いつものバスの行き先は...?   作:風月 雪桜

25 / 98
今回は、番外編です
UA2000、お気に入り10、話数25記念です

ただ、轟沈シーンがあります
注意してください


希望を失った少女の話

僕は、気がつくと横須賀の海に立っていた

周りには、初めてみるが何故か懐かしい少女達がいた

お互いに抱き合っていたりもする

 

陸を見ると、軍人らしき人が威風堂々とした海面に立つ女性と話している......

 

そこで、目が覚める

 

今日は、出撃予定があったなと思いつつ、夢の内容を思い出す

初めて、人類と艦娘が出会った瞬間...僕はそれに立ち会っていた

 

食堂に入り質素な食事を取る

 

「やあ、時雨...

今日もよろしく...」

食堂全体が重々しい雰囲気の中、目の前のクールそうな少女は努めて明るい声を出す

 

「おはよう、ヴェル

今日もカムラン半島だよね?」

目の前の少女の名はΒерный(ヴェールヌイ)

 

暁型二番艦の響がロシアに引き渡された時に新たに与えられた名だ

 

「私は、ヴェルって呼ぶなら、響って呼んでくれた方が嬉しいんだけど...

 

カムランは、今瀬戸際だからね...」

 

「そうだね

今日も頑張ろう」

 

 

 

 

 

 

 

「ヴェル!ヴェル!?

しっかりして!ヴェル!!」

目の前でぐったりとしているヴェル

僕を敵艦爆の爆弾から庇って大破してしまったのだ

 

『提督!

撤退を進言します

Βерный(ヴェールヌイ)が大破した以外にも全艦が小中破しています

 

このまま、敵主力艦隊に遭遇すれば大打撃を受けるのはこっちです!』

 

『何言ってんだ?

駆逐艦を盾にして戦えばいいだろ

幸い、空母や戦艦は中破してないんだ

進軍しろ』

 

『ッ!?』

 

その後提督との無線を終えた後、連合艦隊旗艦の艦娘は指示をする

 

『ヴェルちゃんは、後ろへ下げます

時雨ちゃんは、ヴェルちゃんの援護を

 

では、敵主力艦隊を強襲します』

 

 

 

 

 

 

暫くすると放っていた偵察機からの報告があった

 

『我敵艦隊見ゆ

駆逐艦多数、軽巡洋艦15、重巡洋艦10、戦艦5、空母8、正体不明1』

 

艦隊は、驚愕した

敵主力艦隊はこんなにまだ戦力を残していたのだ

 

『!?

直ちに撤退する

まだ、見つかっていないなら、損害なく撤退が...』

 

『て、敵編隊発見!

数、300以上!』

 

『空母は直ちに直掩機を発艦せよ!

対空戦闘用意!!』

 

僕は、ヴェルを抱えながら上空を睨み付けるしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ...はぁ...げほぉ...」

 

服は原形を留めない程破れ、主砲はひん曲がり、魚雷発射管は根こそぎ抜け落ちていた

 

抱えるヴェル以外に艦娘は見当たらない

無線で、流れていた悲鳴や怒号も今は聞こえない

無線が壊れたのか...それとも...

嫌な予感、今まで何回も目の当たりにした光景がフラッシュバックする

 

「し、ぐれ

泣いているのかい...?」

 

「な、泣いてなんかないよ」

 

「...もう、私駄目...みたいだ...」

 

「ドックに入れば大丈夫だよ!!

何を言ってるの!?」

 

「時雨、本当は分かっているでしょ...?

私の艤装は完全に浮力を失なってる

しかも、ここは敵勢力の海域...

このままじゃ、時雨も沈んじゃう

だから...さようなら」

時雨を突き放したヴェールヌイは海面に吸い込まれるように沈んでく

 

「待って!!

嫌だ、雪風も響もなんで僕を置いてくの!!

待って、待ってよ!!」

 

小さな体は、暗闇に溶けるように見えなくなった

取り残された時雨は、泣きながらただただ真っ直ぐ航海した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

偶然、遠征中の艦娘に助けられ元の鎮守府に戻ったが、提督に

「何故、お前だけ帰ってきた」

「お前に補給する資源はない」

と罵られ

 

時雨は、自室に籠った

 

出撃や遠征、演習は勿論

食事すら、取らなくなっていた

 

そんな時雨を提督は、いらないと判断したのか

時雨には、転属命令が下り

護衛の艦娘とともに転属先の鎮守府へ向かった




最後まで読んでくださりありがとうございます

今回、記念のお話なのに重かったかなと反省です

次記念のお話を出すことがあれば、ほのぼのした感じにしようと思います

ちなみに、時系列は
時雨が出撃した時、主人公の司令官が着任し
時雨に転属命令が下ったのが、紅葉を見に行っている時です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。