オレはオレの幸せに会いに行く   作:ほったいもいづんな

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キリン対ローリ。 すっごい早く終わったよ! 今回戦っただけだからよろしこ。


16話 第一激戦、終幕

 16話

 

 

 

 

「小五……楼人……?」

 

 キリンはローリの名前に首を傾げる。 どこか引っかかるその名前、暫しの沈黙の後にその答えが出てくる。

 

「……小五ロリじゃねぇか! テメェロリコンだな! つーか変態だろ!(偏見)」

「何? この私がロリコンだと!? 変態なのは女装している貴様ではないか!」

「うるせー! オレは人様に迷惑を掛けない女装してんだよ!(大嘘) ロリコンはそこにいるだけで大気汚染してるじゃねぇか!」

「貴様の様なコスプレイヤーが視界の端でうろちょろしているだけで健全な人間の精神が汚されるのだ! 貴様の方がよっぽど周囲に迷惑だ!」

「何だと!?」

「文句があるのか!?」

『グヌヌ……!!』

 

 早速始める罵倒大会、お互いにお互いを貶し始めるが……あぁ悲しき現実。 ロリコンも女装もこのミッドチルダにおいて非難の目を向けられてしまうのだ。 つまりどっちも恥さらしなのである。

 

『あのさぁ……何でもいいですけど真面目にやってくださいよ……』

 

 ミョルニルのツッコミも二人の耳には入らない。 無常の風がセリフを攫っていってしまう。

 

「貴様のような変態がどうして主人公達と仲良くできているのか甚だ疑問ではあるが……」

「へっ、テメーみたいな変態とは違ってコミュ力があるんだよ!」

「ふん、それについては反論は出来ないが……だがしかし!」

「反論はしないのかよ……」

「この私の方が実力は上ッ!!」

「何だと……」

 

 ローリの言葉に鋭い視線を送るキリン。 今なら聞き捨てならない、そういう目でローリを睨む。 その視線にローリはニヤリと笑いながら挑発するようにいう。

 

「理由が知りたいか……ならその身体に直接教えてやる!!」

「っ!」

 

 一瞬にしてキリンの目の前まで加速し右の拳を叩き込む。 めり込んだ拳が嫌な音を立てながらキリンの腹部を更に押す。

 

「ーーーーカハッ……!?」

「ズゥリャッ!!」

 

 今度は左の拳をキリンの顔面に叩きつけ、殴り飛ばす。 そしてそのまま追尾し両手をハンマーのように見立て……キリンに振り下ろす。

 

「ハァッ!!」

「があぁぁぁ!!?」

 

 キリンは廃ビルの一角に激突し、何度もフロアを突き破りながら落下。 ようやく止まった時はすでに1階の床にクレーターを作っていた。

 

「フン、意外と手応えがなかった……」

 

 キリンの落下により廃ビルは土煙を巻き上げ、倒壊する。 キリンの姿はこの土煙のせいで視認が出来ないが、この程度でやられるとはローリ本人も思ってはいない。 油断は出来ない、そう思っていた所で……

 

「……むっ? 光弾……!」

 

 ローリに向かって一発の魔法弾が放たれていた。 だがその形は小さく、咄嗟に放ったのだと思ってしまうほど頼りない光を放っていた。

 

「この程度……ふん」

 

 迫る光弾を片手で払う。 呆気なく、アッサリと。

 

「イタチの最後っ屁がこの程度か……だとしたらとんだ過大評価だったか?」

 

 ローリは煙が晴れていくキリンの落下地点を見据える。 だがそこにキリンはいない。

 

「いないーーーーガッ!?」

「後ろだああああ!!」

 

 いつの間にかローリに回り込んでいたキリン。 今度はこちらの番と言わんばかりにローリを地上に向けて蹴る。 キリンは光弾をローリに向けて発射した後、すぐさま高速で回り込みながら接近していた。 煙で見えないのを利用し光弾を囮にしたのだ。

 

「くっ……舐めるなよ!」

「もう立て直しやがった……!」

「シャアアアアア!!」

「速い……! くっ!」

 

 キリンの不意打ちも物ともせずにローリは己の四肢をキリンにぶつける。 激しく乱れる拳と蹴りの連打(ラッシュ)、何とか捌いているキリンだがミョルニルを持つ点で少しローリに遅れをとる。

 

「ズァッ!」

「ふ……防いだ……の……に……!」

「吹き飛べ!!」

「うわああああ!?」

 

 キリンは確かに拳をミョルニルで受け止めた。 だがそのインパクトは止まることなくキリンを圧し、追加の衝撃でキリンは後方へ吹き飛ぶ。

 

