---昔、1度だけ日本刀を持ったことがある。
じいさんの家に行った時、蔵の中に収められていた、家宝とは言わないものの、我が家の家系を目で見て手で触って感じることができるものだった。鞘に入ったまま刀身がさび付いてしまったらしく、抜刀はできなかった。
だからだろうか、じいさんはまるで玩具を渡すように俺にそれを渡してきた。
投げ捨てるように…
当時の俺は本当の子供で、小学生で、そんな存在に軽く渡してよかったものかと今になって思う。
そして、持った俺はもちろん日本刀に振り回されるように右へ左へと、踊りとも取れない変なステップを踏んだ後、ひっくり返ったのだった。
当時思ったことは、日本刀ってスゲーカッケーみたいな小学生並みの感想しかなかった。
今の感想としては、鉄の塊だ---
あんな重い物を振り回せるわけないし、昔の人はすごいなと思う。現代人の自分にはこんなに重い凶器を振り回して人を斬るなんて、ジムでも通ってマッチョにでもならないといけないなと…。
---そう思っていた
聖剣を引き抜いた。そして思った。
「…軽い?」
剣は、鉄の塊だ。そのことは経験で既に知っている。だからこそ驚いたのだ。
---俺は今、片手で剣を持っている
剣に重さはあることを感じるが、まったく気にならない。
まるで、羽をもっているように軽い。
「認めたのです」
ライラの声がする。振り向くと彼女が俺をまっすぐ見つめている。
「其は、天の都。遥か頂きの果ての、聖域なり。都の門は固く閉じ、人の世を統べし者にのみ開かれん。天族を連れたち、導師は地に降り立つ。天族の力纏いし導師、災禍の闇祓いて、この世を救いたり。」
彼女はゆったりとした歩みで近づいてくる。
さっきまであんなに走って、息も絶え絶えで、焦りと恐怖が心を支配していた。けれど今は違う。息は整った。心にもなぜか平穏が訪れた。今がどんな状況かわかっているのに、「安心」が根を下ろしている。
「それは?」
「導師の伝承です。最初、導師とは何者か説明したのを覚えていますか?」
「ああ。この世が滅ぶときに顕れて世界を救う救世主みたいな感じだったよな?」
「はい。あなたは導師のみが抜くことができるその剣を抜き放ちました。あなたが導師に選ばれた証です。」
ライラが自分の前で止まり、剣を握る俺の手を取った。
「だからこそ、あなたは世界を救わなければなりません。救った先に感謝もされず、謂れのない言葉を人々から受けることもあるでしょう。それは孤独、そして孤高の道です。それでもあなたは---」
「うるせえ!」
彼女の手が震えていた。
彼女は知っているのだろう。
「導師」がなんたるかを。
けれど、今はそんなこと知ったことではない。
道が一つなら進むしかないのだ。
「やるしかないんだろ!? やるんだよ俺が! だからライラ、力を貸してくれ!」
その瞬間、炎が溢れ出した---
1000字ってこんなにしんどかったんだなって
戦闘描写頑張ります