モモンガさんとファーマー忍者(仮)   作:茶色い黒猫

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 皆様、明けましておめでとうございます(^∀^)ノ

 年を跨ぐ直前に風邪をもらい仕事と風邪のダブルパンチで執筆時間が取れず書き方忘れそうです(爆)




第15話

 モモンガを部屋に置き去りにしたピメントは、浴場のある娯楽施設が設置された一画に歩いて向かおうと廊下の角を曲がったところで、着替えを持っていない事に気付いた。

 ゲーム中では装備した服は汚れたりはせず、今も汚れたようには見えないのだが、汗だくになったのを入浴後に着直すのも気持ちが悪いと思い、着替えを取りに戻ろうと踵を返した瞬間に声をかけられた。

 

「お姉様? どちらへお出掛けですか?」

 

「おわっ!? と、ペパロニか。風呂に行こうとしたんだが、着替えを忘れて取りに戻るところだ」

 

 それを聞いたペパロニはにっこりと微笑みどこからともなく畳まれた服を取り出した。

 

「ご入浴されると思って用意してました」

 

「おー、準備がいいな。ありがとな」

 

 ピメントは出された服を受け取ろうと手を伸ばすが、その手はペパロニがこれまたどこかに服を仕舞い空を切る。

 

「それでは参りましょうか、お姉様」

 

「え? あれ? 一緒に行くの?」

 

「当然です。お姉様は私のお姉様であり至高の存在なのですから、お供を伴わずにご入浴なんてあり得ません。ましてや、お倒れになった直後にお一人で行動するなんて」

 

 ペパロニは腰に手を当てながら頬を膨らませ、怒ってますよアピールをする。

 その仕草が小さい頃の妹に瓜二つであり、ピメントの断るという選択肢を消し飛ばした。

 

「分かった分かった悪かった。一緒に行こう。ついでに背中を流してくれるか?」

 

 ペロロンチーノと違う方向で少女に対してダメ過ぎると言われたピメントだが、幸いな事に少女に対してそっち方面の下心が皆無な事もペロロンチーノとは違っていたので、疚しさ無くペパロニを誘う。

 

「勿論です!」

 

 嬉しそうに返事をしたペパロニが案内をするように先を歩き出し、その後を苦笑を浮かべたピメントが付いていった。

 

 

 

「さて、どの風呂に入るかね。チェレンコフ湯は……現実になると怖いなぁ。有害な放射線とか出てないよな?」

 

 大浴場に到着したピメントは様々な趣向を凝らした風呂の中から、どれに入ろうか悩んでいた。

 その中で、ゲーム中は青白い光と設定のみだったので笑えたチェレンコフ湯だが、現実となると笑えたもんじゃない事に気付き、封鎖するべきか考える。

 

「どうされました、お姉様?」

 

「いや、なんでもない。よし、昔ながらの銭湯風にするか」

 

「はい!」

 

(チェレンコフ湯には後々モモンガさんを入れてみよう。死んでるし骨だし大丈夫だろ)

 

 頭の中で骨身御供を決め、自身はペパロニと共に平凡な浴室へと向かい、普通に男湯の暖簾を潜ろうとして止められた。

 

「そちらは男湯ですよ。今はお姉様はお姉様なので女湯へ入られてください」

 

 その言葉にピメントは悩む。確かに身体は女なのだが精神は男なのだ。

 ペパロニやアウラは妹扱いなので問題ないが、ナザリックの女性は殆どが成人体だ。もし鉢合わせたら……

 

「……まぁ、いいか」

 

 ラッキースケベは望むところであり、向こうから見ればピメントも女性であるし、前の身体は性別とか以前の問題であった。そもそもNPCの様子を見るに怒られても謝れば許してくれそうだと考え、女湯へ入っていった。

 

 

 脱衣室に入ったピメントが服を脱ごうとするのを当たり前のように手伝おうとするペパロニ。断ると哀しげな顔をされたので「同時に入りたいから」と誤魔化し、喜んだペパロニと共に服を脱いで浴場に入る。

 

「お湯の風呂なんて何年振りだろうな。作ったギルメンに感謝だな」

 

「お姉様、そちらにお座りください。お髪をお流しします」

 

 いつの間にか入浴セットを用意したペパロニが座るように促す。

 用意された品々を見ながら座ったピメントは、自分で創ったNPCの行動に思わず口をつく。

 

