ソードアート・オンライン マザーズ・ロザリオ ボクの生きる意味   作:むこ(連載継続頑張ります)

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 こんばんは、むこです。更新ペースが落ちています。申し訳ございません。
 幻の銃弾編、オーディナル・スケール編ともにシナリオは固まっております。絶対に失踪はしませんので引き続き気長にお待ちくださいませ。
 
 幻の銃弾編のほんわかとした日常風景ですが、さて、これからどうなるのでしょうか……?
 


第66話~どったんばったん大騒ぎ~

 

  西暦2026年 11月15日(日)午後21:45 アルヴヘイムオンライン 新生アインクラッド第40層迷宮区フロア

 

 

「ユウキ! スイッチだ!」

 

「了解! キリト!」

 

 キリトのスイッチの掛け声とともに、ユウキが攻守を入れ替える。

 入れ替わったユウキは黒紫色に光り輝く自慢の愛剣「マクアフィテル」を片手に握り締め、颯爽と前方に駆け出し、キリトと入れ替わり、グリフィンのような姿をしたモンスターに斬撃を浴びせていく。

 

 二人が今足を踏み入れているのは新生アインクラッド第40層の迷宮区だ。その内部はまるで古代マヤ遺跡を思わせるような造りとなっている。

 壁や床、はたまた天井も緑がかった灰色の石レンガで造られていて、ところどころヒビが入っていたり、朽ち果ててボロボロになっていたり、苔がびっしり生えていたりと、現実世界にある世界遺産の遺跡そのもののようだ。

 

「せやぁぁっ!」

 

 ユウキの気合の入った雄叫びとともに、マクアフィテルが白く光り輝く。通常の斬撃を縦、横と二回放った後、四連擊ソードスキル「ホリゾンタル・スクウェア」を発動させて、グリフィンにダメージを与えていく。

 

 ユウキの剣を体に浴びたグリフィンは、赤いダメージエフェクトを表面に浮かび上がらせながらも、耳をつんざくような鳴き声を上げ、自身のHPバーをレッドゾーンに突入させ、自分を痛めつけたインプの女の子に、怒りをぶつけるかのように襲いかかる。

 

『KISHAAAA』

 

 ソードスキルの硬直で動けなくなっているユウキに、グリフィンが雄叫びを上げながら、白い大きな翼をはためかせ、前足の爪を光らせ、切り裂こうと突進気味に距離を詰めてくる。

 

 しかし、動けないはずのユウキは体をゆらりと横にずらしながら、反対側の左手でモーションを起こしナックル系ソードスキル「ビートアッパー」を発動させ、上体を前のめりにかがませ、グリフィンの攻撃をいなし、尚且つ腹部に重たい一撃をお見舞いさせた。

 

 飛びかかりながら大きくダメージを負ったグリフィンは、勢いをそのままにユウキを通り過ぎ、後方で待機しているキリトのいる方向に、きりもみ回転をしながら吹っ飛んでいった。

 

「はぁぁぁぁッ!」

 

 キリトはこちら側にグリフィンが吹っ飛んでくることを、予め予測していたかのごとく、すでに飛んでくる軌道上に腕をまっすぐ伸ばし、自分の剣の切っ先を置いていた。

 

 聖剣エクスキャリバー、黄金色に輝くその刀身にグリフィンが当たると、まるでケーキにナイフを入れたかのように、グリフィンの身体がキレイに真っ二つに斬り裂かれていった。

 

 斬り裂かれたグリフィンの身体は、そのまま空中で放物線を描きながらHPを全損させて、青白く光り輝きながら爆散していった。

 中ボスクラスのこのグリフィンを倒した今現在、すでにこの迷宮区に足を踏み入れてから一時間半が経過しており、踏破割合は全体の九割ほど完了した具合だ。

 

「ナイス連携だ、ユウキ!」

 

「へへへ、キリトもね♪」

 

 キリトとユウキは手にしていた武器を鞘に収めると、お互いに距離を詰め、パチィンといういい音を迷宮区内に響かせながらハイタッチを交わした。

 

 そして目の前の視界にはグリフィンを倒したことで手に入った経験値、ユルド、ドロップアイテムのリザルトウィンドゥが表示されている。

 

 二人はその表示を確認すると、それを左手でタップしてメニューを閉じ、後方から来る仲間が自分たちを追いかけてくるのを待っていた。

 

「おっそいなーテッチたち……」

 

「……というよりだ、俺たちが先行しすぎなんじゃないか? リズやクラインに大目玉くらうぞ?」

 

「そんなこと言われても……、スリーピング・ナイツが揃うの久々だから、ついつい嬉しくなっちゃって……」

 

「まあ、気持ちはわかるけどな」

 

 キリトたちが会話を交わしていると、何やら十数名ほどの足音が、遠くから鳴り響いてくるのがわかった。

 遺跡の形状をしたこの迷宮区内には、その音が隅々まで響き渡り、耳を済まさなくてもよく聞こえている。

 

