ぐだ男と野獣のクッキーkiss   作:野鳥先輩

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お ま た せ
流石に間隔飽きすぎだって、それ一番言われてるから

リアルとゲームが忙しくて執筆どころじゃなかった(小並感)


特異点K AD.2005 尻穴怒涛強襲岡山(3)

 現在俺達はメガデス怪人を振り切り、古びたビル、秘密結社メガデスのアジトに乗り込んでいる。今は変態糞親父が監禁されているという部屋を探し、闇雲に扉をこじ開けている所だ。幸い魔術的な罠が施されている訳でもない、精々戦闘員や怪人が数名うろうろしている程度の拠点である為、探索は順調に進んでいる。イスカンダルやクーフーリンほどの大英雄が突破できなかったのは、恐らく怪人の持つホモビームの存在によるものであろう。あれは、男性サーヴァントでは少々相性が悪い。

 

「たぁッ!」

 

 マシュのシールドバッシュにより、扉はいとも容易く弾き飛ばされた。この部屋のみ、他の部屋とは異なり暗室となっており、そして――

 

『うわぁ、変態糞親父だ!』

 

 ロマンの第一声が全てを表していた。ほぼ全裸の状態で寝かされている、スキンヘッドにサングラス、褐色肌の太ったおっさん。言わずと知れた"あの"変態糞親父そのものと言えよう。

 

 ――待てよ。

 

 思考を一度リセットする。よくよく考えれば、本物の変態糞親父が"この声"を持っているはずはない。この声は、変態糞親父の投稿を朗読した兄貴のものだ。

 

「……この変態糞親父はサーヴァント、なのか?」

「……話の筋は全く見えないが、兄ちゃんはわしを助けに来てくれたのか?」

「まぁ、一応」

 

 サングラス越しにこちらを訝しげに見つめるその視線は、紛れもなく部外者のそれである。本当に、何の事情も知らないのだろうか。俺達は2005年岡山県北という、安易なキーワードに乗せられたか。だが彼が秘密結社メガデスなどという奇怪な連中に囚われ、更に聖杯との取引に用いられる事が判明している以上、保護しない選択肢はない。

 

 

「ともかく一度ここから出ましょう。事情はそれからでも――」

 

 

 マシュが全てを言い終える前にそれは、強引に、壁を蹴り破って躍り出た。

 

「――お前の出番は終わりだ。消えろ」

 

 メガデスが相手となれば、いずれ敵対する事になると思ってはいたが。黒いスーツの、某ニチアサの特撮を彷彿とさせるようなライダー。サイバーZ2号。ただ今回は、どうやら俺が真名を語る必要もなさそうだ。

 

「EMT君ね!?」

「なっ……!?」

 

 NRKがあっさりと、サイバーZ2号の真名を言い当てる。汚濁の御子本編において彼女が、EMT――つまりサイバーZ2号の男優を覆面越しに看破した事がある事に起因する。

 

「ホラホラホラホラホラ!」

 

 一瞬生まれた隙をつくように、ビーストが動いた。無数の残像を浮かばせる高速の拳撃、噛ませ技と名高いホラホララッシュ。だがしかしこの場面においてそれは、陽動としてこれ以上ないほどの効果を見せた。

 

 盾を構えたマシュを先頭に、俺達は糞親父を連れて一気に飛び出す。部屋の外にはメガデス戦闘員が数名、狭い通路にひしめいていたが鎧袖一触。そのままメガデスのアジトから脱出した。

 

 

 

「ンアアアアアアアァッ!!」

 

 ビルの上層から雄たけびを上げながら吹き飛ばされるビースト。足止めとしては十分働いてくれた。即座に令呪を用い、ビーストを一瞬で回収する。

 

「よくやったビースト」

「……アーイキソ」

 

 苦悶の表情を浮かべながら腹を摩るビースト。恐らくサイバーZ2号から一撃受けたのだろう。それにしても、原作からしてだがサイバーZ2号はどうやらパワータイプのようだ。

 

「糞ッ今日はなんだってんだ……土方の兄ちゃんは帰っちまっただろうなぁ」

 

 前言撤回。この男、腐っても変態糞親父である。一般人が巻き込まれれば困惑不可避のこの状況下で真っ先に考えるのが糞遊び。うちの作家サーヴァント達に通ずるものがあるかもしれない。

 

「さて、ここからだ――」

 

 ともあれ脱出には成功したが、一般人を連れたままサーヴァントから逃亡、あるいは戦闘するなどという困難が立ちはだかっているのに変わりはない。そうこうしている内にもサイバーZ2号が、大穴の開いたビルから飛び降り三点着地を決め、立ち塞がる。剣呑とした空気の中、僅かばかりの睨み合いが続いた。

 

 

 

「――待たせたな!」

 

