PMC装備で異世界に転勤になりました!?   作:フワフワクド

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7発目 フェルトは敵なのか味方なのか

「先に言っておきます。あまり敬語は使えないので、そこら辺は冒険者って事で許してくれません?」

 

「うむ、いいだろう。まぁ座れ」

 

ステインが俺に座る様に促す。

そしてステインの横に立っていたメイドが2つのグラスを持ってきた。一方には紫色の液体、おそらくワイン。もう一方は水みたいな透明な液体。

 

「フェルトは酒を飲むことができるか?無理なら果実水を渡すのだが」

 

「そうですね、では酒を頂けますか?」

 

そう言うと目の前に紫色の液体が入ったグラスが置かれた。

匂いもぶどうそのものだった。

 

「それはぶどう酒でな、地下で樽の中に入れ、90年間熟成させたものだ。100年物を出したかったのだが、決まりで国のお偉方が集まる宴でしか出せないのだ」

 

「それでも飲み物を出してくれるだけありがたいと思ってますよ」

 

そう言うとステインは、そう言ってもらうと助かる、と言った。

 

「それでなぜ今日は呼ばれたんでしょうか?」

 

「早速そこを突いてくるか...まぁ言おう。お主がワシらの敵なのか味方なのか、それを確かめようと思い、呼んだのだ。お主は未知の武器を使っておるらしいな、だから敵になり得る存在なら...」

 

「今ここで...って事か?まぁ国を敵に回す様な真似はしませんよ。確かにあなた方からすれば未知の武器でしょう。それを使って国を滅ぼしたり、他国につくことは限りなく低いでしょう」

 

「そうか、それが聞けて良かった」

 

ステインはホッとした様な顔をして、机を叩いた。するとドアからメイドが食事を持って入ってきた。

 

「食事に呼んだのだから食事をしなくてはな」

 

目の前の机には3人分の料理。この部屋にいるのはステインと俺、あとメイド3人。メイドと食事をする事はないよな?あと1人分は一体誰のだ?

 

「あと1人はどこだ?だろう?ワシの娘だ。すぐ着く、お主の事を気に入ってるらしくてな、話をしたら仕事を休んで来ると言ったからな。お主は余程好かれておるのだな」

 

娘?一体誰だ。その様な人物に会った覚えはないぞ。もしかして街のどこかでふらっと目に留めたとか?それなら会ったとかにはならないだろうし、うーん。分からん

 

いろいろ考えているとドアが開いた。

ドアの方に目を向けるとドレスを身に纏ったライラが現れた。

 

「失礼しますお父様、フェルトさん」

 

ライラが丁寧なお辞儀をして入ってきた。俺には何が何だか理解出来なかった。あの受付嬢が娘だったなんて、しかもよりによってライラ...まぁ良いけどさ。

 

領主の娘アプローチしてたなんてビックリダナー。

 

「遅かったな、ライラ」

 

「何を着ようか迷ってまして」

 

「まぁ、よい。そろそろ食事にしよう」

 

俺は相変わらずついて行けてない。そして、そんな俺がいても時間は進む訳で、2人がいつの間にか食べ始めていた。

 

「それでライラ、どうなのだ?」

 

「...どうとは?」

 

「誤魔化さなくてもよい、フェルトの事だ」

 

「そ、それは」

 

「ハハハ、この料理おいしいですね!」

 

俺は口をつけてない料理があるにも関わらず、無理矢理に話を逸らそうとしたがステインは此方を見ようとしない。ここでライラがある事ない事口走った日には、俺の異世界ライフ、第2の人生終わってしまう。

 

「それはもう、強引に...」

 

......ん?おかしいなぁ?ヤクキメてもないし、幻聴聞こえる年でもないしなぁ

 

「ほほう、強引に、か」

 

あれ、ステインが怖い顔でめっちゃ睨んできてる。俺強引にしたかなぁ?