 やがてその足音はだんだんと大きくなり、キリトたちのいる位置から十数メートル手前というところで走る音はやんだ。

 そこにはスリーピング・ナイツを含む、総勢十四名のプレイヤーがズラリと並んでこちらに歩を進めてきていた。

 

「おいキリの字! 俺様たちを置いてどんどん先にいっちまうんじゃねーよ!」

 

「全くよ本当に! アンタたちが一番早いんだからちょっとは他のメンバーにも気を使いなさいよ!」

 

 江戸時代の日本でよく見られる赤い着流しのような装備を身にまとったサラマンダー、クラインがキリトに詰め寄ると、そのあとから追撃をするかのように、丸い形状をした盾と、銀色に光り輝くメイスを手に持ったレプラコーン、リズベットが先行していたキリトたちにクレームを出していた。

 

「ははは、すまんすまん」

 

「全くよう……折角みんなで攻略を楽しんでるんだから、お前らだけ先に進んじまったら意味ねーだろうがよう」

 

「ご、ごめんねクラインさん。みんなが揃うの久しぶりだったから、嬉しくてついはしゃぎすぎちゃった……」

 

 詰め寄られたキリトにフォローを入れるかのように、ユウキが間に入りクラインとリズをなだめていた。

 キリトの独断先行はいつものことだったが、ユウキにそう言われると、何故か言い返す気にならず、クラインは出過ぎた行動を許してしまっていた。

 

「ユウキちゃんはOK、キリの字が悪い」

 

「何でだよ! 不公平だろ!?」

 

 キリトが男女不平等だろとクラインに訴えると、二人の間で取っ組み合いが始まった。

 互いに両手をつかみ合い、手四つの形で力比べをし、何だかよくわからない譲れないもののために、意地の張り合いをしている。

 

「ふふふ、剣術ではお前さんにかなわないかもしれないけどよ、こうやって組んじまえば俺様に分があるんだぜ?」

 

 互いに力比べをしていると、瞬時の判断でクラインが身をかがめ、キリトの懐に体を潜り込ませた。

 そしてキリトの衣服の腰のベルトをがっちり両手で掴み、何やら技をかけようとしている様子を伺わせる。

 

「お、お前またプロレスの技かっ、同じ手が俺に二度通用するとでも……」

 

「ふふふ、あめーぞキリの字よう!」

 

 クラインは、以前現実世界で和人にプロレス技をお見舞いした時のように、寝技や組み技に繰り出すのかと思いきや、ベルトを掴んだ両手に力を込め、自身の重心を低くし、掴んでいる手を振りほどこうとしているキリトの力を利用し、思い切り手前に引っ張った。

 

「……え? おわっ!?」

 

 急に引っ張られたキリトはたちまちバランスを崩し、クラインに引っ張られるままその方向に投げ飛ばされた。

 宙を舞いながら、キリトは一瞬何が起こったんだと背中に氷柱を突っ込まれたような表情を見せて、そのままドサッという音とともに仰向けに地面に寝転がっていた。

 

「しょーぶありぃー!」

 

 キリトが体を地面につけるのと同時に、リズベットが右手に握っているメイスの鎚の部分を、クラインの立っている方向に向けていた。

 まるで大相撲の取り組みで、勝った力士に行司が軍配を差し向けるかのように。

 

「ただいまの決まり手は上手投げー、上手投げでクラインさんの勝ちー!」

 

 ユウキが楽しそうに決まり手を周囲に声で伝えると、クラインが本物の力士になったかのように、その場でそんきょの姿勢をとり、右手で手刀(てがたな)を切る所作を見せた。

 キリトはキリトでなにがなんやらといった表情で、事の成り行きを倒れながら見守っていた。

 

「どんなもんだいキリの字よう! がっはっはっは!」

 

「お前、どこで覚えたんだよそれ……」

 

「ああ、今大相撲九州場所がテレビでやっててよ、それの見よう見まねだ」

 

「……相変わらず影響されやすい男だな……」

 

「うるせいやい! とにかく今回は俺様の勝ちだかんな!」

 

「はいはい、まいったよクライン関……」

 

 クラインが勝ち誇っていると、後方からまたゾロゾロと残りのメンバーが歩きながら近づいてくる。

 残りのスリーピング・ナイツのギルドメンバー六人、アスナ、ジュン、シウネー、ノリ、テッチ、タルケン。

 そしてどこのギルドにも属していないリーファ、シリカ、シノン、シュピーゲル、フィリア、ストレアがぞろぞろと現れた。

 

「す、すごいですね、ク、クラインさん……」

 

「ははは、全く、リーダーの友達にはいろんな人がいるんだな」

 

 オドオドしながら話すのが特徴の、メガネをかけたレプラコーンの青年タルケンと、筋骨隆々なエギルに負けないぐらいの巨漢のノーム、テッチがパーティの賑やかさに感想を述べていた。

 

