オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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vividstrike!のOVA見ました。 感想? イクスの水着初公開でしたよ。 他? う〜んこのって感じでした。


20話 SIX PETALーdrown out nickname

 20話

 

 

 

 

 朱澤 翔次は次男坊である。 ならば当然上に兄弟がいる。

 

 今はもういないが。

 

 

 

 

 

「……何? 兄貴の話だと?」

「えぇ、前に言ってたじゃない」

 

 時間は訓練の休憩中、飲み物片手にティアナが翔次に話しかけてきた。 翔次的には別に話しても問題ないと個人的には思っているが、自分の事情を話すことでティアナに何らかの変化があるとそれはそれで面倒なのだ。

 

「なになにー? 二人共何話してるの?」

 

 そんなところにスバルがやってくる。 完璧に野次馬根性で聞き耳を立てていた彼女は二人が話しているところを見逃さない。

 

「翔次さんのお兄さん? 聞きたい聞きたいです!」

「あぁ? スバル、お前いつのまに……」

「ほら、さっさと教えなさいよ」

「……はぁ、まぁいいか」

 

 厄介そうに頭を数回かく。 気にしたところで今更か、そう思い翔次は兄のことを話し始める。

 

「兄貴は……あぁ『一喜(かずき)』言うんだが……」

 

 覚えてる限りの兄の事を話す。 自分とは違い、運動もでき勉学も非常に優秀な天才。 絵に描いたような文武両道を地でいく男だったこと。

 

「優秀なお兄さんだったんですね……」

「そうだな……」

「……ん? そう言えばあんた、この間変なこと言ってなかった?」

「変なこと?」

 

 それは以前翔次がティアナに言葉を送っていた夜、そこで翔次は一喜の事を少し話していた時のことだ。

 

「『二度死んだ』……とか何とか言ってたじゃない」

「あぁ……それは……まぁ話しても問題ないか。 まず転生者の話からになるが」

『転生者?』

 

 二人は転生者についての簡単な説明を受ける。 あまりに突拍子も無い話なのでスバルは途中から理解が追いついていなかった。 ティアナは何とか理解出来たが、いかんせんそれを飲み込むことが出来ない。 二人共揃って頭を抱える。

 

「高町やフェイト・テスタロッサは知ってるけどな。 もちろんキリンや木村もや」

「えぇ……」(困惑)

「あ、木村もボクと同じ転生者だぞ」

「ファー!? マジですかそれぇ!?」

「マジだ」

「じゃ、じゃあキリンさんも……?」

「あいつはまた別だ。 憑依という別の話だ」

「……もう意味わからないわ……」

「次元世界って広いんだなぁ……あははー」(思考放棄)

 

 二人の常識がほんの少し削られた。

 そら(思考がフライアウェイしたら)そうよ。

 

 

 

 

 

 

「それでだ……あっ!」

 

 ようやくジュエルシード事件の話に入りそうになった所で翔次はあることに気付く。

 

「どうしたのよ?」

「これ……これ……大丈夫か?」

「え、何か言っちゃいけないやつ……ですか?」

 

 翔次、ここにきて思い出す。 この世界ではジュエルシード事件は表向きには存在しないことになっているのだ。 ジュエルシードは全て虚数空間に落下し消滅、被害も特になくリンディ達は地球で観測された次元震の調査ということになっている。 割りかしヤバめだった事件の話、自分が元凶かつ存在しないことになっている事件を二人に話すのはいかんのでは? 翔次は珍しく嫌な汗をかく。

 

「……ここまでだ」

「はぁ? 続きはどうしたのよ」

「言えるか! 言ったらボクが怒られるわ!」

「え、そんなにヤババナイトなんですか?」

「もし仮にお前らに言ってだ、それがもし高町やフェイト・テスタロッサに知られれば……」

 

 間違いなく怒られる。 それどころか笑顔でスターライトを打ち込まれるかプラズマザンバーをくらうかの二択だ。 いや同時にやられる可能性すらある……などと翔次が割りかし失礼なことを考えていると……