 聞き覚えのある声と共に、現代的都市に絶望的に馴染まない、二頭の牛が引く戦車に騎乗したイスカンダルが現れる。その後背には、自力でホモビームの催眠を解いたのか、はたまた時間が解決したのか。なんにせよその双眸は、俺達から如何に変態糞親父を奪取するかに向けられているようだ。

 

「……上手く引きずり出してくれたな。後は刈り取るだけだ、王らしくな」

 

 凶事は重なる。ビルより舞い降りた黒い影。黒骨を身に纏ったクーフーリンだ。これで三方向から、敵に囲まれる事となってしまった。三人に勝てる訳ないだろ! とはいえ他のサーヴァントは、即座にこちらを襲ってくるわけでもなかった。現状ゲームの勝利条件たる変態糞親父を確保している俺達が最大の敵であるだけで、彼ら同士も敵同士。迂闊に飛び出せば漁夫の利を取られるのがオチという状況であり、必然的に睨み合いが続いた。

 

「……ねぇねぇマスター」

 

 背後からひそひそ声で話しかけて来たのは、アマデウスだった。

 

「なんだアマデウス」

「まず僕さぁ、ちょっと試してみたいことがあるんだけど、任せてみない? 上手くやれば状況を打開できるよ?」

「……任せた」

 

 アマデウスは笑みを浮かべると俺に耳栓を渡し――

 

「野獣先輩、ネロ! コーラスはい、よろしくゥ!」

 

 即座に全てを察し、渡された耳栓を押し込む。いや正直、生野獣の咆哮コーラスというのも興味がそそられない訳ではないが、命には代えられない。そんな思索を巡らしている内にもアマデウスの握る指揮棒が振り下ろされ――

 

 

 

 

 

 その刹那、景色が反転する。アスファルトの道路にビル群、暗がりの空、全ての垣根が溶け去り、無機質な白一色に埋め尽くされた。ひとまずはめていた耳栓を取り、周囲を窺う。

 

 

「ども。こんにちはーす」

 

 最も恐れていた可能性。それが、純白の六翼をはためかせながら降臨した。

 

 GO。ただのビデオ業者であり、ガソリンスタンドの従業員を騙してギャラをピンハネした人間の屑であり、神である。元は影の薄いキャラであったが、いつのまにかホモの間で神格化が進み、途轍もない濃いキャラ付けをされた存在。

 

「自己紹介は不要って感じ?」

「……淫夢サーヴァントで、聖杯を与える存在、となれば黒幕の正体は自ずと絞れる」

 

 にやりと笑むGO。相対するだけで身を引き裂かれるような、暴力的なまでの神性を纏うGOに対し、こちらから打てる手はない。敵わない。届かない。

 

 ただ俺をこの空間に拉致した割に、俺を攻撃しようという気はないようだ。折角だ、この際色々と聞いてやる。

 

「……あの岡山。明らかに日本じゃないよな」

「へぇ。どうやって気づいた?」

「変態糞親父。彼は明らかにおかしい、現代日本で彼があの声のはずがないんだ。つまりあれは異世界から紛れ込んだ異物。あるいは――あの岡山自体が、異世界」

 

 そう判断出来る要素は、短い散策の中で幾つかあった。戦闘に何の介入もしない一般人、平然と存在するメガデス本部。そして何より、"岡山の県北"という曖昧な地名。普通のサーヴァントを含め誰も違和感を抱かなかったのが不思議なほどだが、聖杯により淫夢関連の知識を一通り叩き込まれ、感覚が麻痺してしまったと考えればおかしな話ではない。

 

「おお~いい推理してるねぇ、道理でねぇ。そうそう、あの岡山は『淫夢』世界の岡山。心置きなくバトル淫夢が出来て、世界中で俺が信仰されている、そんな環境さ。現代日本の岡山辺りにチャチャチャっとぶちこんで、終わり!」

 

 ――真夏の夜の淫夢という名の物語の登場人物。いつだったか。MURを召喚した際にそんな事を言っていた。あの岡山はつまり、現代日本の岡山辺りに捻じ込まれた『淫夢における岡山』。酷い話な上に、スケールもやたら大きい。そしてなにより、どうやってこの特異点に決着をつけるかすらも見えなくなってきた。

 

「……各勢力に、変態糞親父の投稿を阻止するよう仕向けたのはあんたか」

「そそ」

「何のために?」

「神様がさ、試練与えるのに理由なんている?」

 

 それに関しては仰る通りだ。問題はそんな言葉が、祭り上げられたホモビ男優の口から発されている現実だが。

 

「この空間は完全に隔離された異世界。令呪を使っても助けなんかこねぇよこの野郎」

「……」

「……その表情いいねぇ。いい絶望顔してるねぇ!」

 

 

 GOの手がゆっくりと、弄ぶようにこちらへと伸びる。それが俺へと届く前に――GOは無数の朱槍に穿たれた。鮮血が飛び散り、白一色の空間を染める。

 

