「よう、金次。待たせたな」
新幹線の上に降り立ってそう言った。
風を操って抵抗をなくす。
「梓!来てくれたか!」
「おう。またやられそうになってたな」
俺が少しからかってやると顔が真っ赤になった。
「なっ!今はいいだろう!」
「隙ありネ!」
ココがシャボン玉を作って飛ばしてくる。
俺は風の壁を作って防ぐと爆発する。
「へぇ、今の爆弾だったのか。まあいい。金次、レキお前らは電車の中で出来ることをしてろ」
「私も残ります」
「分かった」
「梓、俺も残るぞ」
「ダメだ。ここに3人も要らない。それよりもこの新幹線が加速している原因を止めろ」
「……分かった」
金次の返事を聞き、俺は鞘から剣を抜き2人目のココの銃弾を切る。
「レキ、狙撃のやつは任せた」
「はい」
そう言って俺はホルスターからグロックを抜き、撃つ。
1人目のココが銃弾を剣で受け、3人目のココが迫ってくる。
俺は剣を前に向け弓を射るように構え、撃つ。
銃弾が燃え上がって、ココたちに迫る。
急に弾が燃え上がったのに驚いたのか、剣で受けようとするのが遅かった。
その弾は1人目のココの肩を掠め、ココの肩が焦げる。
「熱っ!」
俺はそこから走って行き、1人目のココに剣を振るう。
ココは剣で受けたところに、俺は剣を離し落ちる剣をグロックで撃つ。剣はくるっと回ってココの顔を擦り、その剣を避けようとしたココの腹を蹴る。
1人目のココが下がって、3人目のココが頚椎を狙って手刀を放ってくるのを手を受け止め腹を殴り、掌底で顎を打つ。そしてしゃがみながら足を払い、倒れたところを風で拘束する。
そこで2人目のココがこちらを撃って来た。
その弾は『
そして1人目のココが振るってきた剣を受け流し、そのまま首を柄で殴って気絶させ、剣を鞘に、グロックをホルスターに戻して2人目のココにヘカートを向けるが、既にレキが倒していた。
俺はふうっと息を吐き、ヘカートを戻す。
「レキ、怪我はないか?」
「大丈夫です」
ココ達を回収し、新幹線内に入る。
そこには一般人もいた。
「金次、ココは倒した」
「おう、爆弾の解除はまだか!?平賀さん!」
「もう少しなのだ!」
トイレの中に何かもポンプみたいなものを入れている。
そこに、武藤が来た。
「金次!もう間に合わねえぞ!」
「平賀さん!」
「もう、少し!」
なにやら頑張っている。
俺は新幹線の継ぎ目まで行って金次に声をかける。
「新幹線を止めればいいのか?」
「そうだ!でもこの爆弾はスピードが落ちると爆発するようになっている!」
「なら、解除し終えたら叫べ」
俺はそれだけ言い残し新幹線の上に出る。
新幹線の上を走りに走って新幹線の先頭まで行く。
「梓ぁ!!」
金次の声が聞こえた。
俺は新幹線から飛び降りて、新幹線の前に出る。
そして、風を纏い、前方に集中させて受け止める。
「はぁぁぁぁ!」
俺は全身から力を入れて全力で止める。
しかし、新幹線の勢いが強く、押されていく。
もう少しで東京駅に激突するところで、止まった。
「ふう、止まったか」
「梓!大丈夫か!?」
金次が叫んできたので大丈夫の意味を込めて手を挙げる。
東京駅の新幹線のホームは前もって人払いされていたのか、無人だった。
爆発した際の盾にするつもりだったのか、駅には無人の山手線、京浜東北線、中央本線、東海道本線の列車が密集して止められている。
あややは爆弾の詰まったボンベを抱えながら出てくる。
「東京ぅ〜、東京ぅ〜、お降りのお客様はお忘れ物のないようお気をつけ下さいっ、と」