 そう、この日は新加入したキリトとアスナも含め、スリーピング・ナイツのギルドメンバーが全員そろい踏みなのだった。

 ミドルレンジが得意な槍使いのタルケン、ギルド内で一番硬く、タンクの役割を担うテッチもようやくログインすることができ、大変な賑わいを見せていた。

 

 そしてこの日、少しずつ攻略が進んでいっていた第40層の迷宮区の最上層を一気に踏破してしまおうと、ギルドリーダーであるユウキが、見切り発車にも近い提案を出したのだ。

 いつぞやのイベントバトルの時もそうだったが、この一見無謀とも言える提案に反対する者は誰ひとりいなかった。

 

 ユウキの性格はみんな熟知しているし、このメンバーでなら苦戦せずに最上層の最奥までたどり着けられる自信もある。

反対するはずがない。

 

 更にはジュンの「折角だからみんなも誘おうぜ!」の一言により、クラインを初めSAOサバイバーの面々にも招集の声がかかったのだ。

 

 少数精鋭強豪ギルドであるスリーピング・ナイツと、全員超のつくほどの実力者集団である元SAOサバイバー。こんな連中が集まっているのだから、攻略が成功しないはずがない。

 むしろ、攻略がおまけで皆でワイワイ楽しむ方が真の目的といっても過言ではなかった。

 

 SAOサバイバーのおかげもあり、元病人の集まりだったスリーピング・ナイツにも、新たに他のプレイヤーとの交流という文化が加わった。

 

 何もかもが刺激的だった。クラインのような破天荒な人もいれば、シリカのように心優しい子もいる。

 沈着冷静なシノン、天然お姉さんのストレア。他にも各々強烈なキャラクターをもった面々が揃っているこの環境は、スリーピング・ナイツに新しい風を吹き込むのには十分すぎた。

 

「打ち上げのとき以来じゃないですか? こんなに人が集まるのは」

 

「そうですね……、あの時、みなさんには大変にお世話になりました……」

 

 つい一昨日、無事に今学期の期末試験を終わらせたリーファが、金髪のポニーテールを揺らしながら口にすると、清楚という言葉が一番似合う、おっとりしたシウネーが一年前のイベントバトルの時のことを思い出していた。

 

 自分たちをボス部屋に活かせるために、身を挺してシャムロックのメンバーを足止めしてくれたこと。

 全員がスリーピング・ナイツに協力してくれたこと。そのおかげでイベントボス撃破に成功したこと。

 

 スリーピング・ナイツの面々にとって、ここにいるメンバー全員、感謝してもしきれないぐらいだった。

 一応、表向きでは打ち上げという形で感謝の気持ちを伝えはしたが、正直一回こっきりの食事会だけでは納得いっていなかった。

 

 しかし、損得ではなく「義」によって動いたSAOサバイバーの面々は、そんなことちっとも気にしてはいなかった。

 みんなキリトの、アスナの大切な人たちだからこそ、協力に買って出たのだ。

 

「お気になさらないでください、シウネーさん。俺様たちは、義によって助太刀に入ったまでです。損得勘定なんかこれっぽっちも考えてませんよ」

 

 斜め四十五度の角度で、自信の顎に手を当て、内心「決まった」と思いながらキザなセリフを並べているクラインに、リズベットを初め周囲のメンバーは呆れたといった表情を向けていた。

 

 シウネーもシウネーで、詰め寄ってきたクラインの対応にどうしたらいいかわからず、すっかり困り果てており、周りのメンバーに助けてと言わんばかりに視線を送っている。

 

「アホなことやってないで、さっさと先に進むわよ!」

 

 クラインの頭に、バコッというきつい音とともにチョップでの一撃をお見舞いしたリズベットが、先を急ごうとはやし立てる。

 

 当たり所がよかったのか悪かったのか、シバかれた箇所を痛そうに抑えながら「何しやがる!」と痛みを訴えていたクラインであったが、その悔しさが周囲に汲み取られることはなかった。

 

 その騒がしいやりとりに、スリーピング・ナイツを初め、周囲に笑い声が交差されていた。誰も誰も、一人一人が今回の攻略を楽しんでいる。モンスターと戦うだけがゲームじゃない。

 

 こういった仲間同士でのなんてことのないやり取り、ちょっとしたふざけあい、冗談の言い合い。

 それら含めての遊びなのだ。もしもここがかつてのSAOだったとしたら、こんなことをしている余裕はないだろうが、そうじゃない。

 

 ALOはデスゲームじゃない、あの頃とは違う。これこそが、本当にゲームを「楽しむ」といったことなんだ。

 

「ねえシノン?」

 

「何かしら? シュピーゲル」

 

 男アバターにもかかわらず、中性的な外見をしているシュピーゲルがシノンに声をかける。肩の下あたりまで伸びていた長ったるかった髪の毛は、ヘアバンドを使ってまとめられ、リーファと同じようなポニーテールのヘアスタイルになっていた。

 

「……いや、やっぱりなんでもない」

 

「な、なによ……気になるじゃない」

 

