モモンガさんとファーマー忍者(仮)   作:茶色い黒猫

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短めですが上げます(汗

 明日から二週間ほど帰省するので次話投稿は遅れると思います(´・ω・`)


第12話

 

「私は宝物庫に装備品を取りに行きますので、着替えたら円卓に来てください。一般メイドには私から〈伝言〉でピメントさんの部屋に行くよう伝えました」

 

 玉座の間のある十階層は、ギルドの指輪でも転移が使えない為に、歩いて九階層に移動しながら話す二人。

 途中でレメゲトンに置かれた67体のゴーレムが正常に動くか確認し、モモンガとピメントの命令だけに従うように設定した。

 

「あれ? 六階層に行くんじゃないんですか? 早めに行って闘技場で色々と試すのかと」

 

「それはしますが、まだ時間が有りますしNPCへの対応を話し合いたくて」

 

「……それでさっきのゴーレムの設定ですか。NPCが自分達に従うか分からない、と? アルベドは若干怖かったですが、忠誠心は問題なさそうでしたよ?」 

 

 先ほどのゴーレムは、NPCが敵対した時の保険だと気付いたピメントがモモンガの考えすぎではないかと問う。

 

「確かに出会ったNPC達は問題なさそうですが、他のNPCが同じとは限りませんから。万が一を考えておくのは必要です」

 

「それもそうか。どっかのペンギンみたいな設定に変更されたNPCがいないとも限らないですね」

 

 ピメントは名前を忘れていたが、ナザリックの支配を目論む設定になっているNPCがいる事は覚えていた。そのNPC自体はLv1なので警戒には値しないが、Lv100になる階層守護者と呼ばれるNPCに裏切られた場合は大事である。

 

「それを確かめる為に階層守護者を集めるように命令しました。それで、その時の対応を話し合う為に一度円卓に、と」

 

「分かりました。では着替えが済んだらすぐに行きます」 

 

 九階層へと上がる階段を登りながら、神妙な顔をした二人は頷き合う。

 

「お願いします。では私は指輪で移動しますので後ほど」

 

「了解です。後ほど円卓で」

 

 返事を聞いたモモンガの姿が消えるのを見送ったピメントは自室へと歩を進めながら、すぐに着替えて円卓に行こう、と思っていたが、到着した部屋でご機嫌な一般メイドと不機嫌なペパロニの出迎えを受け困惑し、更に着替える段になって一般メイドと共にペパロニが手伝おうとするのを断ったら泣かれて狼狽え、と想定外の時間を消費してしまった。

 

 

 

 

 

「遅かったですね。先に来てるかと思ってたのですが…… 短パンなんて持ってたんですね。尻尾はどうなってるのですか?」

 

 何とか着替え終えて円卓に来たピメントを、モモンガが軽い挨拶で迎えた。

 一方、迎えられたピメントは、つい先ほど別れたばかりなのに、すっかり疲れた様子でげんなりとしていた。

 

「ペパロニが出してきました。ショートパンツって言わなきゃダメらしいです…… 尻尾は装備したら自動で穴が出来て出るみたいです」

 

 律儀に答えながらよたよたと腰掛け、円卓に突っ伏したピメントの頭部では猫耳までが項垂れていた。

 

「どうしたんですか? やっぱり着るとなったら女性用下着に抵抗ありましたか?」

 

「……いえ、どうせ知り合いはモモンガさんしか居ないし、割り切ればどうって事ないですが…… ペパロニの手伝いを断れなくて……」

 

「あー」

 

 そうなるだろうな、と予測していたモモンガは気の無い返事をする。

 

「妹と同じ顔をした女の子にパ……ショーツの脱ぎ履きまで見られた、ってか脱がされて履かされた……」

 

「うわぁ……」

 

 そこまでされるのか、と思ったモモンガは骨の身体で良かったと心底思った。

 

「御愁傷様です。落ち込んでるとこ悪いですが、予定より時間が押してます。取り合えずこれを」

 

 それを聞いて、のそりと身体を起こしたピメントの目の前にかつての装備品が置かれた。

 

「着けれる装備はすぐに着けてください。後は持っていなければこれも差し上げます」

 

 言われるがままコートを羽織り、女性には少々無骨なブーツを履く。ユグドラシルの装備品には魔法が付与されている為、サイズは問題ない。

 着終わると、モモンガが円卓に追加で置いた指輪を手に取る。

 

「飲食睡眠不要・肉体疲労無効の指輪と、精神攻撃耐性の指輪です。籠城するとなったら必須ですから。毒や病気は――」

 

「忍者職で大丈夫です。指輪は精神耐性だけ頂きます、もう一つはありますから。で、こっちは?」

 

 指輪を一つ返し、もう一つはコートのポケットに仕舞う――ギルドの証は別として、精神的に男同士で指輪をプレゼントされて目の前で填めるには抵抗があったからだ――そして白銀のバングルを手に取った。

 

「老化防止です。ユグドラシルでは戦闘時だけのバッドステータスでしたが、“ここ”だともしかしたら通常の老化も防止出来るかもしれないので」

 