「ペパロニ…… 何て言うか、スペック高いな」

 

「お姉様方に創られましたから。それではお流しますので、お耳を伏せてください」

 

 ――それからはリアルだと大変に贅沢な、無尽蔵にお湯を使える風呂にテンションが上がったピメントが遠慮するペパロニを押し切り、お互いの髪を洗ったり背中を流し合ったりして過ごした。一部洗うのに躊躇ったりしたが、そこは省略する。

 

「あーー。こりゃ極楽だ」

 

 広々とした湯船に浸かり風呂を堪能するピメントは、縁に掛けた腕に顎を乗せ身体を伸ばした体勢で半分浮いていた。お尻では無意識に尻尾がぱちゃぱちゃとゆっくり湯面を叩いている。

 

「お姉様、はしたないです。そんなお姉様も素敵ですが、私の前以外ではなさらないでくださいね」

 

「うぃー」

 

 一方で大人しく湯船に浸かるペパロニに注意されるも、すっかりだらけきった獣人娘には右猫耳から左猫耳に抜けていくだけであった。

 

「まったく。お姉様は恵実お姉様に叱って頂かないと身に沁みませんね――お姉様?」

 

 妹の名前が出た瞬間、ピメントの尻尾が動きを止めダラリとお湯に浮かぶ。その変化を機敏に察知したペパロニが心配そうにピメントに近付き――急に身を起こして湯船の中で座ったピメントに捕まり、姉に背もたれするように膝の上に座らされる。

 

「きゃっ!? なんですか、お姉様!?」

 

「ペパロニは恵実に会いたいか?」

 

 先程までとうって変わった真剣な声で尋ねる姉に少し驚くペパロニだったが、質問の答えは決まりきっていたので即答する。

 

「当たり前です。恵実お姉様とは少ししかお会い出来ませんでしたが、かけがえの無い家族ですから」

 

「家族……か。そうだな、当たり前だな。ならすぐには無理そうだが、その内に一緒に会いに行こう」

 

「本当ですか!? あ、お姉様を疑うような発言をしてしまい、申し訳ありません!」

 

「気にするな。ペパロニは俺の妹なんだから、もっと砕けた感じでいいんだぞ?」

 

「ですが、お姉様は私の創造主でナザリックに君臨なされる至高の御方ですので、砕けた態度でなど――ぷっふっ!? けほっ、えふっ!?」

 

「あ、悪い。勢いが強すぎた」

 

 あくまで態度を変えないペパロニに、手で水鉄砲を作った姉が抱えた妹の顔面にお湯を発射した。

 ただ、人間の身から格段に身体能力が上がった事で無駄に威力と精度が上がったお湯の弾は、的確にペパロニの口と鼻に叩き込まれたのだった。

 

「ひどいです、お姉様! けふっ! 鼻の奥がツンとします!」

 

 妹を噎せさせた犯人は、Lv100でも生理的に辛い物は辛いんだな、と反省の無い変な感心をしながら怒りの表情を向けるペパロニに嬉しそうな顔で応えた。

 

「敬語は素かもしれんが、そんな感じで接してくれると嬉しい。あ、常に怒ってって意味じゃないぞ?」

 

「分かってます! お姉様はもう! もうですよ!」

 

 プンプンと分かりやすく怒る妹の姿に、宝物を抱えるように小さな身体を胸に抱いて相好を崩すピメントの頬で、本人も気付かないお湯とも汗とも違う一筋の滴が流れ落ちたのだった。

 

 

 

 

 

 すっかり風呂と妹成分を堪能したピメントは、脱ぐ時に使えた言い訳を使えずにペパロニに服を着せられたりして大浴場を後にする。

 

「気持ち良かったな。また一緒に入りにくるか」

 

「はい! 今度は守護者の方々やプレアデスの皆様もお誘いしましょう」

 

 姉妹で入浴を堪能したペパロニは、人と入浴する楽しみに目覚めたのか非常に魅力的な提案をしてきた。

 だが、どうしても一人だけ除外しなくてはならず、その提案にすぐには頷けなかった。

 

「あー、そのうちな」

 

 既にピメントの中では“骨妻”であるアルベドと一緒に入浴するのは控えたかった。

 ついでにアルベドの素の姿を知っている身としては、入浴時に“それ”を見ても嬉しいものでもないのだ。

 

