「………知らない天井だ。」
俺はそう呟いた。
……そう言えば気絶したんだっけ。
「目が覚めましたか?」
そう声をかけられて、見るとレキがいた。
「………今は何日だ?」
「風切さんが倒れてから三日です。」
三日、か。
………起きるのが早すぎる。
もう一回昏倒するな。
その前に、
「レキ、アリアと金次どうしてる?」
「金次さんはわかりませんが、アリアさんはイギリスに帰ると」
「そうか……」
俺は思考する。
こう言う犯罪のパターンはだんだん大きくなっていくことだ。と言うわけで、
「レキ、金次に電話か何かで知らせてくれ。」
「何と?」
「恐らくアリアが乗っている飛行機に『武偵殺し』が来る。」
「………分かりました」
「あ、そうだ。レキ、胡椒を買うか俺の寮から持ってきてくれ」
「………?分かりました」
俺の勘では『武偵殺し』はあいつだからな。
そして、俺の予想どおりアリアの乗った飛行機がジャックされた。
「レキ、行くぞ」
「………どちらへ?」
「空き地島だ。恐らく、緊急着陸するならここしかないからな。レキ、胡椒取ってくれ。それと今から見るものは他言無用だ。」
「………?はい」
俺はレキから胡椒を受け取り空中にまぶす。
「ハックシュン!」
くしゃみをして入れ替わった。
入れ替わると心なしか驚いているように見える。
「さて、積もる話は抜きにして、行こうか。その前に要請があればそっちに行っていいからね」
「………分かりました」
私はそのまま、病院を出た。
台風のような雨の中、私は傘も差さずに立っている。
風で周りを囲っているから雨には当たらない。
すると、レキからもらったトランシーバーから情報が流れてくる。
空き地島に着陸したいが、周りが暗くて見えないそうだ。
まぁ、それを聞いても風しか起こせないのでどうすることも出来ないのだが。端っこぐらい見せれるか………。
そう思い立った私は風を縦に送っていく。
徐々に風に回転をつけながら、作っていく。
だんだんと風が強くなって集まってくる。
それはさながら、竜巻。
空へ届き得るほど縦に伸びて荒々しく風を巻き起こしている。
『おい!金次!気をつけろ!なんか可愛い女の子が竜巻起こしてる!恐らく超偵だ!』
と、確か車輌科の武藤が言っている。
……確かに起こしてるけども。
『あー、武藤?その子は頭にバンダナしてないか?』
『よく見えねぇけど多分してる』
『……その子は俺の知り合いだ』
『はぁ!?マジかよ!何でお前ばっかり!後で紹介しろよ!』
『………それは了解しかねるな。まあ、後で聞く。亜里沙、聞こえてるか?』
「聞こえてるよ。金次。」
『其処が斜めの端か?』
「そうだよ。梓は耐えられないから私がやっているよ。ここまでの道を示そうか?」
『いや、出来るならそのあたりの天候をどうにかしてくれ』
「………なかなか疲れること言うね。分かった。機体が揺れるのは了承してよ?」
『分かってるよ』
金次の了解を得て、私は風を広げる。
だんだんと広げていき、私の能力範囲の最大まで広げる。
空は私が風を広げた範囲がぽっかりと穴が空いている。
「金次、広げたよ。後は頑張ってね」
『ああ、ありがとう。亜里沙』
私はそう言って風を読みながらじっと待つ。
と言うのも暇なので濡れているコンクリートを風で払ったりしておく。
遠くにだんだんと飛行機が見えてきた。
私は風の壁を形成していく。
少しでも勢いを殺せるように分厚く、しかし低反発枕のように柔らかく。
まぁ、其処まで柔らかくとかは出来ないが。
そうして飛行機が突っ込んできて、風のお陰もあってギリギリではあったがしっかり止まった。
私は一安心して、病院に戻っていく。
私は、と言うか梓は重傷だから。
そして翌日。
しっかりくしゃみをして元に戻っていた俺はベッドの上で暇を持て余していた。
外出は今の所禁止。屋上ぐらいには登ってもいいそうだが、飛行機を止めるためとは言え病院を抜け出したから当然の処置だろう。
其処に金次とアリアがきた。
何やら疲れ切っているが。
「どうした?」
「いや……白雪が暴走してな。逃げてきたついでにお前のお見舞いに来たんだ」
「暴走した理由はアリアか?」
「まあ、ぶっちゃけそうだ。そう言えばレキから聞いたんだが、何故『武偵殺し』がハイジャックすると?」
「今までの事件から何かをすることが分かっていたからな。あいつなら派手にやると思ったからな」
「………あんたは『武偵殺し』が誰か知ってるの?」
「ああ。と言っても予想だが、
「………」
「その沈黙は是と取るからな。理子はとても大きなミスをしてくれたからな」
「「ミス?」」
「金次の時計を壊したことだ。其処でほとんどの犯人が特定できた。」
「風切さん。診察ですよ」
そこまで言って診察の番が回ってきた。
「それじゃ、俺は行くぞ」
「「ああ(ええ)」」
そうして車椅子で出て行こうとする俺にアリアがこう言ってきた。
「風切。ここで、もう一度言うわ。あんた、あたしの奴隷になりなさい!」
………またか。でも俺の答えは一つ。
「断る」