緋弾のアリア〜傭兵からの転生者〜   作:SAMタイム

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第五十三弾 その後

ヒルダとの戦いが終わった。

ヒルダは全身大火傷の大怪我。

理子は毒を解除したので大丈夫だったが、金次とアリアは知らなかったため大慌てしていた。

それを見て、俺と理子が笑っていたのは別の話。

念のために、理子も病院へと運ばれて治療を受けている。

 

アリアと金次はヒルダのところへ、俺とレキは理子のところでじっとしている。

時間が経ち、アリアと金次と、ワトソンが入ってくる。

そのワトソンだが、そこまで時間的余裕もなかったのか 、予想通りヒルダの話を切り出した。

 

「まず宣言しておくが、ボクは武偵であり医者だ。敵でも、戦いが終わればノーサイド。過剰攻撃オーバーアタックはしない。いかなる人格、国籍、人種であっても関係ない。治す。だからさっき、ヒルダの体から散弾銃の弾を――107発、全て摘出した。魔臓機能が不全なのにもかかわらず、彼女は驚異的な生命力で手術を乗り切ったよ。身動きも取れず、意識も無く、人工呼吸器を必要としながらも……彼女の命は、生きようと願っている。ちなみに魔臓なるものを縫合したのは初めてだったので、ボクも完璧には手技が出来ず……その組織を若干、切除せざるを得なかった。だがボクは、転んでもただでは起きない。それを材料に、魔臓の働きを止める薬品――バンパイア・ジャマーの開発を約束しよう」

 

割り込んだ割には長々と話すワトソン。

アリアと金次もここで初めて聞かされたことなのか黙っているが、回りくどい話に誰かツッコめと目で牽制し合っていた。

 

「だが……日の出の頃から、彼女の容態は悪化している。主な原因は血液不足だ。ボクはここに着くと同時に、ヒルダの血液型を調べた。結果は、B型のクラシーズ・リバー型。人間では170万人に1人しかいない、珍しいものだったよ。その血を保存しているのは世界中でシンガポールの血液センターだけで、取り寄せるのに2日はかかる。そして……ヒルダは、この昼を越せないだろう」

 

そうして話してからワトソンは、チラリと理子に視線を向けたので、わざわざこの場所に来て話をしに来たのか、その意図を理解する。

 

「それ、理子の血液型と同じだよ。自分達と同じ血液型って事もあったから、ブラドは理子を手放したがらなかったんだ」

 

ワトソンにチラ見されてしばらく黙っていた理子は、言うかどうか迷ったのだろうが、結局それを話してしまう。

ブラドは血液型が同じということがあって優秀な遺伝子を持つ人間の中で、理子にこだわっていたのだ。

自分達にもしもの事があった時に血液として利用するために。

 

それを知っていたワトソンが、理子の意思を尊重したいがために自分から言うのを促したようだが、ヒルダを助けたいという言葉は嘘じゃない。

 

「理子、キミの献血を強制はしない。『戦役』に参加して敗北した者は、死ぬか……敵の配下になるのが暗黙のルールだが、ヒルダはそれに従わないかもしれないからね。ちなみにヒルダは一時期、イ・ウーに留学していた。交渉次第では、神崎かなえさんの裁判に出廷させる事もできるだろう」

 

しかし、理子に強制しないと言いつつ、言葉の中に助けた恩は返せと主張する部分があってズルいと思った。

 

「――いいよ。採れば?」

 

そんなことを話していたら、理子もツンツンしながら恩返しじゃないからなと念を押しながらに献血を受け入れる。

素直な優しさを見せないのは実に理子らしい。

理子の合意を得たことで、ワトソンは献血のための機器を運びに一旦退室。

俺はヒルダの傷を治すためにワトソンと交渉し、集中治療室に向かう。

そこにいた人たちに事情を説明し、治してから寮に帰った。

 

 


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