緋弾のアリア〜傭兵からの転生者〜   作:SAMタイム

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第十七弾 潜入

理子に泥棒を一緒にやろうと言われて次の日。

医者に今日は念のため学校には行くなと言われ、

寮にいた。

レキは俺のところに居ようとしたが、強制的に行かせた。

 

「私はあなたのものですから」

 

とか言って居ようとしたが、なら俺の言うことに従え、と言ったら渋々と言った感じで学校に行った。

今日の俺は昨日より痛みは引いて楽になった。

 

 

 

今俺とアリアとキンジは、理子に指定されて、秋葉原に来ている。

アリアと金次が帰って来てからここへ来た。

 

「理子の奴、何でこんな所を指定したんだよ……」

 

「何ボヤいてるのよキンジ、さっさと行くわよ」

 

キンジが不満顔で辺りを見回し、それをアリアが咎とがめる。

とはいえアリアも初めて秋葉原を訪れたせいか、キョロキョロと辺りを見回しているため、あまり説得力がない。

 

 

 

「――っと、ここだな」

 

しばらくして、理子が指定した店に到着した。

すると突然キンジとアリアが、まるで犯罪組織のアジトに突入するかのように扉の脇に移動する。

 

がちゃ。

緊張の面持ちで扉を開け、中に突入し――

 

「「「ご主人様、お嬢様、お帰りなさいませー!」」」

 

中にいる、ヒラヒラとした衣類を身に纏まとっている美女・美少女に丁重に挨拶されて驚く二人だった。

俺は呆気に取られていた。

 

 

 

 

――メイド喫茶。

俺は何かは分からないが取り敢えず喫茶店なんだろう。

 

アリアとキンジの顔が引きつりながら、近くにいたメイドさんに峰理子という少女と待ち合わせしている旨を伝えると、店の奥の個室に案内された。

 

「……じ、実家と同じ挨拶だわ……まさか、日本で聞くとは思わなかった……」

 

アリアは先程の挨拶にまだ引いていた。

一方のキンジはというと……ああ、既に帰りたそうな表情をしていた。ヒステリアモード持ちなら猛毒に近い場所だからだろう。とか言う俺も早く帰りたい。

 

「……な、何よあの胸、じゃなくて衣装っ!いくら給料が良くても、あれはないわ。イギリスならともかく、日本で着るなんて場違い。恥っずかしい。なんて店なの。アタシだったら絶対着ない。絶対絶対、あんなもの着ないっ!」

 

アリアがメイドを指さしながらそう言った。

アリアが指している指の方向を見てみると、少々どころかやたらと胸を強調した衣装を着ているメイドさんがいた。

………頑張れ。

 

「理子さまお帰りなさいませ!」

「きゃあーおひさしぶりー!」

「理子さまがデザインされた新しい制服、お客様に大好評なんですよー!」

 

しばらくして、枝毛を探していたアリアと水ばかり飲んでいるキンジ、ぼーっとしていた俺達の耳に、玄関付近にいたメイド?と呼ばれていた人達の歓声が聞こえてきた。

内容的に、理子が来たのだろう。

 

「ごっめぇーんチコクしちゃったー!急ぐぞブゥーン!」

 

いつもの制服に、首もとに鈴を増設した理子が、飛行機の物真似をしながら走ってくる。その両腕には、恐らくゲームやフィギュアといった物がパンパンになった紙袋を提げていた。

 

「んと、理子はいつものパフェとイチゴオレ!根暗なほうにはマリアージュ・フレールの花摘(はなづみ)ダージリン。女の子っぽい人にはエスプレッソ・リスレットのブラック。そこのピンクいのにはももまんでも投げつけといて!」

 

席にポスン、と座った理子は、メニュー表を見ることすらなくスラスラと勝手に注文した。

……なるほどな。今の言い方から察するに秋葉原に慣れている。理子にとっては、ここはホームグラウンド。ここで話をすることによって、慣れていない俺達への会話権のアドバンテージを取るってことか。

 

 

 

「――まさか、リュパン家の人間と同じテーブルにつくとはね。偉大なるシャーロック・ホームズ卿もきっと天国で嘆かれてるわ」

 

イヤミったらしく文句を垂たれつつ、アリアはモフモフとももまんを食う。

かたや理子はタワーのような巨大パフェをすでに半分まで平らげていた。

 

「理子。俺達は茶を飲みに来たんじゃない。アリアと俺にした約束は、ちゃんと守るんだろうな?」

 

………約束?

 

紅茶を一度口にしてから、キンジが訊ねる。

 

「もちろん!理子は約束はきちんと守る子なのです!」

 

キンジに訊ねられた理子は頷き、そう答えた。

そして、何やら揉めているところにアリアが静粛にと言わんばかりに机を叩いた。拳銃で。

 

「そこまで。理子、風穴あけられたくなければ――いいかげんミッションの詳細を教えなさい」

 

「――お前が命令すんじゃねぇよ、オルメス」

 

いきなり乱暴な男言葉と三白眼になって、アリアを射殺すように見えた。

アリアすら一瞬怯ませる凄みを見せたウラ理子(キンジ命名)は、紙袋からノートパソコンを取りだして起動させつつ――

 

「――では只今より、『大泥棒大作戦』作戦会議を始めたいと思いまーす!」

 

と、オモテ理子に戻りながら、声高らかに宣言した。

――そう、俺達がここ、秋葉原に来た理由。それは、理子の宝物を取り返す、『大泥棒大作戦』の作戦だ。(理子命名)

 

