緋弾のアリア〜傭兵からの転生者〜   作:SAMタイム

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第六十三弾 決着と別れ

そして、11時50分。

俺は果たし状をレキには見せずに、戦いに行く準備をする。

白銀の弾丸(プラチナブレッド)を使って傷を癒していたために少しは良くなった。

だが、ほんの少しだけしか身体を回復させることは能力状無理だったので、全力で動けば必ず傷は開くだろう。

しかし、レキにも言った通り死ぬつもりはない。

だから、出来るだけ力を温存するために、

 

「クシュン!」

 

くしゃみをして亜里沙に変わる。

私はレキの頭を撫でて「行ってくる」と言い、窓を開け放って、風を使って飛んで行く。

 

「梓、さん?」

 

その少し聞こえた声は無視をして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男子寮を経由して、『双華』を取り、「ルウト」も持って行く。

風を使っていては胡椒が飛んでしまうので、空き地島付近に降りて、胡椒を振り、

 

「クシュン!」

 

くしゃみをする。

俺は『双華』を袋から出して背中に、「ルウト」は腰に挿しておく。

丁度午前0時、俺と竜太は同時に姿を見せた。

 

「遅れずにきたようだね」

 

「当たり前だ。お前もギリギリだったな」

 

「それ程でもないさ」

 

俺と竜太はお互いに皮肉を言い合う。

 

「どうせ、お前は戦う事を望んでるんだろ?」

 

「ああ。もう時間がない(・・・・・・・)からね」

 

……時間?

俺は疑問を抱いたが、竜太が剣を抜いたので合わせて俺も抜く。

そして、ベレッタから銃弾を抜き、弾く。

二人に会話は無いが、お互いに意味を理解して銃弾をじっと見る。

くるくると回って回って、

 

キンッ!

 

音がした瞬間に両者飛び出す。

そして、同じ形を取り、切る。

 

「「一刀流 太刀!」」

 

俺は縦に、竜太は横に切る。

そして、キンッと甲高い音がして、二人とも下がる。

俺はすぐさま横に一閃し、竜太はしゃがんで避ける。

そして、俺はそのまま回転して下から突き上げ用としている竜太の剣を防ぐ。

さらに不可視の銃弾(インヴィジビレ)で強襲するが、竜太の頬を掠めるだけになる。

避けながら竜太は足を斬ろうとしたので、ジャンプして避けるが、

 

「一刀流 旋回」

 

勢いのまま身体を回し切り上げてくる。

俺は、それを剣で受けて少し飛ばされてしまう。

竜太はバク転をしながら後ろに下がり、体制を整え

 

「一刀流 突貫」

 

竜太最速の突きを放ってくる。

俺の心臓目掛けて飛んでくる突きを出来るだけ滑らすように逸らすが、腕に刺さる。

 

「ぐっ!一刀流 三刺!」

 

反撃するように、手、頭、胸を突くが俺の腕から剣を抜きながら受けて飛び下がり剣を2度振るわれる。

それを剣で受けようとするが、届かない。

その瞬間に縦に2度切られてから気づいた。

 

「ちっ!旋風かよ、ゴホッ!ゴホッ!」

 

「一刀流 旋風。やっぱり、赤霧を使わないと弱いね」

 

剣を担ぎ上げ、俺を見下ろすように竜太は言う。

 

「君はいつも心を殺し、そして僕らの手柄をいつも一人で掻っ攫っていく。僕らがどう言う思いで戦っていたかも知らずにね」

 

俺は反論できずにじっと竜太を見つめる。

 

「みんな君を恨んでる。飛鳥を含めてね。だから僕が殺す。君に最後を看取られた身として、君を恨んでる者として「知ってたさ」……何?」

 

みんなが俺を恨んでる、そんな物百も承知だ。

しかし、これだけは言わせてもらおう。

 

「知ってたさ。全員が俺を恨んでることはな。当たり前だろう、一人だけ少しでも違う扱いを受けていれば。俺だって怒るだろう」

 

しかし、あいつらは違った。

 

「飛鳥も相太も新太も創気も智史も健吾も優馬も幸平も浩志も太一も修平も賢治も、朝雪、楓、瑞樹、エイラ、ライト、レベッカ、エリザ、セレナ、リリィ。こいつらを含めてそれでも付いてきてくれた。もちろん、お前も含めてな」

 

「お前や飛鳥に言われた、『死なないでくれ』と。その約束は守れなかった。みんなを守ると言う約束も守れなかった。だからこそ、ここで約束を破る訳には行かない」

 

レキも、アリアもキンジも理子も。

 

「お前が本物か、中身の違う偽物かは分からない。だが、レキや仲間たちの為にも、次こそは、約束を破る訳にはいかないんだよ!お前の俺に残した言葉が真実かも分からない。だけど!それでも、あの時の言葉を、あいつの想いを踏みにじらせてたまるかぁぁぁ!!!」

