ダンジョンで双璧が暴れるのはまちがっているだろうか   作:よづき

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No.26

「フィン!そういえば、ノエルがうちにいた時ずっとステイタス更新してなかった理由って知ってる?」

 

アルトとノエルと別れた後、ひとまず地上に戻るために準備を始めた【ロキ・ファミリア】の首脳陣の中で、今日も元気にティオナが口を開いた。

 

「…大方予想はついている」

 

はっきりしない答えにティオナは追求しようとしたが、それを遮ったの意外なことにアイズだった。

 

「どういうこと?ステイタス更新してない…?」

 

「この間ベートとノエルのデートの跡をロキとつけてたんだよね!そしたら、ロキはLv4のランクアップが可能になった瞬間から1回もステイタス更新に来なかったって言ってたの」

 

変な話だよねー、あれでずっと前線にいたの凄すぎるよね、と呑気に笑うティオナに、アイズは小さく首を振った。

 

「それはありえない」

 

次はアイズの言葉に古参組が反応した。

 

「アイズ、ありえないって?」

 

珍しく眉を下げたままのアイズが、小さな口をおずおずと開く。

 

「4年前にノエルはLv5だった」

 

その告げられた事実に、古参組が否定を入れる。

 

「なにかの間違いじゃないか?4年前は確実に【ロキ・ファミリア】の団員だった」

 

「ううん、間違いじゃない。あれは【ペルセウス】がなにかしてて、ノエルはステイタスのためにヘルメス様のところに通ってた」

 

確信を持って言い切るアイズに、全員が顔をしかめる。

 

「動き自体はずっとLv3の範疇だったぞ」

 

「…1度、ソロで下層に行って、気絶したことがある…」

「え!?」

「それをノエルが助けに来てくれた。あの時の動きは確実にレベル5。私が気絶し続けてると思ってああやって動いたんだと思う」

 

ベート、カナ、アイズ。ノエルが【ロキ・ファミリア】で懐に入れたのはたったの3人。その内の一人が確信を持ってそういうのだから、ヒュリテ姉妹やレフィーヤは信じられないとは思いつつ納得した。

 

それを聞いてなお信じられないのは古参組のフィンやリヴェリア。

 

「…そこまでしてか」

 

頭を抑え目を瞑るフィンに注目が集まる。

 

「フィン。ノエルはお前なら事実にたどり着いてると言っていた。憶測でいい、あの子がファミリアに心を寄せず、あのように振舞っていた理由を教えてくれないか?」

 

リヴェリアが珍しく縋るように尋ねるのを見て、口止めもされていないのに長らく口にできなかったそれを口にした。

 

 

 

 

「…あの子は恐らく、【ゼウス・ファミリア】か【ヘラ・ファミリア】にいた英雄の娘だ。相棒のアルトもそうなんだろう」

 

 

 

 

リヴェリアもどこかではそう思っていた。それでもなお、わざと理由の候補から外していたそれに衝撃を受ける。

 

「あの子にとって、私たちは仇か…」

 

目を瞑り動かなくなったリヴェリアをそっとレフィーヤが支える。

 

「…ノエルが」

 

アイズにとってもそれは衝撃だったようで、剣の柄を深く握るのをフィンは目の端で捉えた。

 

「てことは、ベートやアイズに優しかったのは、【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】を落とした時に所属してなかったから?」

 

「恐らくな。神フレイヤへの態度もそれなら理由が着く」

 

「それだったらどうしてロキの所へ来たんでしょう…。あの人はどうやってロキと出会ったんですか?」

 

誰も聞けなかった問いを、代弁するようにレフィーヤが声に出した。

 

「ロキの一目惚れだよ。どこのファミリアにも寄り付かなかったノエルを追いかけ回して無理やり頷かせてた。あの時のロキは今より好戦的だったからね。

でもロキは、ノエルを拾ってすぐに危うさに気がついた。それからは自分のそばに置いて、【ロキ・ファミリア】を好きになれるよう、何でもしていた」

 

「…そこまでして、ファミリアを恨んでるノエルさんを…。ロキのお気に入りだったんですか?」

 

それに対して、一拍おいていてできるだけ感情を載せないようにフィンは答える。

 

「お気に

入りではあったが、理由はもっと別の所だろう。例えば、ノエルに殺されないためとかね」


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