 言葉を濁したシュピーゲルの態度に、ケットシー独特の猫耳をピクッと動かしながら、シノンが若干煮え切らない様子を見せている。

 

 「気になるじゃない」と言いつつも、シノン自身も彼が何を言いたいか気付いていた。そしてシュピーゲルが、新川恭二が以前と比べて明るく、少しずつ活発な男の子になってきていることにも。

 

 今日だって自分のためにクレーンゲームでぬいぐるみをゲットしてくれたし、最近は以前と比べて何かと気を使ってくれている。

 

 いや、前からも気を使ってはいた。しかしそのベクトルが違うとでもいうのだろうか。イマイチ的を射らないその態度に、ヤキモキしていたこともあった。

 

 でもここ最近はどうだろう、お洒落なお店にも連れて行ってくれるようにもなった。口調も以前よりも柔らかくなった。 少しずつではあるが、恭二は女心が、詩乃の気持ちがわかってきたのだ。

 

「えへへ、ほら……行こ? キリトたちに置いていかれちゃう」

 

 シュピーゲルが指をさし、その方向にシノンが目線をやると、迷宮区内の奥の方でユウキが「レッツゴー!」と元気よく先導している様子が見て取れた。

 

 そのあとを続くようにキリト、アスナが続き、そのあとをスリーピング・ナイツ、そしてSAOサバイバーが列をなして進んでいった。

 

 一人一人が歩くたびに、革製のブーツが地面を踏む音、金属製の鎧のパーツ同士がこすれる音が不規則に鳴り響き、ダンジョン内の隅々まで響き渡る。

 正に冒険者の大行列といった光景だ。

 

「パパ、ここの最上層はもうほとんど踏破しています。あとはボス部屋まで進んでいくだけですよ!」

 

 お人形ほどの大きさのナビゲーションピクシーであるユイが、アスナの懐からひょいと顔を出し、きらきら煌くエフェクトを舞い上げながら、颯爽と飛び出してきた。

 

 彼女の言うことをそのまま受け取るとするならば、もうここの階層に目立ったエネミーモンスターはおらず、このままボス部屋があるエリアまで進めば、マッピングは完了、ということだ。

 

「本当なの? ユイちゃん」

 

「ハイママ♪ パパやユウキさん、ママたちの活躍で、第40層最上層のエネミーの駆逐はほぼ完了です!」

 

「よーし、なら誰が先に扉までたどり着けるか競争だよ!」

 

 ボス部屋前まであと少し。この情報を知ったユウキは我先にと一目散にダンジョン奥へと軽快に駆け出していった。

 

「あ、こらまてユウキ! ズルいぞ!」

 

「へへーんだ、こういうのは早い者勝ちだもんねー♪」

 

 フライング気味に駆け出したユウキに負けじとそのあとをキリトが追いかけていくと、それに感化されたかのように、ジュンをはじめとしたスリーピング・ナイツのメンバーが一斉に走り出した。

 重鎧と身にまとったジュンとテッチのガッシャンガッシャンという金属音がやかましく響き渡る。

 

「俺様たちも急ぐぞ!」

 

 心はまだ若者でありたいクラインも触発されたのか、大股開きでおっさんくさい走り方でキリトたちの後を追う。

 リズベットとシリカも置いていかれまいと必死に地面を蹴った。そこにひと呼吸遅れてストレアも慌てて追いかける。

 

「あ、こらー! アタシをおいていくなー!」

 

「……あら? フィリア、あなたは急がないの?」

 

 大体のメンバーがボス部屋前まで走り出した一方で、シノンは急ごうとしないフィリアに視線を移していた。

 それに気付いたシュピーゲルも一体何なんだ? と言いたげに、シノンと同じ方向へと視線をやる。

 

 その先にはただ一人最後尾でこの迷宮区内に隠されているお宝を手に入れようと奮闘している、スプリガンの少女フィリアの姿があった。ダンジョン内の隅から隅までその鋭い眼を光らせている。

 

「ふふふ、急ぐもなにも、こういうところにお宝が眠っているものなんだよ?」

 

「あ、呆れた……、置いていかれちゃうわよ? 本格的に……」

 

 シノンが指をさすと、先陣組はどんどん奥へと小さくなっていく様子が見て取れる。

 しかしそれでもおかまいなしに、トレジャーハンターの血が騒ぐせいか、フィリアはアイテム探知魔法「サーチャー」のバフ効果が切れないように常時唱えつつ、スプリガンにしか見えない宝箱を探していた。

 

「大丈夫大丈夫、ちゃんと追いかけるから! あ、あそこに宝箱みーっけ♪」

 

「……まったくしょうがないわね……、先にいきましょ、シュピーゲル」

 

「え、い、いいのシノン? 彼女ほったらかしで……」

 

「いいのいいの、適当なアイテムの一つや二つ見つけたら追っかけてくるわよ」

 

 シノンがそう言い残してずいずいと先を急ぐと、シュピーゲルはフィリアのことがが気になりつつも、そそくさとシノンの後を追いかけていった。

 