 ユグドラシルのモンスターには対象者の時を操り老化させ、ステータスを下げる攻撃をしてくるものがおり、アンデットやゴーレム、ピメントのガスの塊など不老の種族に効果が無かったが、時間停止等とは違う対策が必要だった。

 老化を使う敵が数が少なく、戦闘が終われば効果も切れる、種族で対策可能、と重要視されないバッドステータスだったが、現実で不老になれるかもしれない、となると重要度は天地の差である。

 

 固い表情でバングルを填めるピメントを見たモモンガが、気持ちを察してフォローする。

 

「効果が分かる前に帰還出来るように頑張りましょう。でも、ユグドラシル終了と同じ時間に帰れたとして、長引いた場合に一人老けた兄を見たら、恵実さんが驚いてしまいますよ」

 

 両手を上げて驚くジェスチャーをして見せる骸骨の姿に、思わず軽く吹いてしまったピメントは、己の両頬を叩いて気合いを入れる。

 

「お気遣い感謝です! 妹からオジサン呼ばわりはキツいですからね。それにペパロニを連れて帰ると決めましたから、独りにする訳にもいきませんし」

 

 ペパロニを連れ帰ったとして、種族がアンデット、不死者であるペパロニは老いて死ぬ事は無い。ユグドラシルのアイテムが元の世界でも使えるのかは不明だったが、分からない事を悩んでも仕方ないと割り切った。

 

「あ、でもそうなると恵実も欲しがるかも…… ボスケテ、モモンガさん!」

 

「ボス……? よく分かりませんが、分かりました。同じ物が宝物庫に埋まってると思いますから、探して……探すように言っときます」

 

 モモンガの言い回しにピンとくるものがあったピメントは、階層守護者以外でLv100のNPCについて尋ねる。

 

「そう言えば宝物庫に行ったんですよね。あそこには確かモモンガさんの――」

 

「おっとぉ! 時間がないですね! 急いで話し合いますよ!」

 

「お、おう」

 

 あからさまな話題そらしの大声に驚くが、そこまで嫌なら触れずにおこうと、ピメントは追求するのを止めた。

 

 

「それで、階層守護者が集まった時の対応なんですが、ピメントさんには安全だと確認できるまで隠れていて頂けないかと思いまして」

 

「それだとモモンガさんが危ない――いや、危ないからか」

 

 モモンガのやりたい事を察したピメントは反論を途中で打ち切る。

 

「はい。私一人だとアルベドとセバスを除いたとしても階層守護者たちを相手に逃げ切れるか不安ですが、ピメントの不意打ちと忍術があれば確実に逃げ切れます」

 

「だからアルベドに俺の事を伏せておくように言ったのか」

 

「聞いてたんですか、考え事してたから聞こえてないのかと。まぁ、ピメントさんの事は偶々です。サプライズをしたかっただけですよ」

 

 謙遜するモモンガだが、ギルドマスターがここ一番で頼りになるのを知っているピメントは信頼して作戦に乗る。

 

「では姿と気配を消して……アウラが鼻が利く設定だったか。全力で隠蔽スキル使ってモモンガさんの側に控えときます」

 

「お願いします。やり取りは〈伝言〉を使います。そして万が一の場合は玉座に逃げると。――他に気になる事はありますか?」

 

 ピメントは少し考え〈伝言〉の可能性を聞いてみた。

 

「そういや〈伝言〉でGMとか他のプレイヤーには繋がりませんか?」

 

 その質問に少し落胆した雰囲気で髑髏を振る。

 

「ここで待ってる間に試しましたがダメでした。他になければ、セバスにも六階層に来るように〈伝言〉を飛ばしてから向かいましょう」

 

 必要は無いのだが、〈伝言〉中と分かりやすくする為に、こめかみに指を当てセバスに〈伝言〉を繋ぐモモンガ。

 あっさりとした答えだが、長々話したい話題では無いのだろうと、自分を納得させ〈伝言〉しているモモンガを見る。

 すると、少しわらったかと思ったモモンガがすぐに驚いた様子になり、少しして手を下ろした。

 

「どうでしたか? セバスとは繋がったんですよね」

 

「驚かずに聞いてください。ナザリック周辺が草原になっているそうです。更に空には夜空が広がっているとか」

 

 それを聞いたピメントは、大きく息を吐いて「そうですか」と答えるだけだった。

 

「驚かないんですね。予想済みでしたか?」

 

「いやぁ、驚いてない訳じゃないですが…… 異世界転移ならそんなものかな、とも」

 

「そんなもの、なんですかね。あまりそれ系知らないので」

 

 小卒で働き始めたモモンガは、ユグドラシルを始めるまで娯楽らしい娯楽を行うには精神的にも金銭的にも余裕が無く、ネットTVぐらいであった。

 

「そんなものです。無事なら後で夜空でも眺めに行きますか。美女と夜のデートですよ、モモンガさん」

 

「馬鹿な事を言ってないで行きますよ。さっさとスキル使ってください。足りないもので補えるのはこっちで使いますから」

 

 ぎこちないセクシーポーズを取るピメントを急かしながら、そのおふざけで落ち込むのを避けられている自分に気付くモモンガは、心の中で友人に感謝した。




 明日は成田発……雪?降っちゃうの?(´・ω・`)電車……

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