 

「知られれば……? 何かな?」

『!?』

「あの二人のことだ……考えるだけでも恐ろしい……」

 

 金色の死神……もといフェイトが翔次の後ろに立っていた。 当然翔次は気付かずティアナとスバルのみがフェイトの登場を知る。 翔次に気付かれることのなく、静かに翔次の背後を取っている姿はまさに死神……。 そんな恐ろしいまでに笑顔でいるフェイトに気付かずに翔次は続ける。

 

「あいつらは肉体言語の第一人者だからな、間違いなく攻撃してくる」

「そうなの?」

「当然だ! お話(物理)を作り出した連中だからな!」

「へぇ……」

『アババ……!!』

「容赦無しにーーぃぁ」

 

 ここでようやく、ようやくだ。 翔次、後ろに立つ死神に気付く。

 

「容赦無しに……何かなぁ〜?」

「あ……あぁ……!」

「気にしないで続けてよ……」

 

 ーーねぇ?

 

 アッー!!

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ何? あの事件の事? 別にいいと思うよ私は」

 

 取り敢えず必死の弁明プラスティアナ達の証言により邪な事ではないと伝えられた。 まぁ確実に3人には恐怖の体験が根強く残っているが。

 

「そうか、そのセリフをもっと早めに聞きたかったな……」

「……私絶対にフェイトさん怒らせないようにする」

「私も……」

 

 フェイトは別に怒鳴り散らしたり叩いたりした訳ではない。 ただただ笑っていただけである。 そう、恐ろしいくらいに笑ったいたのだ。 ただし目はそうではない。 フェイトの赤く光る目は深淵の如く暗い輝きを発し、地獄の釜を開けてしまったような恐怖と後悔と二度と逃れる事の出来ない闇の穴を覗きこむ感覚が襲ってくる。 光すら飲み込み無に帰すブラックホールのような超引力のせいなのか、一度目を見たら離すことすら出来ない。

 

 3人のsanチェックは無事失敗した。(一時的発狂)

 

「笑顔で人を殺せるよ……アレは」

「私達部下でホントよかったわ……」

「何か言った?」

『何でもないです許してください何でもしますから』(服従の姿勢)

 

 ガチの命乞いである。

 

「……しかしだフェイト・テスタロッサ。 あれって一応公式には存在しない事件だろ? そんなホイホイ話していいのか?」

「ん〜そりゃまぁ話す相手くらいは考えて欲しいけど、この二人なら大丈夫だよ」

『許された……』

「……そうか、お前がそういうならいいが」

 

 フェイトの許可をもらい二人にジュエルシードから起こった一連の事件について話す。 翔次がフェイトやその母であるプレシア・テスタロッサに対し危害を加えた事も話す。 もちろん表現をマイルドにしている。

 

「……え、あんた元々犯罪者なの?」

「……一応そういうくくりにはなるな」

 

 暴行や公務執行妨害、その他も含めて翔次は割りかし重犯罪者として捕まっていてもおかしくない。 だがとうの翔次には戸籍というものがこの世界には存在しない。 その当時の能力もレアスキル扱いをしなければならないほど魔法から逸脱している。 そしてその能力も消え去ってしまったのだ、翔次という個人に脅威となる力の立証が出来なくなり、そしてキリン達の活躍で解決出来たその報酬として翔次は逮捕されなかったのである。

 

「まぁその時に兄貴も転生してきてな、ボクの為に色々頑張ってくれたんだよ」

「……あれ? でも翔次さんのお兄さんはどこに……?」

「兄貴は本来転生を一度断ってるんだ。 でもボクの為に一時的に転生した、だからボクを救ったら逝っちまったよ」

「だから……『二度死んだ』って……」

 

 一喜の最期、それは翔次のみが知っている。 だからと言って自分の中にしまい込む事はしない。 聞きたいのなら話す、もう何年も前の話だ。 引きずることはない。

 

