いつものバスの行き先は...?   作:風月 雪桜

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意外と早く書き上がりましたね…


カムラン半島攻略作戦、敵空母を撃沈せよ!“決着、そして…”

複数の魚雷が爆発し、彼女の艤装を粉砕する

 

あぁ…

また、水底に戻るのね…

 

彼女は虚空に手を伸ばす

 

せめて、沈む前に赤城さんに謝りたい

先に逝ってごめんなさい

 

彼女はそこにいない人に向かって必死に手を伸ばす

後悔の念に駆られながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

装甲空母鬼に水柱が立ち、装甲空母鬼が絶叫をあげる

その光景を見て、電は自分でも不思議なほど心がざわついていた

 

装甲空母鬼は傾きながら、ゆっくりと沈んでいく

あと5分もすれば完全に水底へ堕ちるだろう

 

…――たい

 

装甲空母鬼は何を思ったか、虚空に向かって手を伸ばす

彼女の周りにいた深海棲艦は全艦退却し、残骸しかないから当然救助も来ない

彼女が小声で何か言うと、頬に涙が伝う

 

…助けたい!

 

電は無意識に主機を吹かし、装甲空母鬼へと近づく

少し遅れて暁が電の異常に気づき無線で呼びかける

 

『電どうしたの…?

 

電…?

電!!』

 

電は無線に気づくことなくどんどん速力を上げていく

 

何故、電は深海棲艦を助けようとしているのです…?

お姉ちゃん達を…みんなを傷つけたあの憎くて憎くてたまらないはずの深海棲艦を…

分からない…けど、今は彼女を助けなくちゃいけない…そんな気がするのです…!

 

周りの艦娘達も徐々に異変に気が付き、電を止めようと動き始める

 

『電!

そいつは危険だよ…!

早く離れて!』

 

『私が連れ戻してくるわ!

時雨はその間に司令官を呼んで!』

 

『わかった…!』

 

電が装甲空母鬼に着く時にはもう半分以上が沈んでいた

伸ばしていた手を掴み電は必死に引っぱる

 

ガゴン、ゴガッ、ポコポコ

 

装甲空母鬼の艤装が剥がれ海に落ちていく

 

「もう少し…もう少しなのです!」

 

『やっと追いついた…

何やってるのよ、電!』

 

「暁お姉ちゃん!?」

 

「…まさか、電深海棲艦を助けようとしてるの…?」

 

「そ、それは…」

 

電は深海棲艦を引っぱるので精一杯で暁の表情を窺いしれないが、怒られると思っていた

 

「そう言えば、電はそういう子だったわね…」

 

ぽん、なでなで

 

「っ!?」///

 

電は思わず暁のことを見る

暁は安心したように優しく微笑む

 

「最近勇ましくて忘れてたわ…

 

さて、暁も手伝うわ

引き上げればいいのよね!」

 

「は、はいなのです!」

 

電と暁は深海棲艦の腕を掴み引き上げる

 

「「せーの!」」

 

ガゴン、ドボーン、ぷくぷく

 

一際大きい鉄の塊が落ちると、深海棲艦は一気に軽くなり引き上げることに成功する

 

「やったのです!」

 

「さて、曳航して連れて帰りましょう!

いいわよね、司令官?」

 

その発言で思い出す

 

そうだ、司令官に許可を取ってなかったのです!

 

電は司令官の返答をドキドキしながら待つ

 

『……了解だ

暁と電は深海棲艦の曳航と武器がないかの確認をしてくれ

 

吹雪!

確か、那珂隊には大破した子はいなかったよな?』

 

『はい!』

 

『なら、深海棲艦の監視と援護を

金剛も那珂隊と合流してくれ』

 

『『『『『『了解!』』』』』』

 

司令官の指示に電は呆気に取られていたが、安心したのか少し涙目になる

 

ある程度司令官の指示が終わると時雨が司令官に質問する

 

『司令官、何故深海棲艦を助けるの…?

それも装甲空母鬼を…』

 

司令官は暫く沈黙したあと、質問に答える

 

『……

今の装甲空母鬼の状況は武装もなく敵意もない

ある意味、捕虜…と呼べる状況だ

 

よって、ジュネーヴ諸条約に当てはまる』

 

『で、でも』

 

『それに、深海棲艦を知るいい機会かもしれない

如何せん、言葉が通じた試しがないし』

 

『……』

 

『時雨は納得出来ないかもしれない…

我慢を強いているとは思ってる、ごめんな…』

 

『ううん、司令官がそこまで考えているなら、僕は反対しないよ…

こちらこそごめん…』

 

その会話を聞いて少し電は申し訳なく思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様です、司令官」

 

ミルクと砂糖が入ったコーヒーを大和が机に置く

 

「ありがとう、大和…

 

コーヒー美味しいよ」

 

適度な熱さで甘めなコーヒーは疲れている体に染み渡り眠気を覚ましてくれる

 

「それはよかったです!

それと…こちらもどうぞ」

 

大和が持ってきた皿にはサンドイッチが2つのっていた

挟んであるのはハムとチーズとキャベツかな?

 

「おお…!

丁度小腹が空いてたんだ!

頂きます!」

 

はむっ

!?

 

「う、美味い!」

 

具材は王道とも言えるハムとチーズとキャベツそれにマヨネーズとマスタードなのだが、辛いのが苦手なことを知ってか知らずかマスタードは少なめで非常に俺好みの味付けだった

 

あっという間に2つのサンドイッチを平らげる

 

「ご馳走様でした」

 

「お粗末さまでした

お気に召したようで大和、嬉しいです!」

 

照れたように顔を真っ赤にする大和に思わず笑みが零れる

 

「もしかして、俺の好みとか訊いてたの?」

 

「はい!

間宮さんや吹雪さんに訊いて辛いのは苦手と訊いていましたので抑え目にしました

 

大和ホテルはフルコースも夜食もバッチリですから!」

 

「そうだな!

 

…ん?」

 

夜戦部隊から緊急無線が来ている

まさか、まだ敵艦隊が!?

 

モニターを立ち上がると艦隊の様子が見える

交戦してはいないが、1つ明らかな異常がある

 

電が助けた深海棲艦が光に包まれているのだ

 

「吹雪!

一体何が!?」

 

『分かりません、突然光始めて…』

 

その時、光が崩れるように消える

そこにいたはずの深海棲艦はいなくなっており、代わりに1人の少女がいる

 

「深海棲艦が…艦娘になった…?」

 

俺の目にはその少女はどうみても装甲空母大鳳にしか見えなかった




最後まで読んで頂きありがとうございます!

次回は時系列的に大晦日になるんですよね
2ヶ月くらい早いですけど、仕方ないですね…(´・ω・`)

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