 そしてただひとり、マイペースローペースで迷宮区内の探索を続けているフィリアだけが、ポツンとレイドの最後尾に取り残されていた。

 

「私から言わせればもったいなさすぎるわよ、こういうところにものすごいお宝が隠されてることが多いってのに……」

 

 サーチャーのバフ効果によって隠された宝箱が見えるようになり、フィリアの視界には、彼女にしか見えない茶色の、いかにも宝箱らしい宝箱が写っていた。

 

 宝箱には当然ロックがかけられていたが、トレジャーハントを得意とするフィリアにとって、こんなロックを解除するのは朝飯前。

 

 「ふんふーん♪」と随分な上機嫌で鼻歌を交えながら、慣れた手つきで鍵開けのスキルを発動させると「ガチャ」という何かのロックが外される音が聞こえてきた。

 

「そんなに慌てていっても、あまりいいことはないってね♪ さーて、お宝ちゃんごたいめーん♪」

 

 お宝を独り占め出来ることに喜びを感じつつ、フィリアはなんの警戒もなしに宝箱に手をかけた。

 

 しかしこの時、フィリアはトレジャーハンターにとって、最も大事なことを、鉄則を忘れてしまっていた。

 

 宝箱に仕掛けられてるトラップは何も鍵だけではない。

 下層へ落ちる落とし穴。矢が飛んできたり爆発したりするダメージトラップ。

 強いモンスターが召喚されたり、毒ガスが吹き出る状態異常トラップなど様々なパターンで用意されている。

 

 もちろんフィリアもこれらのことは十分に熟知している。SAO時代から長い間レアアイテムを探し求め続け、当然トラップのことも頭の中に入っている。

 

 いや、入っているはずだった。

 

 油断(・・)、この二文字のために、フィリアは不覚を取ってしまった。いつもならば二重三重に仕掛けられている可能性を考慮して、トラップを見破り、解除していることだろう。

 しかし今回に限って、久しぶりの大人数パーティで浮かれていたこと、みんなに置いていかれて少しばかり焦っていたこと。

 

 そして何より、トラップ解除を(・・・・・・・)面倒臭がったこと(・・・・・・・・)。これが何より致命的だった。結果、フィリアは見事に宝箱のトラップに引っかかってしまったのだ。

 

 油断、慢心とでも言えばいいのか。

 

 そして、悪いことは重なるというのはよく言ったもので、よりにもよってフィリアが引き当てたトラップは、ALOに存在するトラップの中でも最悪と呼ばれている「ミミック召喚」というものであった。

 

「ちょ、ちょっとまって……嘘でしょ……?」

 

 目の前の現実が受け入れられずに、フィリアはただただ禍々しく変形している宝箱に戦慄していた。

 木材で出来た部分はバキバキという破壊音を響かせながら砕けていき、中から黒いモヤのようなものが広がってきた。

 

 やがてそのモヤは段々と獣のような、悪魔のような、はたまた害虫のような禍々しい形状を生成していき、やがてその形が出来上がると、目の前に佇んでいるフィリアに向かって威嚇の態勢を取っていた。

 

 The Death Mimic(死の擬態)の固有名を持ち、石レンガで出来た迷宮区の通路のほとんどを埋め尽くすほどの巨大さを誇ったミミックは、ズリズリと自分にまとわりついている宝箱の破片を引きずりながら、フィリアに向かって進撃を開始した。

 

「や……やめてえええ! こっちこないでええぇッ!」

 

 奇声にも近い悲鳴をまき散らしながら、フィリアは一目散に仲間が走っていったほうへと必死で地面を蹴り、全力で逃げていった。

 

 ミミックのHPバーはたったの一本しかない。これだけ見れば大したことないと思いがちだが、実はそうもいかない。

 

 このミミックの攻撃パターンは、ただ両前足の爪のようなものを振りかざしてくるだけの単調なモノとなっている。

 しかし問題はそこではない、問題はこの攻撃に即死効果(・・・・)の状態異常が付与されていることにある。

 

 ちょっとでも攻撃がかすってしまうものなら、たちまち即死効果でリメインライト化という、質が悪すぎる仕様になっているのだ。

 ゆえに、フィリアは早々に戦意を喪失し、仲間たちがいる迷宮区の奥へと逃げ込んでいったというわけだった。

 

「じょ、冗談じゃないよ! ミミックなんて私一人じゃ倒せないってー!」

 

 ズリュズリュという音をたてながら巨体をにじり寄せてくるミミックの見た目は、もはやミミックというよりはスライムのような形状になっている。

 

 大きいからといって動きが遅いとかそういうわけでもなく、むしろその巨大尚且つ軟体にも近い特徴のおかげで、来る道中障害物などを破壊しながらも、速度を落とすことなくフィリアを追跡することが出来ていた。

 

 フィリアはスプリガンが得意とする、ハイド魔法の存在を忘れるほど冷静さを失い、ひたすらにキリトたちが進んでいった方向へと、ただただ走り続けた。

 

