ダンジョンで双璧が暴れるのはまちがっているだろうか   作:よづき

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No2

 

 

 

早朝から俺とノエルはギルドに訪れていた。どんな要件であろうと交渉役は俺。ノエルの無口さは口下手というわけではなく、人との壁であり仲のいい人を作らないようにするためであることは俺も知っているので何も言わない。

 

「再登録とランクアップ申請をお願いしたい」

「あら、アルトさん!?お久しぶりですね。3年ぶりですか?再登録と、ランクアップですね」

「ああ。この後潜りたいから急いでくれると助かる」

「かしこまりました。ファミリアはどちらに?」

「【ヘスティア・ファミリア】」

 

言った途端受付嬢の動きが止まった。

 

「!? え、はい、【ヘスティア・ファミリア】ですね…」

 

なぜ無名のファミリアに?といった思いが透けて見える。

昔からずっとお世話になっていたギルド嬢に伝えたが、思ったより進まない。まあ再登録もランクアップも同時は珍しいだろうし。俺は急いじゃいないが隣のお方はうずうずしてる。戦闘狂め。

 

「では、今はLv4の申請でよろしいですか?」

「いいや、6だ。ノエルもだよ」

「Lv6!? たった三年で何が…!」

「まあまあ」

 

なかなか進まない会話にとうとうノエルは飽きてしまったらしく、ギルド嬢に「はやくして」と目線を送った。

むかしはこのギルド嬢も気が弱く、深いところまでつついてこないから担当としてはよかったんだけど。

 

「も、もうしわけございません・・・」

「ああ、うん・・」

 

申し訳なく思いつつもギルド嬢の機嫌とノエルの機嫌を天秤で測ったらノエルのほうに傾くのは必然。

 

「お急ぎのようですので、ランクアップ経緯について後日詳細な話をおきかせ願います。こちらの用紙はランクアップ申請書とファミリア申請書になります、サインをお願いします」

「じゃあ、俺とノエルの申請よろしく~」

 

差し出された用紙にアルト・バインとノエルをなぐりがき。それ以上詮索されても困るので逃げるようにダンジョンに向かった。

 

 

現在ダンジョン中層。

 

俺もノエルも、各ファミリアにいた頃の貯金が貯まっていたので【ヘファイストス・ファミリア】の防具を1式揃えた。

 

俺は黒いロングコートに細身の黒いパンツ、黒く鈍く光る大鎌の上から銀の防具を重ねている。ウェーブのかかった漆黒の髪も相まってプレート以外真っ黒だ。

 

ノエルは動きやすさ重視のためプレートは最小限。関節などにも一切つけず、胸のあたりに一枚挟むのみ。邪魔だと無造作に結い上げられたポニーテールにショートパンツはベートの性癖に刺さりそうだと斜めから見ている。

 

三年前の俺たちを知らないやつらからすると、いきなり階層を飛ばしてぐんぐん降りていく高級装備を身にまとった新人にみえても仕方がない。死に急ぎ野郎ども、や身の程知らずの声も聞こえてくる。目まぐるしく動くオラリオで3年は大きいか。

 

加えてノエルはきらめく白金色髪美人。目立たないわけがない。

 

「ノエルといると目立つな…」

「アルトに言われたくない。充分君も目を引いてるよ」

「俺の顔がかっこいいって?」

 

にっこり笑って振り向くと苦虫を噛み潰したような顔をするノエルがいた。

 

「・・・・・」

 

見つめ合うこと3秒。

 

「冗談も大概にしといたほうがいいよ」

「・・・いえっさー。だからその刀身をしまってくれないかな?」

 

俺の首には輝く刀身。俺の冗談にはなかなか付き合ってくれない相棒である。

 

 

 

俺が30階層で立ち止まると当然のように止まるノエル。

二人でならきっともっと深くまで行けるであろうが、まずは体をレベルに釣り合わせることが先だ。

 

【ヘスティア・ファミリア】にコンバートしたと同時にレベルが上がり、現時点はLv6だ。感覚がなじんでいない。ひとまずここは体ならしだ。

 

「ノエル、勝負しよう。魔石買取の金額が高かったほうの勝ちだ」

「いいよ。まけてご飯1回奢ってね」

「いやまけないが!?」

 

俺が噛みついている間にノエルはさっさとモンスターを屠り始めた。

ええ、ずるくないか。

だが時間について何も言わなかったのも俺なので仕方なく今から本気出すぞ、と鎌を眺めに構えた。

 

 

 

 

 

 

 

2時間後、ノエルが見当たらないので探してみると2階層下、32層でみつけた。

「なんで下に行ってるんだ」

「あ・・・。ごめん。物足りなくなって、つい」

「ルール違反でお前の負けだな。よし、ホームへ帰るぞ」

 

申し訳なさそうな顔をしているのでお説教はいらないだろう。

ノエルは双剣をしまうと魔石の入ったバックパックを持ち上げようとしたので預かる。本気で戦えば腕力は彼女の方が僅差で強いであろうが、一応男の身だ。

 

ベルはどうしているだろう、なんてのんきなことを考えながら戻った。

 


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