ぐだ男と野獣のクッキーkiss   作:野鳥先輩

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色々危なっかしい難産回。なんで5k超える必要があるんですか?


セプテムにて。おじさんと

「切り札は切れる時に、か」

 

 その光景を前にして、ネロは呟いた。彼女の軍勢を前にして、自らの軍勢(アタナトイ)を展開したダレイオス三世。それに果敢に立ち向かう二騎のサーヴァントの姿があった。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■ーーー!!」

 

 呂布奉先。言わずとしれた一騎当千の猛将である。彼の武器である方天画戟には『ホモはせっかち』という英文が刻まれていた。シェイクスピアによるエンチャントである。

 

「あの者は、死した兵士すらも縛り付ける圧制者の鑑にして人間の屑! 鉄槌を下さん!」

 

 全身に英語で『変態糞土方』と刻まれたスパルタクスが吼えた――

 

 

 

 

 

 

 その頃。

 

 それは幾百万回と再生された、あの屋上にも迫るほどの知名度を誇る光景。畳が敷かれたその部屋には布団が積まれていた。それにもたれ掛かるのは、MUR大先輩である。その右手側の障子際には野獣先輩、この場においては鈴木が座っていた。そしてMURから見て左手、KMRが部屋の隅の方で『Weeklyぴあ1998年9月14日号』を広げて読んでいた。

 

 誘惑のラビリンス第三章、空手部 性の裏技のワンシーンの再現だ。光景は鈴木――ビーストが固有結界として展開したものだ。そしてKMRは、MURが自身の宝具を以て英霊の座より一時的に招いた存在。当然彼もサーヴァントである。

 

 この固有結界内には、二人の来訪者が存在していた。

 

「――いつまで立っているつもりだ?」

 

 腕を組んでいる空手着の男が声をかける。もみあげの濃い彼が一人目の来訪者、AKYS――秋吉亮。原典において迫真空手部とは何ら繋がりが無かったものの、空手を指導している事から彼らの師範とされた人物である。それは数々のBB劇場で採用されてきた設定であり、原典へと食い込んだ形になっていた。彼もMURの宝具『誘惑のラビリンス』に招かれたサーヴァントである。

 

 AKYSに話しかけられた男は答えるでもなく、眉間にしわを寄せながら紫煙を燻らせていた。土足で畳の上に立っている、赤いコートを羽織った彼はロード=エルメロイ二世。この場に招かれし、敵対者だ。

 

「風呂でも入るか?」

「遠慮させて頂く。出来れば風呂なんぞより、椅子を用意して頂きたいものだが」

「なんで椅子なんか用意する必要があるんですか。ここ畳部屋ですよ?」

 

 KMRが吐き捨てるように言うと、エルメロイⅡ世はますますもって不機嫌を募らせていった。

 

「これだから……」

 

 悪態を突きながらも周囲の観察を怠るエルメロイⅡ世ではなかった。とはいっても此処は彼にとって敵陣。そしてサーヴァントが四体、この狭い空間で自身を取り囲んでいる。今は攻撃を加えてくる気配こそないものの、撃破を狙えば一瞬。手詰まり感が強かった。

 

 そもそも、ここに引きずり込まれる以前にこれだけのサーヴァント集団に囲まれた時点で、エルメロイⅡ世の当初の計画は殆ど破綻していたのだ。

 

「……ただ、君達のマスターをここへ連れ込まなかったのは、君らにとって最大の負け筋だがな」

 

 AKYSは内心困っていた。マスター、正確には自分を召集したMURのマスターであるが、彼ははぐれサーヴァントであるエルメロイⅡ世を説得し、味方に付けようと試みていた。が、肝心のMURが即池沼化し、相手は中々首を縦に振ろうとしない。

 

 

 

 

 

 

 

 オレ達はアレキサンダー、そしてエルメロイⅡ世と相対した。再三に渡り背後から攻撃を仕掛けてきた連中がもし動くのならば、突如戦場に姿を現したダレイオスに注目が向けられている今だと、カルデア一の知将が読んだのだ。それは見事に的中し、結果としてオレ達にとって途轍もなく有利な状態までもっていく事が出来た。

 

「……ただでは通してくれなさそうだね」

 

