オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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今見たら
アイカが到着したのが48話だから、あれから10話経ったってことだ。
まだ終わらないのは草を通り越して竹


58話 その全てを賭して

 58話

 

 

 

 

『いい? ヴィータちゃんもみんなも、これからはあまり無理できないんだから、以前みたいに瀕死の状態になる前に戦線を離脱すること! 分かった?』

 

 シャマルが出撃前に言っていた言葉。

 

『体力の消耗と魔力の消耗が激しすぎると、それだけで活動限界が近づくの。 人間の心臓と同じで、無理しすぎるとそれだけ負担もかかる。 だから昔みたいに無理は禁物、いいわね?』

 

 それは自分達のこれからの振る舞いについて。

 ヴィータ達ヴォルケンリッターは夜天の書が作り出した守護騎士プログラム。 意思を持ったプログラムであり人間ではない。 人間と同じ心を持ったプログラム、故に人間にはできない戦いができる。

 はずであった。

 

 しかし、初代リインフォースが消滅したからなのか、それとも生まれ変わった夜天の書のおかげか、はたまた新たな主人であるはやての影響か。 守護騎士プログラムは徐々に新しいものにアップデートされていた。

 

 人間らしさの獲得、それそのものはとても素晴らしい変化であり、もっとも賞賛されるべき内容であった。

 だが、それは本来の『守護騎士』としての役割から大きく逸脱した内容である。

 

 戦い、守護する事が本来の目的であり存在理由。

 

 この微妙なミスマッチがヴィータに更なる苦痛を与えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(いーーてぇーー)」

『ふははは……まだ意識はあるみたいだな。 流石はヴォルケンリッター、守護騎士。 人間ならとっくに絶命しているというのに、()()()()()()して意識を手放す事ができないとはな……これはお笑いものだ』

 

 死なない。 この程度では死なない。 未だ守護騎士としての側面が大きい今のヴィータにとってこの串刺しは、あまりに『痛い』ものであった。

 

「(どうなーーローリはーー)」

 

 虚ろな目で目の前のそれを見る。

 ()()は巨大であった。 そしてそれは大きなコアを包み込むほど巨大(デカい)。 そして憎たらしい顔をしながら、笑っていた。

 

『フハハハハハハ!!』

 

 笑っていた。

 

「(うるさーーこのクソ野郎ーー)」

 

 ボヤける頭に嫌なほど打ち付けてくる笑い声のおかげで、ヴィータは意識を保つ事ができていた。

 

 ほんの少しだけ、イラっと来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この様子をゆりかごの一室で見守る者が一人。 最後のナンバーズであるクアットロだ。

 

「……無駄なのよ、今のローリさんを相手にたった二人だけで戦おうなんて」

 

 クアットロは冷めた目つきで二つのモニターに映るローリを見ている。 いつものクアットロとは違う、憂いを含んだ目つきで。

 

「ゆりかごと同期したローリさんにとってゆりかごはもはや自分の手足同然、まだ70%だけどそれでも管理局の魔導師を相手にするなんてメじゃない」

 

 クアットロは淡々と事実を並べていく。 自分の中で整理を行うみたいに。

 

「仮にここでローリをおチビちゃんが倒しても、ローリさんはスウィッチするだけ。 メインデータが『王座』に移行するだけ……ローリさん二人を相手にしなくてはならない……どちらか一方がメインではなく、それぞれ独立した存在。 コピーでもなく、ローリさんが二人分になったわけでもなく……」

 

 クアットロの口から出てくるローリの新事実、それはローリが二人いるという恐ろしい事実。 キリンが戦ったメタルローリコピーのように、側だけをなぞった代物ではなく、正真正銘のローリが二人いるのだ。 ゆりかごという超オーパーツのエネルギーを活用し、ゆりかごと同期したローリにとってゆりかご内は自分の体内。 自分の体内なのだから、それを把握するための分身……いや役割を持った別の自分がいてもおかしくはない。 実に奇妙な話ではあるが、『王座』のローリと『核』のローリはそれぞれ同じ力、思想を持ちながらも別個体としてゆりかご内に存在している。

