オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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お待たせしてすまねぇすまねぇ……
あれ?前の時もいったな?


57話 戦略

 57話

 

 

 

 

「む、あそこか」

『すげーな……本当にナンバーズ達も……ルールーも……』

「当然だ。 あいつらは自慢の部下であり仲間だ」

 

 地上本部を襲おうとしていたガジェット達しめて合計500以上はいたであろう。 アイカとリインに道を作ってからもガジェットと戦い続けたシグナムinアギト、当然余裕の勝利を収めた後にフォワード陣のいる廃ビル群に到着した。

 

「お前達、無事だな」

「うわっ!? ……あ、シグナムさん!?」

「いつものユニゾンとは違う……?」

 

 そこにいたのはエリオ、キャロ、スバル、気絶しているルーテシアと側にいるガリュー

 スバル達の目には初めて見るシグナムのユニゾン状態に少し困惑している。 その姿を見てシグナムはユニゾンを解除し、アギトの姿を出させる。

 

「忘れていた。 今手を借りているアギトとユニゾンをしていたのだ」

「アギト!?」

「……よう」

 

 アギトは腕を組みエリオとキャロから少し顔を晒しながら横たわっているルーテシアに視線を動かす。 ルーテシアは穏やかな表情でいるのを確認すると、小さく呟く。

 

「……サンキュな」

「……うん、どういたしまして」

 

 その言葉に惜しげも無く笑顔を見せながら返事をするキャロ。 隣でエリオも微笑んでいる。

 しかしよく見ればメンバーが足りない。 翔次とティアナ、スバルと共にいたはずの心悟、そしてギンガの姿が。

 

「他の者達は?」

「あ、翔次さんとティアはザフィーラとシャマル先生と合流しているそうで、今こちらに向かっているみたいです」

「そうか……ところで、お前の姉は?」

「ギン姉は……その……」

 

 シグナムの言葉に思わず視線を外すスバル。 シグナムがどういう事なのか困惑していると、エリオやキャロまでもが顔をそらし始める。

 

「何かあったのか……?」

 

 不意によぎる嫌な想像。

 しかしそれは……

 

「いやぁ〜そのぉ〜……ねぇ?」

「……む?」

 

 スバルの無駄によく分からないけど、間違いなく大事ではない代わりにそれはそれで面倒な事になった、かのようなアクションによって打ち消される。

 

「あれは少し……」

「凄いよね……」

「……よく分からん、はっきり言え」

 

 二人までもが少しモジモジしながら話すので、流石に気になったシグナムが答えを促す。

 するとスバルは指をある方向に指しながら言う。

 

「多分、直接見てもらった方がいいかなぁ〜……っと」

「どういうーーーー!?」

 

 シグナム、およびアギトは目を見開く。 その光景があまりにもあまりにも……

 

「「どういう事だ……!?」」

 

 まるで意味が分からないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し離れて、翔次とティアナはザフィーラとシャマルの二人と合流。 捕まえたナンバーズ達はしっかりバインドをした後ヴァイスの操縦しているヘリに乗せる。 とりあえずヴァイスは他の所にいる隊員との連絡をし、その間4人は他のメンバーと先に合流することに。

 

「すまないなシャマル……お前がいなければ正直辛かった所だ」

「いいのいいの、私は治すのが仕事だしね」

 

 翔次の受けたダメージはシャマルが治療した。 だが損傷が少し深刻だったため翔次は全快とまではいかなかった。 それでもまだ動ける。 翔次は獄砕鳥を鞘に収め移動している。

 

「それにしてもお二人も戦闘機人を一人捕縛したんですよね、それも無傷で。 どうやったんですか?」

「それはシャマルのりょうーー」

「ザフィーラ言わないで!?」

「……あっ」(察し)

「察しないで翔次くーん!!」

「?」

 

 ティアナは知らなかった。 シャマルのマジカル・クッキング☆の事を。

 

「むっ、あそこに皆いるな」

「シグナムの奴もいるな……あ? この時って原作でいたか? いや……今更原作通りではないからいいか」

 

 翔次達の姿に気付いたのか、スバル達が手を振ってくる。

 

「ティアー! 翔次さーん!」

「よかった、無事だったんですねー!」

 

