東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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集結

「……とんだ飛び入り参加もあったものだな。一体何のつもりだ?博麗霊夢、上白沢慧音。」

 

「あら、私は異変を解決する巫女だけれど……異変が起きそうなら未然に防ぐのも仕事のうちに入っているのよ。それが何かおかしいかしら?」

 

「私はただ、人里を守ろうとしているだけだ。毎度毎度人里を戦いの場にするお前達は、今ここで2人とも私の本気の頭突きを食らってここから去らせる為にな。」

 

「……何でまた、急に……」

 

人里でとある4人は睨み合っていた。楽園の巫女博麗霊夢、人里の守護者上白沢慧音、創造と限界突破の月風陽、そして七変化剣の持ち主ツキカゼ。

今ここに4人が集っていた。

ツキカゼは霊夢と慧音の二人を邪魔と見ていた。慧音は勝てない相手ではないが、霊夢だけは別格の強さであることも彼は知っていた。故に、邪魔であるならば慧音をこの場で消すことも厭わないつもりでいた。

霊夢はいつもの異変の解決程度にしか考えずにここまで来ていた。しかし、ツキカゼには本気を出す気でいた。慧音は、今この場にいる事件を起こす元凶である陽とツキカゼを立ち去らせるつもり満々だった。

 

「……」

 

そして陽は今まで来ていなかった霊夢と慧音に警戒を寄せていた。ツキカゼの剣には持ち主の分身能力と、持ち主の姿や能力のすべてを完全にコピーするスペルカードがあることも知っていた。

今は茶番をしているだけで、実は霊夢と慧音はあいつが分身をして姿をコピーしたものだと思い込んでいた。

故に、全員ツキカゼとして扱って全員を倒す覚悟が出来た。

 

「さて……どっちから仕掛けるのかわかんないけど今回のこの対決は先に手を出した瞬間私と慧音で先手を打たせてもらうわ。」

 

「……私はお前達に危害を加える。しかしそれは人里を守るためにだ。例えどっちから仕掛けたとしてもまず間違いなく地面に叩き伏せてやるからな。」

 

四人は攻めあぐねていた。霊夢と慧音はペアとして組んでいるが、片方が攻め込んだ瞬間に二人で押さえ込んで大人しくさせようと考えてはいるが、その瞬間もう1人からの攻撃を受ける可能性があった。2人とも攻撃力が高いのでまともに受ければ重症は免れないだろうと考えていた。

 

「……」

 

先手必勝、とはよくいうが今この場で先手を引いたものは全員の攻撃を間に受けることになる。

だから陽は先手を仕掛けたい気持ちを抑えつつどうやって霊夢と慧音に化けている分身を倒すのかを必死に頭で考えていた。

 

「あら、意外と慎重なのね……だったら……!」

 

「今までの分をお仕置きするだけだ!!」

 

そう叫んで霊夢は陽に、慧音はツキカゼと対峙するように飛んできた。慧音はそのままツキカゼに飛んでいって戦いをし始めた。

そして霊夢は陽の目の前に立つだけで、何もしてこなかった。動かない限り一応名目上被害者である陽に攻撃を仕掛けることはなるべくしたくなかったのである。

 

「……なんだ?攻撃してこないのか?向こうの分身体は分身主に攻撃を仕掛けているのに、こっちの分身は随分とおとなしいんだな。」

 

「……あぁ、さっきから妙に睨まれてるような気がしてたのはそういう事だったのね。なるほど、分身能力と変身能力があるってことか……」

 

「……?何ブツブツ独り言言ってるんだ?お前が来ないならこっちから━━━」

 

陽がセリフを言い終える前に霊夢によって軽く吹き飛ばされていた。霊夢はまず自分があの男の分身だと思われたことが腹立たしかった。そして、仮に分身だとしても自分の、博麗霊夢の実力を舐めたような文章を今陽が出そうとしていたことと、陽がナイフを作り出して攻撃しようとしたため、反射的に行動してしまったことの三つの理由で陽を吹き飛ばしてしまっていた。

 

「ぐっ……んだよ、さっきまで手を出さなかったくせによ……やっぱり分身体だったってことか……なら、遠慮はいらないな……!」

 

そして、霊夢の一撃で完全に火の灯った陽は霊夢に対してナイフを投げる。『やってしまった』とナイフを投げられながら霊夢はそう思って避けていくが、一度そう思い込まれてしまった以上何とかして陽の思い込みを正さねばならないとそう誓って、陽に攻撃を再び仕掛け始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何か向こう騒がしくない?」

 

