2日間の文化祭も終わり、午後の7時。体育館へと赴き、そこで行われる武偵高の悪習『武偵鍋』のためにチーム毎で1つの鍋を囲むことになった。
この武偵鍋はチームで食材を持ち寄るが、その食材に必ず『アタリ』と『ハズレ』を用意しないといけない。
要は闇鍋みたいな感覚である。
亜里沙はここで退場。
『
いつまでも亜里沙でいるわけにはいかない。
流石にこの不味い鍋を亜里沙に食べさせるわけにはいかないので、ここは変わってもらおう。
金次と白雪、俺が当たり担当。
アリアとレキ、理子がハズレ担当だ。
(……大丈夫だろうか。あいつらが担当で)
恐らく金次も思ってると思う。
鍋という日本文化に疎そうなアリアに、そもそも、俺がいなければ文化的な生活をしていないレキ。
そして、どう考えても巫山戯そうな理子。
っていうか、もう既に巫山戯ている理子はネタなのかシュールストレミングスの缶詰めとか持って来ていた。
……やばい、死人が出そう。
重い足取りで入った体育館では既に始まっていた。
各チームが武偵鍋が始まっており、生徒たちの周辺で何人も泡を吹いていて倒れている。
それを救急箱を持った
「キーくん、こっちこっちー!」
ピクニックシートに座っていた理子が。満面の笑みで金次を呼んでいる。
他にアリアがあぐらをかき、レキも体育座りしており、ハイマキもお座り中。
そして1人だけ綺麗に正座をしている幹事の白雪が、カセットコンロの火を調節していた。
その横から、理子が鷹の爪をわんさか入れていた。
「おい!お、お前……!何入れたんだよ!これじゃあ火鍋になるだろ!」
「えーだって理子、辛いの好きなんだもーん。たーかーのー、つめー」
……だそうだ。
そして、金次がリーダーとして指示をしてグロックの
しかし、次は甘くすると言ってパルスイートをたんまりと入れた。
パルスイートと言うのは砂糖を4倍濃いくした人工甘味料だ。
と言うわけで地獄の武偵鍋スタート。
実際、出来ているかどうかすら分からない。
……なんか紫色の湯気が上がっているし。
でも、最低でも1人1すくいずつ闇鍋段階だ食べなければならない規則なので、アリアたちもジャンケンによって次々と鍋に特攻をかけていく。
最初の犠牲者は金次。
リーダーだからと言う理由である。
掴んだのは、恐らく桃まん。
なんかゾンビ化している。
その上には何やら溶けたものがあった。
………カロリーメイトか。
次はアリア。
何やら黒いツブツブをいっぱい引き当てた。
……あれはブルーベリーか。
その次は白雪。
祈りながら引くと、普段の行いが良いからか煮卵を引き当てた。
その次は理子。
その理子が引き当てたのは、白滝……が、飽和して結晶化したパルスイートを吸着して輝いている。
次はレキ。
無表情でおたまをひょいっと引くと、赤唐辛子の群れを掬い上げた。
その唐辛子をパクパクと簡単に食べていく。
……やっぱりすごい。
次は俺。
レキみたいに無表情で引くと、
「………」
なんかすごいものを引き当てた。
……なんだこれ?
「「「「「………」」」」」
全員無表情で見ている。
俺は意を決して口の中に入れると、
「……うぇ」
全部が総合されたような味がした。
カロリーメイトのチーズ味、桃まん、パルスイート、赤唐辛子。
それをミックスしていたので、すぐさま風を口の中に起こして、粉々に分解する。
そして、レキが差し出してくれたお茶を貰って一気に飲み込んだ。
「……マズっ!」
俺がそう言うと、全員が手を合わせていた。
その鍋は
……死ぬなよ。
俺はさっきの鍋の影響を受けて、食べ物が喉を通らなかった。
後は、レキが文化祭のポスターのことを聞いた。
なんでも、ポスターの応募が足りなかったから、美術を選択している生徒全員の絵を使って、一位だったらしい。
……なかなか凄い才能だな。
こうして文化祭の夜が過ぎて行った。