 スバル達の大きな声で気付いたシグナムは翔次とティアナと共にこちらに向かってくるシャマルとザフィーラの姿を発見して笑う。

 

「……ふっ、お前達も来たのか」

「あら? シグナム、リインちゃんと一緒じゃないの?」

「あいつは……まぁ後で説明する。 一足先に主の元に向かっただけだ」

「ふーん?」

 

 シグナムの妙にいつもとは違う様子に頭を傾げるシャマルではあったが、今のシャマル達には分からない話である。

 

「……なぁ、時にナカジマ姉はどうした?」

「あ、あぁ〜ギン姉は……」

 

 先程のシグナムと同じ質問をする翔次、しかしシグナムと同じように微妙で曖昧な返事が返ってくるだけだった。

 

「シンゴさんが来てくれたおかげで……まぁ何とかなったん、だけどぉ〜」

「シンゴさんも来てるのねやっぱり」

「ええっと〜……それでシンゴさんが頑張ってギン姉を助けてくれた……結果があちらになります」

「……?」

 

 スバルが両手で示す先にいるのは、心悟とギンガの姿であった。

 

 そう。

 

「シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡」

「離れろ鬱陶しい」

 

 そこには心悟にベッタリとくっ付いて、目をハートさせてアブナイ表情をしているギンガと、それを鬱陶しそうに顔をしかめている心悟の姿があった。

 

「「……」」(おめめごしごし)

 

 とりあえず、目を擦る。 きっとあれは何か目にゴミでも入った結果変なものが見えているに違いない。 そう前向きになりながら目を擦り、開く。

 

「シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡シンゴさん♡(ry」

「「…………」」

 

 いやそもそも耳に聞こえてる時点で目を擦るのは意味のない事ではあるのかだが……いや今はその論議は必要ない。 必要なのは……

 

「「ええええええええええええええあええええええええええええあえああええあえあええええええええ!!?!??!!?」」

 

 とりあえず、叫ぶ事であった。

 

 一先ず分かった事が翔次にはあった。

 ギンガ・ナカジマは、間違いなく確実に原作とは大きく離れた遠いキャラになってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、一先ずは説明からさせておくれよ」

 

 スバルと心悟がギンガをノックアウトした後の事である。 心悟はギンガの心に入り、傷ついていたギンガの心の中でギンガ本人と対話をした。 そしてその結果スカリエッティの呪縛はなくなり、無事……

 

「シンゴさん好き♡」(目がハート)

「こんな事になったわけだ。 分かるか?」

「分からない」

 

 心悟の能力でギンガの心の中に入る←分かる

 心の中でギンガと対話し、スカリエッティの呪縛から解き放つ←分かる

 その結果ギンガは目をハートにしながら心悟にベタ惚れする←!?!!?!?

 

「何度考えても分からんぞ」

「安心したまえ、僕にも分からない。 僕はただ普通にギンガの心の奥底で彼女と話していただけなのに」

 

 恐らく嘘ではない。 というか心悟が嘘を言うメリットはない。 彼は心を読める関係上、必要がある時でさえ嘘をつく事を極力しない男である。 何でもズバッと言う。 そんな彼が分からないと言ってしまっては、もう当の本人であるギンガにしか分からない。

 

「理由を調べようとも、僕の能力では分からなかった。 ……正確には僕本人が解読できないだけだけどねぇ」

「……ボクの理解力がないのか、それともボクが男だから理解できないのか……さっぱりわからん」

「大丈夫よ翔次……女である私にも意味不明だから……」

 

 頭痛が痛い、そんな誤用でもして少しは思考を落ち着かせたいところであった。

 

「だが……まぁ一つ分かったことがある」

 

 翔次は、目の前でギンガに抱きつかれて辟易としている心悟を見て、最高にいい笑顔で言う。

 

「ザマー!!」(最高に楽しそうな顔)

 

 翔次、まさかの陰キャ大爆発であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おーそっちも大丈夫そうだね』

「あぁ、キリンも随分とやられたみたいだが……」

『にっしっし、なんのこれしき』

 

