いつものバスの行き先は...?   作:風月 雪桜

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UA10000、お気に入り50、話数75記念です

主役は電とレ級です
そして、内容が重めです


二人の博愛主義者

「...レ級ちゃん、必ず帰って来てくださいなのです」

電は、電特製の白旗をレ級に渡す

 

《大丈夫、電ちゃん

必ず帰るから

 

天津風も元気でね》

 

「ふん、あんたなんか

横須賀の長門や電にボコボコにされて逃げ帰って来ればいいのよ

 

そうすれば、人類と深海棲艦が共存出来るなんて馬鹿みたいな考えを捨てるだろうし」

そう天津風はいうがちゃんと見送りに来るあたり、レ級のことが心配なのが分かる

 

《横須賀の長門と電には気を付けるよ

いってきます!》

 

「「いってらっしゃい(なのです)!」」

そう言って電はレ級が見えなくなるまで手を振った

 

レ級が見えなくなると二人を監視していた姫級みたいな深海棲艦が二人に指示する

 

「見送りは終わったね...

さ、早く艦娘寮に戻って...」

二人は渋々深海棲艦の指示に従って艦娘寮に戻る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後...

 

「それにしても、時津風と初風はいつ戻ってくるのよ」

天津風ちゃんは不満そうに呟く

 

一方電は数日前の深海棲艦について気になっていた

 

あの深海棲艦...何処が会った気がするのです...

 

「ちょっと、電聞いてる?」

 

「ふぇ?

何がです?」

 

「はぁ...だから──」

 

コンコン

 

ドアがノックされる

そして、そのままドアが開く

 

そこには、人型でル級でもタ級でもない深海棲艦が...

 

《貴女達が最後ね!

さ、付いてきて》

 

「ち、ちょっと待ちなさいよ!

時津風や初風はいつ戻ってくるの!?」

 

《大丈夫、二人とも元気にしてるから

直ぐ会えるようになるわ、直ぐにね》

 

そう言って、その深海棲艦はニコリと笑うと廊下を進む

 

艦娘寮はシンとしていた

なぜなら、私達以外の全艦娘は何処かに連れていかれてしまったからだ

 

暫く歩き艦娘寮の玄関まで来たとき、その深海棲艦はハッと何かに気が付いたように立ち止まる

 

「どうしたのです?」

 

《そう言えば、貴女達が最後だからこんな格好しなくて良かったわね》

そう言うと深海棲艦は光に包まれ、収まった時には駆逐艦雷の姿になった

 

「「え...!?」」

電と天津風は絶句する

 

雷はその様子を見て、コロコロと笑うと

「毎回同じ反応するのね~

何回見ても飽きないわ!」

と言う

 

「あ、あんた、何者よ!?」

電よりも早く我を思い出した天津風が雷に怒鳴る

 

「何者って...

貴女達がニンゲンに唆されて戦ってる深海棲艦よ?」

そう言うと雷は先へ進んでいく

 

電は雷に艦娘になってから会ったことなかったが、確かに雷お姉ちゃんだと確信した

 

電と天津風は雷に付いていきながら、小声で話をする

「あれ、駆逐艦雷よね?」

 

「確かにそうなのです...

どういうことなのです?」

数日前の深海棲艦と言い...

 

暫く進むと真新しい舞鶴第三の本棟のような建物にたどり着く

周りには工廠や寮のような建物もある

 

「ここが、私達の鎮守府...

真珠湾鎮守府よ!」

 

そこでは、深海棲艦と艦娘?が仲良くしているという異様...少なくとも電と天津風にはそう感じただろう光景が広がっていた

 

唖然とする二人を無視して雷は本棟に入っていく

慌てて二人は付いていき、電が雷に質問する

 

「あの...一つ質問があるのです...」

 

「何?私が知っているなら何でも答えてあげるわ!」

 

「この鎮守府に司令官さんはいるのです?」

電はおっかなびっくり尋ねる

質問されて嬉しいのか無邪気な笑顔で答える

 

()()いないわ!

代わりに赤城さんが司令官の代わりをしているわね」

 

それを聞いて少し電は安心する

同時に少しがっかりする

もし、人間が司令官なら和解が可能かもしれないと思ったからだ

そんな電の複雑そうな表情を見て、雷が苦笑いする

 

「やっぱり、電がレッちゃんの言っていた艦娘みたいね

きっと、こんな時も深海棲艦と人間が和解できると考えているんでしょ」

 

本棟の地下のドアで雷は立ち止まる

 

「さて、どっかが先にこの部屋に入って貰うわ

電か天津風どっちが先に入る?」

 

「私が入るわ」

天津風が即答する

 

「え...

