L.Watson
と、流麗な筆記体で黒板に書くと、
きゃー、と女子から黄色い歓声が飛ぶ。
……うるせー。耳を抑えたのはこの音量だった。
「エル・ワトソンです。これからよろしくね」
男子にしては高い声で挨拶する。
……こいつにはおかしな点しかない。
恐らく、昨日ヒルダに銃を突きつけていた奴だろう。
金次はため息をついてるし、アリアはわなわなと震えている。
昨日、あいつらに何があったかは知らないが、何やら険悪な雰囲気だ。
……少し、あいつを問い詰めてみるか。
その後は話を聞かずにしらっとワトソンを観察する。
人が集まっているときは少しだけ注意力が散漫になるからな。
金次が女たらしと言うことに反応した。
さらに、顔を真っ赤にしていた。
……隠す気あるのか。
それからは金次につきまとうように行動していた。
そして昼休み。
少し話があると言ってワトソンを屋上に連れ出した。
「なんの用かな?僕をじっと観察していたようだけど」
「いや何、リバティーメイソンのやつがアリアに何の用かなと思ってな」
「僕はアリアの許婚だからね。そばにいる邪魔者を排除しようとしたまでさ」
「ほう?
俺がそう言い放つと、表情が変化したように見えた。
レキと比べれば分かりやすい。
「何を言ってるんだい。僕は男だよ」
「はぁ、それならもう少し隠せよ。さらし外れてるぞ」
「そんなわけない。しっかりと感覚は、あっ」
「単純か。証拠は他にもある。金次が女たらしと聞いて口どもったな。それに、声を少しも偽ろうとしなかったし、わざわざ香水もつけているな、自分の匂いを消すために」
「………」
「後は、肩パットにシークレットシューズ、過剰なまでに固めた装備、まぁ、装備は関係ないか。そして…」
俺は胸元に目掛けて拳を伸ばす。
ワトソンはその拳を払いのけた。
「……何の真似だ?」
「その反応だ」
「……何?」
「男なら胸元に目掛けて拳を伸ばしただけでは払いのけない。俺がナイフや銃を突きつけるなら払いのけるのは当たり前だと思っているがな。ま、俺はこの目でお前の体を見ていたんだがな」
「それはそうだろう。観察するなら目で見る。」
「そう言う意味じゃない。俺の目は相手の体の内部を見ることが出来る。どこが怪我してるとかどんな病気か、とかがな。さて、ここまで証拠があってまだシラを切るか?」
俺が言い切るとワトソンがため息をついた。
「………はぁ、いつから気づいていた?」
「最初から」
「最初から?」
「ああ、昨日、お前がアリアを助けに行った時に、俺はその状況を見ていた。この目でな。その時に気づき、今日お前がここへ来て確信した。金次を見ているときの憤りと、金次が女たらしと知った時の羞恥。その後の反応。諸々含めて断定した」
「そう、だったのか」
「それで?わざわざ『
「そうだよ。アリアは本家の人間から蔑まれている。シャーロックのような推理力が無いせいで。だから僕たちのワトソン家で匿う、と言ってはなんだがな」
「お前はアリアをどう思ってる?推理力が無いからと言って落ちこぼれだと思うか?」
「思わないよ。アリアはアリアだからね」
「俺も思わない。しっかりシャーロックの血を継いでいる。戦闘能力と勘の良さをな。アリアには妹か弟がいるだろ」
「よくわかったね。妹がいるよ」
「そいつは推理力に長けているんだろ?」
「ああ」
「まぁ、この話は置いといて。俺はお前の性別をバラすことはしない。双方、何の得も無いからな。後、金次には気をつけろよ」
「やはり遠山キンジは危険な存在だな」
「お前にとってのは」
「………何故?」
「あいつは体質のせいで、女たらしと言われている。それはあいつが女を苦手としているのにも関係しているが。後はラッキースケベだからふとした時にお前が女だとバレる危険性がある。だから、お前の性別を隠して金次を追い払う時は気をつけろ。そう言う意味だ」
「……わざわざアドバイスか?まぁ、礼は言っておく。そろそろ昼休みも終わるだろうから教室に戻ろう」
「ああ、何か困ったことがあれば相談してくれ」
「ああ」
そんな会話をして教室に戻った。
教室に戻ると、わざわざ女子が文句を言いに来たので、風を配置して無視してやった。