 

――――――

 

 

 同日同時刻 新生アインクラッド第40層 ボス部屋前

 

 

「よし、マッピング完了だ」

 

 左手でフロア内のマップを表示させているキリトが、第40層迷宮区の全てのエリアを踏破したことを知らせた。

 

 このままボス部屋に突入し、一気にボス討伐というのも提案として挙げられていたが、今日のとりあえずの目標はボス部屋までの到達だったということもあり、ひとまずは目標達成ということにしておき、また後日みんなで討伐しとうということで話はまとまっていた。

 

「みんな、お疲れ様ー♪」

 

 一番最初に扉の前まで到達したユウキが他のメンバーに労いの言葉をかけると、一時間半以上もの間、迷宮区の攻略につきっきりだった面々に疲労の様子が見て取れた。

 

 その中でも一際疲れている様子を見せているのが、この中で一番の年長者でもあるクラインであった。

 首と肩をポキポキとならし、腰に手を当てながら「あぁ~……」と息を吐き、なんともおっさんくさい仕草を繰り返していた。二十九なので十分おっさんなのだが。

 

「なんとか消灯時間までに間に合ったぁ……」

 

「本当ですね……、間に合ってよかったです」

 

「今回は先生にどやされずにすみそうだな……」

 

 ジュンとシウネーたち、入院組が消灯時間の22時までに目的を達成できたことに、ひとまず安堵の息を漏らしていた。

 

 前回プレイしたハロウィンイベント、三人はその時大きく消灯時間をオーバーしてまでALOをプレイしてしまったことで、先生や看護師たちに大目玉を食らってしまっていたのだ。

 

 そして今度消灯時間を過ぎるようなものなら、退院するその日までアミュスフィアを没収しますとまで言われてしまう始末だ。

 

 なので、冒険を楽しんでいる傍らで、実は内心なんとか消灯時間まで間に合わせたい、間に合うかなといった焦りの気持ちもあったに違いない。

 

「よっと……」

 

 ジュンたちが安堵の息を漏らしている中、ユウキがアイテムポーチから青く透き通った回廊結晶を取り出し、今いるこの最上層の地点を場所登録し、また再びアイテムポーチに結晶を仕舞った。

 これにより、いつでも何人でも好きなタイミングでここに戻って来れるというわけだ。

 

「目標達成だな、もう遅いし、今日はここまでにしよう」

 

 今日の目標達成をこの場にいるメンバーに伝えると、キリトは大きくのびをした後、その場にあぐらをかいてくつろぎ始めた。

 

「そうしよっか♪ みんなありがとね、おかげでここまでこれたよ!」

 

 ユウキが明るく無邪気な笑顔を振りまきながら、今日手伝ってくれたメンバーに感謝の言葉を伝えると、その場にいる全員が片手の親指を立て、サムズアップする形でユウキに返事を返す。

 

 それはすなわち、今日ここまで一緒に冒険したことが、楽しいと感じたからこその返事だった。

 その光景をみたユウキは「えへへ♪」と上機嫌になり、改めてボクは最高の仲間たちに囲まれているなと、幸せを感じていた。

 

「んじゃあ、次の週末同じ時間に、またアルンの転移門広場で待ち合わせってことで、いいかな?」

 

「おうよ、平日は厳しいけど週末なら俺様もばっちり参加出来っからよ!」

 

「やっぱりお仕事忙しいんですか? クラインさん?」

 

 片手にALOで一番性能のいいロッド「世界樹の枝」を握り、全員に回復魔法をかけ終わったアスナが、ここ最近のクラインの多忙さに質問を投げかける。

 

「そうなんだよ、年末が近いせいか、クライアントが結構無理難題を言いやがってよう。現場の人間の気持ちも考えやがれってんだ」

 

「でもそれでお金もらってるんでしょ? なら頑張りなさいよね、社・会・人♪」

 

 腕を組んで自分の働いている会社への不満を漏らしているクラインの肩に、リズベットが肘をグリグリ当てこすりながら野次を投げかけた。

 

「うるせえやい! 畜生……俺様も学生に戻りたいぜ……」

 

「でもメリットもあるだろ? 空いた時間は自分のために使えるし、働いているからお金もあるし」

 

「そりゃあ……蓄えはあるけどよう」

 

 クラインも同じようにあぐらをかいて地面に腰を下ろすと、わりかしMMOではタブーとされている、リアル事情の話しが持ち出された。

 

 クラインとしては別に周りにバレて困ることでもないし、むしろ自分の愚痴だとか聞いてもらったり、理解してもらったりしてくれた方が助かるので、他の面々と比べてもわりかし情報をオープンにしているのである。

 

「蓄えか……、僕もちょっとバイトしないときついかもしれないな……」

 

