モモンガさんとファーマー忍者(仮)   作:茶色い黒猫

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書きながら蛇足かなぁと思いましたが、書いちゃったのは使うの貧乏精神で載せます( ̄ω ̄;)

飛ばしても4話から読める様にします!かも


第3.5話

 狩られた事の悔しさと共にユグドラシル最終日を迎え、かつてのギルドメンバーに会える事へ気を昂らせるあまり中々眠りにつく事が出来なかった男。

 しかし、意識としては一瞬であれども目覚めてみれば熟睡しており、時間を確認する為に時計を見れば既に昼前。その表示された時刻は男を大いに慌てさせた。

 

 ベッドの上で服を脱ぎ捨て、そのまま転がり器用に電動車椅子に座った男は蒸しタオルで身体を拭うと、冷蔵庫から液体食料を取りだし啜る。相変わらずの不味さに眉根を寄せながら移動し、かけてある服を手に取る。

 男の服装を見てどうこう言う者は居ないし男自身にも拘りはないが、場所柄に必須とされる清潔さの白と、以前妹が『まだマシ』だと言っていたデザインを兼ねたYシャツを敢えて選び取り、羽織る。

 最近は週二でしか着ないYシャツのボタンを片手で留めながら、随分と器用になったものだと、何とも言えない心持ちになりながらも、時間に追われているのを思いだした男は、外出用のマスクとゴーグルを身に付け自宅を後にした。

 

 

 

 

 

 電車を乗り継ぎ男が着いた建物は、一切の装飾を省き窓すら一つもない巨大な箱を思わせる建物であった。

 男はここ数年で通い慣れた建物内へ入り、自動ドアが閉まるのと同時に稼働するエアシャワーを全身に浴びると、装着していたマスクとゴーグルを外し人心地つく。

 

 

 この建物は病院ではないが、認知症だったり、法律で禁止され延命治療が受けられない寿命が間近な老人や、治る見込みのない病人といった人生の終末を迎える者、それと、男の妹の様に昏睡から覚めない者が預けられる施設である。

 男の妹は、容態自体は安定していて本来なら自宅へ連れ帰っても問題はなかったが、半自動化された栄養摂取はまだしも、着替えや排泄等の世話を考えると、家族とは言え異性である男がするのは気が引ける上に、今の男の身体には負担が大きかった。

 

 

 人心地ついた男がエレベーターを使い、降りた先は多くの扉が並ぶフロア。その中でも扉の間隔が狭い一角に電動車椅子を走らせた男は、一つの扉の前で止まり軽く深呼吸をし開閉ボタンを押すと、大きくはないが明るい声を出しながら入室する。

 

「よう、恵美(めぐみ)!元気にしてたか?」

 

 毎週二度の変わらない挨拶をしながら、ベッドと壁の隙間を手慣れた操作で電動車椅子を走らせ、妹の顔を覗ける位置につけた男は憎まれ口を叩く。

 

「返事無しか〜?相変わらず兄に対して冷たいな」

 

 そんな台詞を放ちながら男は身体を車椅子から妹が眠るベッドへ滑らせて腰掛け、妹の顔色を確認しつつ右手と左手首で顔を挟みこねくり回す。

 

「もし動けないだけで意識があったりしたら、後でしこたま殴られそうだな」

 

 精密検査では脳に異常は見当たらず、様々な検査の結果は『ただ寝ている』だけの状態らしく、目覚めない理由が分からない妹へ対し、見舞いの度に願望を込め同じ行動をし同じ台詞を吐く男は、妹が起きて寝ている時の兄の所業で殴られる事になれば、泣き笑いしながら殴られているだろう自分に『キモい』と吐き捨てる妹の姿を想像して、いつものように寂しそうに微笑んだ。

 

 

 それから男は妹の足元に移動し、右手で片足を掴み、左手首を持ち上げた妹の膝裏へ添えると、その脚をゆっくり曲げ伸ばしさせる。

 成長期に"動き"を失ったまま、年を重ねながらも細く小さくなった様に感じる妹の脚を見て、男は自分の中に沈殿している感情が滲み上がるのを感じ、それを散らす為におちゃらける。

 

「ダイエットなんて富裕層の贅沢だぞ。同じ贅沢なら、起きた時には合成じゃない本物のケーキを突き付けてダイエット失敗に追い込んでやるよ」

 

 乳製品をたっぷり使ったケーキは、目玉が飛び出る様な金額だが妹の"ダイエット"を挫折させる為なら惜しくはない。そんな、冗談に紛れさせた本気と共に額に汗を滲ませた男は、仕事をしていた時よりも太くなった右腕を肩から一回しすると、妹のもう片方の脚へと手を伸ばし、曲げ伸ばしを再開させるのだった。

 

 

 今出来る精一杯の妹孝行を終えて帰り支度をした男は、妹の顔を見ながらいつもの退室の挨拶の前に言葉をかける。

 

「今日はお前も少しプレイしてたユグドラシルの最終日なんだ。前のギルドに招待されたし、お前は嫌がってたがモデルにして作ったNPCにも挨拶してくるよ。出来上がりを見せたら満更でもなさそうだったしな」

 

 男はそう言いって笑い、電動車椅子を操作して扉の前まで来ると

 

「またな」

 

 短く残して妹の眠る部屋を後にした。

 

 

 

 

 




設定を書いた紙を紛失してやった(´・ω・`)詳細が頭に残ってねぇですピンチ

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