「ぐっ……オレみたいに魔力で直接……っ!」

「ーーーーバッ!!」

「な……ッ!?」

 

 キリンに向けて突き出した拳を勢いよく開き、押す。 圧縮された魔力がキラキラと光りながらキリンに向けて放たれ……接触したと同時に爆発する。

 

「…………!!」

「まだだ……ツァアアアアア!!」

 

 左手を掲げ、人差し指と中指を突き立てる。 高められていく魔力は二本の指先に集中される。 放つ光がどんどん強くなっていき、指に入る力も強くなる。

 

「くらえ……『大地烈壊破(だいちれっかいは)』!!」

「ーーーーーーーーッ!?」

 

 その名を叫びながら左腕を横に降り、その指先の光はキリンの周囲をなぞる。 そしてなぞられた景色は一瞬の光によって爆発し、全てを吹き飛ばす。 キリンは爆風の中から勢いよく吹き飛ばされていく。 何度もビルに衝突し、それでも止まらないキリンがようやく止まったのは遠く離れた所にいた翔次達がいる地点に落下してだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……ガァ……!」

「キリン!? どうした!?」

「キリンさん!!」

 

 キリンとローリの攻防は実に数分とみたないものだった。 その間はまだヴィータは自らの失態に苛立っていた、だが突然自分達の元に勢いよく落下してきたキリンを見て一先ず頭をリセットする。

 

「誰にやられた! オイ、しっかりしろ!」

「ヴィータちゃん……それにみんなも……」

 

 ヴィータの目には身体がボロボロになったキリンが映っていた。 だがヴィータ含め全員がとある事に気付く。

 

『(服は無事……どころか汚れ一つもない……?)』

 

 ボロボロの身体に新品同様の清潔さを保っている洋服、この二つのアンバランス感が異様に際立っていた。 そんな彼女らに向けて……いや正確には翔次に向かってキリンはお願いを言った。

 

「翔次君さ……ちょっといいかい?」

「……何だ?」

 

 神妙な面持ちでキリンの言葉に耳を傾ける。 だがその内容に翔次含め全員の目が丸くなる。

 

「ーーお着替えしたいからさ……ちょっと服持っててくんね……?」

「……は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人空中で佇んでいるローリはキリンの行方を捜していた。 というのもキリンが爆発から飛び出した時、ローリにはそれが不自然に思えたからだ。

 

「そもそも大地烈壊破は放出した魔力を地雷のように地面から噴出させて爆発を発生させる技……つまり下からの衝撃となるはず。 だが奴は……」

 

 ローリは見ている。 キリンが『()』ではなく『()()()()』に飛んでいったのを。 そこから導き出される答えは、キリンが何かしらの方法で緊急脱出をしていた事、だが完璧には避けきれず爆発に巻き込まれてはいた事である。

 

「……なるほど。 直撃する直前に魔法で自らを飛ばしていたか……だがそれでもダメージは甚大! 戦闘不能から瀕死に変わっただけだ」

 

 仕留められるなら今すぐ仕留めておきたいローリはキリンの探す。 だが標的の方から目の前に戻ってきた。

 

「奴は私と同じイレギュラー……早めに潰したいーーーーっ!」

「……よう、さっきぶり」

「貴様……」

 

 ローリの目の前にはボロボロになったキリンが、だがその見た目は変わり、先ほどまでの女装ではなくなっている。 灰色のスウェットに白のズボン、いつも通りの格好をしていた。

 

「何だ……女装はもうやめたのか?」

「……まぁな」

「貴様がまだ動ける事には素直に感服する。 だが! 今から再起不能になってもらうぞ!」

 

 ローリの全身から紫色の魔力が噴き出す。 大気は揺れ、その震動が周りの雲をかき消す。 見ただけで分かるその圧倒的パワー、だがキリンはさっきまでと打って変わって嫌に堂々としている。

 

「……」

「どうした……この私のパワーに恐れ入ったか? ……これでまだ80%だ! ふはははは! 貴様では到底かなーーーー」

「ーーーーミョルニル、彼に教えてやれ。 さっきまでのオレの……()()()()を」

「……何?」

 

 キリンの言葉にローリは眉をひそめる。 『魔力の分配』、確かにそう言った。 その単語が不思議で不思議でたまらない。

 

『……マスターは攻撃と防御にそれぞれ魔力を分配して戦っております。 例えるなら攻撃時は攻撃に70% 防御に30% といった具合にです』

 

