ダンジョンで双璧が暴れるのはまちがっているだろうか   作:よづき

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No.22

 

 

 

コートの裾を引かれる感覚に、反射的に立ち止まると相棒がこちらをなんとも言えない顔で見つめていた。

 

「どーした」

「…誰かいる」

 

薄紫色の瞳は俺ではなくこれから続く階段に向いていた。

 

「18階層の入口に1人か。こっちに背を向けてやがるな」

 

入口にいるなら安全階層の方ではなくモンスターが出現する17階層側を見ている方が自然である。

だがその人物は18階層側に体を向け動かない。

 

「…誰も出ていかないようにしてるみたい」

 

なんのために。18階層で何かある、それだけが分かっても仕方がない。

 

「引き返すか?」

「…気絶、させる?」

 

同時に放った言葉は全く別の意味を込めており、ノエルの言葉を理解したアルトの顔が歪む。

 

「お前さ、…や、もういい」

「…」

 

育ての親の元から逃げ出し、長い間共に生きていたがどこで育てかたを間違えたのだろう。

思えば、出会った時から彼女は〝 こう〟だったし、

 

もうほとんど記憶にない・・・・・・・・彼女の父親はさらに物騒な人だった気がする。

 

「気絶はさせねぇ、行くぞ」

 

安全階層とはいえ、モンスターが出現する危険のある場所で気絶させるなんて論外。

やられた方が悪い、という冒険者らしい考えも分からなくもない。

実をいえば【ヘルメス・ファミリア】の団長時代はそちらよりの考えであったし、相棒との戦争さえなければ変わらなかったように思う。

 

「いいの?」

 

2人の力関係は微妙で、アルトの意見を優先することが多い。それなのにどうして、と言いたげだ。

 

「まぁ、面倒事だと決まったわけじゃないしな」

「…」

「俺、お前と約束してたけど、ベルとヘスティアにあの話するつもりなかったんだ」

 

虚をつかれたノエルに笑ってみせる。

 

「あの時、俺を騙したこと負い目に感じてんだろ?俺もお前をずっと騙してたよ」

 

だから、

 

「遠慮なんかしてんじゃねぇ」

 

あれほどお互いの意見通すために全力を出したのに今更だろ。

 

「…」

 

小さく頷いたのを確認して18階層に続く階段を下る。

 

 

 

やはり、入口に立つ人物は俺らを認識しても意識は18階層に向いていた。

 

「やぁ。下の階に急いでるんだ、通してくれる?」

「…今、中に人は通せねぇんだ」

 

相棒以外の前では善人面で人当たりの良い人間を演じているし、オラリオの禁句になっていても昔の俺の印象で通れると思っていたが。18階層に住み着いてるヤツらなんて、3年で変わるようなたまじゃないだろうし。

 

「ね、お願い。君ってここで鍛冶屋してる子でしょ?いい素材見つけたら優先的に回すからさ〜」

 

ドサッと青年に寄りかかりさらに畳み掛ける。

 

「ついでに何が起こってるのか教えて?」

 

思惑通り、金を握らせればあっさりと口を開いてくれた。

 

「殺人だよ。【ガネーシャ・ファミリア】のLv4が殺された。犯人がわからねぇから18階層を封鎖してる。行っても疑われるだけでいい事ねぇぞ」

「ありがとう。ちなみに主導者は?」

「【勇者】フィン・ディムナ率いる【ロキ・ファミリア】の首脳陣だ」

 

予想はしていたものの、違って欲しかったというのが本音である。

 

 




地味にしおりが増えていて感謝です。
アルトさんとノエルさんは一度戦争レベルの喧嘩をしたことがあります。

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