それからと言うもの、それと言う騒動はない。
ワトソンが金次に嫌がらせをして、グラビア写真を見せられて反撃されていた。
そこには武藤や不知火もいて、男だと思ってるから気兼ねなく話しかけようとしていたのだろう。
……女が男のフリをするのは疲れそうだな。色々と。
変わったことと言えば、金次とアリアの関係が悪化しているように見える。
それがワトソンの狙いだが、金次から離れて行っているような気がする。
男子寮の俺たちの部屋からアリアが出て行ったのもワトソンが言ったことで、アリアは金次に何とか話をしようとしているような気がする。
理子も何かに怯えているような気がする。
ヒルダはブラドの娘だからだろう。
最近はワトソンが話しかけてくるようになった。
主に金次の情報。
それと、男の仕草や態度とか。
……研究熱心なのはいいが疲れると思う。
男子と話すのが苦手なのか少し頰を染めながら聞いてくる辺り、隠す気があるのかと思ってしまう。
さて、
そこに電話がかかって来た。
「もしもし」
『ジャンヌだ。風切で合ってるな?』
「そうだが?何か用か?」
『ああ、少し待ってくれ』
そう言って、誰かと話をして、電話が変わった?
『もしもし、風切梓さんでよろしいですね?』
「ああ、そうだが?」
『私は2年、
「それで?」
『ジャンヌさんにお願いされて、アリアさんとワトソンさんの会話を集音していました。遠山キンジさんは、その途中でどこかへ行ってしまいましたので、キンジさんに一番近しい風切さんにも聞いて欲しいとの、ジャンヌさんからの電話です』
「それでかけて来たのか」
『はい』
「金次はどんな状態だったかジャンヌに聞いてくれ」
俺がそう聞くと、電話から耳を話してジャンヌと中空知が会話をする。
そして、戻って来て
『何の略称かは分かりませんが、HSSと言っていました』
「……そうか。分かった。金次の件はこちらに任せろ。ジャンヌにもそう言ってくれ」
『分かりました』
そう言って電話を切る。
俺は考える。ワトソンとアリアの行動と、金次の行動を。
(ジャンヌが言ってたHSSはヒステリアモードのことだろう。しかし、興奮はしていないのにヒステリアモードになったのはトリガーが違うもので起こったものだ。アリアとワトソンの会話を聞いていたのなら、嫉妬か?この場合は『守る』ヒステリアモードじゃなくて、嫉妬からの強行手段の『奪う』ヒステリアモードっていうところか。それになって出て行ったと言うことはアリアになにかあったという事。この辺で、アリアを連れて行って隠せる場所、それでいて金次をおびき寄せることが出来るところ……か)
思考から戻って、携帯の地図を開く。
ビルは隠せるがおびき寄せることが出来ない。
目立つもので隠せるところ……。
「レキ、この辺である程度大きなものを隠せて、それでいておびき寄せることが出来る場所に心当たりはあるか?」
「東京スカイツリーの建設現場なんてどうでしょう?」
「そこなら二つとも達成出来るか。レキ、今から東京スカイツリー全体を狙撃出来るところに移動してくれ。それで、俺が見えたら携帯を鳴らしてくれ」
「分かりました」
レキにそう指示して、風で飛ぶ。
東京スカイツリーに向けて一直線に進んでいく。
東京スカイツリーに着く直前から
そして東京スカイツリーに雷鳴が轟いた。