東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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二つのチーム

陽達が影達を蹴散らしながら城へ向かっている頃、霊夢達は紫のスキマによる案内の元に黒い陽が作り出した城に来ていた。

しかし、その現場には既に来ていたレミリア率いる紅魔館の面々が殆ど地に伏していたのだ。

 

「レミリア……あんた、この状況……」

 

「……大見得切って1番にこいつを倒そうと思っていたけれど……迂闊だったわ。まさか……いくら攻撃してもしても倒れることがないなんてね……」

 

「あらあら、また大所帯がやってきたわけか。ていうか止めてくれません?城に入って登ってくるならまだしもこうやって直接ラスボスの前に現れるなんて結構失礼だと思うんですよ。チート使うのはなしだろ、無し。」

 

「あんたが何を言ってるのか分からないけれど……いいわよ。ほんの少しだけ、あんたの相手しておいてあげるわ……!」

 

霊夢が力を込める。その気迫に周りの全員が例外なく気圧されていた……そう、気圧されながら黒い陽は自身の笑みを絶やすどころか増していた。

 

「凄い凄い!博麗霊夢の本気が見られるってわけだ?じゃあ……とりあえず洗礼と行こうか!!」

 

瞬間的に、霊夢は動く。自身の空を飛べる程度の能力を使い、黒い陽の攻撃に備える。

 

「時間を止めて……ナイフを……構わずぶん投げちゃおうか。()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

そう言って黒い陽は時間を操り、自身だけが動ける空間内でナイフを所構わず投げ捨てる。彼が言ったように、運命操作の能力を使う事で例え放り投げたものであっても霊夢に刺さるようにしたからだ。だが、ここで黒い陽は前提条件を間違えてしまった。

 

「あと5本くらい……ごばっ……!?」

 

吹き飛ばされたのだ。時間が停止したその空間で、自分以外動けるものが居ないはずの空間で、()()()()()()()()()()()()()

 

「あ、あれ……?俺時間止めたはずなんだけど……なんで動いてるの?」

 

「貴方が言ったでしょう?『博麗霊夢の本気が見られる』って。これが私の本気よ。あなたが空間を捻じ曲げようが、時間を止めようが……私にはそういうのは通じないわよ。

(そら)を飛ぶんじゃなくて(くう)を飛んでいるのよ、私は。」

 

「言葉遊びしてるつもりは無かったんだけどね……やられたよったく……いや、けど、しかし、でも……空間の影響を受けなくなっているとしても、運命なら……お前を倒せるんだよな!」

 

そう言いながら陽は時間を操作を解除する投げ捨てたナイフが、まるで自分の意思で動いているかのように霊夢にその切っ先を向け、自分で飛び始める……が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……おい、おいおい、おいおいおい……その場にいながらそこにはいない……空間すらも飛び込めるのかよ……博麗霊夢の能力はそんなにも強大だったのかよ。」

 

「あら、知らなかった……という訳ね?貴方って自分のみ知った能力は自分で調べない質という事ね。

もうちょっと自分で調べるということを覚えた方がいいわよ。」

 

「ははは……なるほど、言われてみれば確かにその通りだ。

なら、逆に考えてみるとしよう……その能力はどの能力を持ってすれば対処可能になるのか……なっ!!」

 

そう言うと黒い陽は一瞬で霊夢の後ろに回り込む。そしてその一瞬の間に霊夢は顔を守るポーズになっていた。

周りのものには何が起きたのかさっぱりだったが、黒い陽と霊夢だけは何が起きたのかを理解していた。

 

「……蓬莱山輝夜の能力で、攻撃をすべて一瞬に集中させたったのにそれ全部防ぐかね?それも同じく一瞬で。」

 

「別に時を止めてるわけじゃないんだもの。貴方自身にだってその攻撃がどこに当たっているかなんてわかってないけれどそのまま攻撃を続けているんでしょう?

