東方月陽向:新規改訂   作:長之助

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光と闇

「……よし、行くぞ4人とも。」

 

八雲邸で、寝転んでいた陽。しかし唐突に起き上がって陽鬼達に対して『行くぞ』と発した。

訳が分からなかった4人だったが、陽がそのまま靴を履いて手早く屋敷から出ていってしまったために大慌てで付いていくことになったのだった。

 

「よ、陽……どこに行くつもりなのさ。紫に出ないように言われてたでしょ?流石に言いつけを守らずに出ていってしまうのはまずいって!」

 

「陽鬼の言う通りですマスター。幾ら何でも紫の言うことを無視してしまったら、後でなんと言われるか……」

 

「別段、説教なんぞどうとにでもなるが……紫の気持ちを尊重してやらねばいけぬのではないのかの?」

 

「そうなのです……幾ら上から目線でボロ糞に言われたからって、そうやって反発するのは良くないことなのです。」

 

それぞれが陽を止めるために必死に制止の言葉を投げかけていく。しかし、陽は聞く真実を持たずに真っ直ぐに歩いていく。

陽鬼達は歩く速度を早めていく陽について行くために必死に走ってついていく。

 

「ねぇ、陽聞いてる!?」

 

「聞いてるよ……だからこそ向かうんだよ。陽鬼、月魅、黒音、光……人里に向かうぞ。

多分、今やばいことになってるだろうしな。」

 

「……やばい事?それの鎮圧のために紫は向かった筈なのでは?」

 

「いや……多分、紫達はさっきまで起きていたことはすぐに鎮圧しただろうな……その後に、例のもう一人の俺のところへと向かった。

けど……それだけで終わるんだったら苦労はしない。もう一人のところへ向かっていると思う。」

 

「じゃあ一体何を危惧しておるのじゃ。」

 

「……襲うのを一回で止めるようならハナから幻想郷を襲うようなことをするやつとは思わないからだ。

多分、また人里を襲うか……そもそも人里を襲うこと自体が囮だったのかまではわからないけどな……!」

 

そう言って陽は走り出す。突然走り出したために陽鬼達は大慌てで付いていくことになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして陽達はそのまま走り続けて人里の近くにまで出ていた。そして、人里に忍び寄る黒い軍団を見つけていたのだ。

 

「人里が……!」

 

「まさか、本当に襲われていたとはのう……しかも、数がとんでもなく多い……100……いや、千は下らんのではないのか?

流石にあそこまで多いとなると妾達ではどうしようも━━━」

 

「陽月[双翼昇華]!」

 

たじろいでいた黒音達には目もくれず、陽はスペルカードを唱えて二重憑依で一気に大軍の中へと身を投じていく。

 

「御主人様!?」

 

「行くな光!主様が二十憑依で飛び込んだとはいえ妾達が飛び込んでしまったら流石にやられるのじゃ。」

 

「くっ……!」

 

「妾達は……人里の入口に行き、取りこぼした者共を退治する……そういう役目じゃ。」

 

「……分かったのです。」

 

黒音と光はそのまま人里の入口へと向かっていった。最中、大軍の中から青白い巨大な光や、巨大な炎の柱などが見えていて、明らかに陽の力が増している、という事を2人は感じていた。

 

「吹き飛べぇ!!」

 

そして、陽は背中から青白い光をまるで羽の形の様に出しながら大群の中を高速で突っ切っていた。

手に持った剣に青白い炎を宿らせて、すれ違いざまに影達を切り刻んでいた。

 

「お前らに用はない!!さっさと……大将の顔を拝ませろォ!!」

 

叫びながら陽は飛び上がって地面に向かって炎を纏わせた拳の拳圧を叩きつける。まるで炎の拳が飛んでいくかのように地面に落ちていき、地面についた瞬間に大量の影を吹き飛ばして燃やし尽くしていった。

 

「……削っても削っても……キリがない……けどなっ!!」

 

影達が陽に狙いを定め囲いこんで一斉に襲いかかる。瞬間、陽の体から大量の炎が吹き出して影達をさらに消し去っていく。

しかし、これでもまだ一部にしか過ぎなかった。未だ、大量の影が存在しており、いくら他の影をやろうとも何の影響もないと言わんばかりに全くスピードを変えずに進軍を続けていた。

 