「……確かにそうですね。まさか、またあの男がきたのではないでしょうか?」

 

「となると……一応急いで確認しにいく、という手を取った方がいいのじゃ。」

 

「話し合う暇があるのなら向かった方が早いのです。」

 

陽がツキカゼ達と対峙している時、陽鬼達は少し離れた場所にいた。とは言っても距離自体はほぼ目と鼻の先というほどの近さなので、光が率先することで全員が陽達の戦いの場に向かっていた。

そして、今起こっている状況を見てもれなく全員が困惑しきっていた。

 

「……待って、今これどういう状況?」

 

「慧音とあの男が戦っています。いえ、それならばまだ理解出来るんですが……」

 

「何故博麗の巫女が主殿に攻撃を仕掛けておるのじゃ?あの二人には戦う理由は………いや、人里を荒らしてる時点で対象内ではあるのかもしれんな……」

 

思い当たる節を再確認しながら黒音は目下の戦いを見守る。割り込むか割り込まないか、月魅、黒音、光の3人はそれを考えていた。陽鬼一人は、陽に助太刀しに行こうとしていたのだが、黒音に静止されてしまっていた。

 

「ちょ!?何で止めるの!?陽がピンチなのに私たちが行かないで誰が行くんだよー!!」

 

「ちょっと静かにしておるのじゃ……そもそも霊夢が攻撃しておる理由が分からんからの……まぁそれ以前に主殿が霊夢にナイフ投げまくっているせいで妾達が下手に間に入り込むようなことがあれば……まぁメッタ刺しじゃな。

割り込むにしても……そこら辺の隙を見つけねばな。」

 

「しかし……何故マスターは霊夢に攻撃を……」

 

「……とりあえず、隙があればいいのです?」

 

弓の弦を引っ張りながら、光は黒音に問う。黒音は光が何をしたいのかよくわからなかったが、質問に対しては頷くことで肯定ということを伝える。

 

「光あるところ影があり……なれば影もまた光の一部なり……!光使(こうし)[影抜き]!」

 

「っ!」

 

「!?」

 

光の一撃が2本に分かれてそれぞれ霊夢と陽に飛んでいく。二人は咄嗟に矢の軌道をそれぞれ読んで避けた。しかし、肉体に当たらずとも光の狙いは肉体ではなくそこから生まれる影、二人は影にまでは気を回せずに影にその矢が当たってしまう。

そして、矢が影に当たっている二人はそのまままるで金縛りにあったかのようなまったく動けない状態になる。

 

「終わったのです、というわけで行くのです。」

 

そう言って陽たちの元に率先する光。黒音達も、素直に驚きと感心を寄せながらとりあえず光について行くのであった。

 

「光!何だ、何したんだ!?」

 

「ご主人様、少し落ち着くのです。何故霊夢を攻撃しているのですか?彼女はツキカゼの敵で私達の味方だった気もするのです。」

 

「いや、そいつはあの男の分身体だ!わざわざ俺に攻撃しているのがいい証拠だろ!」

 

それに対して、霊夢が見るからにイラッとしている表情で陽に抗議をし始める。

 

「あんたが最初に攻撃を仕掛けようとしたから体が勝手に動いちゃったのよ!!いや、最初に攻撃した私も確かに悪かったけれど!!」

 

その光景を見て、黒音は大体の事情を把握していた。そして、ギャーギャーと騒ぎ立てる陽と霊夢に向かって、自身の銃をぶん投げて頭に当てさせて落ち着かせる。

 

「っ……いって……!」

 

「何するのよぉ……!」

 

「二人があんまりにも騒がしいもんで……落ち着かせたかったのじゃ。とりあえず、1度落ち着いて考えてみろ主様。主様は霊夢が奴の分身体が姿形を変えたものじゃと思っておるが、それならばさっさと三人で攻めた方が早いじゃろ。

主様は変化能力に少し警戒しすぎなんじゃ、それでいらぬ疑心暗鬼をしてしまっておる。一度落ち着いて周りをよく見渡してみればよくわかると思うのじゃ。」

 

「……確かに、その通りだ……」

 

陽は顔を俯かせながら項垂れていた。ツキカゼに対しての警戒心が強すぎるために向こうがいらぬ茶番をしてしまっていた、などということはよく考えたらありえないということにようやく陽は気がついた。

下手な理由をつけて2対2を二つに分けるより、素直に3対1に分けた方が自分を殺せる確率が上がるという事実にもようやく気がついていた。

 

