いつものバスの行き先は...?   作:風月 雪桜

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ちょっと今回長めです!


鎮守府秋刀魚祭り11

ん...

 

若葉と書類仕事して...

あ!

俺寝落ちしちゃったんだった

 

「うぅん」

伸びをすると毛布が落ちる

 

「若葉...」

 

なんて、気が利いた艦娘なんだ

今度なんか、お礼しないとな

 

と思いつつ執務室を出ようとドアを開ける

 

ゴン!

 

あれ?

 

「ふわぁぁ~っ!

前髪が崩れちゃう」

阿武隈が髪を必死に直す

 

「あ、ごめん、阿武隈!」

 

「もう、気をつけてくださいよぉ」

 

かなり無茶言ってる気がしないでもないが、悪いのは確かに俺だよな

 

「まだ、朝食は早いかな...」

 

「ちょっと早いかも?

司令官は、どうするの?」

 

「うーん...

とりあえず、着替えてくるよ

阿武隈は、執務室で待っててくれないかな」

 

「分かりました!

あたし的にはOKです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ、じゃ食堂行こっか?」

小説を読む阿武隈に話し掛ける

 

「あ、はい!」

 

「そう言えば、阿武隈今は第二十一駆逐隊の指導をしているんだったかな」

 

「そうですね...」

ちょっと、阿武隈が落ち込む

 

「ん?

なんかあったのか?」

 

「いや、なんと言うか

子日ちゃんが...」

 

「あ...あぁ」

 

子日が自由奔放に動き

阿武隈が「指示に従ってください~」と涙目で叫んでいるのが思い浮かぶ

 

「まぁ、頑張れ!」

 

「なんか、投げ遣りじゃないですか!?」

なんやかんやで食堂に着き

朝食を選ぶ

 

「うーん...

じゃあ、おすすめ和朝食セットで」

 

「私はいつものでお願いします!」

 

俺の所には、焼き魚、納豆、ご飯、味噌汁、和梨二切れ

阿武隈は、フレンチトーストとコーヒー、洋梨二切れ

 

「ふーん、毎日フレンチトーストなのか...」

 

「二日に一度程度ですが」

 

阿武隈がフレンチトースト好きだったのは初めて知った

フランス料理が好きなのかなと考えていると

 

「別にフランス料理が好きな訳ではないですけど!」

と言われ見透かされたようで恥ずかしくなる

 

俺の隣を争奪する駆逐艦娘達が間宮に叱られ俺に助けを求めたりしているが、俺は見ないふりをして阿武隈と話をしたり果物を交換したりした

 

帰り際に間宮を宥めて食堂から執務室に向かった

 

叱られていた駆逐艦娘が

なんでもっと早く助けなかったんだ

と言わんばかりに睨み付けてきたが、

いつもは、助けてるだろ!

少しは反省しろ

と睨み返した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室に戻るとドアの前に駆逐艦娘の時雨がいた

 

トラウマが...うぅ

大丈夫、俺が艦娘を怖がってどうするんだ!

 

「提督」

 

「は、はひ」

思わず声が上擦る

 

時雨が不思議そうに首を傾げるが気にせず続ける

「何で、僕は今日出撃予定に入ってないんだい?」

 

「まず、俺は司令官なんだ──」

 

「どうでもいい」

 

「...」ショボーン

 

「早く理由を言ってよ」

時雨の機嫌が悪くなる

 

「時雨の艤装は直っているし、疲労も抜けてる

けど、時雨は昨日軽巡洋艦と重巡洋艦flagshipにぼこぼこにされたんだ

少し休んだってばちは当たらないよ」

諭すように時雨に言うが

 

「嫌だ

休まなくていい」

頑なに拒否する

 

俺は、呆れるように言う

「なんで、そんなに出撃したがるんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前の青年は呆れたように質問する

 

...そんなのここの艦娘を守りたいから...だ

 

「ここの艦娘達を守りたいから...ただそれだけだよ」

 

()()にそう思っているなら、夕立や響達と遊んだらどうなんだ?

ちなみに、時雨の艤装の妖精は全員板チョコで買収しといたから勝手に出撃しようなんて思ったら駄目だからな?」

 

な、いつの間に!

 

妖精さんを見るとそっぽを向いているが口にチョコの破片がくっついている

 

青年は、阿武隈と執務室に入っていった

 

時雨は自室に戻りながら、さっきの言葉を反芻する

 

僕は、ここの艦娘達を守りたい

この気持ちに嘘はないはず

()()にそれだけなんだろうか...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「阿武隈には、ファイリングと一部の書類仕事して貰うけど大丈夫?」

 

「あたし的にはOKです!」

 

「終わったら、あそこの本読んでていいからな」

 

阿武隈は本が読みたいのか、張り切って仕事をこなしていく

 

昼前には阿武隈の仕事は終わって

昼飯を食べた後、阿武隈は漫画や小説を読む

 

「あ~

終わったんじゃ~」

机に被さりグタァとする

 

阿武隈がクスクスと笑う

「司令官って以外と子供っぽい所たまにありますよね

軍人じゃないみたいです」

 

「司令官とは言っても、18才の元学生だしねー」

グダグダしながら返事をする

 

「え!?