確かに食事に誘うのは少し強引だったかもしれないけどさ。

 

「お食事に誘っていただいて、家の近くまで送っていただきました」

 

ふう、なんとかステインの顔が元に戻った。

 

「そうか、娘が世話になったようだ」

 

「いえいえ、それほどでも」

 

そう言った矢先、ステインの後ろから光るもの、おそらく矢が飛んできていた。俺は急いで立ち上がり、机の上を走り、ステインやライラを机の下に押し込む。

 

すぐ外をスナイパーライフル《M200》で確認するが人影はない。視線を横に向けると、飛んで来ていた矢は隣の壁に刺さったようだが、矢は壁を貫通して床に刺さっていた。

またスコープを覗き込む、すると視線の先の一部が陽炎のように揺れた。そこを撃つと、人間が血を流しながら倒れるのが見えた。

 

「フ、フェルトさん?」

 

完っ全に怯えている。まぁ仕方ないか、部屋の中で撃ったから途轍もない爆音が部屋に響いたのだろう。耳鳴り凄いよね、もう慣れたけど。

 

ライラは机の下から震えながら四つん這いで出てきた。下から出ても頭を上げず周りをキョロキョロ見渡す、そしてステインを机の下から引きずり出す。ステインは子供のように丸まっており耳を塞いでいる。

 

「フェルトさん、これは?」

 

ライラが指をさした物はM200から排出された薬莢だった。

俺はマガジンを外し、薬室に装填していた1発を取り出す。そしてライラに手渡す。

ライラは興味深そうに、撫で回したり、手の上で転がしたりしている。そして落ちている薬莢と並べた。

 

「なぜ此方の物には先端の尖っている部分が付いていないのでしょうか?」

 

「その先についてる尖っている金属を飛ばして攻撃するんだ、だから片方にはついてない訳」

 

ライラは視線を空薬莢に戻し、中を覗いている。

 

やっとステインは立つ事に成功した。でも足は震えているが...

 

「フ、フェルトよ、この矢はどこから」

 

「随分遠くから放ってきました、何か特殊な道具でもあったのでしょうか。それとも魔法で飛ばしたか」

 

ステインは壁を貫通したのに無傷な矢を手に取り、興味深そうに見ている。娘と同様に撫で回したり、鏃を触っている。

 

なんとなく分かった事がある。それはこの親子が見たこともない道具や魔法には目がない事。

壁をよく見ると剣や本が大量に並べられていたり、掛けてあったりする。恐らくこれらもこの親子が、といってもステインが買い集めたものだろう。

その中で1本だけ、俺の目に止まるものがあった。

 

「これは?」

 

俺はつい、それを手に取り鞘から抜いた。

そうしたらタイミング悪く、騎士がドアを突き破ってきた。

 

「貴様!何をしている!武器を納めろ!さもなくば力尽くででも止めさせてもらう!」

 

騎士が剣を抜き切りかかってくる。俺はステインに助けを求めようとしたが、ステインは矢に夢中である。

 

俺はため息をつき、片手に持っていたソレで騎士の剣を受ける、すると騎士の剣が真っ二つ。そして騎士の顎に蹴上げを放つ。

 

「ステイン、この騎士はどうする」

 

ステインは今気づいた様に振り向く。すると何事もなかったかの様に矢に向き直り、口を開く。

 

「其奴はお主らの事を見下しておるのだ、冒険者風情が生意気だ、ってな。でも実力は間違いなくてな。処分のしようが無かったのだ」

 

俺は足元の騎士に視線を落とし、溜息をつく。そしてその騎士を廊下に引きずり出し、ロープで縛る。そして放置

 

「それでだ、この刀はどこで?」

 

「おお、その刀の良さが分かるかお主。その刀は先代が残していった形見なのだ、騎士らに使わせてみたが全く切れず、木の棒でさえ切れんのだ。だがお主は容易く斬った、あの騎士の剣を」

 

「しっかり見てたなら止めてくれても良かったんじゃないのか?」

 

ステインは苦笑いをするだけだ。

 

「そういえばの、昨夜盗賊が忍び込んでな、地下牢に入れておるのだ。どこから来たのか、と聞いても日本としか答えんのだ。お主は何か知らんか?」

 

「...会ってみない事には分からんな」

 

もしかしなくてもJAPANの日本の事だろう。話を聞いてみなくては。




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