PMC装備で異世界に転勤になりました!?   作:フワフワクド

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6発目 遺留品搜索&ステインを治める者

俺は目を覚まし、左にある時計に目を留める。時刻は7時46分を指していた。あと14分でギルドのカウンターで依頼受理が始まる。

そしてこの宿、8時までが朝食の時間である。時間に遅れると余り物だったり、少しお金を払う事になる。

その為、身嗜みを整えて下の食堂に降りる。

 

降りると殆ど誰も食べておらず、喋ったりしてるか者がほとんどだった。

 

「朝食いいですか?」

 

「はい只今〜」

 

そうするとエプロン姿の男性が小走りでメニューを持ってきた。

メニューにはただ2つだけ

パンとコーンスープだけであった。

俺は不思議になりながらもその2つを注文する。

 

後から知った事だが、ギリギリの時間にいくとメニューが売り切れになり、メニュー表からメニューを抜くのだそう。

 

俺は朝食を食べてギルドに向かった。

 

ギルドに着くと冒険者で溢れかえっており、いつからついてきていたのかハイマキ達が後ろをついてくる。

俺はハイマキ達をお座りさせて、依頼書を見に行く。

そこには

 

『愛する夫の遺留品を探してください』

 

コレはCランクの中では割と楽で報酬も高い。けどCランクになってるという事は何か理由があるはず。

 

ライラに聞いてみるか。

 

「おはようライラ。この依頼なんだけど詳しく」

 

「おはようございますフェルトさん。その依頼はですね、フェルトさんがこの前行った森の奥深くに行かなきゃいけないんです。だからそこまで危険を犯して金稼ぎするぐらいなら、地道に金を稼ぐ!っていう冒険者が多いんです。そういう理由で残ってるんですよねー」

 

確かに普通のCランク冒険者ならその考えが普通だろう。俺だって前の仕事じゃそこまで危険を犯してまで金稼ぎはしなかったしな。

 

「なる程、そういう事か。なら受けるしかないな」

 

ライラが何か言おうとして口を開くが、すぐに口を閉じて依頼を受理した。

 

「もし危険だと思ったらすぐに逃げてくださいね?」

 

「分かってるよ」

 

俺はハイマキ達を連れて、彼女に手を振りギルドを後にした。

門の外に出て少し歩く。そしてハンヴィーを取り出して乗り込み、ハイマキ達を後ろのトランクに乗せる。不思議な事に燃料は使わず、前に進んでいく。恐らく火の魔力を使っているのだろう。

俺に魔力は感じられないし、魔力があるかどうかも分からない...

 

『基本的に生きている者には魔力が存在し、普通に生活する程度の魔法を使うぐらいなら問題は無いです。また、ズバ抜けて魔力が高いと魔術師になる方が大勢です』

 

なる程、魔力が高い人が魔術師という道に進むのか。俺はどの位魔力が入ってるんだろう?

 

『今の段階ではB級魔術師です。そこそこの魔法を撃てます、伸び代があるので、最終的にはAとS級の間ぐらいの魔術師になれます』

 

説明ありがとう。上から3番目か、まぁその程度だろう。もともと魔力を持ち合わせている訳では無かったのだから。

 

そしてこの前居た森の中までやって来た。そこはまだ血の色が地面に残っており、周りの石や岩にも血が飛び散っていた。

 

「自分がやったにしてもこれは酷い有様だな」

 

俺は車から降り、周りを見渡す。

するとハイマキ達は車から降りて、周辺を警戒しだした。まだ獣臭はしないし、気配も感じない為いつ襲われても対応出来るように警戒しているのだろう。

 

そのまま森の奥に歩いていく。

10分程歩くと数人分の一部が変形した鎧や骨が周りに散らばっていた。そして大きなカバンが転がっており、色々な物が入っているのか少し膨らんでいた。

 

「これを持ち帰れば依頼完了のはずだよな?ハイマキ」

 

「グルゥ」

 

ハイマキが、そうだ、と言わんばかりに鳴く。そして他の狼達がカバンや鎧を咥えて引っ張ってくる。

そのカバンの中にはギルドカードが3枚と少しの魔石、小ぶりのエメラルドが付いた指輪が入っていた。

 

このカバンの中身と鎧は一通り持って帰った方が良さそうだな。

 

あとは帰れば依頼完了になるはずだった。

ハイマキが足元で唸りだす。周りの狼達も1点を見つめて目を離さない、何かが目線の先にいるのだろう。俺はカバンを収納し、近くにあった石ころを思いっきり投げつけた。するとすぐ木に跳ね返る音が聞こえた。

ハイマキ達の気のせいか、と思い帰ろうとすると、前方の地面が突然盛り上がって近づいて来た。俺から3メートル程の所で土が盛り上がらなくなる。するとそこから植物が生えてきた。大きな壺みたいなのがぶら下がっており、細い管が茎にまとわりついている。

 

槍を召喚し、構える。近づき切ろうとすると管から霧状の液体が噴出した。

 