 黒毛の巨大馬に跨る赤毛の少年が、爽やかに笑っている。諸葛孔明はライダー(MUR)が掠め取る事に成功したが、随分な余裕だ。こちらも正直負ける気がしない。オレの隣には、アサシンがいる。

 

「おじさんはねぇ! 君みたいな可愛いねぇ、少年()の悶絶顔が大好きなんだよ!」

 

 迫真の性癖暴露をアレキサンダーへと浴びせるアサシン。その腰には日本刀がかけられていた。葛城蓮。通称、虐待おじさん。様々なレーベルで幅広く活躍したホモビ男優だ。様々な作品に登場しているが、有名なのは『悶絶少年 其の伍』だろう。そう、あのひでとの共演者である。この特異点にやって来る前に、召喚に成功したのだ。

 

 

「そもそも最初から、こういうのは僕のやり方じゃなかったんだ。先生には悪いけど」

 

 アレキサンダーの纏う雰囲気が変わった。少年を姿をしているとはいえ相手は征服王、紛れもない大英雄。クラス的にも優位は取っているが、油断は禁物。

 

「――そうだよね、始まりの蹂躙制覇(ブケファラス)!!」

 

 黒馬の嘶きが、蹂躙の開始を告げる。即座に動いたのはアサシンだ。アサシンは、オレを抱え上げると、一瞬で突進の軌道を回避した。まるでドラゴ○ボールの瞬間移動の如く。今回マシュは控えに待機させていたから、必然的にオレの守りは薄くなっている。もっとも彼女がいたとして、これほどの突進を完璧に防ぐ技量があるかと言われれば危ういが。アサシンはすぐさま、何処からか取り出した二丁拳銃を連射した。だがそれは、オレ達を突破しようとするアレキサンダーを捉えるには至らない。

 

「動くと当たらないだろ!」

「まずい、ネロの所まで行く気か!」

 

 ネロは未だ本陣にいる。ブーディカも一緒にいるが、恐らく彼は止められないだろう。この場で止めねばならない、今すぐに。

 

「アサシン! アレを通すな!」

「悪い子はお仕置きだどー!」

 

 筋力不足のアサシンには酷な依頼だというのは重々承知しているが、ブケファラスの足についていけるサーヴァントなんて、この場においてたった一人だ。アサシンは瞬間移動の様な移動法で、ブケファラスの前面へと躍り出る。

 

「――速いね」

「オイオラァ!」

 

 空間を塗り潰すような一閃が、馬上のアレキサンダーを掠め取った。落馬したアレキサンダーは受け身を取って着地したが、深い傷を負っていた。

 

 アサシンの持つスキル『少年特攻 A』、そして『加虐体質 EX』がこれ以上なく刺さる相手だ。相性は極めて有利、だからこそライダー(MUR)をエルメロイⅡ世に当て、アサシン単騎で勝負を仕掛けるという手があった。

 

「YO!」

 

 また一瞬で間合いを詰め、横薙ぎの一閃を浴びせようとするアサシン。しかしそれは、ついに放たれる事が無かった。

 

 天をも穿つ轟雷がアレキサンダーへと降り注ぐ。咄嗟にバックステップしたアサシンだが、こちらへ戻って来た時には全身に火傷を負っていた。

 

「――怒らせちゃったねぇ! 俺の事ねぇ!」

 

 ……まずいな。加虐体質の副作用が既に出始めている。今のアサシンは加虐に取りつかれ、まともに判断が出来ない状態にあるだろう。しかしこの雷は――

 

「『神の祝福(ゼウス・ファンダー)』。神の子としての自己認識」

 

 土煙から現れた彼は筋骨隆々とした青年の姿になっていた。そこにはもう先ほどまでの、少年のあどけなさは残っていないものの、相も変らぬ爽やかな気風が感じ取れた。

 

「……まさかここで使う事になるなんてね」

 

 彼の元にブケファラスが走り、また騎乗する。威風堂々とした立ち振る舞いには圧倒されるばかりだ。ふとアサシンの方を見ると、アサシンはそれを意にも介さず煙草をふかしていた。

 

「……アサシン?」

「全く、困ったもんじゃい」

 