「はぁはぁ……でぇりゃあ!!」

 

叫びながら影を吹き飛ばしていく陽。霊力を青白い光として両腕から吹き出させてまるで巨大な弾丸のごとく、拳圧を貫通させて影達を消滅させていく。

 

「全員……燃えろ!!」

 

右手には霊力、左手には妖力を溜め込んでそれを一つにして青白い炎として目の前に陽は放った。数としては大多数を削れているはずなのに、全く減ってないように思えてくるので、陽にはだんだんとイライラが募っていっていた。

 

「くはっ……」

 

圧倒的大火力、しかしそれを出し続けるのは至難の業であった。陽は憑依が解けてしまって、膝を付いていた。既に、陽の中には妖力と霊力はすっからかんになってしまった為である。

 

「よ、陽……どうするつもりなの?今引いたら……人里にこいつらもなだれ込んじゃうよ!?」

 

「お前らの力は使わないからまだ動けるはずだ……人里の入口に行って……黒音と光を呼んできてくれ……!」

 

「……しかし、それではマスターが……」

 

「良いから!行ってこい!!」

 

月魅と陽鬼に対して陽は強い口調で言い放つ。2人は、まだ動ける体なのを利用して陽の言う通りに動き始める。

そして、陽は陽で一人刀と銃を使いながらなんとか一人一人を削っていっていた。

 

「はぁー……!はぁー……!」

 

「主様!!」

 

「狂闇[黒吸血鬼]!」

 

黒音の声が聞こえた途端に陽はスペル宣言をする。そして、黒音を憑依させて瞬間的に周りにいた影達を全員撃ち漏らす事無く一撃で決めていく。俗に言う、ヘッドショットである。

 

「闇魔[群雄割拠ノ魔王]!」

 

さらにスペル宣言を行い、自身の身体を暗闇の真っ暗な色へと染める。そして、体の形が闇によってあやふやになり、それが針のように鋭くなったり、鎌のように弧を描いたりして貫き切り裂いていっていた。

 

「ぐっ……魔力の消費が……激しいですネ……」

 

しかしそれでも陽は攻め立てていっていた。目の前の影達を吸収して微量ながら魔力を回復させつつ、影達を薙ぎ払っていった。

 

「がァ!!」

 

闇の衣を銃口に集めて、影達の真上に放つ陽。そこから、影達を狙い撃つかのようにまるで雨のような弾幕が影達を貫く為に降り注いでいっていた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

消しても消しても湧いてくる影。そして、遅れて光がやってきた。陽はちらっと光の方を見た後にすぐさま影に向き直って影を消し飛ばしていく。

 

「御主人様……大丈夫なのです?」

 

「大丈夫、だ……魔力が思いのほか早く尽きちまったが……まだ、光の分が残っている……」

 

憑依を解いて?否、憑依はまたしても解けてしまったのだ。単純な話、霊力と妖力を同時に使う陽月は妖力と霊力を使い分ければいい為に持ち時間が長かったのだ。しかし、1つだけならば同じような使い方をしていけばあっという間に無くなってしまう。故に尽きるのが早かったのだ。

 

「けれど……このままだと御主人様の身体がもたないのです。撃ち漏らしは今のところいないとはいえ……このままだとあからさまにジリ貧になっていくのは目に見えているのです。」

 

「だが……このままだと人里に入られてしまう……狂闇で削った数は陽月よりも遥かに少ない……もっと、もっと倒して……人里を守らないと……俺だってやれば出来るんだ……っ!」

 

盲目的に敵を削ろうとしていく陽に対して、光はビンタをした。陽は呆然とした顔で光を見たが、光はそのままボロボロに泣き始めていた。

 

「御主人様は……馬鹿なのです……大馬鹿なのです……!それで倒れてしまったら全く意味が無いのです……!光は、御主人様が倒れるのが嫌なのです……!」

 

心配しながらボロボロと泣いていく光に対して、陽は彼女の頭を撫でる。そばに居た黒音が黙りながらも微笑んでいたが、すぐに陽共々影に再度向き直る。

 

「さて……それじゃあこいつらを一掃……ん?」

 

陽は体から黒い靄と白い光が出てきたのが分かった。あまりにも突然の出来事だったため、理解が追いつかなかったが……それが一つにまとまると新しいスペルカードとなって目の前に顕現する。

