いつものバスの行き先は...?   作:風月 雪桜

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すれ違い

攻略作戦から三日後

 

相変わらずの書類の量に絶望しながらも、ちょっとばかり今日を楽しみにしていた

 

今日の秘書艦は翔鶴だからだ

翔鶴が秘書艦をするのは久々で、どんなお菓子を出そうかとか考えてしまう

 

それもやっぱり、憧れだったからなのだろうか...

 

俺は工廠のドアを開ける

朝飯を食べる前に、翔鶴に工廠に来るように言われていたのだ

もしかしたら、改造を遂に受けてくれるのかな?

何故か翔鶴改造するの嫌がったし...

 

「翔鶴、おはよう」

 

「おはようございます、司令官」

翔鶴が振り向き微笑む

だが、その微笑みは儚げだった

俺はその儚げな様子が気になるがまず用件を訊くことにした

 

「で、翔鶴用事って何?」

 

「あ、はい

これを見てください」

そこには、97艦攻が置いてある

その前には銀髪の妖精さんが堂々と胸を張っている

 

「97艦攻?」

 

「そうですが、普通の97艦攻ではありません

この妖精さん達は、村田隊に所属しています」

村田隊...確か艦これの艦攻最強の呼び名も高いあの隊...

俺は翔鶴を手に入れたばかりだったから、村田隊は持ってなかったけど、友人が強いって言ってたな

 

「もしかして、今まで97艦攻を使い続けた理由は...」

 

「練度を高め、97艦攻の二部隊を村田隊にするためでした

 

村田隊は雷撃に秀でた隊です

きっと今後の航空戦では目を見張る活躍をしてくれると思います」

銀髪の妖精さんの合図の元他の妖精さんも敬礼をする

俺も不恰好ながら返礼する

 

「ありがとう、翔鶴

大変だったんだろう?」

 

「いえ、そんなことはありません」

翔鶴は照れたように頬を掻く

心なしか翔鶴が輝いて見える

 

思わず見とれていると

「司令官?どうかしましたか?」

 

「あ、うん、何でもないよ!(汗)

 

これからもよろしくね?翔鶴!」

俺の言葉で翔鶴の表情が曇る

あれ?

俺なんか不味いこと言ったかな?

 

「実は、私明日横須賀第一鎮守府に転属するのです」

 

「...え?」

転属...?

転属ってあの転属だよね?

 

「先日の攻略作戦の少し前に、提督に相談して横須賀第一鎮守府に転属することにしました

提督は、私が司令官に教えないようにと念を押したので、司令官に教えなかったのですが」

翔鶴が何か言っているが、それ所じゃない

 

翔鶴が転属...やっぱり俺の指揮が悪かったんだ

俺がモットしっかりしてれば...オレガ...

 

「司令官?」

 

「あぁ...うん...分かった...

翔鶴が積んでる、烈風と97艦攻村田隊二部隊と彩雲で横須賀第一でも活躍してね...

きっと向こうの提督は素晴らしい指揮をしてくれるだろうし...

それとこれ...」

翔鶴にネックレスを手渡す

翔鶴のイニシャルSの形をした細工品のついたシンプルなネックレス

正直、女性に贈り物なんてしたことないし、ファッションなんかに無縁だったから、喜んでくれるか分からないが

 

俺は翔鶴の反応を見ずに俺は立ち去る

頑張らないと...もっと...モット...

ヒトリハ──

 

パシッ!

翔鶴が俺の手を掴む

 

「離してくれ」

 

「嫌です」

 

「離せ──」

 

「離しません!!」

翔鶴は大声を滅多に出さないから、俺は驚く

 

「......」

 

「司令官、貴方のためなんです」

 

「俺のため...?」

虚ろな声で呟く

 

そんな俺に翔鶴は言い聞かせるように話す

「そうです

大した戦果も上げられず、大破して司令官を心配させてしまう私は足手まといです」

 

「そんなことない!

戦果なんか要らないし、生きて帰投してくれさえすれば俺は!」

 

「それに、司令官は私を疎んでいますから...」

え?俺が翔鶴を嫌ってる?

 

「俺は翔鶴を嫌ってなんかないよ?」

 

「で、でも、司令官はいつも私と話すときは口調や表情が硬いですよね...?」

翔鶴は困惑の表情を浮かべる

 

「え?

そう言われれば、硬い...かも?

 

でも、俺が翔鶴のことが嫌いではないのは確かなんだ

これからも、うちに居たいなら居てもいいんだよ

 

それに戦果を上げられないのは俺の指揮が悪いからだ

翔鶴は悪くない」

 

「そんなことはありません!」

 

「いや、吹雪や翔鶴が居なかったら、今頃どうなっていたか...

だから...居てもいいじゃなくて、これからもずっとこの鎮守府に居てくれないか?

俺を支えて欲しいんだ...誰も失わないために」

俺は翔鶴に頭を下げる

 

「頭を上げてください、司令官

司令官が望むなら、私はこの鎮守府にいますから」

顔を上げると、何故か顔が紅くなっている翔鶴が微笑む

 

「ありがとう、翔鶴...

改めて、これからもよろ──」

翔鶴が俺に抱きつく

え、え?

 

「良かったです、司令官に嫌われていたわけではなくて...

このネックレス大切にしますね?」

 

「ああ、うん」

こんな時どんな言葉をかければいいのか分からない自分を呪いながら、咽び泣く翔鶴の背中を優しく摩った




最後まで読んで下さりありがとうございます

山城があともう少しで改二になりそうです
これで欠陥戦艦とは言わせないし...

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