天津風ちゃん大丈夫なのです?」

 

「どうせ、中に入らないという選択肢はないわよ」

そう言ってドアを開け、天津風は中に入っていく

天津風が暗闇に吸い込まれるように消え、電と雷だけが取り残される

 

そわそわしながら待つこと一時間

天津風が部屋から出てきた

電は天津風に駆け寄り、手をとる

 

「大丈夫、天津風ちゃん!」

 

「...大丈夫よ

次は電の番よね

私は上で待っているわ」

素っ気なくそう言うと階段を上って行ってしまう

 

電がドアを開けるのを躊躇っていると

「大丈夫よ、電?

私がいるじゃない!」

雷はドアを開ける

 

電の前に真っ暗な空間が現れる

 

この先に何が待っているのか

言い様のない恐怖と不安でへたり込む

 

「もう、しょうがないわね~

ほら、しっかりしなさい、ほらっ!」

雷に無理矢理立たされ、後ろから押される

 

嫌、嫌なのです!!

あの暗闇に行きたくないのです!!

やだ、レ級ちゃん助けて!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、レ級は...

 

人間の輸送船団を見つけていた

 

レ級の周りには五隻の深海棲艦がいた

イ級、ハ級、ロ級、チ級、タ級一隻ずつで、レ級が心配だからと付いてきた

勿論、レ級は全艦に艦娘と輸送船を攻撃しないように伝えている

 

《レ級、本当にいいのか?

艦娘や人間の中には我々に深い怨みを抱いている奴もいる和解など出来るはずもないと思うが》

今まで二回艦娘と交戦した事のあるタ級が質問する

 

《やってみないと分からないし

今回失敗したとしても、私は諦めませんよ!》

 

タ級は呆れたように溜め息をつくと元いた場所に戻った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コレヨリ我ハ深海棲艦ノ艦隊ヲ迎撃ス

ヒ71船団ハ護衛ノ天龍、睦月、如月ト共ニソノママ航海ヲ続ケヨ』

電は極東丸に信号を送る

 

『了解、武運ヲ祈ル』

 

電、暁、海風は船団から別れると深海棲艦の艦隊に向かう

 

深海棲艦の艦隊が見えてくる

 

見張り妖精さんから報告が上がる

 

未確認一、戦艦一、軽巡一、駆逐三

なお、未確認は白い旗のような物を振っている模様

 

『あの...電教官どうしますか?』

 

恐らく白旗を振っているから攻撃しないかと聞きたいのだろう

「私達の相手は人間ではなく、化物なのです

人間の常識、ルールの通用しない化物、情けは無用なのです」

電は自らに言い聞かせるように海風に返事する

 

『...了解です』

そう言うと敵艦に照準を合わせる

 

駆逐艦射程に入るまで両艦隊は一切射撃をしない

 

先手を打ったのは艦娘の艦隊だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁型駆逐艦と白露型駆逐艦が発砲してくる

 

チカ...チカ

 

《回避!》

レ級は咄嗟に指示を出す

 

駆逐艦三隻のすぐ近くに水柱が生じる

回避を命じていなければ、命中していただろう

 

ふぅ...とレ級が安心した瞬間、二隻の駆逐艦に爆発が生じる

 

イ級はそのまま轟沈し、ハ級は大破した

レ級は知らなかったが、電達は主砲を斉射せず、若干ずらして発砲、後から発砲した砲弾は回避した時に命中するようにしていたのだ

 

暁型の二隻は突貫、白露型は援護に回る

 

《このままじゃ不味い

私が一隻の相手をする!》

タ級がチ級と一緒に一隻の足止めをする

 

茶色い髪の駆逐艦...あれは電!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電は、未確認の深海棲艦に突貫する

目の前にロ級が現れる...が電には障害にすらならない

電は腰に差している刀を抜く

 

そのままロ級を一太刀で轟沈させる

 

だがそのタイミングで大破したハ級が電に噛み付こうとするが、海風の放った正確無比の援護射撃がハ級を撃沈する

 

電は撃沈された駆逐艦に見向きもせず

未確認に切りかかる

 

咄嗟に未確認は三連装砲でガードする

 

戦艦と駆逐艦では艤装を着けるとパワーの差が顕著になる

押し返された電は主砲を未確認の頭に向けて発砲

 

未確認視界を奪われ身構えるが、電は襲ってこない

 

横からシャシャと音がした瞬間、海風の放った魚雷が複数命中し、未確認は小破する

 

魚雷が命中しても小破で済むなんて大和型…いやそれ以上の装甲なのです!?

でも勝てない敵ではないのです

 

何故か敵の戦意は低いし

この攻撃で決めるのです‼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛い...イタイヨ...

止めて電...

