯車がガッチリと噛み合った様な音が聞こえた。

 

 

○○○

 

 

その男は奇妙なヘルメットを被り、見た事が無いほどに濃密な闇を纏っていた。

 

『オールマイトの親友が悪に手を染めると言うのなら、是が非でもソレを手伝いたい。その事実を知ったオールマイトの苦痛に歪む顔が見られないのは残念だけどね……』

 

それはヴィランらしかぬ、理知的な印象を受ける穏やかな声だった。話しかけてくる言葉は危険な甘さと、人を強烈に惹きつけるカリスマを孕んでいた。だからこそ、俺は“あの御方”が心底恐ろしいと思った。

 

『なるほど。異能の更なる可能性を抑圧する等、愚かな事だと言わざるを得ないな。異能とはもっと自由であるべきだ。それが普及されれば人はより人らしく、その能力を100%……いや、それ以上に発揮出来る世の中を実現する事が出来るだろう』

 

だが、「底が知れない」と言う意味では、奪った装置を誰よりも高く買い取ると言い、数々のサポートアイテムを援助してきた“あの組織”もまた同様だった。纏う闇の密度や濃度は兎も角として、その重さに関しては“あの御方”にも負けていないと感じた。

 

かくして、予期せず強大な後ろ盾を得る事に成功した俺は、複数の強力な“個性”と、最新技術をふんだんに用いたサポートアイテムを手に入れた。奪取した“個性”を増幅させる装置を得た事で、オールマイトをも片手間に弄ぶ程の力を得た。

 

「漸くニヤケ面が取れたか……!」

 

「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

 

だから、こう思ったのだ。オールマイトの生殺与奪権さえも握る事が出来る俺は、“あの御方”にも“あの組織”ですら出来なかった事が出来る今の俺ならば、ヴィランの王にだってなれるのだと。

 

「さらばだ、オールマイト! そして……祝えッ!! 世界の新たな支配者の……真の王者の誕生をッ!!」

 

『TRINITY!』

 

しかし、そこで俺は信じられないモノを見た。緑色のガキがオールマイトを救出した事ではない。それよりも、もっと有り得ないモノだ。

 

醜悪な虫ケラに成り果て、文字通り虫の息だった筈の、自爆して氷漬けになった怪物は、氷塊の中から爆発と共に現われた時、右腕に紅の装甲を、左腕に蒼の装甲を纏い、二本の足でしっかりと立っていた。

死にかけていた筈のその体は、暴力的なまでの生命力に満ち溢れていた。それは火山から噴き出す岩漿を彷彿とさせ、グツグツと煮え滾り、全てを飲み込もうとしていた。

 

「チッ! 死に損ないが……往生際が悪――」

 

「SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

「うぉおおおおお!? 何だぁあああああああああ!?」

 

それは、恐るべき早業だった。右腕を振うと同時に発生した炎は無数のバッタに変化し、赤髪のガキが抑えつける傀儡に殺到した。命を持たないバッタの群れに飲み込まれた傀儡は金属の肉体を瞬く間に破壊され、その中身は火傷だらけの状態で放り出された。

 

燃え上がる様な怒りを、背筋を走る悪寒が相殺した。

 

怪物は右に炎で形作られた巨大なバッタを、左に氷で形作られた巨大なバッタを従え、憤怒に塗れた双眸は、俺に固定されていた。

全力で相対しなければならないと感じた。ヴィランの王になる為には、オールマイトよりもこの怪物を倒さなければならないと思った。

 

「ぐ、ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「RRUWWWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」

 

絶え間なく降り注ぐ散弾を、迫り来る鉄柱を、無数に分裂した炎と氷のイナゴの群れが、俺が手にした力が児戯だとでも言う様に、その程度だと嘲笑うかの様に全てを食い尽くし、破壊していった。

 

「凄ぇ……」

 

「マジヤベー……」

 

「フッ……! こうも見せつけられては、限界だ何だと言っていられないな! そうだろう! 緑谷少年!」

 

「ハイッ!!」

 

その光景に、オールマイトの敗北を予感し、絶望していた筈のガキ共は、何かを期待する様なキラキラとした輝きを目に浮かべていた。

玩具の様に弄び、心と体を痛めつけ、追い詰めた筈のオールマイトと緑色のガキが奮起していた。冗談じゃない。ここにきてそんな陳腐なヒーロー物の様な展開など認めてたまるものか。

 

そうだ、あの怪物が問題なのだ。あの怪物さえ倒せばどうにでもなる。

 

「ぐぐぐぐぐおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

「MUUUUUUUUUUUUUUUUUUNN!!」

 

だが、奴は恐るべき間合いの広さと反応速度を備えていた。傀儡が炎と氷のバッタの嵐をくぐり抜けたとしても、即座に炎や氷の槍や盾を形成し、攻防共に付け入る隙がまるで無い。

 