最後に調子っ外れなアナウンスをしながらココ2人をズルズル引きずって出てきた。
×型に重ねられてホームに転がされたココ姉妹は、近づいたら噛みつきそうな表情でこちらを睨んでいる。
アリアはココの袖の中からーーナイフや煙幕缶など、次々と武器や道具を取り出している。
そこで、しぼんだゴム風船みたいなものが出てきた。
(あれは……)
何となく嫌な予感がしたのでグロックとベレッタを抜く。
すると、先ほどのゴム風船が人型に膨らんでいく。
「まずい!」
俺はそのゴム風船を撃ち、風を感じたのでその方に銃を向ける。
しかし、3人目のココがこちらにM700を向けている。
「ーー妹たち、撤退ヨ。一旦、香港に戻るネ」
ドラグノフを持ち上げようとしたレキに、
「レキ動くだめネ!」
ココが叫ぶ。
レキは俺が狙われていることに気づき、銃を構えない。
アリアもココ姉妹にしがみつかれている。
「風、レキをよく躾けた。人間の心、失わせてる。これらの戦いでよぉーく分かたヨ。お前、使えない女ネ。だからもう、お前、いらない」
「……」
「レキーーお前、まだ弾を持ってるハズね。それで死ね。今、ここで」
「させねえよ」
俺が口を開く。
「レキが心を失ってるだ?ふざけたこと言ってんじゃねえよ。レキは最初から人間だ。他の人より感情が少ないだけの、ただの女の子だ。お前がレキを語るなよ。このアリアもどきが」
「いいんです」
レキが口を挟む。
「ココ、私が死ねば梓さんを狙わないと約束出来ますか?」
「バカにする良くないネ。ココは誇り高き魏の姫ヨ」
「ーー誓いを破れば、ウルスの46女全員であなたを滅ぼす。かつて世界を席巻した総身を以って、あなたの命を確実に奪う。分かりましたね」
背を伸ばしたレキが、銃口を自らの顎の下につける。
「よせ……レキ!」
「梓さん。ウルスの女は銃弾に等しい。しかし私は……失敗作の、不発弾だったようです。不発弾は、無意味な鉄くずなのです。梓さん、あなたは自分を信じろと言ってくれましたが、私はあなたを守るためにーー私自身を撃ちます」
「……よせ……!」
「梓さん、ありがとうございました」
レキが自分を撃とうとした、その時、前世から今までの記憶が走馬灯のように蘇った。
(俺は、また守れないのか……。あの時のように、あいつらのように……。………ふざけんなよ、俺のために言ってくれたあいつらの想いを、自分が好きになった女を。戦い死んでいった仲間。その中にいた親友、あいつらの想いを絶対に守る!)
俺は銃を離し指を手前に引く。
風を使い、思いっきりぶつける。
そして、レキが引き金を引いた。
「………えっ?」
しかし、その弾はレキには当たらず、
「ゴホッ!」
俺に当たった。
実際、手で風を使うのではなく、指で操ったから逸らすのがずれた。
そして、俺は地面を踏みつけて風を起こす。
その風を尖るように集めて放つ。
「きゃ!」
「うぐっ!」
持っていたココの手のM700を吹き飛ばす。
俺は風を纏い、跳躍してココの首元に蹴りを放った。
「がはっ!」
その蹴りを地面に叩きつけてココは倒れた。
俺は血を吐く。
銃弾が通ったのは心臓の少し上。
それだけでも奇跡だった。
「梓、さん」
俺の状況を見てレキが呟く。
俺はレキの近くまで行き、倒れそうになるのをレキに支えてもらう。
「……何故、何故そんな無茶を……」
「言った、ろ?お前を、守るって、それが、自分を穿つ、銃弾だとしても、レキを、傷つけるのは、許さない」
俺はレキの頭に手を乗せる。
その時、レキに笑顔が浮かび、笑いながら涙を流した。