「チッ、何か吹いたな。あと少しで届くってのに。向こうの方がリーチが長いってのが嫌だな」

 

ハイマキ達はすぐさま後ろに下がって警戒する。

周りの石や草を溶かしているところを見ると、あの液体は酸性の液体である事が分かる。多分壺に液体が溜まっていて、あの管から霧状で噴出。そして獲物を溶かすのだろう。

 

「あの液体、ちとヤバそうだな。鎧の奴らもアレの餌食になったのか?」

 

恐らくあの液体がかかって鎧が溶け、肉体を溶かして行ったのだろう。未だに石が音を立てて溶けているところを見ると相当強力なのだろう。

 

俺はライターと殺虫スプレーを召喚し、植物にスプレーを吹きながらライターの火をつけ、火炎放射器代わりにした。すると植物は燃えていき、壺みたいな物が大きく膨れ上がってきた。

本能が危険を察知しているので、ハイマキ達を逃がし俺も逃げる。

少し離れた所で見守っていると突然植物が爆発した。そして液体を撒き散らし、周囲の木や草を溶かしていった。

 

俺達はハンヴィーの近くまで帰ってきた。

 

「ハイマキ、狼達に怪我は無いか確認してくれ、怪我してたら連れてきてくれ」

 

「ワン」

 

俺はカバンを召喚して中身を確認していると、ハイマキが突然吠えてこっちを見る。俺は走ってハイマキのもとに行く。

ハイマキの前にいた狼に先程の液体が掛かっていたのか、少しずつ皮膚を溶かしていた。俺は急いでハンヴィーの中から純水を取り出し、狼にかける。

少しずつだが狼の傷が塞がっていき、最後には皮膚から毛が生えて、元通りになっていた。

 

「他の狼達は車に乗っていてくれ。ハイマキも乗ってて」

 

ハイマキ達は開いているドアから車に飛び乗った。

俺は怪我していた狼を抱っこし、リヤシートに寝かせる。落ちない様にシートベルトをし、運転席に乗り込む。

 

それからは何事もなく街の前まで帰って来ることが出来、怪我していた狼も歩ける程度には回復していた。

 

俺はギルドに行き、依頼完了の手続きをしていた。流石にランクが上がる事はなかった。

ライラにカバンを渡すと、それから依頼主に渡されるという事になっていた。

 

「それじゃあフェルトさん。お疲れ様です」

 

「ああ、仕事頑張れよ」

 

ライラはニコリと笑顔を見せ、それにドキッとして、平静を装いながらギルドから戦略的撤退をした。

 

ギルドを出ると目の前には馬車が停まっており、その中から1人の鎧を着た男が出て来た。

 

「お前がフェルトか?ステイン様が夕食にお呼びだ、6時に城の入り口まで来る様に」

 

それだけ言って鎧を着た男は馬車に戻り、馬車を城の方に向かって進めた。

 

「なんか、突然だったな。俺の返事も聞かず帰って行きやがった。アレが騎士なら勉強し直した方がいいんじゃ無いか?」

 

「全くもってその通りだよ」

 

後ろから、ギルドの入り口から女の声が聞こえる。

 

「あれでもこの街の騎士の中で1番強いんだ。ま、騎士はアレだがステインはいい奴だよ、この街を良くしてくれるからな」

 

「そうか、情報ありがとうな」

 

「良いってこと、それであんたが噂のフェルトかい?」

 

「ああ、そっちは?」

 

「私はナナ、よろしく」

 

彼女はナナと名乗り、右手を出してきた為握手した。

彼女は用があるらしく、またねと言ってどこかに歩いて行った。

 

さて、今の時刻は午後5:53

ナナと話していたのは精々1分程。て事はあの騎士は俺を間に合わせる気が無い様だ。と言っても、呼ばれているので遅れるわけにも行かないので、ハイマキ達はギルドに残ってもらい、俺はダッシュで城の前まで行った。

 

結果的に言うと間に合った。間に合ったのだが、城の入り口にいる2人の兵士の頭が固すぎなのか、話が通っていないのか、一向に通れる様な気がしない。

 

するとさっきの騎士が出て来た。

 

「お前達、フェルトという冒険者は通す様に言っただろ。言ったことも出来ないのか猿ども」

 

「す、すいません」

 

「次は無いと思え」

 

俺は騎士と共に城に入る。そして2回ほど階段を上がり、一際豪華な扉の前に立つ。

 

「ステイン様は優しい、だからと言って冒険者風情が調子に乗らない様にな。食事中でも目は離さないからな」

 

「へいへい」

 

騎士は舌打ちをし、ドアをノックする。すると扉の向こうから、入れ、と聞こえてきた。

騎士が扉を開け、俺に入る様に促す。

 

「失礼します」

 

「お主がフェルトだな?ワシはこの街を治めるステインだ」

 

長机の先に座っていたのは白髪のオッサンだった。




誤字脱字あったらヨロシクオネガイシマス

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