ぐだ男と野獣のクッキーkiss   作:野鳥先輩

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ノンケ回です。(バトル淫夢的な)見所さん!?ありませんよ!

七章で出て来たASTKピラミッドで草生やした
あれ~おかしいね何処かで見た事あるね?


昏睡レ〇プ!デンジャラスビーストと化したマシュ!

「~♪」

 

 アマデウス(淫夢)がかつてない上機嫌で指揮棒を振っている。彼は基本的にド屑だが、こと音楽となると話が違う。音楽に対する態度のみ真摯そのもの、少なくとも彼にとって音楽は、人理よりも遥かに大事なものなのだろう。

 

「アーッ!」

 

 そして、アマデウスの指揮に従い透き通るような喘ぎ声をあげてみせるのは、我らが世界のトオノ。真夏の夜の淫夢第四章にて野獣先輩と共演し、昏睡レイプされた被害者である。水泳部員である事くらいしか情報の無い彼がこのような美声を発する事が出来るのは、恐らく後世の音MADにて、世界のトオノとしてもてはやされた事に起因する宝具だ。

 

 演奏が終わった後、隣に座っていたマシュが目を輝かせながら拍手をしていた。こういった芸術を鑑賞する経験が少なかったのだろうか。感極まって涙を浮かべたり、演奏中に俺と手が重なり、顔を染めたりと案外忙しかった。俺としても、予想外に世界のトオノの完成度が高かった事と、アマデウス(腐っても楽聖)の音楽センスが重なり合った演奏というのは聞きごたえがあり、時間も忘れて聞き入ってしまった。

 

「先輩、綺麗な歌声でしたね。男の人であんな声出せるなんて知りませんでした」

「あれの元ネタ喘ぎ声なんだよね」

「えっ……あっ(察し)」

 

 マシュはとても残念そうに、片手で頭を抱え溜息をつく。しまった、完全に墓穴だったか。いやだが真実を伝えるのは、決して悪い事ではないはずだ。こんなカルデアにいては、ホモビ関連の知識は遅かれ早かれ叩き込まれることになるのだから。

 

 

 

 マシュはその後、ロマンの元へと向かった。どうやら彼女、ロマンからの呼び出しを忘れていたらしく、館内放送を聞いた時の慌てようったら無かった。

 

「珍しいな、マシュがあんなこと。普段しっかりしてるからなおさらだ」

「そりゃまぁ、意中の人に呼び止められた挙句音楽鑑賞デートのお誘いなんて受けたら、多少はね?」

「もしかして俺のせいとでも――」

 

 そう反論しようとして、頭の中で直近の行動を整理するとどう足掻いてもある結論に達するのだ。

 

「……マシュからすれば、音楽鑑賞デートであった可能性が微粒子レベルで存在する?」

「微粒子も糞もないだろうに。糞だけに……埋め合わせして(提案)」

「ア、アマデウスに真面目に説教された……」

 

 埋め合わせ、なんてものは言うまでもない。中々にショックを受けていた様子は見て取れたし、彼女に限って特異点での不調に繋がるなんてことも無いだろうが用心に越した事は無い。

 

 

「あっそうだ(唐突)おいダヴィンチちゃん、録音は終わった?(話題逸らし)」

「うんうんバッチリだよ」

 

 ダヴィンチちゃんが頷く。元はといえばこの演奏は、遠野の歌声を録音する為のものだった。依頼者は当然、アマデウスである。彼は淫夢音MADを作るために、わざわざ英霊の声を録音する事を提案したのだった。俺達はというと、それを傍で勝手に聞いていたに過ぎない。俺としても生の世界のトオノを聞いてみたいという気持ちはあったし、実際大満足の出来であった。例え後世に語られ、付与されたものであっても、彼の絶唱は正に、かの嬌声の再現であった。

 

「遠野、良い声してたよ」

「ありがとうございます」

 

 遠野は照れくさそうに、はにかみながら答える。服装は、最早見飽きた青いTシャツであり、その裏には決して剥がれないレシートが残されていた。

 

 実は、遠野が召喚出来た事は野獣先輩及び、野獣先輩・サンタ・リリィには伝えていない。今後も極力距離を置かせる方針だ。何故かと言われれば実に単純な話であり、生前の二人の関係を考えると、悪影響を及ぼす可能性が高いと踏んだのだ。具体的な内容には敢えて言及を避ける。思えば複数人のサーヴァントを召喚するこのシステムにおいて、今まで生前の遺恨を骨子とした軋轢が無かった事が奇跡と言えよう。

 

 

 ともかく、野獣と遠野は会わせてはならない。直感がそう訴えるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬわぁぁん……ハッ」

 

 医療班の健診の帰路にて、口走ったそれをマシュは押し込む。幸い廊下には誰もおらず、彼女の失言を耳に入れる者は誰一人としていなかった。マシュはそれに安堵を覚えるとともに、先ほどの失態を思い出して顔を赤く染める。

 

 

「――この辺にぃ、遠野の気配、するらしいっすよ。じゃけん夜行きましょうね」

「いいゾーこれ」

 

