元 今
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どうなったかというと一発で急所引く確率から一発でひかおま有りの国際孵化で色ポケ引く確立になりました
彼は甘く見ていた。男性の希少さ、あるいは女性の気性ともいうべきか。この世界が自分のかつて居たそれとは違うということをまるで甘く見ていた。
ちょっと少ないだけだろう。そんな風に考え、社会保障制度もラッキーだなという程度にしか受け止めていなかったのだ。
自身を保護してくれていた彼女たちの気持ちも特に考えることもなかった。ポケモンと触れ合えるということに舞い上がり、周りの人たちのことを特に気にすることもなく、なんとなく相手が自分を尊重してくれているからという高慢な気持ちが少なからずあった。
そんな態度であっても彼女たちは彼に優しかった。それが彼の態度が加速する要因だった。適当に過ごしているだけで彼は感謝されるし、ちやほやされる。そんな二か月間は彼にとって自由であったのだろう。
しかしそれは籠の中の自由であると彼が気づくことができたのは前の世界での経験ゆえだった。
だから外に出たいと思った。そしてそれを実行するだけのバイタリティはあったし、小狡い作戦を考える程度の知恵もあった。彼女たちの視点からすれば二か月もの間彼が大人しかったこともあり、彼の唐突な行動は成功した。
彼にとって外とは冒険だった。安全が保障された冒険。野生のポケモンなんて自分の育成済みのポケモンに比べれば問題ないだろうなんてゲーム基準の考えが頭の中を占めていた。実際冒険は安全だった。出てきたポケモンは10レベルにも達していなさそうなポケモンばかりで危険もないだろう。それにこちらを見るやいなやとびかかってくる様子でもない。
彼は満足していた。外を自分の意志で自由に歩けるということ。二か月ぶりとはいえ、もともと出来たものが制限されるということはかなりのストレスである。それが晴れたということもあって心は随分と軽かった。
それが反省と自責の念で重くなるのはすぐだった。外で出会った自分と同じか少し歳下くらいの少女と談笑していると、息を切らせて走ってくるフウロが見えた。
慌てててちょっと面白いななんて思ったのはまだ彼女が遠くにいる時点でのことである。フウロがこちらに近づくにつれて彼女の表情が自分の予想していたものとは全く違うということに気が付いた。
必死というか悲壮というか、彼女は泣いていた。こちらに近づき、抱きついてきた彼女の柔らかさを感じるよりも疑問が胸の内を占めた。
彼が予想していた反応は、軽く怒る程度のものである。勝手に外出ちゃダメでしょ、とか、こんな時間までどこいってたの、とかそんな母親が門限破った子供を少し叱る程度のものが来ると思っていたが現実はそうではなくて、フウロは本気で悲しんでいて、しかもそれは自分を責めているからのようだった。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
泣きながらそう言う彼女に申し訳なさも感じるが、一番はやっぱり疑問だった。なんで怒らないんだ? 叱らないんだ? 悪いのは君じゃなくて俺じゃないか。
抱き返しながらそう言うとフウロは首を振って、訥々と彼女が思ったことを話した。
「私が、アナタを不快にさせたから……だから出て行っちゃったんだよね……。ごめんなさい、本当に、ごめんなさい」
泣いてそう詫びる彼女は本気のようだった。
いびつだ。彼女たちは歪んでいる。
実際、アララギ博士の元に帰ってからもその反応は一緒だった。アララギもシロナもマコモもカミツレも、全員が自分が何かできたのではと彼を責めるわけでもなく反省し、彼に詫びてきたのだ。
彼はその時初めてしっかりと思った。ここは違う世界なんだ。ここは、こんなことが常識なのかと。
男女比が変であるということは口頭でのみ知っていた。男性が女性に囲われて、国から補助を受けているということも知っていた。だがその事実を実感しているわけではなかった。この時初めて身をもって知った。
その日から彼女たちにしっかりとした感謝を告げるようにした。自分の考えなんかもできる限り伝えるようにした。できることなら彼女たちの意識を変えたいと思ったからだった。
それが実を結ぶ日が来るかはきっと自分の努力にかかっているのだろうなと彼はつぶやいた。
そんな日々が過ぎ、いつの頃からから彼女たちは何故か基本ツーマンセルで彼に会うようになった頃。彼の元に二匹のポケモンがやってきた。
彼はいつものように研究所の庭でラジオ体操をしていた。寝たきりだった体のリハビリも兼ねて始めたラジオ体操は今では日課である。彼のポケモンも見様見真似で体操し、それを見たフウロやカミツレもその体操をするようになっていた。
今日は珍しくアララギも一緒に体操している。最近体動かしてなかったからねーなんて言っていたがそれが建前であることはフウロたちにはおみとおしであった。研究漬けだったアララギは彼と触れ合う時間がほしくてわざわざ体を引きずって外に出てきたのだろう。