だから基本的に咲夜の時間操作を使って攻撃をしている……違うかしら?」

 

「うーん、大正解!けど参ったな……これだとほかに思いつく能力で君を倒す術は思いつかないよ。

まぁでも……やれるだけいろんな能力を使って攻めてみちゃおうか。幻想郷にはいろんな能力があるんだ……だから、その中のどれか一つ当たればいいやって感じだ。

無かったとしても……どうにでもなるだろうし。」

 

「自信満々ね……なら、やってみなさいよ!!」

 

そして二人は激突した。幻想郷において最強の人間である彼女と、どこかの並行世界を潰した黒い陽。二つの最強が、今戦いを始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、2人が戦いを開始したその頃。陽、陽鬼、月魅の3人は黒い陽の作った城にたどり着いていた。勿論、どこからか出てきている影達を倒しながらその通路を辿って行った結果である。

 

「……やっぱり城から出てるよな。とりあえず入るぞ、中にそういう施設があるなら潰していかないといけない。」

 

そう言って陽達は城の中へと進んでいく。影自体はやはり城の奥から出てきているようで、陽達はそれもどんどん辿っていく……が、次第に辺りは暗くなっていき、明かりがないと目の前すらも見えないくらいには真っ暗な空間となっていた。しかし、影達には陽たちの姿が見えるのか問題なく攻撃してくるので、陽達は陽のスペルカードである黒聖鎧で作られた巨大なオーラの鎧の中にじっと固まっていた。

 

「……ちょっと待ってろ。今明るくする。」

 

そういって陽は、光球をいくつか作り出して奥に飛ばしたり横に飛ばしたりして光源を確保していく。

そこには巨大な機械のようなものが静かに佇んでいた。だが、影はやはりここから出ているようで排出され続けていた。

 

「……ここから影出てるね……」

 

「……見えなかった分、取り逃している可能性があるのでもしそういうのがいれば私が討伐してきます。」

 

「……頼んだ、月魅。」

 

そう言って月魅は光源で明るくなった廊下を戻りながら二人から離れる。陽は、機械を見上げながら出てくる影を潰していた。

だが、壊さなければおそらく永遠にで続けるだろうと踏んだ陽は、黒聖鎧の一撃によってその機械を破壊した。

そして、破壊したと同時に完全に陽の魔力が切れたのか、憑依は解かれて元の姿へと戻る。

 

「はぁ……はぁ……出て、来ない……な。」

 

「とりあえず影の脅威はこれでもう二度と里を襲わない筈じゃと思うが……妾まで疲れたのじゃ……」

 

「私もなのです……ですが、私達より御主人様の方が消耗が激しいはずなのです。一旦、どこかで休めるところを探さないと……」

 

「いや……ここで、いい……影が出てくることはそうないはずだから……ここでしばらく体を休めることにするよ……陽鬼、月魅一人だとしんどいかもしれないから陽鬼も月魅手伝ってやってくれ……」

 

「……分かった。黒音、光……陽を頼んだよ。」

 

そう言って陽鬼も月魅を追いに外へ走り出す。陽は床に寝そべって天井を見上げる。しばらく休んで消費した力を出来る限り回復させないといけないからだ。

限界をなくす程度の能力を使ったとしても、回復にはほど遠いので出来うる限りの回復を今ここでしなければならなかった。

 

「……主様よ。何を考えておるのじゃ?主様があの黒い主様と戦って勝てると思っておるのか?」

 

「随分と辛辣なこと言うよなお前……いや、俺だって別にあいつと互角なんて思っちゃいない……勝てる確率なんて余裕で一割を下回ってるとさえ思ってるよ。」

 

「ならば何故じゃ?一割を下回っていても……まだ勝てる可能性が残されておると思っておるのか?」

 

「勝てなくても引き分けになら持ち込めるんじゃないか?妖刀妖殺をもう一本作って……刺せさえすればいい。

そしたらあいつの能力を全部……」

 

「……相打ち覚悟で、かの?」

 

黒音の一言で陽は言葉を止める。黒音は陽を軽く睨みながら『お前の考えていることはお見通しだ』と言わんばかりに言葉を続ける。

 

「主様、主様は自分の命を犠牲にあの妖刀をあの男に突き刺す気じゃろ?じゃが、それで周りがどうなるか……どう思うかをもう少し考えた方がいいと思うのじゃ。」

 

「……じゃあ、現状この状況で他にどんな手があるというんだ?言ってみろよ。」

 

「……それは妾にも分からん。じゃが、少なくとも主様の身を犠牲にすることは妾は反対じゃ。勿論、陽鬼や月魅……光も反対するじゃろうな。」

 