直感で、今はこのスペルカードを使った方がいいと認識した陽は、そのスペルカードを手に取って高らかにスペル宣言を行う。

 

「……光闇(こうあん)双手泰華(そうしゅたいか)]!」

 

スペル宣言を行った瞬間、憑依スペルカードの様に黒音と光の身体が黒い靄と白い光の塊となり、陽の体を包んでいく。

そう、新しい二重憑依。光と闇を掛け持った新しくそして相反するものがまたもや同居した二重憑依であった。

 

「……これが、俺の新しい姿……」

 

髪は白と黒が入り交じった短髪、背中には弓と矢、腰には銃を2丁マウントしており、エクソシストの様に袖が長く妙にダボったい服装となっていた。

 

「これさえ、これさえあれば……!」

 

腰にマウントされた銃を引き抜いて一気に影達を消していく陽。雑魚には構わない……と言わんばかりに目の前に来る影達を一掃していきながら、一際大きな体を持つ影目掛けて乱射を行う。

 

「━━━━!!」

 

その一際大きな影は陽目掛けて、自身が持っている巨大な剣を投げる。巨大な影よりも大きなその剣は、陽を押し潰さんと迫ってくる……が、その剣は()()()()()()()()()()()()()()

 

「……黒鎧(こくがい)[覇王ノ凱旋]

このオーラを貫けるというのなら……やってみろ。」

 

陽は巨大な骸骨の上半身のオーラに包まれていた。まるで地面から生えているかのようなその骸骨は、影の投げた剣を振り回して辺り一面の雑魚すべてを粉砕していった。

 

「……魔力が足りないか。なら……白鎧(はくがい)[善王ノ前線]」

 

そのスペル宣言の後、陽の纏っていた骸骨のオーラは白い光によって筋肉を持ち、皮膚を纏い、鎧を纏った。魔力が足りずに不完全となっていたオーラを光力……天使の力によって補って完成させたのだ。

 

「……名付けて、黒聖鎧(こくせいがい)[孤独ノKING]って所か……さぁて、一網打尽にしてくれる。」

 

その言葉と共に、背中にマウントしていた弓矢が中に浮かび上がり一人でに矢を構え始める。

陽は、オーラの中に自分と同じくらいの大きさの腕を作り出し、それで弓矢を引いているのだ。

 

「どけどけどけぇ!!」

 

本体が銃を撃ち、撃ち漏らした敵を矢で射抜き、そして黒聖鎧が握った影の剣を振り回してあっという間に敵を全滅まで追い込んでいく。

雑魚も、強敵も、影をすべて消していく。

 

「陽!陽なんだよね!!」

 

その時、後ろから声が聞こえてくる。陽がちらっと後ろを見るとそこには陽鬼と月魅がいた。

陽は影達が周りにいないことを確認してから、一旦止まって陽鬼達と話し始める。

 

「おい陽鬼、人里はどうしたんだよ。」

 

「命蓮寺とかの人里に任せてきた!陽こそその格好のこととか色々聞かせてもらうからね!!で、今どこ向かってる……のっ!!」

 

迫ってきていた影を殴り飛ばしながら陽鬼が陽に対して質問をする。対する陽も前から迫り来る影をなぎ倒しながら、話し始めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほどね、今から向こうの城に行くつもりだったわけだ……でも、ほんとに行く気なの?紫達の邪魔になっちゃうんじゃあ…」

 

「……だからまずは城を潰す。こうやって影達が大量に来ている以上城の方に何か生産装置みたいなのがあるはずだ。

それを潰しに行くという名目なら……」

 

「ですがマスター……相手の城は文字通りの闇で出来ています。いくら壊しても勝手に修復していってしまうのでは?」

 

「……あの城が闇で出来ているなら、俺はそれを照らして消すだけだ。光力……この力があれば城を、闇を消すことも可能になってくるはずだ。」

 

そう言って陽は掌に光球を作り出す。陽鬼達はそれを見て少し溜息をつきながらも、付いていこうと決めて陽よりも前に出る。

 

「それじゃあまずは……」

 

「この影達を蹴散らしていかないと……ですね。」

 

「よし……行くぞ!!」

 

そう言って陽達はそのまま進軍を開始する。影達はその進軍になすすべもなく蹂躙されて行き……城までの進軍を許したのであった。


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