ここ一週間ほどは研究に追われてしっかりと寝れてないなんて愚痴っていた昨日の夜の彼女の姿は今は無く、なんかフレッシュそうな雰囲気を醸している。そんな彼女の必死さを見た少女たちは自分もああなってしまうのだろうかという一抹の不安も覚えたがそれを言うことはなかった。
「そういえばフウロさんとカミツレさんはジムリーダーですよね? ジムのほうはいいんですか?」
体操の途中に彼がそう言うとカミツレが少しうれしそうにしながら返答する。
「基本的にジムリーダーのバトルはそれほど多くはないのよ。ジムリーダーとのバトルは予約したトレーナーと週一か二でまとめて一気にって感じね。それ以外の日は私だったらモデルのお仕事をしてるし、フウロちゃんは物資の運送なんかをやっているわ」
「そうそう、ジムにはジムトレーナーが何人か交代でいて、その人たちに勝ったら予約できるって感じが一般的だしジムリーダーってなってみると意外とやること少ないよね」
フウロの続いた言葉にそうなのかと彼は納得する。ゲームではいつでもどんな時間でもジムリーダーはジムに詰めていたがさすがに現実ではそんなことはないようだ。
とするとそんなジムリーダ-の給料っていくらになるのという疑問があるが流石にそんな突っ込んだことを聞く勇気は彼になかった。
彼が体操のほぼすべてを終えて最後の深呼吸をしているそんな時である。息を大きく吸って、この時にはなんとなく顔も上に向けているので視線も上である。そして大きく吐く。もう一度大きく吸って――
「――ヴェァ!?」
「な、なにこれ!?」
彼が前を向いたその瞬間というか、向く直前というか、彼は見ていなかったのでどのようにそれが現れたのかはわからなかったが今彼の目の前には謎の輪とその中に広がる謎の空間があった。
研究者であるアララギはそれに恐怖よりは興味が先行した様子で近づいていく。フウロやカミツレは万が一を考え彼の前に立ちふさがり、かばうような姿勢をとった。
彼はその輪に見覚えがあった。金の光沢のある空中に浮かぶ輪。その円の中の空間は黒だか紫だかわからないような色が渦巻いている。
完全にゲームであった“不思議な輪っか”そのものである。違う可能性もあるが、これの先には何らかの伝説のポケモンがいることだろう。
本音を言ってしまえば入ってみたい。しかし、と彼は考え真剣な目で輪を見つめるフウロとカミツレの後姿を見た。彼女たちは本気で自分を守ってくれている。それを無碍にするような向う見ずな行動をとっていいものだろうか。
それにあの輪の先はよくわからない白い空間に繋がっているはずだ。ゲームではポケモンを捕まえるなり倒すなりしたら戻って来ることができたが現実ではどうなるか分かったものではない。
伝説のポケモンへの興味は尽きない。だがそれは自分を保護してくれている人たちをないがしろにしてまでゲットしたいというものではない。
まあ惜しいけど諦めるかな、なんて彼が考えていたそんな時。アララギは後ろに彼がいることも忘れてその輪を調べていた。触れることはさすがにないが360°すべてを確認する。
厚みはそれほどではない。しかし不思議なことに正面の180°から見たときは輪の中によくわからない渦のようなものが見えるが後ろ側180°からはただの宙に浮いた輪のようにしか見えず、その中も何もない空間であり反対側を見通すことが可能だった。
不思議に思い正面からその渦の中に石を投げいれてみた。それは吸い込まれて消えてしまい、後ろ側を確認したが石は無かった。即ち石はどこかへ消えてしまったということになる。しかし物が消えるなんてことはありえない。考えられるのは石が見えないほど粉々になった可能性と、どこかへテレポートした可能性。
ポケモンの能力であるのならテレポートをしても何ら疑問はない。テレポートであるのだとしたら、それはどこへ行ったのかという問題になる。
後ろ側から投げた石はどこかへと行くこともなく輪の中を貫通して反対側へと放物線を描いて飛んで行った。
つまりは片面側から輪の中を通った物質をどこかへと転送か何かしているのだろうか。粉々に砕いている可能性もあるので今度は落ちていた木の棒を差し込んでみる。
渦の中に突っ込むとぐいと引っ張られるような力があったが引き返すと簡単に引き抜くことができた。木の棒はとくにこれといった損傷をすることもなく先ほどまでの状態と変わっているようには見えなかった。
反対側から突っ込むと何事もなく通過した。
「ねえあなたたちからはどう見えてるの?」
アララギ側からはただの輪の浮いている空間であるはずだが、フウロたち側からは渦巻いている空間であるはずである。とすれば今は渦の中から木の棒が突き出しているということになるのだろうか。
「え? あ、はい、どうって言っても何もないですよ。渦巻いてる変な輪っかが見えるだけです」
そう答えたフウロにアララギはあららおかしいわねなんてのんきに考える。つまりはこの輪はどうなっているのだ?
