「では始めようか。各地の機関・結社・組織の大使達よ。宣戦会議――イ・ウー崩壊後、求めるものを巡り、戦い、奪い合う我々の世が――
そんなジャンヌの声に気配がピリッとした。
「まずはイ・ウー・
ほう、これが金次がシャーロックから聞いた「これから」か。
恐らくここにいる奴らは闇の組織や表舞台に立たない集まりの代表という事か。
「ーー皆さん。あの戦乱の時代に戻らない道はないのですか」
俺がこの集まりの目的に気づいたころに、先ほどのブロンド髪のシスターが口を開いた。
「バチカンはイ・ウーを必要悪として許容しておりました。高い戦力を有するイ・ウーがどの組織と同盟するか最後まで沈黙を守り続けた事で、誰もが『イ・ウーの加勢を得た敵』を恐れてお互い手出しができず……結果として、長きに渡る休戦を実現できたのです。その尊い平和を、保ちたいとは思いませんか。私はバチカンが戦乱を望まぬことを伝えに、今夜、ここへ参ったのです。平和の体験に学び、皆さんの英知を以て和平を成し、無益な争いを避ける事は――」
「――できるワケねェだろ、メーヤ。この偽善者が」
とメーヤと呼ばれたシスターのそんな言葉に割り込みをかけたのは、黒のローブにトンガリ帽子の右目に眼帯をしたおかっぱ頭の見るからに魔女な少女だった。
……変な奴だな。
「おめェら、ちっとも休戦してなかったろーが。デュッセルドルフじゃアタシの使い魔を襲いやがったくせに。平和だァ? どの口がほざきやがる」
「黙りなさいカツェ=グラッセ。汚らわしい不快害虫。お前たち魔性の者共は別です。存在そのものが地上の害悪。殲滅し、絶滅させることに何の躊躇いもありません。生存させておく理由が
カツェ=グラッセと呼んだ魔女の反論に、急に人が変わったようになったメーヤは、物凄い剣幕で言い寄って、カツェのその首を絞めた。
……本当にシスターか?
「ぎゃははは! おゥよ戦争だ! 待ちに待ったお前らバチカンとの戦争だぜー! こんな絶好のチャンス、逃せるかってんだ! なぁヒルダ!」
「そうねぇ。私も戦争、大好きよ。いい血が飲み放題になるし」
「ヒルダ……1度首を落としてやったのに、あなたもしぶとい女ですね」
「ーー首を落としたぐらいで
敵意むき出しのメーヤに対して、ほほほっ、と指を口にあてがい笑いながらに語るヒルダ。
ドラキュリアという事はこいつもブラドと同じで吸血鬼か。
よく見るとブラドにあったような模様が見える。
「和平、と仰いましたが――メーヤさん?」
ヒルダに続いて声を発したのは、藍幇の大使のメガネ男。
男はこの場の空気などものともしない笑顔で淡々と語り出す。
「それは、非現実的というものでしょう。元々我々には
そう話す藍幇の大使は、横に腰掛けていたレキを見るが、レキは動かない。
「――私も、できれば戦いたくはない」
そんな思い思いの言葉を聞いたジャンヌが、また一同を見回しつつ話を進める。
「しかし、いつかこの時が来る事は前から分かっていた事だ。シャーロックの
ジャンヌの言葉により、皆がその運命を受け入れたような表情を浮かべると、話はいよいよ本題へ。
先ほどの言い争いは前戯だったようだ。
……でも実際仲悪そうだな。