 ひと段落し、スカリエッティのアジトにいるキリン達にも連絡を取っていた。 キリンとミョルニルの報告によれば、スカリエッティを含むアジト内全ての戦力を無事制圧。 ヴェロッサにつかまったウーノが最後にアジトを爆発しようと自爆プログラムを起動するも、無事シャッハとフェイトが解除に成功した。

 

 ジェイル・スカリエッティのアジト、無事完全鎮圧。

 

『……とまぁフェイトちゃんが大活躍だったってわけよ』

「なるほどな……」

『にしても翔次君よくティアナちゃんと二人だけで勝てたな、オレ素直にびっくりしたぜ?』

「……まぁ、ボクもティアナのチームプレイと言ったところだ」

 

 まだ翔次の卍解はキリンには明かさない。 戦いの中ではあるものの、男のくだらない意地があるからだ。

 

『キリン、戦闘機人達以外にもこういうのが……ってあれ? みんなと通信してるの?』

「フェイトさん!」

「フェイトさんも無事だったんですね!」

『うん! エリオとキャロが応援してくれておかげだよ』

『ってかフェイトちゃんそれ……』

 

 キリンが指を指し、画面越しの全員も気付く。 フェイトが運んできたモノに。

 

『きょぬーのお姉さんが入ってるやんけー!?』

「ッ!?」

「あ、あれって……キャロ、もしかして……」

 

 フェイトが運んできたモノ。 それは人が収められた巨大なケース。 そしてその中に液体で満たさられており、一人の人間が静かに目を閉じていた。

 そしてその人物に心当たりがあった。

 

「ルーちゃん! ……は、まだ寝ているから……」

「アギト、こちらへこい」

「へいへい、何だ……ってそれ! ルールーの母ちゃんじゃねぇか!」

 

 アギトは知っている。 その中で静かに眠っているのはルーテシアの母であるメガーヌ・アルピーノだと。

 

「おおおおおい! 運び出していいのかよ!?」

「確かに……今からヘリで迎えに行くこともそうすぐにとはいかんぞ」

 

 アギトが懸念しているのはメガーヌの安否。 今の状態で器材も何もない外に、いくら保存ケースの中とはいえ危険なのではないか。 そしてその危険な状態をルーテシアが見たら大変。 そうアギトの脳内で結論がでてきた、だが。

 

『それは問題ない。 急ごしらえとは言え私が安全を確保済みさ』

「お、お前は……!!」

 

 フェイトの後ろから現れたのは、左頬を赤く腫らしたジェイル・スカリエッティだった。

 

「ジェイル・スカリエッティ!!」

『メガーヌ婦人は異常なしさ。 先程、1月外に放置しても問題なく保全する装置を取り付けたからね。 余程の衝撃がなければ中にいる婦人に影響はない』

「……その言葉、信用していいんだろうな」

 

 アギトは知っている。 このジェイル・スカリエッティという男は狡猾にして非道の限りを尽くし、悪人としても一歩おかしなところに立っている男だと。

 しかし凄みをつけた睨みもスカリエッティには意味はない。

 

『もちろん、元々ルーテシア嬢との約束もある。 私は極悪非道ではあるが約束は守るさ』

「……その後のことは知ったこっちゃない癖に……ちっ」

『それはレジアス中将のことかい? ふふっ、彼には酷いことをしたと自覚しているよ。 何せ命も奪ってしまおうとしてたからね……』

「この男……やはり邪悪」

 

 画面越しでも伝わる邪悪さ。 ザフィーラは守護獣として相手を見極める審美眼はヴォルケンリッターの中で誰よりもある。 そんな彼が、個人的因縁も感情も抜きにして、スカリエッティがもっとももっとも生物の中で邪悪な精神を持っていると決めつけた。 恐ろしい邪悪さ、何かと表裏一体でなければあまりにも恐ろしい。

 

『あ、みんな安心してくれ。 スカリエッティはしっかりバインドしてあるから』

『私としては、もう逃げ出したり反撃するつもりもないんだけどねぇ』

『うっせ、おめーは信用できるが、安心には程遠いわ』

『手厳しい』

 

(なんかちょっと仲良くなってないか?)そう皆が思っている間にポッドに入っているチンクと拘束されてウーノ、そして黒焦げになっているセインをヴェロッサとシャッハが運んできた。

 これで全員である。

 