 その眼にはある程度だが、正気が宿っている。彼の『加虐体質』は少々特殊で、『少年特攻』にリンクしてその程度を変える。攻撃対象が『少年特攻』の対象である場合はA+ランク相当、そうでない場合はDランク相当になる。非常にレアケースだが、戦闘中に対象が『少年特攻』の対象から外れたとなれば当然、アサシンは冷や水を浴びたように冷静さを取り戻す。

 

 平たく言えば今のアレキサンダーが、彼のストライクゾーンから微妙に外れたという事だ。とはいえ完全に外れた訳でもないだろう。相手の『紅顔の美少年』はまだ残っているし、アサシンの原典から考えてもまだ許容範囲内のはずだ。

 

「――とはいえこれ以上『神の祝福(ゼウス・ファンダー)』を使われたら、力負けのリスクがある……推測だがあれにも欠点がある。アレキサンダーを、馬から降ろさないように」

「了解した。マスター」

 

 走り出したアサシンに瞬間強化と応急手当をかける。

 

 瞬間、再び姿も無く間合いを詰めた。場所はアレキサンダーの真ん前、疾走するブケファラスの頭上である。

 

「真ん中来いよぉ!」

 

 凄まじい剣戟音。アサシンが放つ太刀筋が見えないほどの高速の斬撃に、アレキサンダーは確かに対応していた。だがその体には一つ、また一つと小さな傷が刻まれていく。僅か一秒にも満たない神速の攻防は、暴れたブケファラスによって中断された。

 

 今度はブケファラスの尻に降り立ったアサシン。彼の手にはもう刀は握られていない。アサシンの、虐待おじさんの技術は多岐に渡るが、その最もたるは『格闘』である。残像が現れるほどの怒涛の蹴撃がアレキサンダーを襲った――

 

 

「工事完了です……」

「……この身体じゃ、ここまでかな」

 

 アレキサンダーは馬を止め、アサシンはすぐに飛び降りた。今にも消滅しそうなアレキサンダーだが、その顔に後悔の色は無い。

 

「……『神の祝福(ゼウス・ファンダー)』は使わなかったな」

「君のマスターの考え通りだ。ブケファラスに乗ったまま、『神の祝福(ゼウス・ファンダー)』を用いれる道理はないさ」

「そうか……」

 

 アサシンに見届けられながら、アレキサンダーは消滅した。

 

 

 

 

「ぬわああああん疲れたもおおおおおん!」

「ちかれた……」

 

 ビーストの呑気な雄叫びが、終わりを告げる。オレはAKYSに話しかけた。

 

「どうだった? AKYS」

「野郎、かの王以外に仕える気はないの一点張りだ。挙句外の気配を察して自害しやがった」

「そうか……」

 

 エルメロイⅡ世がネロ軍の軍師に入ってくれれば有り難かったんだが。はぐれサーヴァントで、アレの行いを肯定していた訳でもないから、無理な相談ではないと踏んだんだが、見込み違いだったか。仕方がない、向こうも人だ。矜持が合わない、というのはよくあることさ。

 

 ふと見ると、AKYSとアサシンが会話していた。

 

「秋吉……」

「葛城、サーヴァントとやらになってもやるじゃねぇか。次は俺とだな」

「冗談はよしてくれ。また今度な」

 

 ……サーヴァント同士の普通の会話というだけで、ここまでほっとするのもそうないな、全く。

 

 それにしてももう何というか、精根尽き果てたな。そもそも軍隊に混じって移動するのがたまらなく面倒くさい。どうせ特異点なんて後で修正されるんだ、過程よりも結果だ。

 

「なんかめんどくさいし、あれ使おっか。ロマン」

「ええっ!? あ、あ、あれを!? というかちょっと待った。今めんどくさいって言ったね!? やめてくれよ(絶望)」

「折角召喚出来たんだ。使わなきゃ損だよ? はは……」

 

 先日召喚に成功した、召喚システムに応じた初めての女性サーヴァント。本気を出させればもう一つ特異点を生みかねないから、ロマンから使用を禁じられていた。その封をここで解く。

 

 

「……やっちゃえ。バーサーカー」

 

 それに呼応するようにデデドンという音が鳴り、景色が暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

「あれもまた、ローマに他ならぬのか」

「お、おい! ロムルス!」

 

 レフは焦っていた。ロムルスはそれに睨まれたのみで消滅し。自身もまた同じ運命を辿ろうとしている事に。

 