 自分が察知したのに伝聞調で語る男、マシュが少なからず影響を受けてしまった男である野獣先輩と、その隣で談笑するMUR。二人の手には、黄金色に輝くビール缶が収まっていた。このカルデア内において驚きの聖杯インフレを形成した、GOが生成した聖杯である。

 

「マシュ姉貴オッスオッス」

「あ、こんにちは……」

 

 丁度と鉢合わせする形となった野獣たちと、自然な流れで挨拶を交わす。不幸があったとすれば、今のMURが理性が蒸発した池沼モードで無く、天賦の叡智を惜しみなく発揮する知将モードであったことか。彼はマシュの異変を一瞬で見抜いた。

 

「あっ(察し)……何か悩んでる顔だゾ。困ったら誰かに相談するのが良いゾ~これ」

「MURさん……その、実はですね」

 

 マシュがそれを語るにつれ、野獣もMURも顔を歪ませる。そしてあろうことか、二人はマシュの悩みに便乗し様々な不要な知識を吹き込んだのだった。

 

「マシュ、最早解決策は一択だゾ。教えた通りにやれば楽勝だゾ」

「頑張ってくれよなぁー俺も頑張るからさぁ。アイスティーしかないけど、いいかな?」

「……何を頑張るんでしょう。あ、頂きます」

 

 マシュが野獣先輩から缶ビール状の聖杯に並々に注がれたアイスティーを受け取った後、野獣先輩とMURはその場を立ち去った。残されたマシュは密かな決意を固め、強く一歩を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、アイスティーは如何ですか?」

「――ッ!?」

 

 座っていた椅子から転げ落ちそうになる。突然マシュが部屋に入って来たかと思えば、GOの聖杯に入ったアイスティーを勧められた。

 

 なんせあのアイスティーである。細かい種類については知った事じゃないが、真夏の夜の淫夢においてそれは限りなくバッドエンドに近づく選択肢、小道具である。そもそも飲み物全体に気をつけねばならないというツッコミは抜きにして。

 

「飲んでください。どうぞ」

 

 マシュは平時と変わらぬ屈託のない笑顔を投げかけてくる。そこに、例えば野獣の眼光の様な悪巧みの感情を見る事は、出来なかった。だがそれでも警戒を解く訳にはいかない――

 

『……それは飲めない。信用出来ない』

 

 そんな言葉を一瞬でも口にしようとしたが、それは、目の前の彼女の表情に僅かに露わとなった陰に阻まれる。先ほどの失態もあるし、これ以上彼女の願いを無下にするのも憚られた。まぁ最悪、アイスティーを用いて後輩を昏睡レイプしたアイツと共謀でなければいい。マシュはそういった事を企む子ではないだろうから、最悪の事態にはハッテンしないだろう。

 

 ならば男らしく、堂々と頂くとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 駄目でした。混濁しながらも、辛うじて視界が帰って来た時には両手を縛られベッドに寝かされていた。そして目の前では、何故か妙に露出度の高い、コスプレ姿のマシュが、獲物を見定めるかの如く俺を見下ろしている。

 

「……怒らないから本当の事言って?」

「……野獣さんから、えーと『ホモコロリ』?の入ったアイスティーを渡されて……」

「何たる……何たる不名誉……」

 

 ぐだ男ノンケだよ、ホモじゃないよ。四肢は麻痺し、縛られていない足ですら鉛のように重い。意識は朦朧とし、視界はぼやけ、正常な思考が働かない。薬は十二分に効いているようだ。

 

「……で、マシュはこれから何をしたいんだ?」

「あの、MURさんは一緒に寝ればいいと」

「そうかあの三馬鹿……二馬鹿か。あいつらにも最低限のブレーキは存在したんだ……」

 

 いや、そもそも無垢な女の子に昏睡レイプを教え込むという畜生行為を働いたことに関しては許されない事だが、それでもコウノトリを信じている子供に無修正のポルノを見せつけるような連中では無かった訳だ。

 

「……一緒に寝るくらいなら睡眠薬なんて使わなくていいから(良心)」

「はっ! た、確かにそうです!」

「えぇ……(困惑)」

 

 すぐにマシュは手の拘束を外してくれた。彼女自体に危害を加える意図は、本当になかったらしい。流石に冷えるだろうから普段の格好に着替えさせ、言ってしまったものは仕方ないので同衾する。先ほどの衣装もこう、男心をくすぐるものはあったし多少の勿体なさは感じたが、普段の戦闘服も大概エロいので今更感が強い。

 

「……それにしても野獣さんとMURさんが言ってたのって何だったんでしょう」

「……マシュはまだ知らなくていいんじゃない?」

「いえ。その……二人が言ってたんです。夜、遠野さんの所に行くと。さっきの聖杯は、その時二つあったものの一つを貰っただけで……」

 

 ……

 

「――令呪二画を以て命ず。野獣先輩とMURは即刻ピンキーの部屋へと転移せよ」

 

 遥か遠く。ピンキーの部屋がある方向から、野太い野獣の咆哮が聞こえたが、因果応報である。




ところで全くほんへ関係ないですが、言ってる間にクリスマスですね。
彼女とか、いらっしゃらないんですか?(ねっとり)

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