それからは、使われるだけだった。
赤井霧青の名前を隠して赤霧碧と名乗ったのは正解だった。
無理矢理戦闘訓練を受けさせられて、出来が悪ければしばかれる。
与えられるご飯はその辺に生えていたであろう草である。
睡眠時間もない。
こんな中で、武器の選定が行われた。
俺は自分で言うのもなんだが、何でも出来るオールラウンダーだったので、ハンドガン二丁とサバイバルナイフ。そして、狙撃銃のヘカートⅠだった。
最初はアサルトライフルを持たされていたが、狙いが定まらずにハンドガンを選んだ。
竜太は、ハンドガン、アサルトライフルともにあまり上手くはなく、西洋の剣で落ち着いた。
日本刀とは違い、両刃だからである。
そこから、半年?ぐらい過ぎた頃、俺たち奴隷集団は数百人まで減っていた。その中には当然女子供やのちに攫われた女性もいた。
最近は戦うことも増えてその結果として、寝る時間が増えた。
戦争をしている中で寝ていないから頭が働かない、そう言うことを消すためである。
みんなが寝静まっている中でも俺は深くは眠らずにいた。
そんな中、隣で短い悲鳴が聞こえた。
大人たちが数人で多分女の子を連れて行っているのだろう。
俺はそいつらが出て行ったあと、素早く付いていく。
そこでは女の人が裸にされて、男たちが襲っているように見えた。
俺はギリッ!と口を思いっきり噛む。
そして、さっき連れて行かれた、飛鳥、瑠衣、舞香、シスタ、ライトがいて、そいつらも襲われていた。
「きゃ!や、やめてぇ!」
「ぐはははっ!女子供を連れてくるのは楽だからな。俺たちの性欲の掃き溜めだな!」
「ははは!孕ませてやるぜぇ!」
そこで、飛鳥がこちらを向いて、手を伸ばした。
助けてと言っているように……。
そこで俺は駆け出した。
女に気をとられているところに俺は走って行って男の顎を蹴り上げて首にナイフを押し当てる。
そして、出来るだけ低い声で言う。
「……やめろ」
「なっ!テメェ!赤霧!」
「ここにいる全員を解放しろ。さもなければお前を殺す」
高鳴る心臓を無視して提案する。
「はっ!ここで俺を殺しても、こいつらはお前を殺して同じことをするだけだぞ!」
「だからこそ、ここにいる全員に提案する」
「あ?何を」
「俺と決戦をしてもらう。俺に勝てば俺を殺して続ければいい」
「………」
「俺が勝てばこれからは襲うのを禁止。それと、女たちの戦争の参加を無し。どうせなら解放して欲しいが、どうせしないからそれはいい」
「……それは飲めん」
「戦力が減るからだろ?俺がこいつらの分まで働く。最前線で戦う。それなら如何だ?」
「こ、こいつ!奴隷の分際で!」
「まぁ、待て」
俺がナイフを押し当てていた奴が周りを抑える。
「いいだろう、受けてやる。ただし、こいつらで戦うぞ。ここにいる全員を含めてな。俺は審判だ」
「ああ。いい。だが、そんな大人がこぞって参加するんだ。俺はナイフを使うぞ。いいな?」
「ああ、いいとも」
そう言って俺は解放する。
それに従って大人たちも女の人たちを解放する。
そんな時に飛鳥が小声で声をかけてきた。
「ちょ、ちょっと。霧青!」
「大丈夫か?」
「あんたこそ大丈夫なの?もし負けたら……」
「でも、首の皮一枚繋がったろ?せめて足掻かないとな」
「で、でも「大丈夫だ」……」
「俺が勝てば女の人たち全員が戦わなくていいんだ。信じて待ってろ」
「霧青……」
俺は全員に笑顔を見せてから前を向く。
相手は腐っても精鋭軍人たち。
勝敗は明らか。
でも、俺は守るために戦わなくてはいけない。
あいつらを泣かせないために。
震える手を無理矢理止めて、戦うために、守るために使う。
俺が攫われてここへきて、戦わされて。
自己防衛反応のために名前まで偽って。
だからこそ、今まで頑張ったこれを使おう。
戦うための力を。
「準備はいいか?赤霧」
「ああ」
『赤霧の名の下に
力を持って力を示せ
守るべきものの為に
力を用いて敵を穿て』
そう呟く。
そう呟くだけで雰囲気が変わる。
俺が考えた殺す為の力。
心を殺して無理矢理殺人衝動を起こす。
一言で心を最後まで言って殺人衝動を。
二言目は考えてない。
雰囲気が変わったことに驚いている男たちに飛び蹴りをするが、腕をクロスにして受け止められる。
俺はそのまま空中で回って腕を切る。
そしてもう一度地面を蹴って顔を蹴り飛ばす。
「なっ!こいつ!」
男たちが1人やられたのを見て、本気で殴りかかってくる。
この力の差で受け止めれば腕が折れるかもしれないので手を払い、避け、下がる。
そして思いっきり踏み込んで足元をスライディングして膝を叩く。
膝カックンみたいな形になり、こけかけたところにナイフを刺して勢いのままに投げ飛ばす。
投げ飛ばしたところに殴りかかってきて、思わず腕を使って受けてしまい、腕が折れた。
「ぐっ!あああ!」
折れた腕を無視して突っ込み、そこに殴りかかってきたので体を回転して避けて横長にナイフを振るう。
そしてその傷口を蹴り飛ばす。
最後の1人になったときに、ナイフを投げて膝に刺し、
顎を膝で蹴り上げてそのまま空中で一回転して顔にかかと落としを決めた。
「はぁ、はぁ、はぁ、俺の、勝ちだ」
「ちっ、分かったよ。女たちに手出しはしねぇ、だが、お前は前線で戦ってもらうぞ。腕が折れていてもな。約束は守ってやる。生意気だが、こいつらに勝ったお前にな」
「ありがとう」
男は倒れた奴らを抱えてその場を離れて行った。
俺はその場に倒れかける。
そこで、飛鳥が支えに来た。
「霧青!」
「お、おう。これで、多少は、安心だな」
「で、でもあんたが……」
そう言って涙を零す飛鳥の頭を撫でる。
「お前が無事ならそれでいい」
「……っ!」
俺がそう言うと、飛鳥が抱きついてきて、泣いていた。