 彼らの前に相対するのは、見上げるほどの化け物であった。人の背丈ほどの顔面には言語にて表現するのも悍ましくなるほどの、心の奥底から恐怖を掻き立てられ、心肺がその活動を停止させるほどの酷さであった。かろうじて、女であるという判断が出来たレフは、それを目前に何もすることが出来なかった。

 

『一万円くれたら、しゃぶってあげるよ?』

「は、はははは! サーヴァント風情が何を、ななな、なにを偉そうに!! 私は、私は!」

 

 全ての勇気を振り絞り、心肺を力づくで動かし続けるレフ。そうでもしなければこの怪物を前にして、生命機能の停止は避けられなかった。だがそれでも最早、彼の頭脳は正確な状況判断能力を失っている。

 

「私は、レフ・ライノール・フラウロス! 七十二柱の魔神が一柱なのだ!」

 

 魔神柱へと姿を変えたレフ。だがその醜さも悪逆たる意志も、その化け物には遥かに劣る。

 

 瞬間、化け物の顔が真顔に戻った。

 

「ハ、ハハハハ! 凡百のサーヴァントめ! ひれ伏せ、ひれ伏せ! ひれ伏せえぇ!」

 

 だがレフの冗長も長くは続かなかった。化け物を構築する黒い胴体は、さながら世界全てを包む蛇のように変質を開始した。身長の差は瞬く間に覆り、魔神柱はただ、睨まれた蛙の様に、自分の終幕を待つより他なかった。

 

『しゃぶってあげるよ?』

「う、うあああああああああああ あ あ ぁ ぁ ぁ……………アッ」

 

 化け物、ピンキーはそのまま、魔神柱にしゃぶりついた。首を上下させる度に魔神柱は正気を失い、間もなく跡形も無く消滅した。

 

 

 ローマは確かに救われた。不幸にもその光景を目撃してしまった、ぐだ男とそのサーヴァントを除く多くの男性の犠牲の果てに。決して記録には残らない、残してはならない歴史の一幕。




アルテラよりよっぽど人理完全破壊案件だけどギャグ補正でセーフゾ

あっそうだ。AKYSとか虐おじとかKMRは結構普通に喋るゾ
全編語録期待兄貴がいたら申し訳奈須。
使える所は語録使っていきますんで……

【真名】葛城蓮
【クラス】アサシン
【性別】男
【身長・体重】22歳 172cm・67kg
【属性】混沌・悪
【ステータス】
筋力 C 耐久 B
敏捷 A+ 魔力 C
幸運 B 宝具 C
【スキル】
気配遮断D
加虐体質EX :少年特攻にリンクして強く発動する。少年特攻対象外の相手にはDランク相当。
少年特攻A :少年の範囲は実年齢20以下又は『紅顔の美少年』及び『紅顔の美少年(偽)』の所有者。攻撃力が増大する。
専科百般C- :適用されるのは剣術、馬術、銃術、迫真空手等武芸に限られる。
透化D
【宝具】
『虐待流儀蹴闘殺法』
 全ての隙を圧縮して放たれる必殺の連続蹴撃。バトル淫夢で培った伝統のアレが放たれる。蹴撃中に敵が壁に引っかかれば更に繋がる。
『瞬間移動(偽)』
 かの有名な漫画ドラゴンボールの、あの瞬間移動。とはいえ対象は自分だけであり、原典とは比ぶべくもない程度の移動距離。これもバトル淫夢にて培われた技術。


【真名】ピンキー
【クラス】バーサーカー
【性別】女
【属性】混沌・悪
【ステータス】
筋力 E 耐久 B
敏捷 D 魔力 B
幸運 E 宝具 EX
【スキル】
狂化:EX
フェラ魔 B:キス魔の亜種
無辜の怪物 A:顔だけの化け物。
変化 B:不定形の肉体。自身の大きさをある程度変更できる。召喚時より小さくは出来ない。
【宝具】
『男喰らいの怪物』
 男性に対し圧倒的なまでの恐怖を押し付け、心肺停止させる。多くのホモを心肺停止に追い込んだ逸話から。女性には効果が薄く、聖人レベルの良い人なら擁護すらしてくれる。
注釈:顔だけの状態で浮遊している。原典の影響から、若くてイケメンな男に対し執着する。つまりぐだ男君は……あっ(察し)

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