「まったく……ねぇ、ところでこれ解除してくれない?誤解は解けたんだしもうこの矢がここに突き刺さっている意味が無いんじゃないかなって。」

 

「……それもそうなのです。」

 

光は矢を消す。それと同時に陽と霊夢は身動きが取れるようになっており、霊夢は軽く体を動かして、問題がないことを確かめてから慧音の方に視線を向けていた。

 

「……さて、んじゃあ私はあの男を慧音と一緒に退治してあげましょうか。」

 

「だったら俺も……」

 

「駄目よ、あんたって戦う時周り見えなくなるんだから戦うなら人里以外でしなさいな。

まったく……投げナイフ全部地面に叩き落とすのはただの苦行よ本当……」

 

ぶつくさ言いながら霊夢は慧音の所に向かった。陽は追おうと思ったが、それを黒音達に阻止されていた。

 

「……何で止める?」

 

「霊夢の言う通りなのじゃよ主様。少し主様は周りが見えなさすぎる。相手を倒そう倒そうという思いばかりが先行して、いつも周りに被害が出る。

妾達がフォローして被害を出さないようにすることも出来るが……ぶっちゃけその戦い方を霊夢や慧音の前に見せたらおそらくそっちのけで無理やり止められると思うのじゃ。さっきも言ったが主様は周りが見えなくなるからの。」

 

「うぐっ……けど、ツキカゼがいるのに……」

 

「寧ろ命を狙ってくるやつにそのまま攻撃を仕掛けることがおかしいのじゃ。このまま戻った方が━━━」

 

「結局、霊夢達が倒さなかったら狙われるのは変わらないだろ!!だったら自分で倒す方がマシだ!!陽月[双翼昇華]!」

 

「ま、マスター!?」

 

「よ、陽何を━━━」

 

陽は二重憑依のスペルを唱えて、陽鬼と月魅をその身に宿す。いきなりの事だった為に黒音は一瞬呆気に取られたが、すぐさま陽を止めようと静止を呼びかけようとするが……

 

「今は何を言っても俺は止まらないぞ黒音!霊夢達が負けるなんて言うのは微塵も考えられない……けど、だったら人里以外の場所であいつを決着をつけてくる、それなら問題ないはずだ!!」

 

そう言って勢いよく飛んでいく陽。呼びかけようとする事すらも遮ってまで、自分の主はそこまで死に急ぐのかと怒りを覚えていた。

 

「……黒音、追わないのです?」

 

「追うに決まっておるじゃろ!!」

 

叫びながら黒音は大急ぎで陽を追って、光もそれに続く様に追い始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!」

 

「なっ!?」

 

「ちょっと付き合ってもらうぞ……!」

 

一分もかからずにツキカゼの元に付いた陽。勢いよく飛びつつ、速度を落とすどころか早めながら、陽はツキカゼの頭を掴んでそのまま勢いよく飛んでいった。

慧音も逃がすわけには行かないと思い、そのまま陽とツキカゼを追うように飛び始める。しかし、あっという間に人里を抜けて更にかなり離れた土地にまでツキカゼは陽に持ち運ばれて行ったせいで、慧音はすぐに二人を見失ってしまったのだった。

 

「ここなら……思う存分俺を殺せるぞ?だが、俺も周りを気にしなくて暴れられる名目を得たがな。」

 

「ふん……戦闘狂か何かか?貴様みたいなのに暴れられたら人里も迷惑きまわり無かっただろうな。」

 

「お前も似たようなもんじゃねぇか……よっ!!」

 

剣の形をした青白い炎が何個もツキカゼに向かって飛んでいく。憑依をすることでようやく使える弾幕、二重憑依のは食らってしまえば大ダメージ必須なのは見てわかる通りであり、ツキカゼは細心の注意で避けていく。

 

「避けてばかりじゃあ…….!」

 

「無論、避けるばかりではないさ……!05[レミリア・スカーレット]!貴様の放っている弾幕全てが貴様に突き刺さる運命に変える!!」

 

「っ!」

 

レミリアとなったツキカゼが能力を発動して、陽の放った弾幕の運命を変える。突き刺さるのはツキカゼではなく、陽に変更された。

だが、陽は咄嗟に弾幕に弾幕をぶつける事で全てを相殺していく。

 

「ふん……貴様にはどうしても能力が通じないようだが……ならば……!」

 

「周りのものの運命を無理やりねじ曲げてでも俺を殺そうってか……いいぜ、やりあおうじゃねぇか!」

 

声を荒らげながらツキカゼと陽は、それぞれ弾幕を放ち始める。この戦いは、未だ終わらない。


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