緋弾のアリア〜傭兵からの転生者〜   作:SAMタイム

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第四十三弾 無風結界

「愚かな武偵娘には、おしおきよ」

 

撃たれても平然としていたヒルダは、笑いながらその口を開いて、鋭く伸びる2本のキバを見せてアリアの首に突き立てた。

 

悲痛で声にならない声を上げるアリアの顔のすぐ脇を、ヒルダめがけてジャンヌがデュランダルを突くが、ヒルダはアリアから離したキバでデュランダルを受け流して距離を取った。

その距離を取ったところに俺が風を撃ち込む。

その風はヒルダを貫くが、やっぱり効かず下がっていった。

 

「嬉しい誤算だわ。私は第1態プリモのまま、もう『殻を外せる』なんて。おほほっ……おーっほっほほほほほっ! Fii Bucuros! Fii Fericit!(素晴らしいわ! 素敵だわ!)ほほほほほ!」

 

そんなヒルダの高笑いに苛立ちを覚えつつ、アリアの様子を伺うと、死ぬようなダメージではなかったようだが、がくっと片膝をついてしまっていた。

 

「毒――か!?」

 

「……マズいぞ、遠山の。毒よりマズい事になりそうじゃ」

 

そんなアリアの様子に金次が毒かと予測するが、その足元に転がっていた手毬状態の玉藻がそれを否定。

その疑問は、次に起こったアリアの変化で解けることとなった。

何やら苦しそうにし出したアリアの体から、緋色の光が漏れ始めたのだ。

それに伴って俺の目が熱くなってくる。

 

「ヒルダめ。お主、『殻金七星(カラガネシチセイ)』破りまで識っておったか」

 

「光栄に思いなさい。史上初よ。殻分裂(かくぶんれつ)を人類が目にするのは――」

 

そうやって玉藻はヒルダと話をしてから、手毬の状態からさっきの子供の姿へと戻り巫女や神主が持つ御幣を持って構え、シスターメーヤにも何やら『戻せ』と指示をした。

……なんとなく嫌な予感がする。

 

そのすぐあと、アリアの体から緋色の光がいくつか散り散りに飛び、そのうちの2つほどを出た先から玉藻とメーヤ、ジャンヌが打ち合わせたように御幣や剣で受け止めて押し戻しアリアの体に戻した。

 

しかし飛び散った残り5つの光は、ヒルダ、カツェ、ハビ、諸葛、パトラ。眷属に属した面々の手に渡ってしまった。

光は収まるとどうやら小さな宝石のような固体になったようで、それが何なのかはわからないが、玉藻の慌てようがひどい。やはり何か不味いのだろう。

 

「おい!ウルスの従者!誰のでもいい!取り替えしてくるのじゃ!」

 

……だから従者じゃねえよ。

取り返す、か。

なら、

 

「ジャンヌ!玉藻?だったか。どれだけでもいい俺に超能力をぶつけろ!」

 

俺は風を集め始める。

ジャンヌはこちらの意図に気づいたのか、剣をこちらに向けてくる。

 

「受け取れ!風切!」

 

そして、俺に氷の塊をぶつけてくる。

俺はその氷を分解。

自分の力に変えて、半径1kmを風で覆う。

すると、ここらへんの風がなくなっていく。

 

「無風結界 アストラルメイガース」

 

自分の力に加え、相手の力を利用して風を作る。

その風はすごい圧力になって、逃げられない、

……と思うのだが、

 

「ちっ!遅かったか」

 

既にヒルダやカツェなどはいなかった。

俺は手を上げて風を解除する。

 

「悪いな、止めれなかった」

 

「よい、儂もあわよくば、くらいにしか期待しておらんかったからの」

 

そう言って慰めてくれたような気がした。

未だ俺の目は熱く、ほのかに赤く光ってるような気がする。

……何か出来るかもしれない。

そう思って、アリアの手を取る。

 

シャーロックとの戦いで見ていた、アリアの胸のあたりに意識を持っていく。

「緋弾」の埋まっている辺り。

そこで、埋まっている銃弾を見つけ、力を流し込んでいく。

と言っても感覚的に、だが。

少しずつ、覆っていく。

 

一周回って、俺は力を解いた。

 

「ふう、これで多少はマシか」

 

「お主、今何をした?」

 

「ん?」

 

俺が立ち上がって汗を拭っていると、玉藻が聞いてきた。

 

「何って、『緋弾』の周りを白銀の銃弾(プラチナブレッド)で覆っただけだが?」

 

「……は?」

 

「とりあえず、場所を変えよう」

 

ということで金次と俺の部屋に移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 


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