アドシアード当日。
俺は昨日白雪にメールを貰って、
そして、今ケースD7が出ている。
――ケースDとは、アドシアード期間中の、武偵高内での事件発生を意味し、D7となると、『ただし事件であるかは不明確で、連絡は一部の者のみに行く。なお保護対象者の身の安全のため、みだりに騒ぎ立ててはならない。武偵高もアドシアードを予定通り継続する。極秘裏に解決せよ』――という状況を表す。
まぁ、俺は既に敵地に乗り込んでいるが。
こうして張り込んでいると、下がざわざわしてきた。
金次とアリアでも来たか。
そして、風の流れが変わった。
恐らく『
風を操作して探る。
不自然に風が滞る場所を見つけた。
見ると、一人の人影が見えて白雪に変装しようとしていた。
俺は無理矢理足音を鳴らして近づく。
その人影は飛び下がるように俺から離れた。
「白雪に変装しようとしていたところ悪いが、チェックだ。」
「………風切梓か」
「ほう?俺を知っているか
「………何故知っている」
「何故、か。その少し見えた銀髪に見覚えがあったからだ。」
「………なに?」
「何の戦争か忘れたが市街地が戦場となった時があった。敵は何処に隠れているか分からなく、とある民家の地下があった。
「そこには数人の人がいて、その中にお前の髪とそっくりなやつを見た。」
「………」
「そいつが自ら名乗ったよ「ジャンヌ・ダルク」だってな。
ま、俺は民間人を殺す趣味は無かったので、護身用に銃を渡してやった。それからは知らないが、こうして子孫がいると言うことはあの戦い以降も生きていた証だな」
「………何故知っている?それは「何故って?」」
「見逃したのも、銃を渡したのも
「は?」
「お前の親玉から聞いてないか?『この世界にいるはずのない人間が産まれるかも』って。………そうだな。あいつらも来たし、改めて自己紹介をしてやろう」
俺が後ろを向くと、アリア、白雪、金次がいた。
「
「「「「は?」」」」
「先に言っといてやる。イ・ウーにいるだろう、赤霧碧は偽物だ」
「貴様!何を言っている!偽物の訳ないだろう!ふざけるのも大概にしろ!」
「嘘じゃないさ。お前らの知る赤霧碧は超能力者だろ?」
「………それがなんだと言うんだ!?」
「本物の赤霧碧は
「う、嘘をつくな!」
「ま、折角だ。見せてやる。アリア達も見てな。これが赤霧碧だ。」
『赤霧の名の下に』
そう言うだけで、ガラッと雰囲気が変わった。
そう、俺のはスイッチの切り替えだから。
「さて、お前らの知る赤霧と違うだろ?そいつは多分超能力の起動に使ってるだろう。俺は普通と殺人者の切り替えだからな。ん?今は武偵と殺人者か。そして、俺は仲間は大事にするが、敵には容赦しない!」
俺はそれだけ言って駆ける。
ジャンヌは少し遅れて剣を構える。
しかし、もう遅い。
俺はベレッタを抜いて下に撃つ。
その弾が跳弾して行くのをジャンヌは剣で受け止める。
俺は上下左右に撃つと、跳弾し、その弾に擦れ、ずれてまた跳弾する。
ジャンヌはそれを防ごうとするがその寸前で弾同士がぶつかって方向を変え腕と足にあたる。
「ぐっ!」
「どんどん行くぞ!」
俺はグロックも抜き、3点バーストとフルオートにしてマガジン全てを円を描くように撃ち尽くし、その弾全てが跳弾する。
俺はそこから走りだし、ジャンヌは防ぎ切れないと思ったのか
身を竦めるが全て寸前で弾が砕け散って、俺の視界がクリアになる。ジャンヌが驚いているところにグロック、ベレッタを上に投げ、両手一度に掌底を放つ。
「砕け!」
「っ!ぐぁぁ!」
掌底を放つとジャンヌは吹き飛んで壁に激突した。
「がはっ!」
俺は投げた二つを取ってホルスターにしまう。
俺はジャンヌに向けて歩く。
ジャンヌは剣を支えにしてギリギリで立っていた。
「こんなもんか。イ・ウーの最弱は。拍子抜けだな」
「くっ!」
「そうだ。ジャンヌ、お前、俺に本気で超能力を撃ってこい」
「な、に!?」
「なに、グレードがどれだけかは知らんが、それなら多少の傷は俺に与えられるかもしれん。普通に戦ったんではお前はあまりに弱すぎる」
「………いいだろう。」
ジャンヌが何かの決意をし、剣に氷が纏う。
空気中の水蒸気が凍り、ダイヤモンドダストみたいにに見える。
「食らえ、オルレアンの氷花。鮮やかな銀氷となって散れ!」
ジャンヌの剣から冷気が漂い剣を振り下ろした。
………。
「は、はは!やった!私を舐めるからだ!」
「何がおかしい?」
ジャンヌが笑っていた時に言ってやった。
「は?」
「だから何がそんなにおかしい?」
「な、な、何故!?真っ正面から受けたはず!」
「お前は効いたと思ったか?残念。多少は寒いけど損害はない。無傷だ。」
驚きを隠せないジャンヌ。
実際は当たってすごく痛い。
でも、赤霧の時にはもっと痛い思いをしている。
「終わりだ、ジャンヌ・ダルク」
そう言って、俺は首筋に衝撃を与え気絶させた。
「ふう」
俺はスイッチを切るために頭を殴る。
たったそれだけでスイッチがオフになる。
そして、後ろを向いて、唖然としているアリア達を見ながら、少し笑ってやり、意識を失った。