 

「間違いなくローリのおかげでドクターの計画は成功する……」

 

 この絶対的な存在により、ジェイル・スカリエッティの邪悪な計画はより破滅的な力を持って行われていたのだ。

 

「成功……そう、ドクターの悲願の達成……!」

 

 創造主の悲願の達成、それこそがクアットロの最大の願いであり存在理由であった。

 

 それなのに。

 

「そうすれば……ローリさんは……」

 

 何かが、引っかかってしまう。

 

「ローリは死ぬ……自分の命を捨てる……」

 

 記憶の回廊から、何故か溢れ出て止まらない。

 

 ローリの事が。

 

「別に……そう別にあんな奴が死んだって……! ……死んだって……何もないはずなのに……」

 

 振り払うことの出来ないローリの残影。 何故かこびりついた彼との日常。

 

「あんなやつ……! あんな…………あんな…………」

 

 その葛藤が、クアットロを苦しめていた。 そう、『人間の弱さ』を手に入れようとしていたのだ。

 

 だからクアットロは見逃してしまった。

 

 ゆりかご内に侵入してくる三つの影を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィータは戦い抜いてきた騎士である。

 

 古代ベルカからの戦乱……ただ戦い、闘い、殺し合い(たたかい)続けてきた。 常に主のために戦い……しかし必ず主は悲惨な最期を迎えてしまう。

 戦い続けてきたヴィータは、いつしか自分には『撃ち壊す』ことこそが自分の本懐であると悟った。 故に『鉄槌の騎士』、その手に持つ鉄槌で、目の前の全てを打ち砕いてきた。

 

 いつしか、ヴィータからは笑顔と、心がなくなっていた。

 

 ーーーーこんな時に……昔のこととか……走馬灯かよ……

 

 しかし、ヴィータに新しい風が吹いた。

 新しくも爽やかで、それでいて暖かい春の風に似た……祝福が。

 

 八神 はやてが新しい主となった。 戦う術も持たない、足も動かすことの出来ない新しい主は、一番最初にヴィータ達に与えたのは……『家族』であった。

 

 ーーーーあぁ……腹減ったかも……

 

 争いはなかった。 争わなくていいのだと知った。 時代だからではなく、はやてがそれを望んでいたからだ。

 優しい人に、ヴィータ達は出会った。 底抜けて優しいはやてに、ヴィータは笑顔と心をもらった。

 

 ーーーーそういや……まだ冷蔵庫にアイス残ってた……けな……

 

 気付けばヴィータの日常はたくさんの事が起きた。 楽しいことも苦しいこともあった。 でも気付けばヴィータの周りには家族がいて、友達がいて、仲間が出来て……

 

 ーーーー……ぁ? なんか忘れてねぇか……? 大切な……何だっけな……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 言葉を貰った。

 

「うわぁぁぁぁぁ! ヴィータおねーさん大丈夫ですごぜーますかー!?」

 

 ーーーーうるせえなぁ……こんくらいヘでもねぇ……

 

「ヴィータ!」

「ヴィータちゃん!?」

「あんたがやったんやな、ローリ!」

 

 ーーーーおいおいはやてまで……カッコ悪いとこ見せちまったなぁ……

 

『ちっ、クアットロめ見逃したな? まぁいい、貴様らが相手だろうとゆりかご内でこの私に敵うものはいない!』

「リイン、ユニゾンや! まずはヴィータを助ける!」

「了解なのです!」

「アイカ、アイカはヴィータを治してあげてな!」

「アイアイサー!」

『何だそのガキは……ちっ、また不確定要素が増えた……だが今ここで仕留められば問題はない!』

 

 ーーーーおい待てや……

 

 ヴィータの手に力が篭る。

 

「ヴィータ!? 動いたらあかんて!」

『こいつ……! まだ動ける力が……!』

 

 ーーーーここは……ここは……!

