第三十弾 ココ
金次からシャーロックとの戦いの後の話を聞いた次の日。
俺は退院して男子寮に戻っていた。
今は歩くのも痛いので車椅子で、激しい運動は禁止、あと2日に一回は輸血しに来いという事だった。
あと、シャーロックからなすりつけられたこの女神の瞳ってのが少し分かって来た。
この目は、あの力は自分を治せない。
どういう原理で相手を治してるかも分からない。
後は、相手の脈が分かったり、相手のどこが怪我してるとかどこかが悪いとかが見える。
今気づいていることと言えばそのくらい。
男子寮に帰ってきて、まず思ったのが部屋にコンビニ弁当の食べ跡が残っていたりコップが洗わずに放置してあったりした。
「ひどいな……あいつら。せめて片付けろよ」
そう言って台所を片付ける。
届かないところはレキにとって貰っている。
レキに学校へ行かないのかと聞くと、自分のせいで怪我をしたから看病する、だそうだ。
現在、レキに車椅子を押して貰っている。
風を使ってもいいがこんな所で意地を張っても仕方ない。
まぁ、階段では使ったけど。
というわけで部屋も片付け、とりあえず冷蔵庫にあるものだけで料理を作る。
まぁ、亜里沙に変わってするのだが。
その晩、金次が中学生に負けたと言っていた。
そいつは「ココ」と名乗ったらしい。
アリアみたいなツインテールだったそうだ。
それで「裸絞め」をされて負けたらしい。
その話を聞いた後、風呂には入らないのでタオルで身体を拭く。背中はレキが拭いてくれた。
金次とアリアが冷めた目で見てくるが無視する。
その夜、着替えて寝ようとしているとレキがベットの上に乗ってくる。
「……何で乗ってくる?」
「いけませんか?」
「……別にいいけど」
そう返して布団を被る。
レキは布団の中に入って来て手に抱きついた。
俺はその少し柔らかい感触を振り切るように眠りについた。
次の日。
レキに車椅子を押して貰いながら、学校に行く。
学校に行くと周りの目がキツかった。
まぁ、眼の色変わってるし、車椅子だし、あのロボットレキに車椅子を押して貰っている、そういうのもあってそのような見方になっている。
普通に授業を受け、体育は見学。
そう言えばもうそろそろ
五、六時間の実習は
そして、少しスナイプの練習をして授業が終わる。
放課後にあややのところに行って友人の剣の持つところを改造してもらうことにして、依頼し、出て行く。
武偵高を出ようとすると、
「きひっ」
そんな笑い声が聞こえて、誰かが降ってくる。
その少女はアリアのようなツインテールをしていて着物を着ていた。
「なんか用か?」
「
「お前なんかに名乗る義理はない。それと、お前、なんか酒臭いぞ。ガキがそんなもの飲むな」
俺はココが持っていた瓢箪を指して注意すると、ココは目を見開いた。
「ーーーガキ違うネ!ココは昨日で14歳ネ!」
「ガキじゃねえか」
「しょがないネ、ちょとお試しするヨ。ウルスの姫離れるネ」
酒に酔っているのか訳の分からないことを言ってくる。
ココがそう言うとレキはココにドラグノフを突きつける。
俺はレキの銃を手で降ろし、
「大丈夫だ、レキ。こんなやつに負けはしない。例え怪我人だとしてもな」
目で一瞥するとレキはコクンと頷き離れる。
俺は車椅子をゆっくり立ち、ココを見据える。
ココはふら、ふらり……千鳥足で倒れるような動作に側転を繋げながら、ぱっといきなり、飛びかかってきた。
そして身体をヘビのように這って、俺の背中にへばりつく。
そして、俺の首に左右からロープ、じゃなくてツインテールを巻きつけてくる。
「きひっ!」
耳元で笑ったココは、更に俺の首に両腕を絡ませてくる。
金次がやられたのはこれのことだろう。
「きひっ、チビと思って舐めすぎネ。ほれ、何も出来ないカ?何も出来ない男は、いらない男ネ。殺すヨ」
「誰を殺すって?」
俺は絡ませてきた腕を風を使って緩め、思いっきりアイアンクローをしてやる。
そして、俺が力を強めると段々首に左右から巻かれたツインテールが取れて行く。
「い、痛いネ!」
「ほらよ」
そのまま、アイアンクローをした手で地面に叩きつけた。
「がはっ!」
俺は手をはたき、車椅子に座る。
「残念だったな、ココ。俺には絞め技は効かないんだ。じゃあな。行くぞレキ」
「はい」
そうココを見ながら言ってその場を離れて行った。