(うーむ。一人ハブるのも可哀想だし、女子面子で入る時は旦那と二人で別に入ってもらおう。その方が二人共喜ぶだろうし)

 

 モモンガの自室に向かいながら解決策を考えていたピメントは無責任な策を思いつき、いつモモンガに話すかまでを考えていた。

 

 

 

「お姉様、モモンガ様のお部屋に着きましたよ。案内が済みましたので、私は自室に戻りますね」

 

 ピメントがモモンガ夫婦にいつ風呂の事を話すかという考えから、一般メイドと一緒に風呂はローテーションを組まないと大変だ。と欲望まみれの考えにずれていると、いつの間にか目的の部屋の前まで到着していた。

 

「お、分かった。どれくらい掛かるか分からないから腹が減ったら先に食事は済ませておけよ。後、無理に起きて待ってる必要もないからちゃんと睡眠は――」

 

「お姉様。私はそこまで子供ではありませんから、自己管理の面は心配なさらないでください」

 

  過保護な配慮に怒ったような、気にかけてもらい嬉しいような複雑な表情をしながら姉に抗議したペパロニが、扉の前まで移動しノックをする。

 

「ペパロニでございます。ピメントお姉様がモモンガ様へお会いに参りました」

 

 姉に抗議した可愛らしい声とは違い、凛と通る声を発したペパロニにピメントが感心していると、少しして扉が開かれプレアデスの一員であるナーベラルが顔を出し頭を下げる。

 

「ピメント様、モモンガ様から聞き及んでおりますので、お入りになられてください。ペパロニ……様は――」

 

「お姉様、ナーベラルさん、私はここで失礼致します」

 

 恐らくペパロニに関して指示されていないナーベラルに気を使ったのか、ペパロニは何かを言われる前にぺこりと頭を下げ去っていく。

 それを見送ったピメントはナーベラルが開く扉を抜けモモンガの部屋へと入るが、肝心の部屋の主が見当たらない。

 

「それではモモンガ様の――ピメント様!?」

 

 ゆっくりと丁寧に扉を閉めたナーベラルがピメントを案内しようと振り返えるが、ピメントの姿は既に無く、ナーベラルは思わず大きな声を出してしまう。

 

 呼ばれたピメントは、モモンガの姿が見当たらないと気づいた瞬間に何故か猫耳をピクリと動かし辺りを探ると、隣の部屋から気配を感じて素早くかつ音も立てずに移動していたのだった。

「――モモン・ザ・ダークナイト……いや、モモン・ザ・ダークウォリアーか」

 

「モモン・リッター・ディー・フィンスターニスとかどうです?」

 

 ナーベラルが後ろを向いている隙に、こっそりとモモンガの気配がした部屋に入ったピメントが目にしたのは、漆黒の甲冑を着けブツブツと呟きながら考え込むモモンガであった。

 耳を済ませば何やら相変わらずのセンスで仮の名前を考えていたらしく、ならばと自分も提案してみたのだが、忍び寄ったのを忘れて背後から声を掛け無駄にモモンガを驚かせてしまう。

 

「うおっ!? ピ、ピメントさん!? いつからそこに!」

 

「来ちゃった」

 

「いや、呼んだのは私ですから。そうじゃなくて、ナーベラルが出たでしょう? 一緒に来るならノックぐらいするかと」

 

「置いてきた。すぐ来るよ」

 

 ピメントが悪びれもせず言うと、ノックの音が響きモモンガが入室許可を出す。

 

「ピメント様、やはりこちらにいらしたのですね。モモンガ様の部屋で勝手に動かれては困ります」

 

「悪い悪い。ナーベラルにはナーベラルの仕事があるしな。上司? ……まぁ、上司たるもの部下の仕事を邪魔しちゃダメだな」

 

 注意してきたナーベラルに反省の言葉を口にしながらにじり寄るピメントは、お互いの距離が30センチ程になった所で立ち止まり、まじまじと目の前に立つメイドの顔を見つめる。

 

「わ、分かって頂けたのなら――ピ、ピメント様? ち、近いです」

 

「んー、やっぱり美人だな。女体化した俺の顔もそこそこイケてると思うけど、元がデフォだから個性がイマイチなんだよな」

 

「ピメントさん、セクハラですよ。ナーベラルも困ってるじゃないですか」

 