『あとでこっちにもヘリ回してもらわないとなぁ』

「今こちらの方にヴァイスがヘリを回している。 その後にお前らの方に向かおう」

『そうなったら……あとはゆりかごってトコだな!』

 

 残るはゆりかご。 先に乗り込んだであろうなのはとヴィータ、そして後から乗り込んだであろうはやてが先に戦っているはず。 そしてリインとアイカも。

 

 誰もが乗り気なこの状況で、ジェイル・スカリエッティの口が開く。

 

『……乗り込むつもりかい? ゆりかごに……ローリの中に』

『あったりまえだ。 あいつとも決着をつけねぇといけねぇしな』

「……今、ゆりかごには我々も予想してなかったスケットがリインと共に向かっている。 ゆりかごが落とされるのは時間の問題だ」

『ふぅむ……』

 

 ジェイル・スカリエッティは拘束された両腕を上げ、右手を顎に添える。 その表情は、今までの邪悪なマッドサイエンティストではなく、一人の科学者としての純粋な思案が表情となって浮かび上がっていた。

 数秒の後、ジェイル・スカリエッティは計算が終わったのか、静かに口を開いた。

 

『それがもし本当ならば……『()()』だねぇ』

「……? ジェイル・スカリエッティ……それは本当か?」

「シンゴさん……?」

 

 通信越しとはいえ心の領域を覗ける心悟は、大きく目を見開く。 信じられない、と言った様子で。

 

『……まぁ、そうなるのは本当に最後の最後……』

「…………」

『とはいえ、だ。 ムラサキ・キリン、キミはここで油を売っていていいのかい?』

『あ? んだよ』

 

 キリンに向き直り、ジェイル・スカリエッティは笑う。

 

『今頃、ローリによってキミの仲間は大ピンチだろうからねぇ……!』

 

 再びその表情に、邪悪を込めながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆりかご、聖王の間。

 ここはかつて聖王がゆりかごを起動するために玉座に腰を下ろした場所。 この場においては聖王しか存在してはいけない。 何故ならゆりかごが一度起動してしまえばもう二度とゆりかごから降りる事は叶わず、そして役割を果たした後だとしても日の光を見る事は出来ないからだ。

 

 そう、例え……

 

「はぁ……ハァ……ヴィヴィオ……」

「……!」

『フハハハ! 無様だな高町なのはァ!』

 

 管理局が誇るエースオブエースだったとしても。

 

『無駄だ! 貴様一人でヴィヴィオを、そして私を御しきれるとでも思ったか!』

 

 玉座を見下ろす壁からワイヤーやプラグを剥き出しにした上半身。 それがこの玉座でのローリの姿。 ヴィヴィオを補助するための形態。

 さしずめ『ローリ・スローンズ』。 玉座を支配する機械兵器。

 

「いい加減に……倒れて!」

「くっ……!」

 

 ヴィヴィオがなのはに襲いかかる。 今のヴィヴィオは強制的に大人の姿にさせられた上に、ゆりかごによる強制魔力補助に加え『聖王の鎧』を身につけている。 古代ベルカの聖王、そのスペックを存分になのはにぶつけていた。

 

「ヴィヴィオ……!」

『馬鹿め! 逃れられると思うてか!!』

 

 回避行動を取るなのはに対し、無数のワイヤーをなのはに飛ばすローリ。 見事なまでに空中で捕われてしまう。

 

「うっ……!」

「ヤァァァァァァ!!」

「ッ!!」

 

 ヴィヴィオの拳がなのはの腹部に刺さる。 そのままワイヤーごと引き千切る程の威力でなのはを壁に激突させる。

 

『イイ……! 実にイイパワーだ……!』

「うぅ……!」

『さしものエースオブエースもキツいのではないか? えぇ?』

「ハァ……! ハァ……!」

 

 なのはに蓄積されてダメージは大きい。 いくらレイジングハートが守ってくれているとはいえ、すでにブラスター2まで解放してしまったなのはには……もう限界が近い。

 

「……!」

 

 それでも、立ち上がる。 その姿に思わず驚愕を隠しきれないヴィヴィオ。

 

「どうしてまだ立ち上がるの!? さっさと倒れてよ!!」

「そういう訳には……いかないんだ……よ……!」

 

