異世界に来た
それだけを聞けばどこの小説の主人公だよ、とかツッコミたくなるし、来たら来たで神様が云々チートで云々とかいろいろあるだろうが、あいにくとこちらはそんなものは無く、知らない内に異世界に丸腰で来ていた。
これが今の自分の現状である。ライラさんに言われて最初は信じられないとか思ったが正直もう頭を整理することがめんどくさいので大人しく現実と彼女の言葉を受け入れることにした。
自分は今、全く知らない世界に来ているという事で、いろんな事を知っているらしいライラさんにこの世界の事を教えてもらう事にした。
この世界の法律とかそんな難しい事は置いておく。(おき、この世界の文化や技術レベルなど、地球よりも発達した、所謂SFと呼ばれるような世界なのか、それとも魔法などがあるファンタジーの世界なのかをまずは知りたかった。この世界には天族と呼ばれる普通の人には見えない存在が居て、ライラさんはその一人らしい。)犯罪をすれば裁かれるのは当たり前だろうし、そんな事よりも知りたいことがあった。
「導師の事について、ですか?」
「ああ。そいつらは俺の事を導師だとか言って使命とかいろいろ言って来たんだ。けど、俺はそんな事知らないんだ。だから教えて欲しい」
導師
あの6人が言っていた言葉だ。
俺の事を導師と呼び、世界を救え、とも言った。その導師と呼ばれる存在がこの世界でどれ程のものなのか? もし、自分がその導師なら、その導師の意味を知らなければならない。
「わかりました。では、導師とはいったい何かを誠人さんにお話しましょう」
「ありがとう、助かる」
そして彼女は語り出す。
導師とは何なのか
それは共に、6人の言っていた自分の使命についてのものでもあるのだ。
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導師とは、天族の力をまとい、世界を災厄から救ったと言われる存在である。
高い霊能力を持ち、天族と交信する事ができ、契約を交わしその器となった者で、器となった者は天族の力を自在に行使することができる。
今は伝承上の存在になるほど失われて久しく、災厄の時代には人々はその存在を待ちわびているという。
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「つまりは、導師とは救世主的な存在で、世界を救う事が使命ということか?」
「そういうことですね」
ライラの説明を聞き、それを自分の言葉で理解する。つまりは世界が何かしらの危機を迎えているから、それを何とかする事が導師、つまりは俺がやるだろう事ということである。天族はその導師を助ける精霊的な存在ということ。
「異世界で勇者、救世主をしろとか・・・」
これが現実であると受け入れはする事ができる。が、本気で世界を救えとかスケールが大きすぎて反応に困るものだ。こんな一般人にそんなものを背をわせられても・・・
異世界人よりも普通にこの世界にいる人達ではダメなのか
「導師には、この世界の人間がなるのではダメなのか?」
「はい。導師になるにはまずは高い霊能力を持っている必要があります。それも私たちの姿を見る事が出来るほどの力です。ですが、そのような人間はとても稀なんです」
天族の声を聴くだけをできる人間はいるが、それ以上の霊能力を持つ者は本当に少ない、というか居ないらしい。導師の存在が失われたことはそういった要因もあるのだろう。
「あいつらは霊能力が高いから俺を連れて来たのか」
「誠人さんをこの世界に連れて来たという人達のことですね。私は彼等のことは存じませんが、異世界に行けるということは強い力を持った天族が居るのかもしれません」
強い力を持った天族、といえばおそらくはあの女性だろう。元の世界に戻るにはあの女性を見つけるか、別の方法を自力で見つけるかだが、
「・・・俺を元の世界に戻す方法はあるのか?」
「あるとすれば、世界に散らばる遺跡になにかあるかも知れません」
「・・・」
その遺跡に何かしらの方法、ヒントがあるが、自分はこの世界に来たばかりで右も左もわからない状態だし遺跡を探すにも一人では無理だ。
こうなってしまえば方法はほぼ一つ
「・・・はあ〜、わかった。なるよ、導師に」
「! 本当ですか!?」
「ああ。だが条件がある。元の世界に戻る方法を一緒に探して欲しい、これが条件だ」
これから始まるであろう異世界生活。
全く心が踊らなかったのは当たり前である。
ファンタジーって書くの難しい