緋弾のアリア〜傭兵からの転生者〜   作:SAMタイム

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第五十一弾 毒

俺とワトソンが階段を駆け上がって行くと、弾丸が飛び交う音が聞こえる。

バンッ!バンッ!と音が聞こえ、階段を登り終えるとヒルダに接近戦を挑む理子の姿が見え、髪にナイフを超能力で持って、服を切り裂いていく。

恐らく魔臓を探すためだろう。

金次とアリアはその光景を見て、様子を伺っていた。

 

俺はその金次のところに駆け寄る。

 

「金次!」

 

「梓!それに、ワトソンも…」

 

「今、どういう状況だ?」

 

「理子が特攻しているが、あいつには10分で死に至る毒が体を回っている。ヒルダは接近戦を苦手としていて優勢ではあるが」

 

「………ーー無礼者!ーー下がれ!」

 

「おっと」

 

ヒルダが小さく電撃を放ち、理子がバックステップをして避けこちらまで後退してくる。

 

「……4世ィ……許さない、許さないわよ……」

 

対してあられもない下着姿のヒルダは、放電したまま憎々しげにこちらを見ながら、槍を抱えて傷を再生させていくが、今はそれが精一杯なのかその場から動かない。

 

「全部見つけたよ、目玉模様――白い肌だから、見つけ難かったけど」

 

その場に倒れ込みながら呟く理子。

俺は駆け寄って理子の手を持つ。

理子を淡い光が包んで、出来るだけヒルダから見えないように理子に言う。

 

「理子、毒はじき無くなる。だが、動くな。毒が無くなっても体は思ったように動かないだろう。後は俺らに任せてそれ(・・)は待ってろ」

 

「分かってる。すまないな、風切」

 

俺はふっ、と笑って膝から抱え上げて、ワトソンのところに連れて行く。

 

「ワトソン、隙が出来るまで介抱していてくれ」

 

「分かった」

 

「それの、その剣貸してくれ」

 

「?ああ、別にいいけど」

 

「……両太もも、右胸の下、それとヘソの下だ。目玉模様は腿と腹に集中してた」

 

「分かった、伝えておく」

 

ワトソンから剣を受け取って、金次たちの元へ走っていく。

そして、理子から聞いた魔臓の位置を伝える。

 

「場所はわかった……だが、どうする。ベレッタには、あと1発しか弾がないぞ」

 

「あと……2発なら、あるわ……!」

 

しかし、現状でどうやらベレッタの銃弾はあと1発しかないようで、アリアもいつもつけてる角のような髪飾りを取って、その底を外し2発の銃弾を取り出しガバメントに装填する。

 

「というか俺がマガジン持ってるぞ」

 

「「………」」

 

何とも言えない顔になった金次とアリア。

……別に俺は誰とも戦ってないし。

 

「あと、理子にも作戦があるみたいだ」

 

「ヒルダに……違和感を感じるんだ。理子に作戦があるなら、それは――今は、使うな。4点同時攻撃で仕留めるぞ。そう理子に言ってくれ」

 

「大丈夫だ。まだ使うなと言ってある」

 

「そうか」

 

ヒステリアモードのキンジは、この状況で何かを感じ取ったらしく、いきなり4点同時攻撃を提案する。

雲行きがどんどん悪くなってきていて、遠くに聞こえていた雷ももうすぐ近くに落ちてきそうだったため、前回のブラド戦で落雷に驚いていたアリアのことを考えると、これ以上話し合ってる時間もなさそうだ。

 

「アリア。同時攻撃をやるにはアリアの力が必要だ。その2丁でヒルダの右胸と下腹部を撃ってくれ。強襲科では急所を撃たないよう訓練されてるが、撃てるな?」

 

「う、うん」

 

「梓はヒルダの右腿を頼む。4発目は――俺が何とかする」

 

「分かった」

 

全員がキンジの作戦に乗ってやることを決めると、翼以外の回復を完了させたヒルダが、ビリビリになったドレスを脱ぎ捨てて体に電気を纏ったまま立ち上がってこちらに歩み寄ってきていたので、アリア、俺、金次は前へと歩み出る。

 

「行くぞ……! 俺が合図したら――撃て!」

 

叫んだ金次と俺は同時に駆け出して、ほぼ同時に前へ出て並走してヒルダに接近。

胸からグロックを抜いて、2人いることで狙いが定まらなかったヒルダは、横凪ぎでまとめて倒そうと槍を振るってくるが、ワトソンから預かった剣で受け止め槍を上に蹴り上げる。

そして、槍を持っている手を切り落とす。

 

「梓!アリア!――撃て!」

 

そのタイミングでヒルダの背後を取っていた金次が叫び、ほとんどタイムラグなしで俺とアリアがヒルダへと発砲。

ヒルダの体から3つの血しぶきが上がったのを認識するのと、キンジがその場でぐるん! と1回転したのが同時で、ほんの一瞬遅れてヒルダの背後から銃弾が撃ち込まれたのがわかった。

……ヒステリアモードはやっぱり動けるな。

 

その攻撃でピタリとその動きを止めたヒルダから離れた俺は、信じられないといった顔でキンジを見たヒルダの体にある目玉模様4つが撃ち抜かれていることを確認。

 

「――――――――……」

 

魔臓を撃ち抜かれたヒルダは、その場でルーマニア語の詩のようなものを呟きながら、その膝を折り、前のめりに倒れてうつ伏せになって沈黙。

……嫌な予感がする。

 

倒れたヒルダを見ながらそう思い、起きた時の顔の位置に風を配置する。

ついでに、レキにも人差し指出して示しておく。

 

「……理子っ……!」

 

そんなアリアの声が聞こえてそちらを見れば、ワトソンのところにいる理子の元へ駆け寄る。

毒は治しているので心配は要らないが、解毒をしているのを二人とも知らない。

 

その時にちょうど近くに落雷があり周囲に稲光が起こるが、理子がその表情を驚きへと変えたのを見て、異変に気付き金次と一緒に背後へと振り返る。そこには……

 

「ほほほっ――ご気分はいかが? 4世さん」

 

三叉槍を手に持って平然と立つヒルダの姿があり、撃ち抜いたはずの魔臓を示す目玉模様の傷も治っていた。

 


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