司令官って18才だったんですか?」

阿武隈が読んでいた小説を閉じ質問する

 

「あれ?

知らんかったの?」

 

「私達と同じ世界から来たというのは、ほぼみんな知ってますけど...

作戦説明の時とかキリッとしているし、二十歳以上だと思ってました!」

 

「そっか...」

そう言いながら、紅茶の準備をする

 

金剛直伝の淹れ方をしてみる

 

ああ...いい匂いだなぁ

こうやって、紅茶を嗜むのも悪くないな...

 

バァーン!!

執務室のドアが思いっきり開く

 

「わぁー

いい匂いっぽい!」

執務室に飛び込んできた夕立と

 

「白露が一番艦なのに~」

夕立とほぼ同時に飛び込んできた白露

 

「ちょっと、夕立

ドアは、優しく開けるものだよ...」

「この紅茶いい感じね」

呆れたように言う時雨と紅茶飲む村雨...ってそれ俺の紅茶!!

 

「司令官さん、どうしたっぽい?」

 

「あ、うん...

なんでもないよ」

紅茶を全員分淹れて席に着く

 

白露達は仲良く話をしたり、漫画を見合ったりしている

時雨も夕立から見せられた漫画を読んで笑っている

 

「─司令官?」

 

「...ん

なんだ、阿武隈?」

 

「なんか、司令官が寂しそうな顔していたから...」

 

「気のせいだろ

それで、何の話してたっけ?」

 

「そうそう、翔鶴さんが毎日訓練してて

流石にし過ぎだと思うのです!」

阿武隈が訴えかけるように俺を見る

 

「そうなのか?」

確かに、そう言われると翔鶴は毎日夜遅くまでしているような...

 

「司令官は、翔鶴さんを酷使し過ぎです!」

 

「え?

そうかな...

訓練は、週三くらいに言ってあるんだけどなぁ」

 

それ以外の日は、座学や遠征、演習、出撃等が入ったりするので、丸1日休みになるのは1日か2日程度だ

 

「え?

あの訓練って司令官の指示じゃないのですか?」

 

「違うよ

とにかく、翔鶴に注意しこう

無理は禁物だからな」

 

その時、執務室のドアがまたしても思いっきり開く

 

「深雪様の到着だぜ」

胸を張る深雪と

 

「こんにちは、司令官!

クッキーを焼いてみました♪

良かったら、食べてみてください」

クッキーの皿を片手で持ちながら、敬礼する吹雪

 

「もう、深雪ちゃん

ドアを乱暴に開けてはいけませんよ」

深雪を叱る白雪に

 

「司令官...紅茶欲しい...」

目を擦りながら、欠伸をする初雪

 

「ブッキー、クッキーはそこにおいといてくれ

紅茶は、ちょっと待ってろ」

 

「ブッキーじゃないですぅ!!」

なんか、悲鳴が聞こえたような...気のせいか

 

「ほう、司令官の紅茶か...私も頂こう」

「日向が飲むなら、私も飲もっと!」

「あの...私にも紅茶を頂けると...」

「様子を見に来たら、お茶しているじゃない!

五十鈴にもちゃんと用意しなさい!」

 

今度から、食堂でお茶するか...

執務室に入りきらないだろ...

まぁ、でも悪くはないかな

 

 

 

 

 

 

 

 

阿武隈と一緒に食堂に行く

 

んー

翔鶴は...あ、いた!

 

「翔鶴、ちょっといいかな?」

 

「あ、はい、何ですか?司令官」

 

「訓練毎日しているみたいだけど...無理してない?

大丈夫?」

 

「大丈夫ですよ」

微笑む翔鶴からは疲れを感じない

 

「そう?

ならいいんだけど...

無茶しては駄目だからね?」

 

「司令官も無茶をしては駄目ですよ?」

 

「してないって」

翔鶴と別れ俺は、夕食を堪能した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

流石に眠いな...

寝落ちしているとは言ってもほとんど布団で寝てないからなぁ...

 

ふぁー

思わず欠伸をする

 

コンコン

 

「ん、若葉か?

入っていいぞ」

 

「失礼します、司令官

夜遅くまで書類仕事をしていると聞いたので、来ちゃいました」

吹雪が俺に微笑みながら執務室に入ってきた

 

「あ...ああ

吹雪さんこんばんはです

でも、後、もう少しで終わるので──」

 

「嘘は良くないですよ、司令官

少しで終わる量ではないし、私に黙ってずっと徹夜していたんですよね?」

 

「......」

 

「司令官、少し休んだっていいんです

私達を頼ってもいいんです

司令官に万が一のことがあったら、どうするのですか...」

吹雪は、涙目で訴える

 

とは言っても、俺無理してないんだよね...

 

「分かった...

今日はもう寝るよ

お休み吹雪」

 

「ま、待ってください!

司令官!!」

 

俺は執務室のドアを開け、自室に戻った




最後まで読んでくださりありがとうございます

ちなみにフレンチトーストはフランス料理ではないそうで、語源の由来はアメリカの人が命名したからが有力らしいです

これで、四日目が終了
次は五日目です

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