 ヴィヴィオには分からない。 しかしヴィヴィオは自分の攻撃が目の前のなのはにどれほどのダメージを与えているのかは理解している。 間違いなく意識を失ってもおかしくないダメージ、それでも立ち上がるなのは。 子どもながらにヴィヴィオは目の前の存在がおかしいと思っていた。

 

『流石は高町なのは……だが、貴様の考えはとっくにこちらはご存知だ』

「ハァ……ハァ……」

『貴様は待っている……ヴィータがゆりかごの核となるコアを破壊するのを! 何故なら貴様が裏で操作していた魔力探知の魔法はすでに私が破壊してからなぁ! これでクアットロの場所は分からない……くっくっく!』

「ハァ……! ハァ……!」

 

 クアットロお得意の精神洗脳、これを解くことができれば少なくともヴィヴィオ本人に何かしらの活路が見出せる。 そうなれば攻略すべきは玉座の上で邪悪に笑っているローリのみ。

 だがこれができない。 『原作通り』にはいかない。

 

「でも……私達はまだ……! まだ……ッ!!」

 

 それでもなのはは挫けない。

 だから……

 

『お前達は一つ勘違いをしている』

「……? 何……!?」

()()()だ。 そもそもの前提がおかしいと言っている』

 

 ローリは敢えて言う。

 

『確かにこの私をゆりかごに組み込んだことを貴様らに教えた……ご丁寧に()()()()()()()()()()()()な』

「……ハァ……ハァ……」

 

 なのは達の()()を教える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けっ……こんな機械どもに……鉄槌の騎士……ヴィータ様が負けるかってんだ……!」

 

 ヴィータは血まみれだった。 血まみれのまま、通路を埋め尽くす程のガジェットの残骸の上に立っていた。

 

「心臓刺されようが……まだ……『()()』死なねえ……!」

 

 ヴィータは左腕で壁をつき、右腕をだらんとさせながらグラーフアイゼンを引きずりながら、ギリギリの所で足を前に進めている。

 

「アイゼン……まだいけるな……ハァ……ハァ……」

『All right』

「よし……ハァ……あともう少しでコアだ……ハァ……」

 

 ヴィータの使命はゆりかごのコアを破壊し、その機能を無力化することである。 ゆりかごさえ破壊できればジェイル・スカリエッティの野望は潰える。 鉄槌の騎士だからこそ任された任務だった。

 

「へへっ……あと一発くらいか……まぁそれだけブチ込めれば上等だ……」

 

 ヴィータは確かに満身創痍である。 しかしそこはヴォルケンリッター、六課の魔導師とは戦いにおいての年季が違う。 ギリギリの所で自分が動ける範囲をしっかりと把握した上での無茶をしている。

 そう、ヴィータには一切の油断も驕りもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……()()()!』

 

 だからこそ。

 

『ようこそヴィータ!』

「ーーーー」

 

 だからこそ、敵の方が純粋に上手だっただけだ。

 

『よくぞ、原作以上の数のガジェットを相手にし、そして全て破壊した! 流石は鉄槌の騎士だ』

「ーーーー……んで……てめ……が……」

 

 ヴィータの目には2つのモノが映っていた。

 

 一つはゆりかごの核となるコア部分。

 

 そしてもう一つは……

 

『ここからはこの私が、()()()()()()()()()()()()であるこの(ローリ)がお相手しよう!!』

 

 そのコアを守るように、覆い被さるようにして巨大な姿でヴィータと対峙している『ローリ』の姿が。

 

『ふふふふはははははははは!! アーッハッハッハ!! 』

 

 ヴィータは言葉が出てこない。

 

「ーーーーーーーー」

 

 ローリの高笑いが、放心状態となったヴィータの頭にやけに響いた。

 

『これが戦略だ、覚えたか? なら死ねぇい!!』

 

 この目の前の嘘みたいな光景が、嘘っぱちではないと激しく頭を揺さぶっている。

 

「ーーーーーーーーーーーー

 

 次の瞬間、ムチのようにしなる機械部品の塊が、ヴィータの身体に突き刺さっていた。

 




ヴィータちゃんに穴空きすぎ問題

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教え下さい。

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