 今日、秋葉原で現実のお金を散々散財してしまったシュピーゲルが、困った表情をしながら眉をひそめている。

 父親からの仕送りだけで生活している彼にとって、突発的な出費は死活問題となる。

 クレーンゲームの景品を取るためだめに五千円というのはあまりにもでかい出費だ。このままでは生活費に打撃が来てしまう。

 

 そして彼の場合、親にVRMMOを遊んでいることは内緒にしている。家賃、電気ガス水道代などの光熱費、食費、テキスト代、そして毎月の接続料やプロバイダ料金。

 働いていない彼にとっては、結構大きい出費の連続だ。

 

「俺もだ、誰かさんのおかげでな」

 

 キリトがぶつくさいいながら、その視線をユウキに向けると、ユウキは彼から目をそらし、かっすかすの口笛を吹きながら「なんのことかなー?」とでも言いたげな雰囲気をかもしだしていた。

 彼の出費の一番の原因であるのにもかかわらず、だ。

 

「またヤツの世話になるか……ちょっと癪だけど」

 

「ヤツって……菊っ、クリスハイトのこと?」

 

「ああ、いずれにせよ、このペースだと今月中に懐がすっからかんになっちまうからな」

 

 キリトのいう「ヤツ」というのはクリスハイト、菊岡誠二郎のことである。以前からも仮想世界についての調査や取材などを受け、様々な情報提供や協力を要請されている。

 

 キリトは彼からの依頼をこなし、バイト代と称して報酬を受け取っていたというわけである。その依頼をまた受けようというのだ。

 

「あ、ねえキリト、その依頼って僕にもやらせてもらえるのかな?」

 

「え? あ、ああ……多分俺から話を通せば大丈夫だと思うけど……」

 

 アイテムポーチから取り出した、水入り瓶に口をつけているキリトに、シュピーゲルがそのバイトを自分にもやらせてもらえないかと提案を持ち出した。

 昼間はゲームセンターで強がってはいたが、やはり彼も無理をしていたのである。

 

「何よ、やっぱり無理してたんじゃない……」

 

「う、えっとその……あ、あはは……」

 

 自分の心情を見透かしているシノンから苦言を受け取ると、シュピーゲルは何とも言えない微妙な苦笑いを浮かべて、その場を取り繕うとしていた。

 

 しかし彼からしてみても願ってもない話だ。スーパーだとかコンビニだとかの接客業は苦手だし、かといって事務作業とかもあまり得意と言える方ではない。

 

 でも今回の仮想世界の調査や情報提供ということなら自分でも出来るかもしれない。むしろやってみたい、経験してみたいという思いが強かった。

 それでお金が貰えるならなおさらいいじゃないか、とも。

 

「わかったよ、俺からクリスハイトにかけあってみる」

 

「うん、ありがとう、キリト!」

 

 お互いの拳と拳とぶつけ合うと、二人の間に少年らしい爽やかな笑顔が交わされていた。

 互いに同年代の男子の友達が少なく、貴重な間柄だということもあり、ここ最近何かとこの二人の意気はぴったりだ。

 

 そして宴もたけなわながら、来週末に40層のボスを討伐しようということで、この場は一旦解散する流れとなった。

 ジュン、シウネー、ノリ、テッチ、タルケンの入院組は消灯時間が迫っていることもあり、怒られないためにも急がないといけない。

 

「それじゃ、街への回廊結晶使うぞ」

 

 キリトがアイテムポーチから回廊結晶を取り出し、高らかに掲げながら「コリドー・オープン」と口ずさむ。

 すると「パキン」という音を立てて結晶は砕け散り、入れ替わりにキリトの目の前の空間が円の形に歪み始めた。

 

 歪んだ空間は僅かに白く発光しており、何やら神秘的な雰囲気を感じさせる。SAO時代は貴重であった回廊結晶、転移結晶といったアイテムも、ALOでは手に入りやすくなってるのだ。

 

「あれ? ちょっとまってみんなー!」

 

「ん? どうしたストレア?」

 

 薄紫の髪に、目のやり場に困る大胆な服装に身を包んだノームの女の子であるストレアが帰ろうとする皆を止めにかかる。

 声をかけられたメンバーは「一体なんだろう?」と首をかしげ、発信源であるストレアに視線を集中させている。

 

「ねえ、フィリアはどこいっちゃったのかなー?」

 

「え、フィリア……?」

 

「そ、そういえば来てないですね……」

 

 シリカが頭に相棒であるピナを乗っけながら、首をかしげると、後のメンバーも次々とフィリアのことを気にかけ始めた。

 つい今しがたまで一緒についてきていたはずだ。一体どこに行ったのだろうと、周りに視線をキョロキョロさせながら、フィリアが近くにいないかと確認する。

 

「フィ、フィリアちゃんならなんかお宝を探すとかで……」

 

「サーチ魔法使ってお宝探しながらここまで来るって話よ、まったく呆れるわよね」

 

「……くすっ、フィリアさんらしいです♪」

 

 シノンとシュピーゲルがフィリアの行方について話し出すと、心配していた面々に安堵の表情が戻ってきた。

 いかにもトレジャーハンターである彼女らしい、心配して損した、そんな言葉があちらこちらからこだましている。

 

