緋弾のアリア〜傭兵からの転生者〜   作:SAMタイム

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第二十一弾 気配

そして、作戦最終日。

私は普通にしている。

全員が全員何処かへ行けば怪しまれる。

アリアが誘い出すとはいえ、時間がかかれば危険になる。

そこで少しサポートするのが私の仕事だ。

まぁ、実際トランシーバーも何もないからどうなってるのか分からないけど。

 

そこへ理子から電話がかかってきた。

 

「はい?」

 

『やばい!小夜鳴が戻ってくる!如何にか出来ない!?』

 

んーと私は考える。

ピコンっと考えついて、

 

「アリアに静電気って言っといて」

 

『へ?あ、うん。わかっ、ってそれで大丈夫なの!?』

 

「大丈夫だよ」

 

そう言って私は電話を切る。

そして、扉の向けて側に風の壁を設置した。

それから壁の前に立って外の声を聞く。

 

「痛っ!」

 

「大丈夫ですか?」

 

そうアリアと小夜鳴の声が聞こえる。

 

「もしかして静電気ですか?」

 

「ははっ、この時期にですか?ま、可能性はありますね」

 

その会話が終わった瞬間に風の壁を解除。

すぐさま、扉を開ける。

 

「痛っ!」

 

「す、すみません!大丈夫ですか!?」

 

「ああ、大丈夫ですよ大丈夫」

 

「すみません。雨が降って来ましたのでお呼びしようと思ったのですが、それが裏目に出てしまいましたね。すみません、絆創膏取って来ます。少し待っていてください」

 

「はい」

 

その返事を聞いて、少し小走りする。

私は小さく溜息をつきながら走って行って、救急箱を取って戻った。

 

 

 

 

 

「二週間、ありがとうございました」

 

こうして作戦も成功してこの潜入が終わった。

 

「いえいえ、私も助かりました」

 

「すみません。最後の最後にミスしてしまって」

 

「大丈夫ですよ。それでは」

 

「「「ありがとうございました」」」

 

そう言って、理子との待ち合わせ場所である横浜ランドマークタワーに急いだ。

 

 

 

高度296メートル。

日本一高い超高層ビルである横浜ランドマークタワー。

俺達は取り返した十字架の受け渡しのために、理子が指定したこのビルの屋上に来ていた。

 

「キーくぅーん!」

 

 そんな俺達の元に理子がとててててっと改造制服をなびかせながら近寄ってきて金次に抱きつく。

 

「やっぱりキーくんとアリアは名コンビだよ! 理子にできないことを平然とやってのける!そこにシビれる憧れるゥ!……あれ?亜里沙は?」

 

「ああ、済んだから帰ったよ。『疲れた』だってさ」

 

「そうなんだ」

 

「キンジ。さっさと十字架をあげちゃって。なんかソイツが上機嫌だとムカつくわ」

 

「おーおーアリアんや。キーくんを取られてジェラシーですね? 分かります」

 

「ちがうわよぎぃー!」

 

喚くアリアを横目に金次はポケットから十字架を取り出し理子に見せる。

 

「これだろお望みの物は。やるから離れろ」

 

渡された理子はそれを素早く首につけていた細いチェーンに繋ぐ。

 

「乙! 乙! らん・らん・るー!」

 

そして子供のように飛んだり跳ねたりして喜びを表現する理子。

それにはアリアがますます不機嫌になる。

 

「理子。喜ぶのはそのくらいにして、約束は――ちゃんと守るのよ?」

 

「アリアはほんっと、理子のこと分かってなぁーい。ねぇ、キーくぅーん」

 

苛立つアリアにそう言った理子は、怪しく笑いながら金次を手招きした。

 

「お礼はちゃんとあげちゃう。はい、プレゼントのリボンを解いてください」

 

言われて金次が理子の頭に結ばれていたリボンを解くと、理子は怪しく笑ってから金次に不意打ちのキスをしたのだった。

ヒステリアモードにしたかったのか?

 

「り……りりりりり理子おッ!? な、なな、ななな何やってんのよいきなり!」

 

それを見たアリアが動揺しながらそう叫ぶと、理子は何も言わずにふわっと移動して、階下へ続く扉の前に立ちふさがった。

 

「ごめんねぇーキーくぅーん。キーくんがさっき言った通り、理子、悪い子なのぉ――。この十字架さえ戻ってくれば、理子的には、もう欲しいカードは揃っちゃったんだぁ」

 

「もう1度言おう――『悪い子だ、理子』。約束は全部ウソだった、って事だね。だけど……俺は理子を許すよ。女性のウソは、罪にならないものだからね」

 