「横浜郊外にある、『紅鳴館(こうめいかん)』――ただの洋館に見えて、これが鉄壁の要塞なんだよぉー」

 

カタカタとパソコンを操作し、くるっと俺達にディスプレイを見せる。

地下3階・地下1階建てと思われる建造物の詳細な見取り図と、そこにびっしり仕掛けられた無数の防犯装置についてが資料にまとめられていた。

……スゲェ。侵入経路や必要な道具とかまで、ビッシリ書かれている。プロでもこのレベルだと半年はかかるぞ。

 

「これ……アンタが作ったの?」

「うん」

「いつから?」

「んと、先週」

 

……アリアの目が真ん丸になってる。金次曰くアリアは弾丸みたいに突っ走るだけだから、こういった作戦はロクに立ててないそうだ。

 

「どこで誰に作戦技術を学んだの」

「イ・ウーでジャンヌに習った」

 

ジャンヌって……この前戦ったやつか。

――そういえばジャンヌってどうなったんだろう?

多分捕まってるだろうけど。

 

「……で、理子。ブラドはここに住んでるの?見つけたら逮捕しても構わないわね?知ってると思うけど、ブラドはアンタ達と一緒にママに冤罪を着せたカタキの一人でもあるんだからね」

 

「あー、それムリ。ブラドはここに何十年も帰ってきてなくて、管理人とハウスキーパーしかないの。管理人もほとんど不在で、正体がつかめてないんだけどねぇー……」

 

理子の言葉に不満顔のアリアだが、自制したのか口をへの字に曲げただけだった。

 

「まぁ……分かった。で、俺達は何を盗み出せばいいんだ?」

 

「――理子のお母さまがくれた、十字架」

 

「アンタって――ほんと、どういう神経してるのっ!?」

 

ガタンッ!とアリアは眉をつり上げ犬歯をむき出し、立ち上がった。

 

 

「アタシのママに冤罪を着せといて、自分のママからのプレゼントを取り返せですって!?アタシがどんな気持ちか、考えてみなさいよ!」

 

「おいアリア、落ち着け。理子の言うことでいちいち頭に来てたらキリがないぞ」

 

「頭にも来るわよ!理子!アンタはママに会いたければいつでも――」

 

「――アリア、落ち着け」

 

俺は少し殺気を出しながらアリアに言う。アリアは不満げに座ったので、俺は理子の方を見る。

――その顔は、ひどく悲しげなものだった。

 

「どうしてアリアを止めたの?」

 

「……理子。お前には――家族がもう、いないんだろ?」

 

「……え?」

 

俺の発言にアリアが驚いた表情をする。その中に、先程までの怒りはない。

 

「……何で、知ってるの?」

「なんとなくだ。わざわざ、あいつのところに危険を冒してまで行く理由がないからな。」

 

「………ブラドを知ってるのか?」

 

裏の理子になりながら聞いて来た。

 

「ああ、知ってる。と言うか「冥府の死神」の血が欲しいとか言って来たから四肢切断して腹に穴開けてやったのに生きてるのか。あの犬っころ」

 

「………」

 

理子は俺を見ながら魂が抜けてるみたいにポカーンとしていた。

 

「ま、俺のことはジャンヌに聞いてくれ。あいつがこの世界で一番俺の怖さを知ってるだろうから。」

 

「………うん。理子の両親は、もういない。十字架は、理子の5歳のお誕生日にくださった物なの。あれは理子の大切なもの。命の次に大切なものなの。でも……」

 

そこで理子は少し顔を伏せたかと思うと……

 

「ブラドのヤツ。アイツはそれを分かってて、あれを理子から取り上げたんだ。それを、こんな警戒厳重な所に隠しやがって……ちくしょう……」

 

憎悪に満ちた声で、ボソボソと続けている。その目にはうっすらと涙が滲んでいた。

 

「ほ、ほら。泣くんじゃないの。化粧が崩れて、ブスがもっとブスになるわよ」

 

泣いている理子の前に、アリアは横を向きつつトランプ柄のハンカチを投げた。

さっき理子に対して親がどうこう言おうとしたことへのお詫びのつもりだろう。

 

「ま、まぁ……とにかく、その十字架を取り戻せばいいんだな?」

 

と、場の空気を元に戻すようにキンジが言うと、こくり。

理子はアリアのハンカチで少し目を押さえ、涙を吸い込ませながらうなずいた。

 

「泣いちゃダメ理子。理子はいつでも明るい子。だから、さあ、笑顔になろっ」

 

まるで自己暗示をかけるように独り言した理子が顔を上げた時に、ちょうどメイドさんが入ってきて……楚々とお冷やを注いで回ってくれた。

おかげで少し雰囲気も和やかになり、理子はいつものいたずらっぽい笑顔を取り戻す。

 

「……とはいえ、このマップね」

 

ノートパソコンを閉じながら、理子はテーブルに身を乗り出す。

マップ、と言っているのは第三者メイドがいるから、ゲームの話を装っているんだろう。

 

「ふつーに侵入する手も考えたんだけど、それだと失敗しそうなんだよね。奥深くまではデータが無いし、お宝の場所も大体しか分かんないの。トラップもしょっちゅう変えてるみたいだから――しばらく潜入して、内側を探る必要があるんだよ!」

 

「潜入、か……」

 

 

確かに、その方が急なトラブルの対策もしやすいし、妥当な所だろう。

 

「潜入って……どうすんだよ」

 

キンジが尋ねると、理子はばんざいするように両手を挙げて、

 

「三人には――紅鳴館のメイドちゃんと執事君に(・・・・・・・・・・・)なってもらいます!」

 


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