陽が、光に視線を向ける。光は黒音の意見に同意するかのように頷く。陽は再び黒音に視線を向ける、黒音はそんな二人の様子を見ながら更に言葉を続けていく。

 

「本当に自分の事を孤独だと思っているのなら、その方法を試せば良いじゃろうな。しかし、主様を大切に思っている人がいるのも理解して欲しいのじゃ。

本当に大切なものは何か……理解しておいた方がいい筈じゃ。」

 

黒音の言葉が陽に突き刺さっていた。敵を倒す事と大切な人を=で結んでいたが、実際は微妙な違いがあるのか……と、陽は困惑しきっていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ!」

 

「どりゃ!!」

 

そして、その頃霊夢と黒い陽はぶつかり合っていた。お互いの攻撃を、放ち合ってそしてお互いの武器を振り合う。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

霊夢の能力、それは勿論黒い陽も手に入れている能力であった。つまり、今は互いの攻撃がどう足掻いても当たらない状態となっている。

 

「……我ながらホント、面倒臭い能力だと思ったわ。まさかここまで完全な消耗戦になるとは思っていなかったもの。」

 

「俺は面白い能力だと思ったよ。不意打ち同然で奪った能力だったからこんな使い方が出来るなんて初めて知ったしさ。

何なら本当に消耗戦やって見るか?俺にとってはばっちこいの全く痛くないものだけどな!!」

 

「そりゃあお互いにダメージが通らないんだから痛くもないわよね。」

 

時を止めても、瞬間的に攻撃をしても、何も変わらない。そもそもの攻撃が通らないものだから、どんな能力を使っても無意味なように思えた。

 

「白黒はっきりつける程度の能力……いやこれ使えねぇな……あぁ、こっちならまだ使い道はあるかな……」

 

「……?」

 

「さて、この能力を使ったら君の能力はどうなるのか……なっ!」

 

そう言って黒い陽はナイフを投げる。投げられた瞬間だけは、霊夢は避ける必要が無いと思っていたのだが、不意に物凄く嫌な予感がしてとっさに顔に飛んできたナイフを急いで避けた。

しかし、顔は避けれても髪は避けきれずにナイフが物の見事に突っ込んでいった。そして、投げられたナイフは()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……やってくれたわね、紫の能力かしら?」

 

「うーん、大正解。境界を操る程度の能力ならこの辺りの空間をあやふやにすることで攻撃を当てられるようになるかな?って考えたんだよ。髪を切り落とせたということは、当たるようになっているってことだ。」

 

「……そうね、確かに次元の境界を操ったら私の能力もほとんど意味をなさないものにはなるわね。

あくまでも……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「何をする気か知らないけど……これで攻撃が当たる!」

 

そう言って黒い陽はナイフをばら撒きながら霊夢に真っ直ぐ突っ込んでくる。ばら撒かれたナイフは、運命操作によりその全てが霊夢に向かって飛んできていた。

だが、霊夢に()()()()()()()()()()()

 

「……あれ?」

 

何か変だと感じ取った黒い陽は、そのまま突っ込んでいきながら一旦大きくジャンプして、霊夢の背後に着地する。

 

「……そう言えば、いたんだっけ。ずっと霊夢と遊んでいたから存在そのものを忘れてたよ残り全員。」

 

「……残念ね、貴方が私の能力を使っても私が能力を発動して元の境界に戻すわ。

少なくとも、ここに何人もいる以上まともな戦法は通じないと思いなさい。」

 

紫は黒い陽を睨みながら頭を掻く。『さて、どうしてくれようか』と考えているのである。当然、邪魔だから殺しにかかろうとする訳だが、瞬間的に霊夢が目の前に来て妨害を行っていくために上手くいかないのが目に見えていた。

境界を歪めるのをやめた訳では無いが、やめた瞬間に紫が歪めた分だけが残って殴られてしまう仕様になってしまうことには変わりない。逆に紫自分の能力をOFFにする可能性だってあるわけだが。

 

「……ま、なんとでもなるか。」

 

そう呟いて、黒い陽は再び突っ込んで行く。そしてまた霊夢と黒い陽の不毛なぶつからないぶつかり合いが始まるのであった。


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