この感じ……ヒステリアモードだな。

まぁ、あんなに近づいたらなるよな。

 

「とはいえ――俺のご主人様は、理子を許してくれないんじゃないかな?」

 

「ま、まぁ……こうなるかもって、ちょっとそんなカンはしてたけどね! 念のため防弾制服を着ておいて正解だったわ。キンジ、闘るわよ。合わせなさい。梓も」

 

俺関係ないんだが。

 

「くふふっ。そう。それでいいんだよアリア。理子のシナリオにムダはないの。アリアとキーくんを使って十字架を取り戻して、そのまま2人を斃す。キーくんも頑張ってね? せっかく理子が、初めてのキスを使ってまでお膳立てしてあげたんだから」

 

理子はスカートの中から、ワルサーP99を2丁抜き放った。

 

「先に抜いてあげるよ」

 

「へぇ、気が利くじゃない。これで正当防衛になるわ」

 

 それを聞いたアリアも理子と同じく漆黒と白銀のガバメントを抜き放ち構えた。

 

「風穴あける前に――1個だけ教えなさいよ、理子。なんでそんなモノが欲しかったの。何となく分かるけど……ママの形見、ってだけの理由じゃあないわよね?」

 

「――アリア。『繁殖用牝犬』って呼ばれたこと、ある?」

 

「繁殖用牝犬……?」

 

「腐った肉と泥水しか与えられないで、狭い檻で暮らしたことある? ほらぁ。よく犬の悪質ブリーダーが、人気の犬種を殖やしたいからって――檻に押し込めて虐待してるってニュースがあるじゃん。あれだよ、あれ。あれの人間版。想像してみなよ」

 

「何よ、何の話……?」

 

 そして理子は突然感情を爆発させたかのような表情をしてみせた。

 

「ふざけんなっ! あたしはただの遺伝子かよ! あたしは数字の『4』かよ! 違う! ちがうちがうちがう! あたしは理子だ! 峰・『理子』・リュパン4世だっ! 『5世』を産むための機械なんかじゃない!」

 

「だから?」

 

理子が『個』を主張している時に俺は割り込んだ。

 

「……何?」

 

「繁殖用牝犬だったからどうした?まだ、子を産める可能性があるだけマシじゃないか?」

 

「お前!私の苦しみも知らないくせに!「知ってるよ」

……何?」

 

「知ってるんだよ。それより下の苦しみを。俺は奴隷だったから」

 

「……!」

 

「腐った肉も泥水すら与えられない。それがどんなキツさが知ってるか?偶にくれたと思ったら、戦死した友人だぞ(・・・・・・・・)?発狂して精神が壊れた友人はたくさんいる。お前は考えられるか?自分の親しい友人、もしくはお前の大切な両親を食べないといけないとしたら。そう考えるとそうやって与えられるだけ救われものだ。と言うかジャンヌに聞かなかったか?俺の正体。ま、ジャンヌが信じてるかは知らないが。さ、話の続きをどうぞ」

 

そうやって空気を読まず続きを促す。

理子はどうするか迷っていたが、とりあえず話を続けることにしたようだ。

 

「……『なんでそんなモノが』って訊いたよね、アリア。この十字架はただの十字架じゃないんだよ」

 

「これはお母さまが、理子が大好きだったお母さまが、『これは、リュパン家の全財産を引き替えにしても釣り合う宝物なのよ』って、ご生前に下さった――一族の秘宝なんだよ。だから理子は檻に閉じ込められてた頃も、これだけは絶対に取られないように……ずっと口の中に隠し続けてきた。そして――」

 

 そこまで言った理子は、ツーサイドアップの髪のテールをわささっ、と自在に動かしてみせる。

 

「ある夜、理子は気づいた。この十字架……いや、この金属は、理子に『この力』をくれる。それで檻から逃げ出せたんだよ。この力で……!」

 

そして理子はその髪で背の襟に隠していた2本のナイフを器用に持ち構えた。

その様はさながら4刀流。言うならアリアと同じ双剣双銃だな。

でも、3人とも気付いてないな。この場に『別の気配が近付いてる』ことに。

そう言うことに敏感な俺だから感じていることだけど。

 

「さぁ……決着をつけよう、オルメス。お前を斃して、理子は今日、曾お爺さまを超える。それを証明して、自由になるんだ……! オルメス、遠山キンジ――お前たちは、あたしの踏み台になれ!」

 

理子が叫んだ瞬間。

バチッッッッッッッ――!!

小さな雷鳴のような音が上がり、突然理子が強張った顔をして振り返り力なく膝をついた。

 その後ろにいた人物は……

 

「小夜鳴先生――!?」

 

アリアが言ったとおり、館の管理人、小夜鳴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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