 眺めるのに夢中になってナーベラルに吐息がかかる程に顔を近づけていたピメントの背後から手が伸び、襟の後ろを摘まんで持ち上げたモモンガが注意をする。

 

「にゃ〜。女同士だから良いではないか」

 

「ではないか、って…… 都合よく性別を使い分けないでください」

 

「ピ、ピメント様は十分にお綺麗です! そ、その、お顔の傷はお治しにならないのですか?」

 

 摘まみ上げられたままの猫耳に、至高の存在に至近距離で見詰められて真っ赤になったナーベラルが恐る恐る尋ねる。

 

「あー。これは……消えないかもなぁ。どうなんですかね、モモンガさん?」

 

 ぶら下げられたまま腕を組んで思案顔になったピメントが摘まみ上げているモモンガに聞くが、モモンガもそんな事は分からず曖昧な返事をするしかない。

 

「どうなんでしょう? 傷を治すには回復魔法でも使えばいいんでしょうが、その傷は“治す”とは――」

 

「違うでしょうね。ま、呪い的な物だと思えば格好いいでしょう。クッ! 古傷が痛みやがるぜ! みたいな?」

 

「中二ですねぇ……ナーベラル? どうした? 顔色が悪いぞ」

 

 傷がアバター制作時の単なるデザインである事を知っている二人が気軽に話している横で、先程まで真っ赤になっていたナーベラルが今度は真っ青な顔色で強張っていた。

 それに気付いたモモンガが声をかけた瞬間、ナーベラルが膝をついて頭を下げる。

 

「も、申し訳ありません! 消えない呪いの傷とは知らず差し出がましい事を! この罪は命をもって償いま、ぴゅっ!?」

 

 唐突に頭を下げ謝罪を始めたナーベラルの頭頂部に衝撃が走る。可愛らしい悲鳴を上げ、何が起きたのか分からず衝撃受けた頭を上げた先に居たのは、モモンガの手から逃れたピメントが手刀を構えた姿であった。

 

「ダメだ。命で償うなんざ俺の身内には許さん。てか、別に傷の事は気にしてないしナーベラルの謝罪は見当違いだ。ね〜、モモンガさん?」

 

「そうですね。ピメントさんの言う通りだ。ピメントさんの傷は……勲章の様な物だと思え。それと、お前たちはギルドメンバーの子供の様な者だ。命をもって償うなどと言うな」

 

「ピメント様、モモンガ様……」

 

 二人の至高の御方に諭され感動に打ち震えるナーベラルだったが、その至高の二人はナーベラルに隠れて会話をしていた。

 

(なんすか、勲章て)

 

(いや、気になってるなら適当な理由が有った方が今後気にしないかと)

 

(格好いいから付けた。で納得するかな?)

 

(それ、絶対に言わないでくださいよ。その身体の事と合わせて適当に考えてください)

 

(丸投げ良くない。まぁ、何か考えときます)

 

 NPCに聞かれたらガッカリされること請け合いのやり取りを終え、場の空気を変える為にもピメントは明るくモモンガに声をかける。

 

「ま、それはさておき。モモンガさん、風呂上がりの美女に何の御用ですか?」

 

「そのネタまだやるんですか? お風呂に入ってきた後に言うのもなんですが、闘技場に行きませんか? ピメントさんはまだ能力を試せてないですから身体を動かしたいかと思いまして」

 

「行きましょう。あ、出来れば模擬戦をしたいのでペパロニ呼んでいいですか?」

 

 猫耳と尻尾がピンと立ち嬉しさを表しながら返事をする。

 

「良いですよ。ペパロニとの連係確認ですか?」

 

「んにゃ、ペパロニと模擬戦をします。接近戦の先輩ですから。呼んでくるので先に闘技場に行っててください」

 

 ピメントはそう言い残し、返事も聞かずに部屋を飛び出して行った。その欲求に素直な有り様は本当に猫科の動物らしくモモンガを苦笑させた。

 

「やれやれ。――さて、ナーベラルよ、我々は先に闘技場に行き準備をするとしよう。転移するので掴まれ」

 

「はっ! それでは失礼致します」

 

 モモンガが差し出した手をナーベラルが恭しく取ると、二人は指輪の力で転移した。




 年末にドラマCD付きコミックが届くもゆっくり聴ける時に聴こうと思い、いまだに聴けてないです(´・ω・`)鼻をかみながらはイヤ(笑)

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