いつものバスの行き先は...?   作:風月 雪桜

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今回は時雨と吹雪メインです

シリアス要素強めです!


鎮守府秋刀魚祭り3

もう、出撃と遠征は絶対しないと決めていたのに

ここの艦娘が幸せそうにしているからか、僕はいつしかここの艦娘を守りたいと思うようになっていた

 

執務室のドアをノックしようとするが、その手は止まる

 

手は震える

不安と恐怖...

自分の弱い部分が止めるよう唆す

もう、僕の守るのものなどないと

 

そんな考えを振り払うようにドアをノックする

 

コンコン

 

「どうぞ」

中から声がする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、また机に突っ伏して寝ていたため、吹雪に怒られることとなった

 

「いつも、言っていますよね?

無茶しては駄目ですって」

 

「...はい」

 

「なのに、何故無茶しているのですか?」

 

「吹雪、俺は机に突っ伏して寝ることは無茶とは──」

 

「無茶です

風邪をひいたら、どうするのですか?」

 

「大丈夫だって、人間そう簡単に風邪をひかないって」

 

「駄目なものは、駄目です!」

 

「吹雪は、真面目すぎるんだよー」

ちなみに昨日寝るのが遅くなったのは、吹雪の約束を守るため艦娘外出許可書を書いていたからだ

 

「司令官は、緩すぎます!」

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

ドアが開き艦娘が入ってくる

 

「ああ、時雨かおはよう

何か用か?」

俺は努めて普通に接する

 

べ、別に怖い訳じゃないぞ!うん

 

「提督にお願いがあって来たんだ」

 

「そうなの?」

 

「僕を出撃させて欲しいんだよ」

 

「え、まあ、いいけど」

 

「昼でも夜でもいつでもいいし、1日何回でもいいから」

 

「え、いや、一日一回で十分だから!

ただ、その代わりお願いがあるんだ」

動揺を悟られないように、話す

まあ、隣の吹雪が凄く動揺してて意味あるか分からないが

 

「お、お願い...!?」

時雨が怯えるように聞き返す

 

「え、うん

神通にね、対潜攻撃について教えてあげて欲しいんだよ

 

時雨は、対潜の経験も多いらしいからさ」

 

「う、うん

分かったよ」

 

さっきの反応といい、素直すぎることといい、いつもの俺を見るだけで殺気立つ時雨じゃないみたいだ

 

「あの、時雨大丈夫?」

 

「だ、大丈夫だよ」

そう言うと時雨は、出ていってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだろうなぁ...本当」

司令官は、心配そうに呟く

 

「私、噂何ですが聞いたことがあるんです」

私は、思い悩んでいたことを話す

 

「どんな噂?」

 

「時雨ちゃんが一番最初に着任した鎮守府の提督は暴力をする上──」

 

「...大体、分かった

もしかしたら、俺のこと怖いのかもな...

ちなみに、その提督は?」

 

「憲兵に捕まって確か、極刑に

以来、艦隊司令部は厳しく見張っているみたいですけど」

 

「吹雪は、そんな目にあってないよな?」

 

「え?

あ、はい!

私は、横須賀第一から、トラックに転属になって、それからここに配属されたので」

 

「そっか...良かった...」

 

「私は、運が良かったのかも知れないです

変なことをする司令官に出会わなかったから...」

 

「そうだなぁ」

ニヤリと笑った司令官がいきなり私の頬をつつく

 

「ふぁ!?

や、止めてください」

 

「いや、ブッキーの頬プニプニだったなと

ちょっと、摘まませてよ」

 

「駄目ですよ!」

 

「ケチー!」

私は、司令官の気遣いがありがたかった

 

 

 

 

 

 

 

 

昼飯を食べ終わり

護衛している艦娘を見守りつつ、書類を処理する

 

吹雪は、疲れているのかソファーで寝てしまった

 

カキカキ

コチコチ

カキカキ

コチコチ

 

俺の書類を書く音と時計の音以外に何か聞こえる

無線でもない...

原因を探すため部屋を見渡す

 

「吹雪?」

 

吹雪がソファーで寝ていたのだが、魘されている

 

「吹雪?

大丈夫か?」

 

「う...

青葉さん...逃げて」

 

「しっかりしろ、吹雪」

 

「もう、私は...駄目...だから

みんなも...逃げて...」

吹雪の頬を涙が伝う

 

俺は、堪えきれなくなり吹雪を抱きしめる

「大丈夫、吹雪!

青葉も古鷹も、無事だから!

頑張ったな吹雪!!」

 

「うぅ...

本当...ですか...?」

 

「本当だ!」

そう言うと、安心したのか吹雪の力が抜ける

 

吹雪をソファーに寝かし、隣に座る

そう言えば、吹雪が轟沈したのは、10月頃か...

サボ島沖海戦で、吹雪は敵艦の集中砲火を受けて轟沈した

 

艦娘には、少なからず艦の記憶が残っている

だから、人々の平和を願い日々戦う

だが、いい記憶ばかりじゃない

艦娘のほとんどの艦が戦いで轟沈している

中には、人間に強く恨みを持ってもおかしくない娘もいる

 

俺は、同じ艦娘でないと分からない()()()を痛感した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん...あ、司令官!

ごめんなさい!寝すぎてしまいました」

 

「大丈夫、今終わった所だ」

司令官は、悲しそうに私に微笑む

 

「あの、何かあったのですか?」

 

「なんでもないよ」

そう言う司令官の顔はいつものように明るかった

 

「正直に話してください!

何があったのですか?」

そう問いかけても、司令官は首を振るばかりだった




最後まで読んでくださりありがとうございます

秋刀魚祭り関係なくて、タイトル詐欺です、ごめんなさい

ちょっと説明しますと
吹雪は、1942/10/11に戦没しました
サボ島沖海戦で敵味方の混乱もあり、敵艦隊に手が届く程近づいてしまった吹雪は、重巡洋艦サンフランシスコらの集中砲撃を食らって撃沈してしまいます
詳しくは、サボ島沖海戦と調べてみることをおすすめします

彼女達(艦娘達)の過去を調べてみると意外な一面を見ることが出来るかもしれないです

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