石は通過したということは通過し終えるとそれが実在として認識されるの? じゃあ通過途中のものはどういう扱いになるの? というか、この空間を隔てて通過した物質は本当にその物質なの? 通過する瞬間に分解されて向こう側で再構成されたりするなんてことはない? いやそもそもこれはなんなの? 暫定的に何らかのポケモンの仕業としてるけどそんなのわからないじゃない。何らかの兵器……? 男性拉致装置? いやいやそんなもの出来たらそれこそ戦争よね。でもロケット団とか結構過激なことやってたしそんな行動に出る変な奴らがいたって不思議じゃないわね。だとしても男性のいる座標にこれを開くくらいだったらそこに襲撃したほうが安上がりなんじゃないの? いやでもしかしせやけどそれでもだとすればじゃけん……
アララギが思考の迷宮に嵌っているそんな頃、フウロたち側からはその変化を明確に見ることが可能だった。
空間の渦が逆回りを始めた。それに連鎖して輪がビリビリと帯電を始めたのだ。
「カミツレちゃん、あれは何?」
「見たことない電気ね」
二人は警戒をより一層高め、言葉少なく会話をする。電気タイプのエキスパートであるカミツレも見たことのない電気っぽい何かを目の当たりにした二人は自分のポケモンを呼び出して万が一の備えをする。フウロはエアームドとバルジーナを呼び出して、エアームドは“てっぺき”を積みバルジーナは彼のそばで待機させている。
カミツレはパチリスとゼブライカを呼び出してパチリスをエアームドのそばに、輪の近くにゼブライカを置いてもしもの備えにしてある。
やがてそのバチバチとした帯電が音として聞くことができるほどに大きくなり、最後にはひときわ大きく輝いて電気を拡散させた。
そして何か小さな二つの影が飛び出す。その二つはくるくると螺旋を描きながら空中に昇って行ったかと思うと急降下してくる。その対象は彼であるように思えた。
「っ! エアームド“まもる”! バルジーナは“とおせんぼう”!」
「パチリス“このゆびとまれ”! ゼブライカは“ひらいしん”で受け止めて!」
四体のポケモンはうまく動いた。エアームドは飛び上がり羽を広げて先に通さぬようにし、パチリスはエアームドの下方で注目を集めた。バルジーナも彼を守るようにへ根を広げて影を見据え、ゼブライカは周囲に散った電気を自身の特性である“ひらいしん”で集めて被害が周りに及ばないようにした。
その二つの影はそんな彼らをすり抜けた。二つが二つとも“ふいうち”のような挙動でするするとポケモンたちの脇を抜けて彼へと突っ込んでいく。
まずい、と彼女たちが思った時にはもう遅かった。そのまま呆然とする彼にその二つの影が突っ込む。最悪の光景が脳裏をよぎる。彼が失われるような錯覚が襲い、一気に体温が下がったような感覚に陥る。
――ビィ!
――ミュウ!
目を覆いたくなるような光景はなかった。彼は尻餅をついたものの、それ以上には何もないように見えた。二つの影だったものは彼の胸元でそのピンク色の頭をごしごしと擦り付けている様子である。抱き着きながらそうしている光景はおおよそ敵意のあるもののようには見えず、フウロとカミツレは緊張から解き放たれた衝撃で地面へとへたり込んだ。
「……ミュウにセレビィ?」
そんな彼の腑抜けた声に反応したのは二つの鳴き声だった。
「ミュウ!」
「ビィ!」
二体は元気に笑いながらそう答えたのだった。
時系列がちょっとややこしいので捕捉しますと、四話からこの話の冒頭にかけては三話でアララギさんが言ってた彼が街に抜け出したりして大変だったとかなんとかって部分です
ややこしくて申し訳ない
男女比の変更についてですが元がちょっと高すぎるんじゃねえかと思ったので色ポケくらいの珍しさならちょうどいいかと思ってこうなりました
一発で急所引く確率って稀によくあるし
BW世界なんで素の1/8192でもいいかなと思ったんですがそれじゃあ人類滅ぶなと思ったのでひかおま有り国際孵化くらいでいいやという適当な理由です
その辺適当なんで今後はもう変えないと思います
変えたって男性が珍しいという設定は変わんないし、いい感じの比率とかも特にこれと言って思い浮かばないのでフレーバーくらいの気分でご了承ください
あ、続くかどうか未定