だが、傀儡が次々に失われていく中で、良く見れば、攻撃の頻度が少なく、殆ど防御に徹している時がある事に気づいた。明らかに攻撃を躊躇している傀儡があると。サムと女のガキを使った傀儡を、狙って残していると。

 

「(なるほど。確かにお前はヒーローだ……馬鹿だけどなぁ!!)」

 

「――行くぞッ!!」

 

「はいッ!!」

 

だが、怪物を相手に手間取っている内に、オールマイトと緑色のガキが近くまで迫っていた。怪物の相手をしている間、此方の方にも強力な質量攻撃を仕掛けていたが、それでもコイツ等を止めるには足りなかったらしい。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

出し惜しみは命取りになると判断し、残った力を振り絞りながら、両手を天に向けて高く上げる。此処は大量の金属を用いた単純かつ強力な、目を引く大質量攻撃が必要だ。

 

「タワーごと潰れちまえ!!」

 

最大出力の“個性”で作り出した隕石の如き鉄塊を、勢いをつけて落下させる。すると、オールマイトと緑色のガキの前に、炎のバッタと氷のバッタの群れが躍り出ると、それぞれが人型を成し、鉄塊に跳び蹴りを叩き込む。

 

「(そうくるか。だが、それは悪手だろッ!)」

 

確かに、ヒーローは人命を優先する。オールマイトが助けに来ない様にするつもりで繰り出した攻撃だったが、予期せぬ形で怪物が無防備になった事で、サムと女のガキを使った傀儡を向かわせる。

対する怪物は一歩も動かずその場に留まっているが、恐らく奴は「動かない」のではなく「動けない」。俺自身もそうだが、遠隔操作するタイプの“個性”は多大な集中力を要し、激しく動きながらそれを行うのはまず不可能だからだ。

 

勝利を確信し、怪物に傀儡の鋭利な爪が、或いは歪な指輪を嵌めた拳が到達する刹那、白銀の盾がそれを阻んだ。

 

「何ぃ……!」

 

此方の驚愕を余所に、白銀の盾は無数のバッタに変異し、サムと女のガキを使った傀儡に纏わり付き、装甲を食い荒らしていく。

跳び蹴りを繰り出した炎と氷の人型が消失し、鉄塊に攻撃を叩き込まれた二点を中心として大きな亀裂が入ったのと、サムと女のガキが解放されたのは同時だった。

 

「更に!」

 

「向こうへ!」

 

「チィッ!」

 

オールマイトと緑色のガキの追撃により鉄塊は粉砕され、両腕が大きく弾かれる。目前にまで迫る二つの拳に生存本能が警鐘を鳴らし、金属で出来た花びらの中に身を隠す。

 

『DRIVE』

 

そして、真紅の果実をモチーフとした鎧を脱ぎ捨て、高速移動を可能とするアーマーを装着すると、花弁から幹へ、幹から根を通り、地下を高速で移動する。

 

「「Plus Ultra!!」」

 

オールマイトと緑色のガキが花弁諸共、抜け殻となった甲冑を粉砕する。その中に俺がいない事を理解し、自分達の勝利を確信したニヤケ面が曇る事を考えると、思わず笑みがこぼれてくる。

 

「ヌゥウウン!!」

 

「GAAAA!!」

 

油断しているだろう怪物の足元から飛び出し、手刀が怪物の鳩尾を貫く。肉が裂け、骨が砕け、腕が突き抜ける感触は、間違いなく致命傷だ。

 

「NNNUUUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

だが、怪物は恐るべき行動に出た。筋肉を硬直させて体を貫通した俺の右腕を固定し、装甲が重機のパワーアームの様に変化した左手で俺の脇腹を掴むと、万力の如き力で筋肉を、肋骨を、内臓を握り潰したのだ。

 

「グハァアアッ!!」

 

「VOOBABUVIABEVUBABABODEDAGAA……!!」

 

仮面の内側で血反吐を吐きながらも、目の前の光景が信じられずにいた。コイツは深刻なダメージを負っている筈だ。想像を絶する痛みを味わっている筈だ。それなのにコイツは、この怪物はまだ戦おうとしている。

 

「ZOVAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAASHYA!!」

 

そして、攻撃はまだ止まらない。右手の装甲が瞬時にナックル状に変化し、紅炎を纏った拳が顔面に突き刺さる。頭部を覆う装甲が砕け、“個性”を増幅させる装置が破壊されると、俺の中で決定的な何かが弾けた音がした。

 

主を失った事で崩れていく、金属質な黒の菩提樹。薄れゆく意識の中、俺を打倒した怪物の姿が、超人社会を統べた在りし日の魔王の姿と重なった。

 

『有り難う、ウォルフラム。君は偉大な魔王が生まれる為の、“偉大なる肥やし”となった』

 