「GO is not God.その男は神ではない」

 

 空間を割って現れた、黒タイツの女性。その手にはゲイボルグが握られている。しかも二本。クーフーリンではないのは確かだが、ならば彼女は一体――

 

「この機を待っていた。青年、彼奴の神性を否定しろ。それで終わりだ」

「なっ――!?」

 

 一転し、動揺を隠し切れないGO。その背に浮かぶ純白の翼が陽炎の如く揺らぎ、先ほどまで放っていた威圧的なオーラも鳴りを潜めていた。

 

「世界中から信仰を集め、持てる力を大きく変える。それが奴の本質だ。あの岡山はほぼ全員がGO信徒であるが、今この空間に存在しているのは、私と貴様のみ」

「おおお、大人しくしろ! ばら撒くぞ!」

 

 GOは翼を大きく広げ、視認でき、質量を持つ程の魔力の奔流を生み出し抵抗している。

 

 ――どうかしていた。恐らく心の何処かに隙があったのだ。現実を直視しろ。あれは、GOは決して神にあらず。その素性はホモビ男優、その行いはただひたすらに外道。一切の神格を持ちえる道理がない。

 

 心は定まった。既にGOの背に浮かぶ翼は原形を留めず、放出する魔力は普通のサーヴァントと比較しても微々たるものになっていた。後は、"それ"を言葉に乗せるだけ。

 

「――GO is not God! GO is Dead!」

 

 完全に神格を否定されたGOは、たちまち塵芥へと姿を変え消滅した。それを追うようにこの謎空間にもひびが入り、加速度的に崩壊していく。

 

 

 

 

 

 

 死地から帰還した俺達を迎えたのは、耐え難いほどの騒音だった。アマデウスが奏でる『英雄の証』のメロディに合わせ、ネロとビーストが好き勝手にコーラスしている。意識が遠ざかる中、周囲を見渡すと、敵味方関わらず他のサーヴァントも両手で耳をふさぎ苦悶の表情を浮かべている。

 

「やったぜ。投稿者、変態糞親父――」

 

 視界が暗転する中、耳がそんな声を拾った気がした――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぐだ男君、お疲れ様」

 

 ロマンとダヴィンチちゃんは愛想笑いを浮かべながら、帰還した俺達を迎えてくれた。結局GOがリアルの岡山に捻じ込んだ、淫夢における岡山はGOの消滅に連なって自壊。召喚されていたサーヴァントもそれに巻き込まれ、特異点は文字通り消滅した。俺達は、ミッションを達成したのだ。ただ一つの予想外を除いて。

 

「ああ^~たまらねぇぜ」

 

 部屋の隅で、ビーストと糞遊びに興じている変態糞親父。レイシフトで帰還する際に、間違えて連れてきてしまったのだ。この変態糞親父は淫夢世界の住人であり、結果リアル現代日本に放流する訳にも行かず、彼への処分は保留となっている。幸い、ちょっとした戦闘は出来るようだから戦力に出来ないこともないだろう。

 

「しかしまさか、GOまで出て来るとはね。完全な神じゃなくて本当によかったね」

「……ちかれた」

 

 今回の特異点は肉体的にはともかく、精神的にかなりきた。しばらく休憩していたい。召喚ばっかりしてみるというのも悪くないかもしれないな。

 

 ふと視線を逸らすと、召喚システムが独りでに光を放っていた。それも平時のそれではない、虹色の光だ。やがてそこから、一人の男が、後光に照らされながら現れる。

 

「GOでーす。ハイ、よろしくぅ!」

 

 ……さりげなく最高戦力確保?




 ホントはもっと色々やろうと思ってたけど、リアルとゲームが忙しい上に筆が止まったのでこうしました。変態糞親父の括約を期待してた人ゆるして。出番はいずれ。今後は今まで通り単発で突発的に書いていきますんで、よろしくお願いします。


【真名】GO
【クラス】セイヴァー
【性別】男
【身長・体重】21歳 176cm・78kg
【属性】混沌・中庸
【ステータス】
筋力A 耐久A
敏捷C 魔力A
幸運B 宝具EX
【スキル】
カリスマ EX:他者を引き込む力、ある種の呪い。彼のカリスマに魅入られた場合、セイヴァーの信者となる。
神性 EX:変動する神性。その世界における信徒の割合によって、持ちうる神性は大きく変化する。
【宝具】
陽光の六翼(アポロン・ウィング)
 ――私にとって彼はアポロンでした。発動している間、神性A+を得る。
機械仕掛けの唯一神(ゴー・イズ・ゴッド)
 自身の神性によって、自身が望む様々なスキル、能力を付与、ステータスを上昇させる。神性が極まっていれば、唯一神と同等の事象を発生させることすら可能。

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