ダンジョンで双璧が暴れるのはまちがっているだろうか   作:よづき

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No.27

19階層へ続く階段を降りている途中、ノエルが不意に振り返った。

 

「ノエル?」

 

「…ごめん」

 

どうしたのだろう、とおもって振り返っただけだったが、謝罪という予想外の返答に少し顔をしかめる。

 

「【ロキ・ファミリア】が恋しいか?」

 

先程も遠征に参加すると、改めてアイズに約束していた。それにノエルはロキを、あのファミリアを口にはしないが大事にしている。そうなってもおかしくは無い、とそう思った問だった。

 

「難しい。けど、帰る場所はいつでもアルトの隣だと、そう思う」

 

考えたのではなく、すっと返ってきた答えに酷く安堵する。

 

「そうか。なら謝るな」

 

言葉通り、ずっと二人で生きてきた。覚えてる最初の記憶さえ同じだろう。色恋云々ではなく、ずっと隣にいた存在を簡単に手放せるほどアルトは淡白ではない。

 

近くにいるのに中々触れ合うことも無いノエルの頭をくしゃりと撫でる。

 

「なに」

「たまにはいいだろ」

 

ふ、と笑うアルトに振り払う気も起きず、太もものホルスターからピックを取りだしアルトの横腹ギリギリを描くカーブで投擲する。

 

ザシュッ、と音がしアルトに襲いかかろうとしていたモンスターが灰になって消える。

 

「ナイス」

「わざと避け無かったでしょ、、、」

 

当然、と言わんばかりに口の端で笑うアルトにご機嫌だなと首を振る。

 

「目標は42階層のドロップアイテムだけど…その前の階層主はフィンたちが倒す算段だったから少し急ごう」

 

ベルが心配、と2人はできるだけモンスターを無視し下層へ最短ルートを走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し休もう」

 

27層へ降りる直前でアルトが立ち止まった。

 

「…アンフィス・バエナ?」

「…討伐されてたと思ってたよ」

 

以前2人で下に潜ったときは討伐されており安全に通過できた階層だが、いるとなるとまた話が変わる。

 

「水上に移動されたら厄介。水辺は私が引き受ける。アルト側に何回か飛ばすかも」

 

「分かった」

 

役割を簡単に決め、念の為ポーションを飲むと一気に駆け下り階層主がいる場所まで向かった。

途中のモンスターはノエルが先頭で屠り、後ろからくる振り解けなかったモンスターはリーチの長い武器を使うアルトが屠る。いつものフォーメーションで連携に問題がないことを確認しながらの移動だった。

 

 

「アルト!」

 

五感がアルトより鋭いノエルが声を荒らげる。

 

「どうした」

「面倒、すでに水上にいる…。ぶっ飛ばすからちゃんと受け取れ!」

 

どこでスイッチが入ったのか、アルトと喧嘩した時以来の口調に動揺した瞬間、ノエルのスピードに置いていかれる。

 

「アイツ…!」

 

 

「アストライアに告ぐ」

「輝く無数の星々 、荒れ狂う人々の切望」

「時は来た、終焉の予言は今詠われる」

 

 

走りながらだとなんの問題もない、と言わんばかりに詠唱を始め、珍しく詠唱失敗するのではないかという乱れの中高速で言葉を紡ぐ。

 

そしてアンフィス・バエナの頭上を飛び、アルトとアンフィス・バエナを挟む状態になった空中で最後の一文を唄いあげる。

 

「地を穿てーーー アステリズム」

 

それは星群魔法。

いくつもの光がモンスターの体を舐め溶かすように貫き、避けることが許されない魔法。

 

穴だらけになり水上で動かなくなったアンフィス・バエナに隙をみ、ノエルが着地と同時に突撃。

 

「馬鹿野郎!」

 

周りが見えなくなっているか、その真っ直ぐな蹴りは興奮状態のモンスターに余波をうみつつ捕まえられ、アルトの横までぶっ飛ばされる。

 

アルトも全力で走りノエルを受け止める。

 

「お前どうした、おかしいぞ!落ち着け!?」

「…ごめん」

 

急ぎたい焦りか、久々の強敵だからか、今まで見た事ない動きにさすがに止めに入った。

 

「…ごめん。だけど、私はLv6じゃあ足りない…」

 

昔見た、記憶に残るLv8やLv9の英雄たち。オラリオに帰ってきてその記憶がさらに強くなったのか。

 

「先に行く」

 

「我が身に全能の一端を」

 

すぐさま魔法を切りかえて月光をその身に纏うと、真っ直ぐに走り出す相方に舌打ちをする。

 

「そう思うなら、あの時はどうしたんだよ」

 

言っても仕方の無いこととは思いつつ、過去のノエルを思い出し目を瞑る。

 

そして【未来予知】を施行し、その先を0.1に定めるとアルトも突撃を始めた。

未来予知は日常でも戦闘でも効果を発揮する超レアスキル。単純な戦闘ステイタスで基本ノエルに劣るアルトが、ノエルと肩を並べるほど強い理由の1つ。

 

アンフィス・バエナの行動を瞬間単位で先読みすることで最悪の事態の回避、適切な一撃を繰り出す。

 

 

大鎌を一閃、スパァンッと横に振りかざすとと大きく産まれる隙にモンスターは飛びつく。

 

「グッ…!ノエル!」

 

それを利用し、高速で飛んでくる腕を柄で両手で上に弾き、上で構えていたノエルが双剣でそれを切り刻む。

 

どちらに集中していても全方向から飛んでくる攻撃に、考える暇を与えないのがアルトとノエルの連携。スタッと正面に着地したノエルと頷きをかわすと、移動するアンフィス・バエナをさらに追いかけた。

 


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