 

 ヴィータは自分を突き刺している鉄塊を、左手で握り始める。

 

『な……何だこの魔力の上昇は……!?』

 

 握られた鉄塊の表面にヒビが入る。

 

「ヴィータおねーさん、()()()()()!!」

「ここは私の仕事だろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 自分を突き刺したローリの鉄の触手を握りつぶす。 これでヴィータは解放された。

 

『なんだこのパワーは!?』

「アイゼン!」

『Yes Sir!!』

 

 カートリッジがリロードされる。 それと同時にアイゼンを両手で持ちかかげる。

 その姿は間違いなく、ヴィータの最後の攻撃、『ツェアシュテールングスハンマー』だとはやては気付く。

 

「……っ……!」

 

 一瞬考える。 その間にもヴィータはアイゼンをツェアシュテールングスフォルムに切り替え、どんどんアイゼンを巨大化させていく。

 はやてにはもう迷う時間はなかった。

 

「アイカ、ヴィータに魔力支援してあげてな!」

「了解でごぜーます! フレー! フレー!」

「リイン、うちらはヴィータの援護や!」

『ハイなのです! 全力でヴィータちゃんを守りましょう!』

 

 はやては考えた。 今ここでヴィータに無茶させるのは危険の方が大きい、しかしヴィータの攻撃が最もゆりかごのコアを破壊するのに適しているのは事実。 そして中途半端な攻撃では、キリンから聞いたローリの驚異の修復と強化をさせてしまう。 それはますますこの状況が不利になるということ。

 ならばここはヴィータに一気にコアを破壊してもらうのが1番、そう判断したはやては、ここ大一番の勝負をヴィータに託した。

 

「ツェアシュテールングス…………!」

「頑張れでごぜーますよー!」

 

 アイカの応援は言葉だけでなく、魔力による支援も含まれている。 アイカの魔力がヴィータを優しく包み、そして融和しヴィータの力の底上げを行なっていく。

 

『魔力がまだ上がるのか……! ちぃ! 打たせるものかぁ!』

 

 再び襲いかかる鉄塊の触手。 今度は無数に。

 しかし、ここにははやてがいる。

 

「無駄やで」

『何ィ!? あっという間に凍らせただと……!?』

『あなた対策はしっかりしてきたのです』

 

 リインとユニゾンしたはやてによる氷漬け。 摂氏マイナス273と0.15度。 機械に血管も体温も存在しないが、凍らされて動けるかどうかは話が別。

 そして何より……

 

「壊れた訳でもない、破損した訳でもない。 ただ動かないだけや。 一体これでどうやって修復と強化を行うつもりや……?」

『こ……この女ァァァァァァァァ!!』

「行けヴィータ!」

『ヴィータちゃん、お願いします!』

 

 アイゼンはもう、臨界点を突破した。 あとはもう振り下ろすのみ。

 

「行っっっけえええええ! ヴィータおねーさーん!」

「ハン…………マァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 ヘッドの部分からのロケット発射による超加速、ローリに向けられた螺旋回転のドリル部分、そしてアイカによる魔力支援。

 ただ一点のみを打ち砕かんとする、ヴィータ最高の攻撃だった。

 

『グゥゥゥゥォォォォォォアアアアアアア!!』

 

 悲鳴をあげるローリ。 それもそのはず。

 ゆりかごと同期したローリにとって炉であるこのコア部分は心臓に等しい。 その心臓をドリルによって破壊されどんどん内部にまで食い込み始めているのだ。 痛いわけがない。

 だがローリにとってこの状況は、キリンが1000万の魔力を解放した時に比べればマシな方。

 攻撃を受けてはいるものの、だからといって攻撃を止めることはない。

 

『お前……オマエ……おまえ……お前がヴィータに魔力を支援しているんだなぁ! 何者かはしらないが、仮にオリ主だったとしても……ここで殺してくれるゥ!!』

 

 ローリの瞳からレーザーが発射される。 標的はもちろんアイカ。

 

「見え見えや」

『ッ!?』

 

 もちろん、はやてに防がれる。

 

