ぐだ男と野獣のクッキーkiss   作:野鳥先輩

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特異点K AD.2005 尻穴怒涛強襲岡山

「ここは……」

 

 狭く、暗幕で覆われた小部屋にて意識を取り戻した変態糞親父。

 

「確かワシは、土方の兄ちゃんを待っていて……糞が!」

「変態糞親父よ」

 

 部屋に響き渡る声。だがしかしそれは糞親父が発したものではなく、壁面に飾られた謎の装飾から発されたものだった。

 

「誰だ!?」

「私は、『秘密結社メガデス』の首領である。本来ならばここで、貴様を超人サイバーZ3号に……と言いたい所であるが、しばしそこで待っていて欲しい。我々の野望の為に」

「……野望?」

 

「我々の野望は世界征服。その為に、貴様に怪文書の投稿をさせる訳にはいかぬのだ」

 

 常人ならば頭を抱える事請負いの、くだらない戦いが幕を開けようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レイシフト先は2005年8月15日、時刻は午後6時過ぎだった。だがすぐに俺達は異変に気付くこととなった。

 

『場所は岡山の県北。といってもそれなりにビルもある、地方都市って感じだね』

「先輩。これは……」

 

 カルデアの制服に身を包んだマシュが周囲を見渡す。行き交う人々は誰一人として、こちらを見ようとしない。こちらが連れているのは、IRANDERSのTシャツ姿の野獣先輩に普段着のNRK、やたらスカート丈の短い真紅の現代衣装に身を包んだネロ、そして普段の格好のまま現代へとやって来たアマデウスとシェイクスピア。

 

 こんな珍奇な格好をした大所帯を連れていれば普通、注目をかき集めて仕方がないはずだ。おまけにエクスカリバーの差し込まれた『全て遠き理想郷(アヴァロン)』を、止む無く『風王結界(インビジブル・エア)』で隠ぺいして持ち歩いているが、旋風は誤魔化しようがない。行き違う人の髪がそれでふわっと持ち上がった事もあったが、その時すらこちらを気にする様子はなかった。

 

「……ロマン。これは結界の類?」

『そんな反応はないけど……特異点化の影響かもしれないね。気を付けて』

「……この時代を生きてるというと、ビーストとセイバーだな。どう?」

「ごめんなさい。私、岡山はちょっと……」

「んにゃぴ……良く分からないですね」

「「んにゃぴ警察だ!」」

 

 シェイクスピア(淫夢)とアマデウス(淫夢)がほぼ同時に声を発した。一瞬びくっとしたが、本人が誤用する分にまで口出ししなくていいと思う。

 

「うぅむ。街灯が明るいのは良いが、流石に誰にも注目されないのはつまらんぞ。マスター、なんとかせよ」

 

 ネロにせがまれるが、そもそもの原因が判明していない現状では如何ともしがたいのでスルーする(激うまギャグ)。こういった時は悩みの種が向こうからやってくれるのがお約束であるが……

 

「ひとまずコンビニを探そう。ロマン、検索して」

『おかのした』

「コンビニ? 先輩。コンビニで何をするんですか?」

「変態糞親父っていう人物を探そうと思う」

「……え?」

 

 マシュが困惑しきった表情を浮かべる。そこでようやく、マシュに変態糞土方について教えるのを忘れていた事に気が付いた。ついでに他のサーヴァントは聖杯からその手の知識を受け取っている為理解はしているようだ。ネロは顔をしかめているが。

 

「言ってなかったっけ。じゃあ歩きながら説明するから――」

 

『待った! この先に魔力反応複数! こっちへ向かってくるぞ!』

 

 

 

「「「イィ゛ー!」」」

 

 曲がり角から奇声を発しつつ現れたのは、白一色の全身タイツを身に纏った、如何にもといった悪の組織の戦闘員であった。それが三人、こちらと睨みあう形で相対する。

 

「――秘密結社メガデスの戦闘員!? ここにきてちょっとマイナーすぎるんじゃないか!?」

「†悔い改めて†」

「先輩。さっきから分からないことだらけで申し訳ないのですが、秘密結社メガデスとは一体……」

『超人サイバーZのほんへならカルデアにあるから、後で見れば良いんじゃないかな!』

 

 マシュは、聞いて損したとばかりに表情を曇らせていた。それはともかく、とうとうホモビ関連の敵が出始めたことに戦慄を感じるばかりだ。聖杯は一体何を考えて、こんな連中を投じたのか。いやそもそも、この連中が聖杯に召喚されたものなのか、それとも岡山に自生していたのか。そこからはっきりさせるべきだろう。

 

「マシュ、ビースト。予定を変更してこいつらを締め上げるぞ。セイバー二人は周囲の警戒を頼む」

「はい! 私、戦闘の間だけは気楽になれそうです!」

「ほらいくどー!」

 

 それまでアイランダーズのTシャツを着ていたビーストは刹那、狂戦士へとその姿を変えた。黒の肩当てと籠手、黒いマントを羽織り、両手には身の丈を超える巨剣が握られている。ベルセルクと化した先輩。それが今の、ビーストの姿であった。

 

 と、そこで敵陣営に変化があった。戦闘員たちがビーストの姿を見るや否や、前かがみとなって股間を抑え始めたのだ。は?

