「知らない天井、ではないなもう」
俺は天井を見上げて言った。
見上げたと言っても寝転がっているからだが。
「梓さん起きられましたか」
「レキ、か」
横を見るとレキが座っていた。
心なしか元気がないように見える。
「あれからどのくらい経った?」
「3日と20時間過ぎました」
「そうか」
恐らく、シャーロックとの戦闘後、直ぐに運ばれて来たのだろう。その間、見舞いが少し来たようだ。
レキをよく見てみると、目の下にクマが出来ていた。
「レキ、今日はもう寝ろ。寮に帰るなら亜里沙になって送るが?」
「いえ、ここで良いです。既に医者から許可を得ています」
「そうか。椅子で寝るのは身体に悪いし、今日はベットの上で寝ても良い。しっかり風は張るから安心しろ」
「………分かりました」
そう言っていそいそとベットの上に乗って布団の下か入ってくる。
その数秒後寝息が聞こえて来た。
目の下にクマが出来ていたし相当疲れていたのだろう。
俺も直ぐに眠気が襲って来たので一度、レキの頭を撫でて寝た。
次の日。
いつも武偵高に行く時間に起きた。
レキはまだ寝ていて、俺の病院服を掴んで寝ている。
俺がその光景を微笑ましく見ていると、扉がガラッと開いた。
「失礼し……ました」
金次とアリアが入ってこようとして、俺のベットにレキが寝ているのを見たのかすぐに扉を閉めた。
俺はため息をつき、風で携帯を取ってメールする。
『昨日の夜中に目を覚ました。その時にレキがいて目の下にクマが出来ていたから、寝させた。お前が勘違いしていることは何もない。というか何か用があったんじゃないのか?』
そうメールを送ると、少しして金次たちが入って来た。
俺はレキの耳に届かないように風を操作する。
「よう、金次。4日ぶりだな」
「おう、梓。目を覚ましてよかったぜ」
「そうよ。生きてるのがおかしいって医者にも言われてたんだから」
「大量出血で死にそうだったからな。金次、その手は?」
「ああ、シャーロックに一発かましてやろうとした時の怪我だ。お前よりマシだ」
「ちょっとこっち来て包帯を取れ」
「は?何でだ?」
「いいから」
金次は渋々と言った感じで包帯を取って手を出してくる。
俺はその手を取って力を使う。
金次の手が淡く白く光って傷が治った。
「済まないな。傷跡が残った」
「いや、ありがとう。凄いな、その力」
「この力をある時に死んだってことが無ければそうかもな」
それからはシャーロックの話だった。
シャーロックは消えたそうだ。
元々、あの日までと言っていたんだからな。
シャーロック曰く、あの戦いは『
「シャーロックが言ってたがこれからは色々起こるそうだ。イ・ウーがいたから他の奴らが手を出せなかったと。
そのイ・ウーが消滅して、リーダーのシャーロックもいない。これから、色金を持っているアリアや梓が狙われる事になるだろうってよ」
「そうか。ま、アリアにはお前がいるもんな?正義の味方さん?」
「よせよ。俺は武偵をやめるんだぞ」
「お前の兄が生きていて、アリアの力になるって言ってたのに、か?」
「……そうだよ」
「ま、お前が決めたのならいいさ。だが、武偵をやめてもアリアの味方ではいてやれよ?」
「分かってる」
「それじゃ、授業が始まるから俺たちは行く。ゆっくりと休めよ」
「おう」
「そうだ、シャーロックからこれを」
「これは」
金次から渡されたのは俺の身体ぐらいある剣。
それには見覚えがあった。
「シャーロック曰く、お前の大事な剣なんだってな」
「ああ、これは赤霧で戦場に出ていた時に、死んだ友人から貰ったものだ」
「これは梓に渡しておくぞ」
「ああ、ありがとう」
「それじゃ梓、お大事に」
「おう、アリアも頑張れよ」
そう言って金次たちが出て行く。
俺はその間、未だ寝ているレキの頭を撫で続けた。
その後は、警察や公安の人たちが来て、根掘り葉堀り聞かれたり、シャーロックやイ・ウーについて黙っておくように言われた。