 しかしそんな中、MHCPであるユイだけが、何やらただならぬものがこちらに近付いていることを探知していた。

 

「パパ! 警戒してください! モンスターが近づいてきます、迎撃の準備を!」

 

 ユイが先ほど通ってきた通路を指差し、この場にいる全員に警戒を促すと、メンバー全員が武器を構え、後方から来るであろうモンスターに対して迎撃の態勢を取っていた。

 

 どんなモンスターが来ても大丈夫だ、ここにいるメンバーなら楽勝で倒せるはずだ。なんせここにはVRMMOプレイヤーのプロフェッショナルといっても過言ではないメンバーが肩を並べているのだから。

 

 誰もがそう思った。フロアボスやフィールドボスならわからないが、たかが強くても中ボスクラスのモンスターに遅れを取るはずがない。いつでもかかってこい、そんな心境で身構えていた。

 

 しかし、そんな強気な気持ちは、少しずつ近づいてくる物々しい騒音とともに、物の見事に打ち砕かれることになった。

 

 全員が視線をやった後方の遥か奥からは、スプリガンの少女が一人、そしてその少女を追いかけている禍々しい見た目をした巨大なモンスターが一匹、物凄い速さで「ズドドド」という騒音をまき散らしながら迫ってきていた。

 

 スプリガンの少女は言わずもがな、フィリアである。そしてそれを追走している巨大モンスターの正体は、先ほど彼女がまんまと引っかかって出現させてしまったミミックだ。

 

「う、嘘でしょ……バカじゃないのアイツ! 何てものを連れてきてるのよ!」

 

 全種族中、一番視力に長けたケットシー族であるシノンが、弓と矢を構えながら、額から汗を垂らして、いち早くその正体に気付いていた。

 

「あのバカ! 何でよりにもよってミミックに追いかけられてるのよ! トレジャーハンターが聞いて飽きれるわよ!」

 

「なっ!?」

 

「み、ミミック!?」

 

 「ミミック」というワードを聞いた瞬間、全員が全員その場に凍りついた。どこのフロア階層ボスよりも強いのではないかと噂されるほどの質の悪さをもつミミックの凶悪っぷりを、よく理解しているからこその反応であった。

 

 攻撃判定をもらうだけで一撃死してしまうのだから、質の悪いモンスターというよりは、天災に近いと言ったほうがいいだろう。

 

「みんなあぁぁ! た、助けてええぇ!」

 

 ここまで全力疾走してきたフィリアが、ボス部屋手前で集まっているキリト達に救助要請を出す。

 しかし、全員武器を構えて勇猛果敢に立ち向かっていくどころか、武器をしまって踵を返し、目の前のコリドーに飛び込もうとしていた。

 

「み、みんな早く逃げろ! この人数でも分が悪すぎる!」

 

「フィ、フィリアの……バカー!」

 

「わ、私だって好きで連れてきたわけじゃないわよー!」

 

「は、早くコリドーに飛び込んで! 追いつかれちゃう!」

 

 ミミックという、ありがたくないモンスターのサプライズ出現に、キリトらメンバーはまるで大災害から避難するかのようにコリドーに慌てて飛び込んでいった。

 初めに消灯時間が迫っているスリーピング・ナイツのメンバー。

 そして次にSAOサバイバー、そして最後尾のフィリアを、コリドーの出入り口付近で待っていたユウキとキリトが腕を伸ばし、強引に引っ張り転移まで間に合ったところで、コリドーは消滅した。

 

 当初の目的である、迷宮区のマッピング&ボス部屋までの到達は達成出来たものの、このミミックは時間経過で自然消滅しない設定にされており、討伐されるまでの間、かなり長い期間ボス部屋の前をうろついている始末となった。

 

 何も知らないプレイヤーがボス部屋までたどり着き、いるとは思わないミミックの襲撃にあい、たちまち全滅といった被害が後を絶たなかったそうだ。

 

 後々にミミックを討伐するためのパーティが結成され、どうにかこのミミックは討伐されたのだが、ドロップアイテムも、落とすユルドも美味しくなく、結果はプレイヤーのお金と熟練度、装備耐久度とメンタルを奪っていくという、散々な結果だったという。

 

 これに懲りてフィリアは、当分トレジャーハント業を休業することを決定した。アルヴヘイムオンラインは、今日もどったんばったん大騒ぎな、ある意味平和な日々が続いていった。

 




 
 ご観覧、ありがとうございます。時間の都合で挿絵はありません。
 さて、次回から物語が本格的に動き出します。完全に新川君視点で物語が動いていきます。
 原作では狂ってしまった新川君。詩乃と結ばれ(予定)、和人という友達を得た彼が、原作とどう違う道を歩むのか、是非これから皆さんの目で確かめていただければと思います。

 それでは素敵なGWをお過ごし下さい。

 私? 仕事ですよ?
 

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