 それはごく単純な分配式。 攻めるなら攻めに多く魔力を分け、守るなら防御に多く魔力を乗せる。 それだけの簡単な方程式、そう……ここまでの説明ならば……の話だが。

 

『さっきまでのマスターの魔力分配は……()()()5()%() ()()()()9()5()%()でした。』

「…………は?」

 

 所謂防御極振り、明らかに耐久のみを突き詰めた魔力の振り分けにローリは空気が抜けるような声を出す。 だがそんなのは気にせずにミョルニルの解説は続く。

 

『この守りに対しての魔力は()()()()の為ではありません』

「…………? ……!? ……???」

『正確にはーーーー()()()()()の為です』

 

 意味不明過ぎるミョルニルの言葉。 肉体保護の為ではなく、先ほどまでの女装していた洋服を保護するために、攻めを捨てていたのだと。 ますます意味がわからないローリの頭は混乱を極めていた。

 

「つーわけでさ、今からのオレは攻撃にちゃんと魔力を割り当てる訳よ」

「さっきまではこの私に舐めプをしていただと…………!?」

「いやまぁ……ちょっとは舐めてたよ」

「ふ、フフフ……フハハハハハハッ! 面白い! ならばこの私の本気を!」

 

 高笑いの後ローリは右拳を強く握る。グググッとしなる骨格の音がその握力の強さを教えてくれる。 とんでもない力だと。

 

「受け止めてーーーー死ねぃ!!」

「っ!」

 

 恐らく、その衝撃でまた大気が揺れた。 その震動は大きく遠くまで響いたに違いない。 だがそれを受け止めたキリンは微動だにせずに左の手の平で受け止めていた。

 

「なっ!?」

「どうした? まさか一発しか本気だせないとか言うなよ……?」

「ギッ……! 舐めるなあぁぁぁぁ!!」

 

 左の脚をキリンの側頭部目掛けて放つ。 その鋭い蹴りはまさに俊速と呼ぶに相応しいのかもしれない。 だがそんな凄い蹴りをキリンの右腕がいとも容易く受け止める。

 

「な…………」

 

 零れ落ちるような言葉、信じられないものを見た瞬間と同じく言葉を失う。 ただしこれは感動ではなく愉悦感からの落下。 今にも心が崩れそうになってしまう……疑問の解をローリは見つけてしまう。

 

「そんな訳が……そんな訳が……! あるはずない!!」

 

 自分の感情を否定するようにローリはひたすらにキリンに攻撃を続ける。

 

「うぅぉおおおおおおおお!!」

 

 先ほどと同じ連打(ラッシュ)。 いや同じと呼んでは彼に悪い。 先ほどとは速度も威力も全く別物、凄まじい乱打。 己のプライドの為に、己の疑問を拭い去る為に叫ぶ彼の姿は……

 

「…………」

「何故だぁ……何故当たらない!?」

「……」

 

 キリンに全ての攻撃を払われていては滑稽も甚だしい。 実に……可哀想である。

 

「当たんねぇってか? なら手本を見せてやる……!」

「ーーグアッ!?」

 

 ローリの顎にアッパーカットが鋭い角度から入る。 景色が切れかけの電球のようにチカチカ点滅し、次の行動など取れるはずもない。

 

「だぁ!!」

「ウゴォア!?」

「どりゃあああああ!!」

「うわあああああああああああ!!?」

 

 先ほどの先制攻撃のお返しと言わんばかりのボディブロー、そして強烈な回し蹴り。 今度はローリの方が遠くへ飛ばされる。

 

「くっ……! こんな訳が……! 直ちにたち直さなければーーーー!?」

 

 空中で一回転をし体制を持ち直したローリ。 だが彼の眼前にはすでに追尾し終えたキリンの顔が……

 

「なっ……!」

「オレをその気にさせたんだ……」

「グフゥ!?」

「ぶっ壊れたって……知らねえぞぉぉぉぉぉ!!」

「があああああ!? わ、私の腕……腕がぁぁぁぁぁ!?」

 

 最初に左頬への上段蹴り、そしてローリの右腕目掛けての返しの右脚での蹴り。 その蹴りはまるで刃物のように鋭く、まさに一閃を描きながらローリの右腕の関節部を『()()』する。

 

「さぁて……そろそろ逮捕の時間だぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 なのはとフェイトは逃げるクアットロ達を捕まえる為奮闘した。 そこに自身の能力の枷を解除したはやても合流し、クアットロとディエチの両名を今まさに逮捕しようとしていた。 だがそこに仲間と思わしき女性が二人乱入する。

 

