俺はアリアに電話を貰ってすぐ、女子寮の屋上に上った。
「アリア!」
「遅いわよ!風切!」
「風でブーストしたのに…」
風まで使ってきたのに怒られた。
………解せぬ。
「元Sランク武偵を含めて四人、まぁ、こんだけ集まれば上出来ね。」
「今から助けに行くわよ。あたしと金次はバスに向かって、風切とレキは狙撃ね。」
「「「おう(はい)」」」
「あ、その前に金次。ちょっとこい」
そう言って金次を呼び出す。
「なんだよ」
「お前、普通モードでやる気だろ?」
「………ああ、そうだが?」
「お前に
「は!?何でだよ!俺が
「ああ、知っている。だが、本気でやると言った以上、お前の本当の本気を見せてやってもいいんじゃないか?失礼だろ?お前には力がある。その力を隠して、偽りの本気でやって。ま、強制的にやらせるけどな」
「は?」
「ハックシュン!」
俺はくしゃみをして金次に抱きついた。
「諦めなよ。金次には力がある。その本気でなおアリアから離れたいならその実力さえ偽ればいい。」
私は離れて笑ってやる。
「最初に言ったでしょ?金次には金次にしか出来ないことがある。他の誰でもない。金次だから出来ることをしてあげてね」
「はは、悪い子だ」
金次の雰囲気が変わり、キザな態度になる。
「女の子にそこまで言われたらやらないわけには行かないな」
私はもう一度くしゃみをして男に戻る。
「ま、言ったのは俺だけどな。亜里沙では抱きついただけだからな」
「分かってるさ」
「……行くか」
「おう」
無理矢理、ヒステリアモードにした俺は、
レキと一緒にヘリに乗っていた。
ヘカートのレバーを引き、銃弾を装填する。
「レキ、視力は?」
「両目とも6.0です。」
「俺より1ずつ上か。なら、外回りに爆弾があるかもしれないから外探してくれ。」
「分かりました」
俺はアリア達がバスに乗り込んだのをスコープ越しに見ていた。
……危なっかしい。
その近くを通る車が一体。
その車を見ると、
「UZI、だと!」
車にUZIが搭載されていた。
俺はすぐさまアリア達に知らせる。
「アリア。外に車が一台。それにはあの時のUZIが載っている。気をつけろ」
「了解よ」
無線を切ってじっと車をヘカートで追っていく。
「ありました。」
レキが知らせてくる。
俺はスコープから目を離し、レキの方に向く。
「何処だった?」
「バスの下です」
「アリア、バスの下だ」
アリアに爆弾の在り処を教える。
「レキ、橋に差し掛かったら爆弾を撃て。出来るか?」
「はい。」
「よし、それじゃ、頼む。」
俺たちは寝転がってスコープを、覗く。
爆弾を解除しようとしていたアリアだが、金次がバスの上に立っていたのを見て叫んでいた。
「レキ、狙うぞ。俺は車を、レキは爆弾だ。」
「はい」
俺はスコープを覗く。
横からレキの狙撃する時の言葉を呟く。
『私は一発の銃弾。銃弾は心を持たない。故に、何も考えない。ただ目標に向かって飛んでいくだけ。』
「俺は銃だ。遠くてもなお対象を沈黙させる。何事にも束縛されない。赤霧の名の下に。その力を持って敵を穿て。」
レキは爆弾を。俺は銃を、それぞれ撃ち抜いた。
「対象の沈黙を確認。お疲れ、レキ」
俺はレキに声をかけるが何も答えずじっと何処かを見つめる。俺もその方向を見てみる。
「あれは………」
遠くに何かが見えた。
空を飛んでこちらに近づいてくる。
そしてプロペラが回る音が聞こえた。
「軍用ヘリか!まずい!車輌科のやつ!早く離れろ!」
こちらが撤退するまでにガトリング砲を撃ってきた。
「レキ!」
俺は咄嗟に風でヘリを覆ってレキを庇う。
しかし、その風の壁を突き破って俺に当たる。
「ぐわぁぁ!くっ!」
ドスドスと何かが刺さるように俺の体を貫いていく。
俺が胸からグロックを抜いて一発、発砲する。
キンッと当たって向こうのヘリが少し離れていく。
「くっ!イテテ、大、丈夫か?レキ」
「はい。風切さんが庇ってくれたので大丈夫です。」
「そうか、ごぼっ!」
俺はレキにかからないように血を吐く。
「大丈夫か!?」
車輌科のやつが心配してくれたが俺は手を振って大丈夫と示す。
「ごぼっ!ごぼっ!あの野郎。容赦、なく、撃ちやがって。ぶっ壊す!」
俺は風を纏って飛び出す。
風を足で蹴って浮かび上がり、風を足元に集めて、
「パイルトルネード!」
踵落としで下に蹴り落とす。
足の下に竜巻が起こり、ヘリがバラバラになって砕け散った。
俺はそれを見ながらヘリに戻ろうとするが、
「がはっ!」
途中で血を吐いて、徐々に意識を失っていった。