 

胸の内の言葉を吐き出して、力いっぱい「ルウト」を握る。そして、上に掲げる。

さらに、言葉を紡ぐ。

 

『赤霧の名の下に

力を持って力を示せ』

 

俺が言葉を紡ぐと風が起きた。

白かった目が赤に染まり、剣が赤く輝く。

そして、剣先を竜太に向けて告げる。

 

「行くぞ、竜太。これが二段階目だ」

 

その言葉と同時に走り出す。

竜太も剣を中段に構える。

俺は剣を後ろに下げ、回転する勢いを使った剣を振るう。

 

「くっ!」

 

竜太はそれを受けるが、勢いに押されて少し下がる。

俺は追撃するように走って、目の前でしゃがみ、

 

「一刀流 星屑」

 

下から何度も突き上げる。

竜太は剣でいなし躱そうとするが、腕や足に裂傷が出来る。

竜太も同様にしゃがみながら俺の剣を払い上げる。

そして、剣を横から上へ、そして逆に持って行く。

 

「一刀流奥義 戦火闘乱!」

 

米印を描くように剣を振るってくる。

 

「梓さん!」

 

その時に声が聞こえた。

自分の大切な人の声が。

そして、後ろに背負っていた『双華』を抜き、防ぐ。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

防ぎ、竜太の剣を押し退けて、後ろに下がり、雄叫びを上げ、

 

「二刀流奥義! 日蝕(イクリプス)!」

 

戦火闘乱の二倍、斬りはらい、回転しながら切り裂いて、蹴りを加えながら、最後に両剣を振り下ろす。

 

「ぐがっ、ガハッ!」

 

日蝕(イクリプス)を受けて、前のめりに竜太は倒れる。

 

俺は剣を地面に挿しながら倒れないように支える。

 

「梓さん!」

 

レキもこちらに駆けつけて支えてくれる。

 

「レキ、どうして、ここに?」

 

「梓さんが捨てたと思われる、果たし状を見ました」

 

「そう、か」

 

「流石、やっぱり亜紀斗(・・・)は強い、ね」

 

亜紀斗、その言葉に思考が停止する。

 

「はっ?な、なんでお前が」

 

僕がつけた名前だ(・・・・・・・・)よ?忘れる訳、ないじゃない」

 

その言葉を聞いて、涙が出てくる。

 

「どうして!どうして何も、言わなかった!?」

 

「君の、本当の想いを、聞きたくてね。こうして、戦う道を、選んだのさ」

 

俺はその事実に思いっきり手を握り、地面に叩きつける。

 

「ま、また、お前が死ぬのを!見なきゃいけないのか!」

 

「だから、ありがとうって、言いたかった」

 

「はぁ!?」

 

「君は、最初から、僕らの先頭を歩いてくれた。心も、涙も殺し、ただ、生き残る為に、僕らを導いてくれた」

 

「確かに、皆が恨んでるのも、事実だった。でも、それ以上に、こうして戦ってくれたのが、一番僕たちは嬉しかったよ」

 

「…でも、だが俺はお前たちを助けられなかった!何十人も死んだ!俺が、俺が弱かったから死んだんだ!」

 

「弱かったかもしれない。助けられなかったかもしれない。でも、僕と飛鳥は知ってたよ。1戦争が終わるたびに、死んだ仲間の墓を作り、泣きながら謝っているのを」

 

「……!」

 

「だから、信じた。だから、僕と飛鳥も、みんなも、君が幸せで、報われるように、声をかけた。いや、声をかけることしが出来なかった」

 

「僕は、君が羨ましかった。君の強さ、たくましさに、嫉妬にも似た感情があったよ。だから、常に君の隣に立ち、最後も、君に看取られて、嬉しかった。……ねえ、亜紀斗」

 

「何だ、?」

 

「神様に、頼んで見て良かった。僕は、本当ならもっと早く死ぬ運命、だったんだ。けど、君と言う存在が、僕を救ってくれた。友達でいられて、本当に良かった」

 

「また、お前に、助けられて……。俺も、俺だって!お前に救われた!確かに不運だったかもしれないけど!お前と、出会えて、本当に良かった!」

 

「ははっ、その、言葉だけで、充分だよ」

 

言葉を交わしていくたびに、竜太の足が、手が消えていく。

 

「ねぇ、亜紀斗。もし、僕が生まれ変わったら、また、友達で、いてくれるかい?」

 

「ああ、ああ!当たり前だろうが!俺とお前は親友だろ!?」

 

「ああ、ありがとう。ま、前に、言えなかったね、またね(・・・)、亜紀斗」

 

「ああ、またな、竜太」

 

俺は涙を流しながらも、出来るだけ笑顔を見せて見送った。

居なくなった後に、落ちて居たペンダントを拾い上げて、俺は、倒れるまで泣いた。

 

 

 


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