「あんたの弱点その2……機械だけど人間の心がある。 ……もちろんそれが今まで私らを苦しめてきたけど……だからこそ()()()()の一撃がでてしまう!」

『おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 これが六課最強の魔導師にして最後の砦、八神 はやて。 万全の状態で、備えがある彼女に隙はない。

 

「ブチ抜けえええええええええええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぇ」

 

 誰もが目を見開いた。

 ヴィータがたしかに握っていたグラーフアイゼンが……

 

「アイゼンが……!」

「壊れちまったでごぜーますかー!?」

 

 巨大化なハンマーは砕け散り、僅かに食い込んでいたドリルの先の部分をゆりかごに楔のように刺したまま、グラーフアイゼンは壊れたのだ。

 

「ーーーー」

『(ぎょ……僥倖! 僥倖! 僥倖すぎる!)』

『……! はやてちゃん!』

 

 コアはヒビが入り、今にも壊れてしまいそうな程破損していた。 そう、まだ壊れていないのだ。

 

『(これなら一気に修復し、そして強化を行えば更なる強化装甲を作り出す事ができる! それ即ち不屈にして破壊不可能! 最強のゆりかごとなる!)』

 

 ローリは瞬時に修復を始める。 はやてもそれに気付くも、今魔法を撃てばヴィータに当たってしまう。 今のヴィータに避ける力は残っていない。 仮にユニゾンを解いてリインを飛ばしても間に合うかどうかは分からない。 アイカも膨大な魔力があるとはいえ子ども。 この一瞬の判断で最善を尽くすことは難しい。

 

「ーーーーッ!」

 

 言葉が出ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一瞬であった。

 

 ーーーーヴィータちゃん!

 

「ッ!!」

 

 ヴィータの、ヴィータだけの耳に届いたのは、『声』であった。

 

「うるせぇぞ……オイ」

 

 その声が、ヴィータの身体に新たな力を注ぎ込む。

 

「私が誰なのか……知ってんだろうがぁ! 『()()()』!!」

 

 ヴィータの身体は、先程アイゼンで打ち付けたゆりかごのコアの表面…………に楔のように打ち込まれたドリルの先端。

 

「私は『鉄槌の騎士』ヴィータ様だ! このヴィータ様にぶち壊せねぇモンなんか……ねぇぇぇええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

 

 ヴィータ、渾身のーー頭突き。

 

『ーーーーーーーーォ゛』

 

 鈍い音が響いた気がした。 しかし静寂な時が流れた気もした。

 

 しかし、はっきりしていることが2つある。

 一つは、このローリ・コアの弱点である。ローリには弱点がいくつかある。 一つは人間としての心が備わってしまっていること。 二つ目は修復と強化は破損しなければ行えないこと。

 そしてもう一つ。

 それは修復をしている間は全くと言っていいほど……防御力がないことである。

 

 ギリギリで保っていたコア、しかし防御を解いてしまった今、ほんの僅かでもドリルの先端が深く刺さってしまえば……

 

『ーーーーォ゛ォ゛』

 

 ピキキ、と小気味のいい音が響いた。

 それと同時に……ヒビが入るゆりかごのーーローリのコア。

 

「ーーーーッ!」

 

 このコアがもし、破壊されてしまったら……ゆりかごを支えるメインシステムは崩壊し、システムの半分は機能しなくなり、その権限は玉座にいるローリに切り替わる。

 しかしそれでも非常事態にして最悪のケース。

 

 そして。

 

 管理局にとって、六課にとって、最高の偉業となる。

 

『ぉ゛……ぉ゛ぉ゛ぉ゛……ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛

 アアアアアアア!!!』

 

 それをヴィータはやりとげたのだ。

 

『アアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァidbdiendh&/)/?218ushsb¥:)...........』

「けっ……ザマァ……見やがれ……!」

 

 ゆりかごの魔力炉、即ち核、つまりはローリのメインシステムの一つ。

 見事ヴィータが撃破したのである。

 

「ヴィータ!」

「うわー! すげーでごぜーますなー!」

『わーいなのです!』

 

 喜ぶ面々。 しかしヴィータはまだ気を緩めない。

 