 

「なんですかな~?(ねっとり) まさか感じてるのではないですかな~!?」

「あぁつまり、性別が雄で裸なら何でもいいという事だね! うんうん雑食なのは良いことだよ!」

 

 NRKとネロの後ろに隠れるように鎮座する畜生キャスター二連星の怒涛の煽りに対し、戦闘員側は「イー……」と弱々しく呻くだけだった。これでは図星だと白状しているようなものである。

 

「たぁーッ!」

 

 マシュが敵前へと躍り出て一気に場を荒らす。心なしかいつもより勇ましいように感じられた。三人の戦闘員は抵抗することすら出来ぬまま、瞬く間にこちらの虜囚と化した。

 

「さて。早速だけど幾つか質問いいかな」

「……断る」

 

 マシュが盾の突起を思い切り叩き付けると、戦闘員が絶叫を上げた。道中でこんなことをやれば通報待ったなしであろうが周辺の住民は、まるでこちらなど視界に入っていないかのように無視している。

 

「早く白状せよ! 余はさっさと帰りたいのだ! いや正直言うと帰りたくもないのだが、ホモビ絡みの特異点などとっとと終わらせたくて仕方がない!」

「虜囚は一人でも尋問は出来ますぞ、マスター」

「そうだね。じゃけん二人程そっ首叩き落としましょうねー」

「ホラホラホラホラ」

 

「「「す、すいません許してください! なんでもしますから!」」」

 

 戦闘員たちが、ホモビデオにおいて令呪を超えるほどの絶対的効力を持つ呪文を唱えると同時に、味方全員が笑みを浮かべた。さながら、こちらが悪役の様ですらあった。

 

 

 

 

 

 その後、幾つか戦闘員に対し尋問を重ねた。彼らは「なんでもする」という呪縛に縛られているのか、特に言い濁る事無く知り得る限りの情報を垂れ流してくれた。そのお陰で事の全容はある程度見えて来たのだが……

 

『つまりなんだい!? その秘密結社メガデスの首領は、聖杯を貰う為に、変態糞親父を攫ったって事かい!?』

 

 マシュやネロが頭を抱えている。それは恐らく、事の下らなさに対してであろう。だが彼らから得られた情報にはもう一つ、重大な事実が汚さに包まれるように隠されている。

 

 『"聖杯を与える人物"の存在』

 

 それが虚言癖の愉快犯、あるいは偶然聖杯を得てしまった一般人であればどれほど心安らぐ事か。そうでなければ俺達は最悪、"あの救世主と同等、あるいはそれ以上の存在"とこんな特異点で敵対することになるかもしれないのだ。それの前では、人理焼却の実行犯など話にもなるまい。

 

「……神妙な面持ちをしていますね」

「あぁセイバー(NRK)。大丈夫、まだ確定した訳ではないし……ひとまずメガデスの本拠地とやらを目指そう」

 

 俺の提案に、サーヴァント達から快い返事が返って来た。そのまま戦闘員を縛り上げ、尋問しながら歩き始める。流石に本拠地を晒すことには、流石に彼らも抵抗を禁じ得なかったようだが、"なんでもする"というホモ特有の呪文に従い、渋々道順を吐き始めるのだった……

 

 

 

 

 

「ところでモブ戦闘員ども。貴様らにまだ一つ質問があるのだが」

 

 ネロが口を開くと、戦闘員たちはまたびくりと背中を震わせる。

 

「その、変態糞親父とやらはもう手中にあるのだろう? ――何故貴様らは、あんな所で油を売っていて、何故我々に襲い掛かった?」

 

 その問いかけの終わりと、交差点からそれが弾丸の如く吹き飛ばされたのは、ほぼ同時であった。鈍重な音と共に建物へと叩き付けられたそれは、"漆黒の骨格"を纏い、"朱い槍の爪"を持っていた。

 

「ほう! まさかこの『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』に真正面から立ち塞がるとは! 敵ながら豪胆な奴よ!」

「……言ってろ」

 

 ぶっきらぼうに答えた黒骨の鎧を纏った男は、立ち上がり様、ふとこちらへと視線を向けた。その貌は骨格に覆われ見えないが、その声には覚えがあった。

 

 そして間もなく『神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)』に騎乗した赤髪赤髭の大男が交差点から姿を現した。

 

 

 

 

 不幸にもガチサーヴァントと遭遇してしまったぐだ男達。配下のサーヴァントを庇いすべての責任を負ったぐだ男に対し、生粋のバイ、征服王イスカンダルに言い渡された示談の条件とは――




デ ス エ ン カ

結構長くなりそう。後2か、3(話)ですかね……

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