ダンジョンで双璧が暴れるのはまちがっているだろうか   作:よづき

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No3

 

 

 「ヘスティア?」

 

狩りを終えてホームに帰ってきたら、丁度ベルのステイタス更新中だった。

ベルのステイタスを更新するとき、いつもヘスティアは嬉しそうにするのに今日はかなり不機嫌そうなのだ。

ベルも困惑顔で、俺もヘスティアを見つめていたら「アルト。ベルのステイタスが大幅に上がってる。レアスキルの効果」とこっそり俺だけに聞こえるようノエルが教えてくれた。今の一瞬で神聖文字を読んだらしい。

 

「あー・・・」と俺。

「神様・・・?」とベル。

 

こういう時男の立場は無いんだぜ、ベル。

俺がため息をつくと同時にヘスティアがやっと口を開いた。

 

 「ボクはバイト先の打ち上げがあるから、それに行ってくる。君もたまには三人で羽を伸ばして豪華な食事でもしてくればいいさっ」

 

ばたばたと音を鳴らしながら負け惜しみのようにセリフを吐き捨てて出て行った。

ベルにはまるで訳が分からないであろうが、完全に自業自得。他から見るとヘスティアがあんまりだ。

 

「ベル、ご飯どうするの?」

「あ、あのっ、今日は豊穣の女主人に行く予定でっ!?」

そしてノエルにもこの様子である。ヘスティアがいたたまれない。

 

「ああ、あそこか。料理おいしいよな。三人で行くか」

そしてそんな様子を楽しんでいる俺はベルに何も教えないのである。

 

 

まだ土地勘のないベルを連れ、同じようなカフェテラスが並ぶ通りにやってきた。その中でもあたりで一番大きな酒場、『豊穣の女主人』にはいる。

ここって店員が美人ぞろいなんだよなぁ。なんて考えていたらすかさずノエルに足を踏まれた。なぜバレたし。

 

「ベルさんっ」

 

その中のヒューマンのかわい子ちゃん、シルちゃんがベルのもとへやってきた。相変わらず足音しがしない子だ。

 

「・・・やってきました」

「はい、いらっしゃいませ。あら?お連れ様・・・お久しぶりですね、アルトさんにノエルさん」

 

ベルと意外と親しげに話していたシルちゃんはやっとこっちに気がついた。彼女は俺らのことが苦手なはずだが微塵もその様子を見せない。できる店員さんだ。まあ、苦手意識はお互い様だし。

 

「久しぶり、シルちゃん」

「ひさしぶり」

 

前に何となく気にくわないと言っていたノエルも一応挨拶を交わす。

 

「お客様三名はいりまーす!」

ベルは酒場のすべてにおっかなびっくりの様で、百面相をしている。可愛いなあ、居酒屋自体も初めてだからな。

 

「では、こちらにどうぞ」

案内されたのはカウンター席だった。

 

その中でも一番端の曲がり角のところ。お店の隅だった。ここなら人目も気にしなくていいし、ゆっくりできるだろう。いかんせん俺らは人目をひきやすい。

 

ベルは女将のミアに絡まれて大変そうだったが、俺はノエルにベルの先ほどのステイタスの詳細を聞いていた。

 

「トータル上昇160オーバー。相当アイズに惚れたみたい」

「うーん、ヘスティアは気に食わないだろうが、成長にはいいことだよな。ただ・・・なんでアイズ・ヴァレンシュタイン。いやわかるけど、他ファミリアでロキのお気に入りだぜ?」

「ベル、可能性ほとんどない」

 

言いたい放題である。他のファミリアとの結婚はまず無理だし、あのヘスティアとロキだ。せめてタケミカヅチかミアハの子だったらとしか言えない。しかも惚れた相手はお気に入りアイズ。オマケに元ロキの側近であるノエルが今はヘスティアの眷属。あちらからすれば面白くはないだろう。

 

なんだかんだで三人で仲良く食べていたら、十数人規模の団体が入ってきた。この気配は最近感じた。【ロキ・ファミリア】だ。もちろん周囲の客もざわめき、噂を流し、酒のツマミにする。【フレイヤ・ファミリア】と並ぶ二大巨頭、【ロキ・ファミリア】はいつだって注目の的だ。

 

もしかしなくてもこれ、面倒くさいことにりそうかな。こんなことなら『見て』おけばよかった。今日は集中力がイマイチ足りない。

 

ちらりと左をみれば、完全に「帰りたい」顔のノエル。

 

右を見れば、アイズ・ヴァレンシュタインを見て固まっているベル。

 

「おーい?」

 

呼びかけてみるが二人は相当に【ロキ・ファミリア】に耳を傾けているようで、ちっとも反応してくれなかった。アルトさん寂しい。

 

 

 

 

 


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