 

電は再びレ級に突貫する

 

レ級は副砲を向けるが海風の砲撃で視界が遮られ、電が砲撃の煙を切り裂くようにレ級の脳天に斬撃を加える

 

実はレ級は電の戦い方を一度経験していた

レ級が教官と慕う深海棲艦が非常に似た戦いを得意としていたからだ

 

レ級は三連装砲の砲身と砲身の隙間に電の刀を挟む

そして力任せに刀ごと主砲を動かす

 

電は突然の出来事の態勢を崩す

空中で態勢を崩してしまった電はレ級に副砲を向けられても出来ることは殆どない

 

放たれた砲弾は電の装甲をいとも簡単に貫き電に甚大なダメージを与える

 

「あ...く...」

 

電は立ち上がるものの被弾した所からは血が流れ、刀を持つ左手は変な方向にねじ曲がっているだがその目からは戦意が衰えているようには見えない

 

やってしまった...

身の危険があったとはいえ、反撃してしまった

 

そして、レ級は電から強い負の感情を感じた

やっぱり、和解なんて...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『暁教官!

私が足止めします

そのうちに電教官を曳航してください!』

海風は気を失った電を支える暁に進言する

 

「駄目よ

貴女一人で足止めなんて!」

 

『ですが、このままでは全滅してしまいます!』

 

未確認は、攻撃していないがこっちは行動不能になってしまった電がいる

タ級の攻撃だけでも十分すぎる程驚異だ

 

「...分かったわ

でも、一つ約束して」

 

『なんですか...?』

 

「必ず救援艦隊が来るまで沈まないって」

 

『分かりました、必ず沈みません...

電教官が心配ですから』

 

暁は電を曳航し、鎮守府へと向かう

タ級は追撃しようとするが、海風がそれを阻止する

 

暁は鎮守府に向けて主機を吹かした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暁はベッドに眠る電を優しく撫でる

 

「......」

 

電の怪我は甚大で、左腕を複数骨折、内臓破裂に出血多量と人間だと即死レベルで艦娘でも危篤と判断される程だったが、幸い艦娘の核と言える脳と心臓は無事だったためドックで入渠すると怪我は直った

だが、大怪我を負うと入渠に体力をかなり使うため電は三日間、目を覚まさなかった

勿論、暁は寝ずに看病している

 

電の瞼がピクリと動き目を覚ます

 

「暁...?」

 

「おはよう、電」

電は周りを見ると質問する

 

「海風ちゃんは...?」

 

「...行方不明よ」

 

海風はあの後帰って来なかった

赤城率いる第一航空戦隊と金剛率いる第三戦隊が到着した頃には海風も未確認(戦艦レ級と呼称することになった)の二隻ともいなかった

 

今も長門率いる第一戦隊と川内率いる第三水雷戦隊が捜索しているが発見の報告はないらしい

 

「わか...ったのです...」

俯く電、その表情は窺えないが暁には手とるように分かる

 

憎い...深海棲艦が、そして何より自分自身が

 

「暁...お姉ちゃん...

電、間違っているのです...?」

 

「...私には分からないわ

でも、一つ約束は出来る...

何があっても、私は電の側にいる

絶対離れないから」

 

そう、彼女が戦いに明け暮れようとも、堕ちようとも、沈もうとも

 

絶対に付いていく

それが暁の長女としての務めで、償いだから...

 

「さて、そろそろご飯の時間だから食堂から電の分持ってくるわ」

暁が席を立つ

 

「大丈夫、食堂に行って食べるのです」

慌てて電は引き留めようとする

 

「まだ、起きたばかりなんだからあまり無茶したら駄目よ」

 

ちょうどその時ノックされる

 

「誰かしら?

入っていいわよ」

 

「暁...そろそろご飯の...

あ、電起きたんだね...

ちょうど良かった...」

 

銀髪で、透き通るような目...

 

「響だよ...

昨日着任したんだ...

電はいい教官らしいから、訓練が楽しみだね...」

 

「い、電なのです...」

 

響は一旦廊下に出るとカートを押して入ってくる

 

「電が怪我をしたと聞いたから、野菜たっぷりのボルシチだ...

これですぐ元気になれる...」

 

響は手際よく三つの皿を用意し、ボルシチをよそっていく

 

一つを暁の前に置き、もう2つは響の席の前に置きスプーンで一杯掬い吹いて冷ましてから電の口元に差し出す

 

「自分で食べれるから大丈夫なのです!」

 

「怪我しているんだから...

はい...」

 

電は顔を赤らめながらボルシチを食べさせて貰う

暁はその光景を微笑ましく思いながら見守っていた...




最後まで読んで下さりありがとうございます

いつもより倍くらいなのといつもと違う戦闘シーンで時間がかかりました...
時間がないというのもありますが

あと、サイドストーリー作って見ました
良ければ読んでみてくださると嬉しいです

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