「まだだ! ショージのやつが言ってた戦闘機人の場所を割らねぇといけねぇ! まだなのはもヴィヴィオの前で踏ん張ってんだ!」

「でもヴィータの傷も……」

「私の事は後でいい! なのはを優先してくれ!」

 

 まだ、相棒が戦っているからだ。

 

「……分かった! アイカ!」

「あい!」

「今からゆりかご内にいるナンバーズ、それもどこかに引きこもっているナンバーズを魔力探知するから手伝ってくれるか?」

「もちろんでごぜーます!」

『今からリインがアンテナを張るからお手伝いお願いするのです!』

 

 はやて、リイン、アイカによる魔力探知。 鮮麗されたはやてとリインの魔力操作にアイカの桁外れの魔力補助が入る。 こうなってしまってはいくらステルスに徹しているとはいえ……

 

「ーー見つけた!」

「でごぜーます!」

 

 発見は秒読みだ。

 

『座標をなのはちゃんに送りました!』

「よし! それじゃあヴィータを治してくれるかアイカ」

「あい!」

 

 これでひと段落。 ヴィータの治療に専念できるようになった。

 

「ふぅ……これで一先ず合流するまであいつに任せられる……イチチ」

「治すでごぜーます! 『癒しの風』〜」

「おっ? ……なぁはやて、ずっと気になってたんだけど、このガキは誰なんだ?」

「ん? アイカはなぁ……アイカ自己紹介や」

「あい! アイカは不ノ九是(ふのくぜ) 愛祝歌(あいか)でごぜーます!」

「ふのくぜ……え゛?」

「アイカのパパは誰やっけ〜?」

「パパの名前は祝歌でごぜーます!」

「ファッ!?」

「ママの名前は〜……?」

「リインフォース・アインスです!」

「マ゜ッ゛!?」

 

 暫しの安息、先程までの激戦を感じさせない、暖かい風にヴィータ達は包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王の間。 ローリ・スローンズは驚いていた

 

『高町 なのは……なんて奴だ……』

 

 ヴィータがローリ・コアを破壊した事にではない。 突如として現れた原作にはいないアイカの登場にでもない。

 目の前で起こった事に驚いているのだ。

 

『たしかに……クアットロの位置がバレる事は考慮していた……そしてクアットロがこの場から狙撃されてもいいようにあいつのいる区画の装甲はより硬く組み替えた……それでもだ』

「ハァ……ハァ……うくっ……ハァ……ハァ……!」

『高町 なのは、よもやここから()()()()()3()を解放して一気にクアットロを長距離砲撃魔法でダウンさせるとは……!!』

 

 ほんの僅かな時間の出来事であった。

 はやて達から送られてきたクアットロの位置情報、それを確認したなのはは即座にプラスターを解放しクアットロのいる方向めがけてディバインバスターを放った。

 当然ローリが言ったように、そこ区画はより装甲が厚く、ブラスター1では撃ち抜かない程に強固であった。

 それを感じ取ったなのはは躊躇なくブラスターを『3』まで解放した。

 ブラスター3ともなればゆりかごの装甲だろうが、一点集中ならば簡単に撃ち貫ける。 クアットロは防御することも回避することも、判断すら出来ずになのはに撃ち抜かれた。

 

 僅か1分未満の出来事である。

 

「これで……うぅっ! ……あとは……ハァ……ハァ……」

 

 なのははもはやまともに立っていられない程消耗していた。 レイジングハートを杖代わりにして、やっと立っていられる状態。

 しかしなのはの視線は一点を指して動かない。

 

「ヴィヴィオを……助ける……だけ!」

 

 愛する娘を、娘になってもらいたい小さな女の子だけ、なのはは見ていた。

 

「……マ……ママ……」

 

 クアットロによる洗脳が解けた小さな女の子は、目の前にいるボロボロで血だらけで……ずっと自分に優しい笑顔を向けている女性に。

 

 慈しみと敬愛を込めた涙を見せた。

 




次回でゆりかご内部での話が……終わればいいなぁ!(希望的観測)

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。

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