魔王の幻影は笑顔を浮かべながら、やはり穏やかな声でそう言った。




呉島新
 今回の戦闘後には元の人型に戻っているが、相も変わらず反動でオールマイトのトゥルーフォームみたいなガリガリの体になっている怪人。作中で描かれている通り、様々な思惑の渦中にいる存在なのだが、この時点ではその事に全く気付いていない。今回登場した“個性”の暴走状態は『バイオハザード』や『彼岸島』に出てきても違和感がないと思う。

峰田実/変態ブドウ
 特殊な状況と体質によって、独自の呼吸法を獲得した変態。ある意味では天才の所業なのだが、方法が方法なのでハッキリ言ってまともに評価される事はない。実は作者が未完のまま放置している『鬼滅の刃』の二次小説の一つに変態仮面とのクロスオーバー作品があり、それをリサイクルした形になっていたりする。

デヴィット・シールド
 何か色々と画策して動いていた様だが、作者的には「本気で隠蔽する気があるのか!?」とツッコミたくなる様な部分が目立つ科学者。まあ、オールマイトの元サイドキックとは言え、あくまでも一介の科学者に過ぎない彼に悪党の思考など考えつく訳も無いと言えばそれまでだが……。いずれにせよ根が善人なので、そもそも悪事には向いていない人間だったと思われる。

サム/アナザーオーズ
 今回の事件の元凶。コイツはコイツで悪党の思考と言うモノをまるで理解していなかったので、上司共々悪事には向かないタイプだと思われる。正直、保管庫でのメリッサさんの発言に対し、肛門から魂が出るほど仰天していた。この世界線では原作と異なる形でウォルフラムから謝礼を受け取った事でアナザーオーズと化し、その分原作よりも見せ場が増えた。やったね!!

麗日お茶子/アナザーウィザード
 第二期平成ライダーでは、敵の策略で怪人になるヒロイン(元から人外と言うパターンもあるが)は割かし多いので、作者の都合でライダー的なヒロイン要素を入れるべくアナザーウィザードと化した。
 実は、当初の予定ではアナザーウィザードとなった彼女が正面からシンさんのハートをぶち抜く(物理)と言う、正に原作ヒロインの貫禄をこれでもかと見せつける展開を考えていたのだが、色々考えた結果ボツになった。

ウォルフラム/アナザー武神鎧武・蓮華座
 この世界では原作よりも凄ぇ強化をされて頑張っていたケド、結局やられてしまったヴィランの王(笑)にして魔王の肥やし。上記の麗日でやろうとしていた役目を奪った事を考えると、彼こそが劇場版のヒロインと言えなくも……いや、ないなそれは。
 尚、彼が敗北した瞬間に見た在りし日の魔王ことオール・フォー・ワンの幻影は、原作におけるデヴィット・シールド博士が見た若き日のオールマイトの幻影のオマージュ。まあ、その幻影は普通に喋っている訳だが。



アナザー武神鎧武・蓮華座
 ウォルフラムがオール・フォー・ワンから与えられた“個性”と、どこぞの組織が開発した最先端のサポートアイテム。それにデヴィット・シールド博士の発明品が加わった事で、生々しくも禍々しくなった姿。画風がシンさんに近くなったとも言える。
 元ネタは「武神鎧武・蓮華座」で、それがアナザーライダー化した様な見た目をイメージしている。元ネタと似た様な力を使ってはいるが、よく似た紛い物と言える部分が多く、例えば花弁を撒き散らしての爆発攻撃なんかは使えない。

アナザーシンさん・トリニティフォーム
 所謂、劇場版限定フォーム。尤も、こうなるまでに恐ろしく体力を摩耗している関係から、かなり不安定な状態と言える形態。右腕に紅のアーマーが、左腕に蒼のアーマーが装着されており、それぞれが瞬時に変形する事で戦闘力を向上させる仕様になっている。
 能力的には実質『半冷半燃』の轟君と同じなので、能力の使い方で轟君との差異を出すべく、サポートアイテムを使う関係から『ビルド』の「クローズマグマ」と「グリスブリザード」の要素を入れた所で、「主人公に『ゼロワン』のメタルクラスタホッパーをやって欲しい」と言うリクエストがあり、最終的に炎・氷・金属の三種のバッタを操る能力になったと言う経緯がある。
 尚、萬画版『Black』において、光太郎が無数の生きたバッタを操ってゴルゴム謹製のマシンを破壊しているので、ネタとしては元々問題ない……と言うか、メタルクラスタホッパーの元ネタの一つが『Black』のバッタなのではないかと、作者は考えている。

トリニティライドウォッチ
 シンさんが落下地点で拾ったアイテム。このアイテムの起動に伴い、上記のトリニティフォームが発動したが、このアイテムは戦闘終了後に完全に壊れてしまっている。傍目にはシンさんの“個性”の負荷に耐えきれず、自壊した様に見えるのだが……。
 元ネタは『ジオウ』に登場する「トリニティライドウォッチ」。ジオウトリニティがアギトトリニティフォームと共演している事もあり、それなりに丁度良いなと思って採用。中身は『ビルド』と『ゼロワン』だけど、気にしない。

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