「まぁこんなもんだ。 暇つぶしにはなっただろ」

「はい、ありがとうございます」

「……」

「何だよティアナ、もうボクの引き出しの中は空っぽだぞ?」

「えっと……何で話してくれたの?」

 

 最初は興味本位であったが、まさか壮絶な過去があるとは露ほどにも考えていなかった。 自分の兄であるティーダの死と比べる訳ではないが、当時を思い出すのも辛い人がいる。 それでも特に気にする様子もなしに話してくれた事にティアナは疑問を抱いていた。

 

「あ? それは別に……」

 

 そんな疑問を翔次は一言で片付ける。

 

()()だからな」

 

 翔次は別に秘密にしようとは思っていなかった。 聞かれたのなら、疑問を持ったのなら、知りたいと少しでも思われたら、翔次は問題なく話す。 もうティアナやスバル、六課はもう翔次にとって仲間なのだから。

 

「……仲間……そうよね」

 

 何の恥じらいなく真正面からそう告げる翔次の姿にティアナは何かを感じとる。 それを解明するには時間が足りないが、それでもティアナは翔次に言いたいことが出来た。

 

「し、翔次……」

「あ? 何だ?」

「そ、そのあれよ。 私のこと……」

 

 仲間足り得る存在、ティアナは翔次をそう認識していた。 だが仲間にしてはヤケに心を許しそうになっている。 まるで相棒であるスバルのように、兄妹や家族に似た親和が生まれていた。

 

「(お? ティアってば翔次さんにもそうしてもらうの?)」

 

 相棒であるスバルは気付いていた。 ティアナは近しい人には『ティアナ』ではなく『ティア』と呼んでもらうようにしてもらっている。 もちろんティアナなりの信頼の証のようなものだ。 翔次とは最初は良い関係とは言えなかったが、なのはとの仲直りした日以来翔次には気を許してきた。 そして今日この時に翔次の過去を知り、ちょっとしたシンパシーに似たものを感じたことで翔次にも『ティア』と呼んでほしいと思ったのだ。

 

「(しかもしかも男の人に言わせるなんてお兄さん以来なんじゃないのコレ!!)」

 

 一人盛り上がっているスバルの思っている通り、愛称を男が言うのはティーダだけだった。 それを翔次に、ましてや知り合ってから1年も経っていない相手に言わせようとしているのだ。 変に勘ぐったって仕方ない。

 

 今、ティアナにとって人生であるかないかの勝負に踏み込みーーーー

 

「私のことはーー」

「おーいおめーら! 休憩しゅーりょーだ!!」

「(ヴィータ副隊長!? た、タイミングぅ……)」

 

 踏み込むことなく遮られる。 ティアナの声にヴィータの大きな声が重なり翔次の耳にはヴィータの声だけが入っていた。

 

「む、どうやら休憩が終わってしまったようだ。 ところで何言いたかったんだ?」

「……ぃ……」

「?」

「何でもないわよ!」

「は、はぁ!?」

 

 ティアナは顔を赤らめ歩き出す。 その後ろにつきながらスバルはヴィータにため息をこぼしながら文句を垂れる。

 

「ヴィータ副隊長って空気読めないって言われません?」

「あん? 何の話だよ」

「流石にあそこは……私でも気を使うよ? シグナムでもそうだと思うよ?」

「フェイトまで何なんだよ!?」

 

 特に悪気もないので強く言えないが、ヴィータに空気を少しは呼んでほしかった二人は揃ってため息を吐く。 なおヴィータはタイミングが悪かっただけである。

 

「おいショージ、あたし何か悪いことしたのか?」

「いやボクも知りたいんだが……」

『はぁ〜……』

 

 その後、ティアナが翔次に『ティア』と呼ばせるのは本当に、本当に後の後の後の後の話である。




物語終盤まで翔次はティアナと呼び続けます。 きっと2回目は恥ずかしいんでしょうね。 ティアナ可愛いよティアナ。

あ、そろそろなのセント君が4周年らしいっすよ? やったぜ。

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。

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