「グットタイミングよ二人共!」

「おい、ローリはどこにいった?」

「彼なら一人でも大丈夫よ。 そんなことより早く逃げましょ〜!」

 

 逃げる算段が立ったのか少し強気な表情を見せるクアットロ。 だがそんな事で手を緩めもしないし動揺もしないはやてはすでに展開済みの魔法を放とうとする。

 

「逃さへんで!」

「まともには受けん、さっさと帰還させてもらう」

 

 女性もまた自らの技の準備を終えて迎撃準備を済ませた様子。 まさに一触即発、そんな状況に……一つの物体が飛来する。

 

「!? 何だいったーーーーローリ!?」

「逃すか……よおおおおお!」

「うそ!? ローリさんがやられたって言うのぉ〜!?」

 

 超高速で飛来したのは腕を切り落とされてボロボロとなったローリ。 切り離された右肩からは機械と思わしき部品やらが露出している。 ローリをキリンが投げ飛ばしたのだ。

 

「キリン!」

「はやてちゃん、オレはどうしたらいい!?」

「キリン君に合わせる! 思っきしお願い!」

「よっしゃー!!」

 

 キリンは左手を前に突き出し巨大な光弾を形成する。 その大きさは直径10メートル程、雷を迸らせながらその圧倒的破壊力を周囲に想像させる。

 

「キリン!? やり過ぎちゃダメだからね!!」

「大丈夫だってフェイトちゃん。 君から教わったんだよ? 魔力の使い方は、間違えはしないさ!」

「そうじゃなくて! 非殺傷設定大丈夫!?」

「大丈夫だ! …………多分」

「キリン!?」

 

 少々の一悶着があるものの、その間クアットロ達は逃げることは出来ない。 目の前にははやての黒色の魔法にキリンの金色の魔法。 そしてその周囲にはエースオブエースのなのはと閃光の異名を持つフェイト。 まさかのフォーマンセルに彼女達の額には汗がジワリと浮かぶ。

 

「あらぁ〜これちょっとヤバいわぁ〜……」

「グッ……グガガ……」

「おいローリ、貴様はもう動くな! もうマトモに戦えない」

「アガガ……貴様ぁ……転生者が……ぁ……!」

 

 ディエチに身体を預けているローリ、身体はボロ雑巾のようになってしまったが、その目はまだキリンに対する屈辱と怒りとが混ざり合った殺気を放っている。 その殺気をキリンは真正面から叩き潰すかのように巨大な光弾をミョルニルで打ち出す。

 

「行っけぇ! フォトン・メテオ!!」

「デアボリック・エミッション!!」

 

 打ち出された光弾と黒弾は途中で混ざり合い、光と闇が螺旋状に混ざり合いカオスの光を放ちながらローリ達に飛来していく。

 

「ヤバイ……!」

 

 誰かがそう呟く。 だが一人、そんな危機的状況に似合わない顔と言葉を放つ。

 

「ーーーー……舐めるな」

「ローリ……?」

 

 ディエチに身体を預けていたローリは立ち上がり、残った左手に魔力を込める。

 

「舐めるなと…………言ったはずだあああああああ!」

 

 怒り。 それもとびっきりの憤怒を込めた左手から紫色の魔力砲が放たれる。 それは何か特別な技でもなければ特殊なスキルを使用したわけではない。 単純な魔法。

 

「ーーーー何!?」

「はやてちゃん、キリン君! 危ない!」

 

 だが並ではない怒りが、目の前の光を否定しようとするその怒りが二人の魔法と拮抗する程の威力になり……

 

「くっ!」

「!」

 

 大きな爆発を起こす。 拮抗した巨大な三つの魔力は互いが耐えきれずに形を崩し周囲に放たれる。 光、捲き上る土煙は周囲を覆い、何も見えなくなる。 そして周囲が晴れたころにはもう……

 

「…………逃げられた、か」

 

 彼女らは去っていた。 当然も当然の話だが、今の衝撃に乗じて奇襲もかけられたがそれでも致命傷には決して足り得ずむしろ手負いが一人いる彼女達の方が状況不利。 すでに目的は達しているのならばトンズラこくほうがいい。 何故なら次もあるのだから。

 

「……小五……楼人……」

 

 キリンはついさっきそこで憤怒の形相を浮かべながら反撃してきたローリを思い出しながら小さくローリの名を口にした。 その言葉は消え去るように風に乗り、次の言葉もミョルニルにしか届かなかった。

 

 ーーーーまさか、な。

 




次回はヴィヴィオを出したいね。 幼女可愛い幼女。 でも幼女ナンバーワンはヴィータちゃんなのは私の中で揺るぎない。

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。

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